そんなに人生甘くないよね   作:ジャイリ

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やってみよう。毒作成。


毒、作成してみよう

 ひとしきりしのぶを慰めた後、俺は久しぶりに監獄部屋らしき部屋から出ることとなった。ずっと薄暗い部屋にいたせいなのか、久しぶりの太陽の明かりに目をしかめた。まぶしい。当たり前の日常がまた戻ってくる。そう考えるだけで、俺は喜びを感じた。

 

 しのぶは俺の袖をつかんで後ろからついてくる。顔はうつむいていて、まだ元気はなさそうだった。いくら和解したとはいえ、自分のやってきたことをまだ悔やんでいるのだろう。気にするなと言葉で言っても、そう簡単にはいかないだろう。時間が解決してくれるに違いない。元気になるまで、できるだけそばにいよう。

 

 久しぶりに見かける俺に気付いたきよ、すみ、なほの三人娘は嬉しそうにこちらに近寄ってきたが、しのぶの様子を見て激変した。あからさまに目が腫れていて、涙を流したのは目に見えている。どうやら俺がひどいことをして泣かせたんだとギャーギャーわめきだした。騒がしくしていたせいか、その様子に気付いたアオイもこちらにやってきた。震えながらも、俺に対して激昂する。改めて、しのぶは愛されているんだと実感した。あれだけ怖がっているのに、しのぶの為にここまで怒れるのだ。なんだが、涙が出そうだった。

 その様子を、遠巻きにみているカナヲに気付く。カナヲは、俺たちの状況に気付いていたからなのか、無事にやってきた俺たちを見て、どこかほっとしているようだった。苦しい思いをさせてしまっただろう。ごめんなカナヲ。

 

 その後、何とか誤解を解きその場をなだめるのだった。

 

―――――――――――――――

 

「俺、強くなりたい」

 

 ある程度落ち着いた日々を取り戻した時、俺は不意にそんな一言を呟いた。

 

「突然どうしたのですか?」

 

 慣れた手つきで俺の血を取り終わったしのぶは、不思議そうな顔でこちらを見る。

 

「いや、しのぶってめっちゃ強いじゃん。それに、危険な鬼と戦ってるじゃん。愛してる女の子がそんなに頑張ってるのに、俺はのほほんとここにいていいものかと思って」

 

「そ、そのように気軽に愛してるとかいわないでください、もう」

 

 照れながらこちらをバシバシと叩くしのぶ。可愛い。

 

「へへへ、可愛いんだから。じゃなくて、真剣な話、俺も強くなって、鬼と戦いたい。それに強くないとしのぶだって守れない」

 

「……そうですか。でも、泥海男さんはそのようなことは気になさらなくてもいいのですよ?今もちゃんとこのように研究に協力していただいてるわけですし」

 

「それはそうなんだけど。やっぱりなんていうか、せっかくの不死身を活かしたいっていうかさ」

 

 やはり、このままってのもなんかダメな気がする。確かに、産屋敷耀哉に言われたことをやってはいるのだが、それとこれとは別っていうか、男のプライドっていうか。あるじゃないそういうの。

 そう俺が思ってるのとは裏腹に、しのぶはどこか納得していない顔をして、こちらを見ている。

 

「そんな自分を犠牲にすること前提でお話しされても困ります。いくら不死身と言ったって、私はあなたに傷ついてほしくない。自分を大切にしろって言った泥海男さんがそれを言うのですか?」

 

 うっ、それを言われると言葉に詰まる。確かにその通りではある。俺はしのぶに自分を大切にしろと言っておきながら、自分は自分のことをないがしろにする傾向にあるかもしれない。

 

「ずっと一緒にここにいましょう。それでいいじゃないですか。泥海男さんの面倒は一生私が見ますのでご安心ください。これで話はおしまいです」

 

 ものすごい笑顔で嬉しそうにそう言った後、しのぶはもう話すことはないと部屋から出て行ってしまった。なんかヒモでいなさいと言われた気分。しのぶはダメ男に引っかかったら危ないタイプかもしれない。

 そうは言っても、このままはいそうですかと引き下がるわけにも行かないので、こっそりと修業をすることにした。

 

……………………

…………

……

 

 最近、少しずつ思い出したことなのだが、鬼殺隊という組織に入るには選抜試験と言われるものがあるらしい。それに向けてトレーニングをすることにした。

 

