その悪魔の実には意思がある   作:ゼガちゃん

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お待たせしました。

本当に申し訳ないです。
予定よりも遅くなってしまいました。

では、続きをどうぞ。


東の海編
船長!! 樽から男が!!


拝啓、地元の島の皆様。

如何お過ごしでしょうか?

 

「おう雑用コビー、これ酒樽じゃねェか。何処で拾ったんだ?」

 

「そ、そこで拾いました」

 

コビーこと、ぼくは海賊船にて雑用係をしています。

 

釣りをしようと船に乗ったのですが、それが海賊船でそこで雑用係として使われています。

幸いにも航海術や海の知識があったので"生き永らえている"状態です。

 

その海賊というのが〝金棒〟の異名を持つアルビダ……様の船でした。

太った……いえ大柄な体型、顔に付いたそばかすがまず目を引く白い鍔広の帽子を被った女海賊の船長です。

 

異名に負けない程の大きな金棒をいとも容易く振り回します。

その金棒により、何人もの海賊や海兵を薙ぎ倒しています。

実力は間違いなく本物なんです。

そして今、アルビダ様が拠点とする島に船を停泊させています。

船の清掃等をして、物資の補給をしています。

 

というのも先程にこの付近で大渦が発生していたので、これでは船を出せないので休憩を兼ねての行動をしています。

 

「これ、もしかして酒樽じゃないか?」

 

僕が持ってきたのは酒樽です。

酒樽は濡れていた状態だったので、通り掛かった船が先程の大渦にやられて積み荷だけが流れてきたのでしょう。

かなり重く、非力なぼくでは運ぶだなんてとても出来ないので物資を貯蔵に利用している小屋まで転がしてきました。

そこまで来ると、アルビダ様の船の先輩3人がぼくの持ってきた酒樽に興味を示しました。

 

「この事はアルビダ様は知ってるのか?」

 

「いえ、まだ誰にも言ってませんが」

 

「なら、ちょうどいい。おれ達で飲んじまおうぜ」

 

ぼくが誰にも酒樽の存在を知らせていないと知るや、先輩方はこの酒樽の中身を飲むという選択を取り始めました。

本来、こんな勝手は許されません。

ですが、こう考えてしまう理由もアルビダ様の船に乗船していると良く分かります。

 

「アルビダ様と居ると、目一杯に酒を飲むだなんて無理な話だからな」

 

「言っちゃ悪いが、横暴なところもあるからな。機嫌が悪い時は酒なんて飲めないのもザラだし」

 

「ナルシストで、あんなに太ってて、顔も良くないのに『自分がこの海で一番美しい』だと思ってるナルシストだしな」

 

船長に対しての言い方とは思えない程の酷評っぷりが目の前で繰り広げられています。

彼女の見た目はお世辞でも「美しい」とはかけ離れていますが、そんな事を言おうものなら彼女の金棒が襲い掛かってきます。

かくいうぼくもアルビダ様から暴行を受けています。

まるでストレスを発散する為に振るわれる暴力。

身体に受けた生傷は数え切れません。

 

それは他の船員達も同様で、このように各々が不満をぶちまける程です。

恐怖政治とは言ったものですが、これではいつまで船員が付いてきてくれるのか分かったものではありません。

その証拠に、このようにして船長に黙って酒樽を飲もうとしている訳ですから。

 

「しかし、問題は船長にバレないか、だが」

 

「安心しろ。ヘッポコのコビーは誰にも話していない」

 

「なら、知ってるのはおれ達だけか」

 

3人はその事実を確認すると、視線をぼくへ一点集中させました。

うぅ、言いたい事は察しました。

 

「も、もちろん誰にも言いません」

 

「へへ、分かってるじゃねェか」

 

「なら、共犯って事でお前にも少し分けてやるよ。感謝しな」

 

「ありがとう、ございます」

 

ぼくが誰にも言わないと知るや、先輩達は上機嫌に。

1人が酒樽の中身を開けようと蓋へ手を伸ばして――――

 

 

 

 

 

「あーっ!! よーくー寝ーたーな〜〜〜っ!!」

 

 

 

 

 

あっはっはっ!!

そんな笑い声と共に樽から人が両腕を上げて勢い良く出てきました。

 

その拍子に蓋を開けようとしていた先輩の顎に出てきた人の拳がクリーンヒット。

赤い袖なしのベストに青い短パン、それと麦わら帽子を被った黒髪黒目の少年といった風貌の人です。

少年はひとしきり笑った後にぼくや先輩達、倒れている先輩を見据えた後に、

 

「誰だ? お前ら?」

 

「「お前こそ誰だ!?」」

 

「その人、そこで寝てると風邪引くよ?」

 

「「お前がやったんだよ!!」」

 

少年のマイペースさに先輩達が翻弄されています。

この人は一体……?

