その悪魔の実には意思がある   作:ゼガちゃん

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いやはや、更新が遅くなってしまって申し訳無いです。

年末から年始は忙しく、どうにか更新に漕ぎ付けました。

では、続きです。


食べようとした鳥に連れられて

海兵達に見送られ、海へ飛び出したルフィとゾロ。

しかし、航海にはある重大な問題があった。

 

両者共に航海術を持っていなかったのだ。

海を旅する為に必須のスキル。

かいつまんで言うならば目的地へ辿り着く為の方法だ。

 

海軍基地まではコビーの航海術で何とかなった。

それまではルフィも漂流していた。

ゾロも探している人が居るらしく、その為に海へ出たのだが帰り方が分からなくなったので賞金稼ぎをしていたとか。

 

目下、このままでは漂流して〝偉大なる航路(グランドライン)〟どころか、次の島に辿り着けるのかも怪しい。

既にかなりの距離を進み、先程の島へ戻る手段も持たない。

 

何としてでも次の島へ辿り着き、航海術を持つ航海士を仲間に引き入れる。

ルフィが「コックとか、音楽家とか」と言うが、それよりも先に航海士だ。

 

さて、目的を決めたは良いが小船で漂流している状態。

腹を空かせていたところに都合良く大きな鳥が頭上を通過した。

 

ルフィが「鳥を食おう!!」と提案し、ゴム人間の能力を活用する。

小船の帆まで腕を伸ばし、自らの身体を帆の方へと引き寄せる。

そのまま上空を飛ぶ鳥へ辿り着けたは良かった――――が、

 

「助けてくれェェェェェッ!!」

 

「バカヤロォォォォォッ!!」

 

鳥のくちばしに頭を捕まれ、そのまま運ばれてしまう。

ゾロが必死に小船をオールで漕いで追い掛ける。

途中まではルフィの方から追っているのが見えたが、途中で止まってしまった。

 

振り解くのは難しくないが、海へ落ちる事だけは避けたかった。

幸い、しばらくした後に島へ辿り着く。

鳥を殴り付けようとして――――砲撃を受けたのは直後であった。

無事に解放される事になるが、そのまま地面へ急降下していく。

 

勢い良くコンクリートの地面に叩き付けられる。

ドォォォォォンッ!!

凄まじい轟音と共にコンクリートが砕けて破片が飛び散る。

 

「あーッ!! 助かった!!」

 

麦わら帽子を被り直し、無事に着陸する。

ただ、少し驚いたのでそんな事を口走る。

 

「い、生きてる!?」

 

落ちてきた先には偶然にも人が居た。

方やオレンジ色の短髪、白を基調とした青いラインの入った半袖の服を着た女性。

そして、剣を持った男3人。

丁度その間に落下したようだ。

 

「親分!! 助けに来てくれたんですね!!」

 

状況を把握したと同時、オレンジ髪の女性がそう言い出した。

ルフィを見ながら言うもので、何のことやらとさすがに首を傾げる。

 

「あとは任せました!!」

 

ルフィを「親分」と呼び、一目散に女性は逃げ出す。

何だったのかと状況を呑み込めていないルフィに男達が剣を携えて寄ってくる。

 

どうやら女性が何か仕出かしたらしく、ルフィも仲間と思われているようだ。

それを理解すると同時、麦わら帽子が宙を舞った。

 

目の前の男は脅しでルフィの麦わら帽子を跳ね上げたのだろう。

直後、ルフィの拳が男の顔面へ叩き込まれる。

 

「おれの宝物に触るな」

 

冷たく、静かに、胸の内に怒りを秘めてルフィは告げる。

残り2人、仲間をやられたままではいられないとルフィへ襲い掛かってくる。

 

それを受けてもルフィは決して臆さない。

襲ってくるなら返り討ちにする。

振り下ろされる剣を紙一重で回避する。

それぞれ腹、顔と殴り付け、一瞬で相手を無力化した。

 

「あんた、強いのね」

 

付近の家の屋根の上、先程の女性が座ってこちらの様子を見ていた。

 

「私は海賊専門の泥棒のナミ。

 ねェ、手を組まない?」

 

「海賊専門?」

 

「そうよ。あんたは腕が立つみたいだし、私と手を組めば儲かるわよ」

 

「いやだ。おれはお前とは組みたくねェ」

 

ナミはルフィの強さを見込んで頼み込んでいる。

しかし、勧誘されている当人からは拒絶され、逃げるように歩き出した。

 

「ちょっと待ってよ」

 

だが、それで諦めるつもりはないのか、ナミはルフィを追ってくる。

 

「その帽子、さっき宝物って言ってけど高価なものなの?