「とはいっても、どうしようか?単純に鍛えるだけで義勇やしのぶみたいな強さを手に入れられる気がしない。何か秘密があるのだろうか?」

 

 二人の強さと速度を思い出しても、とても人間の到達できる領域ではない感じがした。とはいっても、実はというと、瞬間的にならあの二人を超える力と速度を出すことは可能である。昔にやっていた超過酷なトレーニングにより、その力が自分には宿っていた。しかし、あの二人みたいに常時継続力があるわけではない。何か力の秘密があるはずなのだ。

 

「うーん、どうしたものか」

 

 うんうんと唸っていると、物陰からこっちを覗いているカナヲがいることに気が付いた。悩んでいても仕方がないと、気分転換にカナヲを手招きしてこちらに呼んだ。とてとてとこっちにやってくるカナヲ。こちらにやってくるとカナヲは話しかけてきた。

 

「何かに、悩んでいるんですか?」

 

「あぁ、まぁ、ちょっとね。強くなるにはどうすればいいかなって」

 

「つよく、ですか?」

 

「まぁね。どうしたものか」

 

「なんで、つよくなりたいんですか?」

 

 いろいろと質問をしてくるカナヲ。それにしてもよく話すようになったな。よい傾向だ。

 

「鬼殺隊に入りたくてね。特訓をしようかと思ってるんだ」

 

「鬼殺隊……」

 

 鬼殺隊という言葉でカナヲは少し考え込んでしまう。しばらく考え込んだ後、カナヲは意を決したようにこちらを見た。

 

「わたしも、鬼殺隊に、はいりたいです」

 

 これは驚いた。カナヲも鬼殺隊に入りたいとは。だが、それには賛成しかねる。鬼殺隊に入るということは当然危険がつきまとう。そんな場所にカナヲを入れたいとは思えるわけがなかった。

 

「いや、それはちょっとどうなんだろ。危ないところだし、カナヲはやめておいた方が良いんじゃないかな」

 

「……」

 

 どこか納得がいっていない表情だ。

 

「どうして、鬼殺隊に入りたいの?」

 

「……しのぶ姉さんの、力になりたい」

 

「しのぶの、力にか」

 

「それに、カナエ姉さんの、敵を討ちたい」

 

 カナエ。確かしのぶの亡くなったお姉さんだったか?確かに、敵を討ちたいという気持ちはわからなくもない。しのぶの為に一緒に鬼殺隊でともに歩みたいという気持ちは尊重してあげたかった。しかしなぁ、それとこれとは別なんだよな。やっぱり危険だし。

 

「……強く、なりたいんですよね?」

 

「え?」

 

 カナヲは突然そう言った。

 

「わたし、呼吸法、しってます」

 

「呼吸法?」

 

 全集中の呼吸。どうやらこの世界にはそういった呼吸法の概念が存在しているらしく、一度に大量に酸素を血中に取り入れることによって、血管や筋肉を強化するものらしい。飛躍的に能力が向上するには呼吸法が重要になってくるとのこと。義勇やしのぶの身体能力が高いのもきっとそれに影響されているのだろう。

 どうやらその呼吸法を教える代わりに、鬼殺隊の選抜試験に共につれて行ってほしいということ。どうやらカナヲもしのぶに鬼殺隊に入ることは禁止されているらしい。内緒で一緒に行きたいとのことだった。

 

「うーん、でもなぁ。一度やっぱりしのぶたちに相談した方が、」

 

「おねがいします」

 

 強いまなざしでこちらを見るカナヲ。俺も内緒で行こうとはしていたので強く言えないし、連れて行ってくれないとしのぶにばらすと脅される。カナヲ、いつの間に脅しまで。成長しているのね。

 

「……わかった。正し、俺のやるトレーニングに泣き言言わずについてこれたら認めてやる。それでどうだ?」

 

「それで、いいです。お願いします」

 

 かなりハードなんだけどなぁ。仕方ない、やってみよう。

 

「わかった。カナヲは俺の鍛錬についてこれるようにする。俺はカナヲに呼吸法を教わる。しばらくはその生活を過ごそう。鬼殺隊について考えるのはその後だ」

 

 こくりとカナヲはうなずく。しばらく特訓の日々が続きそうだ。

 

―――――――――――――――

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

 苦しそうに膝をつきうずくまっているカナヲ。その表情は苦悶に満ちていた。

 

「この位でへばってどうする。やっぱやめにするか?どうすんだ」

 