いや、それ以前に何で樽に入っていたんですか!?

 

 

 

 

 

「サボってんじゃないよ!! お前達!!」

 

 

 

 

 

怒号と共にこの小屋へ金棒が投げ込まれました。

その勢いは凄まじく、小屋をいとも簡単に吹き飛ばして全壊させました。

これを行ったのは間違いなくアルビダ様です。

 

「おわァッ!?」

 

「わ、わわッ!!」

 

それによって、樽もろともあの人が吹き飛ばされました。

そして、その近くに居たぼくも小屋の裏側にある雑木林の方へ吹き飛ばされて――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

「ああ、びっくりしたけどな」

 

またも笑いながらこの状況を軽く流す。

何と言うか、豪胆な人です。

 

「おれはルフィ。ここ何処だ?」

 

「ここは〝金棒〟アルビダ様の休息地です」

 

「ふーん」

 

アルビダ様の名前を出しても全く動じる様子を見せません。

挙句には「どうでもいいや」と言い出しました。

この人は誰なのでしょうか?

 

この辺りの海賊の名前は聞いてますが、ルフィという名前は聞かない名前です。

 

 

「小船とかねェかな? おれのやつ渦巻に呑まれちまってさ〜」

 

「えェッ!? あの大渦に!?」

 

樽から出ながら軽い口調でとんでも無いことを言い出しました。

まさか、あの大渦に巻き込まれていたなんて。

普通なら死んでもおかしくないのに。

 

それで咄嗟に樽に入って生き延びた――――何て強運なのでしょうか。

いえ、違いますね。

樽に入って“生きる事を諦めなかったからこそ”こうして生きている。

この行動力こそが、この人が生き延びた理由なんですね。

 

「小船なら一応、あります」

 

この人――――ルフィさんの要望に応えるだけのものではありませんが、小船程度ならあります。

丁度、それもこの近辺に隠してあります。

 

ルフィさんへ付いてくるよう促し、この付近に隠していた小船を見せました。

 

「何だこれ? 棺桶か?」

 

「い、一応小船です。自作ですけど」

 

板を繋ぎ合わせただけのツギハギだらけの船を見せました。

ルフィさんの反応はご尤もと言うべき出来栄えです。

 

「2年掛けて、コツコツ作ったものですので。見栄えは悪いですけど」

 

「2年掛かった? なのに要らねェのか?」

 

ルフィさんの問いにぼくは「はい」と頷くしか出来ませんでした。

 

全てを正直に話しました。

アルビダ様の船に誤って乗った事、逃げ出したくて造った事、なのに怖くて逃げ出せない事。

 

「お前、ドジでバカだなー。

 その上根性無さそうだしな。

 おれ、お前嫌いだなー」

 

笑顔でストレートにぼくの心を抉らないで下さい。

図星過ぎて涙を流しながら愛想笑いするしか出来ないじゃないですか。

 

ぼくにもルフィさんのように樽で漂流する覚悟はありません。

もし、それだけの覚悟があればアルビダ様から逃げようと考えられたと言うのに。

自分が情けなくなります。

しかし、気になる事も。

 

「ルフィさんは海へ出て、何をするつもりなんですか?」

 

彼はそこまでして何をしたいのだろうか?

興味本位で訊ねる。

すると彼は満面の笑みで――――

 

 

 

 

 

「おれはさ、海賊王になるんだ!!」

 

 

 

 

 

なるほど、海賊王ですか。

海賊王…………って、

 

「か、海賊王ですかっ!?」

 

「ああ」

 

ぼくの驚きなど何のその。

ルフィさんはさも当たり前のように「海賊王になる」と答えます。

 

「海賊王っていうのは、この世の全てを手に入れた者の称号ですよ!!

 〝ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)〟を狙うって事ですよ!!

 世界中の海賊達が狙ってるんですよ!?」

 

「おれも狙う」

 

腕を組み、ルフィさんは簡潔に言う。

いえ、言うのは簡単です。

ですが、並み居る海賊達を押し退けて海賊王の称号を手に入れるなんて――――

 

「無理です無理です!! そんなの無理に決まってます!!」

 

荒唐無稽、無茶無謀も良いところです!!

わざわざ死にに行くようなもので――――

 

ゴンッ!!

い、痛いっ!?

 

「何で殴るんですか!?」

 

「何となくだ」

 

頭を思いっきり殴り付けてくるルフィさんへ抗議の声を上げました。

しかし、彼の犯行の動機は「何となく」とふざけたものです。

 

「おれは死んでも良いんだ」

 

しかし、ルフィさんが次に放った言葉は芯のこもったもの。

被っていた麦わら帽子を取ると、手に取って眺めながらこう続けました。

 

「おれがなるって決めたんだから。

 その為に戦って死ぬんなら、別にいい」

 

っ!?