 それとも宝の地図になってるとか」

 

「うるさいな。おれは忙しい――」

 

真横に来て並んで歩くナミから矢継ぎ早に問い掛けられ、ルフィは煙たく思っている。

ただ、唐突に歩みを止め、更には言葉も区切った。

ルフィの視線がナミに注目したからだ。

 

「何、よ?」

 

彼女の問いには答えずにマジマジとルフィはナミの顔を見る。

顎に手を当てて、首を傾げている。

 

「んん? お前、どっかで会った事あったような……」

 

「何? 新手のナンパ?」

 

「そういうのじゃ無いけどよ」

 

ナミも自分の容姿には自信がある。

なので、それでナンパ紛いの事をしているのかと思ってしまう。

彼女にはその手の事が多かった証左でもある。

 

「まあ、良いか。おれ、はぐれた仲間と合流しなくちゃいけないしさ」

 

「何? 仲間が居たの?」

 

「ああ」

 

ルフィは置いてけぼりにしたゾロの事を思い出す。

真っ直ぐに飛んできた訳であるし、そのまま直進していればこの島にぶつかる。

合流は出来るだろうと考える。

 

「仲間と何処へ行こうとしてたの?」

 

「〝偉大なる航路(グランドライン)〟だ」

 

「へェ、奇遇ね。私もそこを目指していたの。

 お金が入用でね。一億ベリー必要なの」

 

「一億ってとんでもない大金じゃねェか。

 そんなので、何を買うつもりなんだ?」

 

「ちょっと、ある村をね。

 そんな訳で〝偉大なる航路(グランドライン)〟の海賊を相手にお宝を狙うつもりよ」

 

偉大なる航路(グランドライン)〟へ辿り着き、海賊相手に宝を手に入れる。

それこそが彼女の目的なのだと言う。

ふと、そこで思い付いた。

 

「もしかして、航海術を持ってるのか?」

 

「ええ、右に出る者も居ない航海術を持っているわ」

 

随分と自分の評価を高くしている。

けれども、航海士を必要としていたルフィ達にはまさしく渡りに船だ。

 

「なら、おれの仲間になってくれよ。海賊の仲間に!!」

 

「いや!!」

 

今度は一転、ルフィの方から持ち掛けた勧誘をナミの方から一蹴する流れに。

どうした事なのかと、ルフィは当然の事ながら問い掛ける。

 

「悪いけど手を組む話は無かった事にして。

 私は海賊が嫌いだから協力するつもりはないわ」

 

「海賊が嫌いなのか?」

 

「ええ。嫌いよ」

 

ルフィの問い掛けにナミは即答する。

海賊は嫌い――――その言葉は本心だろう。

先程まで手を組もうと持ち掛けてきたのを拒む位なのだから。

 

「そうか。でも、おれの仲間になってくれよ」

 

「話を聞いてた? 私は海賊が嫌いだから仲間にならないって言ってんのよ」

 

「知るか!! おれはお前を航海士にするって決めたんだ!!」

 

「勝手に決めるな!!」

 

ルフィの我が儘は今に始まった事ではないが、それを知らないナミにしてみれば理不尽だろう。

しかも、自分は「海賊が嫌い」と突っ撥ねているのに聞く素振りもない。

馬の耳に念仏を唱えている気分だ。

 

「宝を分けてくれたら考えてあげなくもないわ」

 

「宝なんて持ってないぞ」

 

「その帽子は何かの宝の地図じゃないの?」

 

「これは宝の地図じゃねェよ」

 

ナミはルフィの麦わら帽子に興味を抱く。

さっきの〝宝物〟のワードが大きく関与しているのだろう。

だが残念、彼の麦わら帽子に込められた〝宝物〟は金銭という意味ではない。

 

「これは昔、友達から預かった大切な宝物なんだ!!