「や、やります」

 

「なら立て。この程度、俺からしたら準備運動にもなりやしない」

 

 俺がやっていたハードなトレーニングの百分の一程度のトレーニングで根を上げてもらっては困る。せめてこの二倍はやれるようにならないとな。

 俺のトレーニングをするときは呼吸法は禁止している。呼吸法を使ってトレーニングをしても、地盤は身につかないと思ったからだ。そもそもカナヲは呼吸法をほぼ完璧に扱えているようだった。その技量はしのぶたちとそう変わらないと推測する。だからこそ、呼吸法は禁ずる。元の筋肉を鍛えなければ意味はない。呼吸に頼って鍛錬しても筋肉に負荷はかからない。

 

「さぁ、あと一時間ついてこい」

 

「は、はい」

 

 ついてこれなくなった時、遠慮なく鬼殺隊の選抜試験は受けさせないことにしよう。別にいじめてないからね。

 

―――――――――――――――

 

「ずいぶんと私が任務でいない間にカナヲとお出かけをしているようですね」

 

 ジトっとした目でこちらを見ながら俺の血を取るしのぶ。どこかご機嫌斜めである。

 

「ちょっとした気分転換にな」

 

 嘘である。めっちゃ鍛錬してる。後カナヲに呼吸法を習ってる。正直には言えない。

 

「それにしても、なんか機嫌悪くない」

 

「別に」

 

 いや、絶対機嫌悪い。明らかにお顔が不機嫌そうですものあなた。任務って疲れるんだろうなぁ。甘いものでも食べさせてあげたい。

 

「そうだしのぶ。しのぶが休みの日に甘味処でも行かない?甘いもの食べに行こうよ」

 

「え?ま、まぁ、どうしてもって言うなら行ってあげます」

 

「どうしても」

 

「そ、そう。今度一緒に行ってあげる」

 

 どことなく嬉しそうなしのぶ。やっぱり甘いもの食べに行きたいよねわかる。疲れたときは甘味だ。

 

「そうだ、ちょっと聞きたいんだけど、鬼って弱点とかってあるの?」

 

「唐突ですね。何か企んでるんですか?」

 

「企んでないよ。ちょっとした疑問。弱点がわかったらどことなく安心しない?」

 

「怪しい……まぁいいですけど。鬼は基本的に普通の攻撃では倒せません。ですが日輪刀と言われる刀で首を斬ることができれば倒せます。注意点は、日輪刀以外では首を斬っても意味がないことです。後は太陽が弱点です。太陽のもとに鬼が出ると消滅します。ですので鬼は夜に出没します」

 

 なるほど、日輪刀で首を斬ると。どうやらそれ以外の刀で首を切っても意味がないという。日輪刀、欲しいな。

 

「へぇ、そうなんだ。ちなみにこの屋敷に日輪刀ってあるの?」

 

「納屋に何本か保管してますけど。……倒そうとか思ってないですよね?」

 

「まさか。いざという時の護身用に日輪刀があるって知ってた方が安心じゃん。基本逃げる逃げる」

 

「本当かしら。なんか怪しいなぁ」

 

 訝し気にこちらを見るしのぶ。これ以上この話題はやめよう。それにしても日輪刀があることがわかってよかった。選抜試験に行くときにこっそり借りよう。

 

「そうだ、しのぶの日輪刀見せてくれない?」

 

「え?いいですけど」

 

 しのぶの日輪刀を借りて抜刀する。おぉ、これがしのぶの日輪刀か。でもこれなんか形おかしくね?先っぽに三角形の刃があるだけで、ある程度のところから急に細くなり鍔までは刃がない。

 

「先がとんがってるけど、これじゃ首斬れなくない?」

 

「私は少し特殊な戦い方をするんです。力がない私は実は鬼の首が斬れなくて……その刀の刃先に鬼の弱点の毒が付着していて、それを注入することで鬼を倒すんです」

 

「毒?鬼に聞く毒があるんだ。知らなかった」

 

「ええ。鬼は藤の花が弱点なようで。どうしても鬼を倒したかった私が、それで毒を作って、倒せる手段を作ったんです」

 

 それはすごい。自分で倒す方法を見つけ出したのか。相当の努力が垣間見える。

 

「すごい。しのぶが頑張って毒を作ったんだね。尊敬するよ」

 

「ふふ、実は私鬼を倒す毒を作ったとってもすごい人なんですよ」

 