なんて、なんて覚悟なんでしょうか。

ルフィさんは、すごい覚悟を持っていたんです。

 

ぼくは考えもしなかった。

死ぬ気で目的を成し遂げるなんて。

 

「ぼくでも、海軍に入れるでしょうか?」

 

「海軍……?」

 

気付けば、ぼくは心の内を言葉にしていました。

いえ、これまでぼくが目指してきたのに見て見ぬ振りしていたぼくの本心です!!

 

「ルフィさんとは敵ですけど!!

 海軍に入って偉くなって、悪い奴を取り締まるのがぼくの夢なんです!!

 小さい頃からの!!」

 

この事を誰かに話す事があるだなんて思わなかった。

ましてや会ったばかりの、赤の他人で、尚且つ海賊という真逆の立場の人に言うとは思いませんでした。

けれど、止めていた想いは一度溢れ出したら止まりませんでした。

 

「やれるでしょうか?」

 

「そんなの知らねェよ」

 

「いえ!! やります!!」

 

さっきまで、ルフィさんが自分の〝夢〟を叶える為の覚悟を見せてくれました。

ルフィさんの言葉を否定した時のぼくとは違います!!

だから、自分の言葉に信念を込めるんです!!

 

そして、これまでの自分と決別するんです!!

まずは、アルビダ様の……いえ、彼女の呼び方を変えなくては!!

 

「それでアルビダ様も……いえ、アルビダだって捕まえてやるんです!!」

 

「誰が誰を捕まえるって?」

 

そこへ背後から声が掛かりました。

ゾクッ!! 背筋に悪寒を感じます。

今の声は何度も聞いてきたものです。

 

恐る恐る振り返れば…………そこにはアルビダが立っているではありませんか。

な、何でここに!?

 

「コビーが誰か連れてきたって言うから何処ぞの賞金稼ぎかと思ったよ。

 もしかしたら海軍に捕まっているロロノア・ゾロかと思ったが、違うようだね」

 

そ、そうか。ルフィさんの入った樽を持ってきたのがぼくだから変な勘違いをされたんだ。

見れば、この事を知っている先輩も居るじゃないですか。

 

「それで? あんたは誰だい?」

 

「おれはモンキー・D・ルフィ。海賊王になる男だ」

 

「海賊王? これはとんだお笑い草だね!!

 ヘッポココビーと同じように夢を見てる奴なのか!!」

 

ルフィさんの〝夢〟、そしてぼくが海軍へ入る〝夢〟を聞いていたのでしょう。

あちらは部下も含めて全員がぼく達の〝夢〟を笑いの種にしているんです。

 

腸が煮えくり返っています。

けど、けど……さっき決意した覚悟が霧散していくのが分かります。

やはり、この身体に植え付けられた暴行への恐怖がジリジリとぼくの心の中を侵食してきました。

ここから逃げるだなんて、ぼくには…………

 

 

 

 

 

「誰だ? このイカついおばさん?」

 

 

 

 

 

 

瞬間、ルフィさんがぼくに問い掛けてきました。

同時、全員の時が凍り付きました。

 

しかし、その凍て付きを憤怒の炎で溶かしたのは他ならない言われた張本人な訳で。

彼女の怒りを買ってしまう結果になったのは火を見るよりも明らか。

 

「て、訂正して下さい!! ルフィさん!!

 この人は、この海で一番…………」

 

そこまで言い出し、ぼくの言葉は途切れました。

その瞬間、脳裏に過ったのは先程のルフィさんの言葉。

 

彼の覚悟は、ぼくは彼のように死ぬ気で海軍に入りたいと決意させる程の力を見せ付けました。

これまで燻っていたぼくの中の覚悟に火を付けたのは他ならないルフィさんだ。

 

どうした事でしょう。

先程までの恐怖は何処かへ行ってしまいました。

代わりにぼくの中でルフィさんが覚悟を語ったシーンが何度も何度も再生されます。

 

ぼくはルフィさんの何を見た?

しっかりしろ、コビー!!

ここで命を懸ける覚悟が無くて、何が〝夢〟なんだ!!

 

そうだ、ルフィさんは違ったじゃないか。

ぼくの〝夢〟を聞いて全員が嘲笑っても、ルフィさんだけは「知らない」とは言っても「なれやしない」とは言わなかったじゃないか!!

 

ぼくはルフィさんの〝夢〟を「不可能」だと断じたというのに!!