 仲間を集めて海賊になる事を、おれはこの帽子に誓った」

 

ルフィの言葉に〝信念〟が宿っていた。

彼にとって、その帽子が如何程に大切なものであるのかは分からない。

けれど、ナミにも譲れないものがある。

 

「海賊海賊って、バカな時代ね」

 

ナミは吐き捨てる。

彼女にとって、今訪れたこの時代が"彼女の人生を狂わせているのだから。"

 

「私が世界で一番嫌いなものはね、海賊なの!!」

 

好きなものはお金とみかん――――そう付け足す。

 

「そうか。そんなに海賊が嫌いなのか」

 

「そうよ。私が手を組みたくないって気持ちも分かってくれたかしら?」

 

「なあ、航海士になってくれよ」

 

「その耳は飾りか!!」

 

どうやら彼は自分の言葉を曲げるつもりはないらしい。

 

「私は海賊の仲間になるつもりは一切無いわ。

 それに仮に海賊になるにしても先約があるの」

 

そう、ナミが仮に海賊をやるとしたらたった1人の所だけだ。

その人物ともしも会えたのならば――――いや、それでも断るかもしれない。

 

「とは言え、それでも海賊にならないかもしれないけど」

 

「どうしてだ? 何かあったのか?」

 

「あんたには関係無いわよ」

 

ナミも自分で意味深な発言をしてしまったなと思いつつ、ルフィの興味を引いてしまった。

これは失敗したなと思い、彼には悟らせないように突き付ける。

 

「言いたくねェのか。それは仕方ねェな」

 

先程からこちらの意見など顧みない傍若無人ぶりな発言が繰り返されていたのに、どうした事か真逆の発言が飛び出した。

これにはナミも意外だと言わざるを得ない。

正直、もっと駄々をこねられるかとばかり思っていたのだから。

 

「へェ、意外ね。ちゃんと気を遣えるんだ?」

 

「失敬だぞ!!」

 

今しがたの彼を見ていれば、ナミの発言も分からないでもない。

それに、別の側面もある。

 

「海賊だから、こっちの意見も聞く耳持たずかと思った。

 ここに居る海賊も他人の迷惑を考えないような奴だし」

 

「この町に海賊が来てるのか?」

 

ナミの発言から同業者が他に来ている事を知らされる。

ルフィの問いに「そうよ」と短く答えると、周囲を見渡すように告げる。

 

「この町には誰も居ないでしょ? それもこれもバギーに近寄ったら何をされるか分からないから隣の町へ避難してるの」

 

「バギー? 誰だ?」

 

ナミがさも当然のように出した名前――――バギー。

ルフィはその人物が何者であるのかを訊ねる。

すると、今度は「嘘でしょ?」と驚く。

 

「あんた、まさかこの辺りに居て〝道化のバギー〟を知らないの?」

 

「知らねェ」

 

ルフィの即答にこれまた呆然とするナミ。

頭が痛いわ――――ルフィにも聞こえるボリュームで額を抑えながら言う。

はたしてナミが悪いのか、無知なルフィが悪いのか。

いや、今はどうでもいいか。

 

「バギーは悪魔の実を食べたって噂の海賊なの」

 

「悪魔の実を?」

 

「そう。悪魔の実なんて噂レベルだけど、多分本当だと思うわ」

 

悪魔の実は噂でしかない。

だが、ナミは悪魔の実の能力者を間近で見た事がある。

 

「子どもの頃に悪魔の実を食べたって子に会ったの。だから、本当だと思ってる」

 

「悪魔の実の能力者かァ〜」

 

ルフィ自身、悪魔の実を食べた能力者である。

だが、他の能力者がどんなものか気になるのは仕方無いだろう。

 

海が弱点ではあるが、そのリスクと引き換えに手に入るとんでも能力。

そのバギーとやらは、一体どんな能力を持っているのか?