 そこでふと思いついた。その毒って俺にも効くんだろうか?人間ではあるが、一応鬼の血は流れている。試してみたい。第六感も試せと言っている。

 

「しのぶ、その刀で俺を刺してみて」

 

「は?何を言ってるんですか?」

 

「お願い。なんか試してみたくなって」

 

「馬鹿なんですか!?そんな危険なことできません。何かあったらどうするんですか。泥海男さんは人間だと思ってるけど、万が一のこともあるかもしれないのよ」

 

「まぁいいや、自分で刺しちゃえ」

 

 ぶすり。自分で刀を刺す。しのぶの息をのむ音が聞こえる。口元を手で押さえ、顔面を蒼白させてこちらを見ていた。大丈夫そうだ。が、見えてきたものもあった。

 

「な、何をやってるんですか!?大丈夫なんですか、どこかおかしなところはありませんか?」

 

 しのぶは大変狼狽してこちらを心配していた。

 

「うん。大丈夫そうだね。何ともない」

 

「良かった……何ともなかったからよかったものの、何かあってからでは遅いんですよ?でも、これで泥海男さんが人間だっていう証明もできましたね」

 

「そうだね。でも分かったこともある。しのぶ、俺で人体実験をしよう」

 

「人体実験?」

 

 この毒ではきっとものすごい強い鬼には通用しない。でも、鬼の血が少し入ってる俺に効く毒ができれば、さらに強力な毒が出来上がるはずだ。そのことをしのぶに話すと、猛烈に反対された。それは猛反対された。とはいっても、これはしのぶの為になることだ。ちょっと強引に話を進めよう。

 

「この話に協力してくれないなら、しのぶが俺にやってきたことを俺は許さない」

 

「え?」

 

「協力してくれるなら水に流す。してくれないなら二度と許さない。嫌いになる。どうする?」

 

「そ、そんな、それを言うのは卑怯です。嫌です。でも、嫌われたくない、うぅ」

 

「ま、大丈夫だから。人体実験しよう。これはきっとこれからのしのぶにも鬼殺隊にも役立つだろうし」

 

「……わかりました」

 

 強力な毒を作り出す計画がスタートした。

 

―――――――――――――――

 

 鬼殺隊に入るための鍛錬の日々と、強力な毒作成は順調に進んでいた。

 

 鍛錬の方は順調に進んでおり、カナヲもトレーニングにだいぶついてこれるようになってきているし、俺も呼吸法をほぼ完璧にマスターしている。よくわからない瓢箪の破壊も難なくできるようになっていた。

 

 毒作成の方も順調で、色々な新しい毒を実験していた。新しい毒ができるたびに、俺の体で実験している。毒は日に日に強化されていき、最近では俺もものすごく苦しい思いをしている。俺が苦しむたびにしのぶは泣きそうになっているが、それは気にしないようにしよう。

 

 そして何日か経過したある日のこと。今日も毒の実験をしていた。

 

「それじゃ、毒を打つわね」

 

「おう、思い切って注射してくれ」

 

「……ねぇ、やっぱりもうやめにしない?今日の毒であなたが無事という保証は何もない。これ以上苦しむ姿はみたくないの」

 

「とはいっても、せっかくここまでやってきたんだし」

 

「お願いよ」

 

 しのぶを見てみると泣いていた。さすがにこれ以上はしのぶの精神の方がやばそうだ。ここまでにしよう。

 

「わかった、今日の実験を最後にもうこの研究は終わりにしよう。ここまでの段階でも、きっとほとんどの鬼は瞬殺レベルだろうしね」

 

「本当に、今日で最後にしてくれる?」

 

「あぁ。だから今日はやろう実験」

 

「……わかった。それじゃあ、打つわね」

 

 しのぶが今日の実験の毒を俺に打ち込む。おぉ、今日もすごいね。効く効く。およ?あれれ?なんか今日はいつもと比べ者にならないくらいすごい。あ、やばくね、これ。まずいかも。

 

 ぱーーーーーーーーん。

 

 そんな音とともに俺の体ははじけ飛んだ。

 

「え?」

 

 その後、しのぶの間の抜けた声が部屋に響くのだった。




 裏設定。

 蝶屋敷に療養しに来ている鬼殺隊の隊士に全く合わない理由。泥海男の情報はお館様が緘口令をだしており、蝶屋敷の面々が対面させないように徹底しているため。
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