 

今度こそ、覚悟を決めよう。

これは、新しい道を決める為の第一声だ!!

 

 

 

 

 

「この人は、この海で一番イカつい、クソババアです!!」

 

 

 

 

 

「……………言いたい事はそれだけかい?

 なら、覚悟しなァ!!」

 

我慢が限界に達したアルビダが金棒を振り下ろしてきます。

 

ぼくは慌てるだけです、口を開いて恐怖しながら金棒が振り下ろされるのを見ているだけです。

けど、後悔はありません!!

言うだけ言ったんだ。

最後にこれまでの弱い自分と決別できたんだ!!

悔いは、ない!!

 

「良く言った"コビー"。

 あとは任せろ」

 

ぼくが振り下ろされる金棒に身動きが取れない最中、ぼくの前に人が割って入りました。

麦わら帽子が真っ先に目に入り、誰が割って入ったのかすぐに理解しました。

 

「ルフィさん!!」

 

ぼくがルフィさんを呼ぶのと同時、金棒が彼の脳天に直撃しました。

見た目通りの怪力を持つアルビダの放つ金棒の威力は凄まじいです。

それなのに間に入ってしまっては…………

 

「効かないねェ。ゴムだから」

 

しかし、ルフィさんは平然として、そのように言葉を返しました。

アルビダも自身の渾身の一打に手応えはあった筈。

なのに、不思議そうな顔をしています。

 

「〝ゴムゴムの〟」

 

腕を高く上げ、まるで拳を飛ばすかのように構えています。

しかし、アルビダとルフィさんとの間には距離があり、いくら腕を伸ばしたところで届く筈が……

 

「〝(ピストル)〟!!」

 

ギュンッ!! そんな擬音が耳に届きました。

ル、ルフィさんの腕が……伸びた!?

 

ぼくの目の錯覚でもなく、伸ばされた腕はアルビダの顔面にクリーンヒット。

アルビダもルフィさんの一発でKOされ、地面に仰向けで倒れています。

 

この場の全員がルフィさんの腕が伸びた事に驚き、そして畏怖し始めました。

 

「コビーに一隻小船をやれ。こいつは海軍に入るんだ。

 黙って行かせろ」

 

呆気に取られている船員へ向けて指を突き出し、そう言い出しました。

他の面々も「はい」と言って、頷くより他に出来ません。

 

当のルフィさんは「ししし」と満面の笑みを作っているのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼくの目的地である海軍基地のある島までルフィさんと小船で移動する事になりました。

小船の船首にルフィさんは胡坐を掻いて座っています。

 

ルフィさんは〝ゴムゴムの実〟を食べたという事はカナヅチになっている筈なんですよね。

海に落ちた時はどうするつもりなのでしょうか?

 

いえ、それよりもこれからルフィさんが目指そうとしている〝偉大なる航路(グランドライン)〟は海賊の墓場とも呼ばれる場所です。

 

「ああ、だから強い仲間が要るな。

 これからお前が行く海軍基地に捕まってる奴が良い奴だったら仲間にしようと思ってな」

 

ルフィさんにその話をするとそのように言い出しました。

アルビダがロロノア・ゾロの話をしていて、ぼくの目指している海軍基地に居ると知ってそのような話に。

 

「いえ、悪い奴だから捕まってるんですよ?

 それに〝海賊狩り〟の異名を持つ人が仲間になるなんて有り得ないですよ!!」

 

「そんなの会ってみないと分からないだろ?」

 

「無理です!! 無理無理!! 絶対に無理……」

 

ゴンッ!!

本日二度目、ルフィさんの拳がぼくの脳天を叩きました。

 

「何で殴るんですか?」

 

頭をさすりながら涙目になっているぼくに腕を組んでルフィさんはこう言いました。

 

「何となくだ」

 

だから、そんな理由で殴らないで下さいよ。

 




如何でしたでしょうか?

え? 前回ルフィを中心とした話にすると言ってたのにコビー視点の話になってるって?
原作でもコビーは麦わらのルフィのファン第一号なので、実質ルフィ中心の物語ですよ。

基本的に原作準拠の展開となっていますので、せっかくならとコビー視点で書いてみました。
コビーがルフィと出会った時の心理ってどうだったのかなと原作を読み返していたら自然と彼視点の話に。
本当は三人称にするつもりだったのですが、どうしてこうなった?

あとは細かい台詞回し等が違っていたりします。
あと分かる人には分かるアニメ産の会話文もありますので楽しめて頂ければ幸いです。

原作を知っている前提で展開もさっと書いて終わらせました。

さて、次回はそこまで時間が掛からないと思います。
忙しい人向けシリーズのような形でサクッといくと思います。

では、また次回に。
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