 

「じゃあ、さっきのはそのバギーって奴の仲間なのか?」

 

「そうよ。この辺りにはもうバギーの仲間しか居ないの」

 

「へェ〜。じゃあ、あの犬もバギーの仲間なのか?」

 

ルフィが指差す先に店の前に座っている犬が一匹居るではないか。

 

「いえ、あの犬は違うわ。バギー一味に動物は居るけれど、犬じゃないわ」

 

「海賊なのに動物飼ってるのか?」

 

論点が違う気もするが、ともかくとしてバギー達の飼っている犬ではないと言う。

となると、だ。

この店の飼い犬という事になる。

 

「何だこいつ? 動かねェぞ? 生きてるのか?」

 

近付いて犬の頭を軽く叩く。

すると、お返しだと言わんばかりに犬がルフィの手に噛み付いた。

 

「何すんだ。この野郎!!」

 

「ワンワン!!」

 

「あんたは何をやってんの!!」

 

突如として始まったルフィと犬の取っ組み合い。

ナミも思わず声を荒げる。

 

「コラッ!! シュシュをいじめるでない!!」

 

ルフィと犬の取っ組み合いに駆け寄ってきた老人。

見れば甲冑姿ではないか。

 

「誰だ?」

 

「この町の町長、ブードルじゃ!!」

 

「この犬はおっさんの犬か?」

 

「違う。シュシュの主人は亡くなっておるんじゃ。

 この店をこの子に託して、な」

 

なるほど、このシュシュという犬は店番を任された訳だ。

そして、主人の帰りを律儀にも待っている。

 

「話してるところ悪いが、その店に用があるから退いて貰おうか」

 

ルフィ達へ声を掛ける人物が。

そちらを見れば巨大なライオンの上にライオンの着ぐるみのような髪型をした男が居る。

 

「誰だ?」

 

「バギーの一味よ」

 

「バギー船長を知ってるのか?

 おれは猛獣使いのモージ、そしてライオンのリッチーだ」

 

「おれはルフィ。よろしく」

 

「呑気に自己紹介すな!!」

 

ルフィの呑気さに思わず大声でツッコミを入れるナミ。

事態を理解しているのか? 頭の中を覗きたくなる。

 

「うちの仲間が出て行ったっきり戻って来ないから様子を見に来れば、あそこで倒れていたんだが…………何か知っている事があれば話すのが身の為だ」

 

モージの言う仲間とは先程にルフィが殴り倒した相手なのは即座に判明する。

けれども、馬鹿正直に話して見逃してくれるとは思えない。

 

 

 

 

 

「ああ、それやったのおれだ」

 

 

 

 

 

あっさりと、自らの犯行を暴露したのは麦わら帽子を男。

腕を組み、あっけらかんとルフィは答える。

ここに馬鹿正直に答えてしまう者が居た。

 

何を馬鹿正直に答えるのか!?――――ナミが叫ぼうとする。

振り返り、逃げるように促そうとする。

出会い頭にはルフィを囮にしようとした彼女が心配する立場になる等とは、きっと本人が驚いているだろう。

自分はこんなにも他人にお節介な人物ではない事を一番に自覚している。

けれども、そんな自覚は殆ど意味を成さなかった。

 

振り返った直後、ルフィは大きなライオンの前足で住宅に叩き付けられていたのだから。

 

「うちの部下を倒した位で付け上がられるのも困るからな。ここで叩かせて貰おうか」

 

まさか問答無用で攻撃というより、バギー海賊団が下に見られて箔が無いように思われるのが問題なのだろう。

バギー海賊団の恐ろしさを、身に刻め――――そう言いたいのだ。

 

「さて、この店に入るにも入口が狭いな」

 

モージはリッチーに何やら指示を飛ばす。

直後、先程にルフィを殴り飛ばしたように腕を振るうと入口を壊した。

 

「ワンワン!!」

 

それを見たシュシュは果敢にもモージとリッチーへ吠える。

そんな犬の声など聞く耳持たず、悠々と店内へ入るとペットフードをリッチーの背に乗せて出てきた。

それでも尚吠え続けるシュシュ。

 

「全くうるさ……いてぇっ!!」

 

唐突にモージは腕を噛まれる。

主人が噛まれたのを見たリッチーは大きく太い腕で小柄なシュシュを地面へ叩き付ける。

 

シュシュの額が切れて、血が出る。

しかし、それでも懸命に立ち上がってモージへと噛み付こうとする。

ただ、先程は不意討ちで成功しただけ。

モージも身構えていた事もあり、飛び掛かるシュシュを蹴り付ける。

 

「この店が大事ってか? なら、失くなったら未練もなくなるだろ?」

 

不敵な笑みと共にモージはポケットに用意していたマッチに火を点ける。

リッチーに乗せていた松明にもなるだろう木へ火を移し替えると瞬く間に火の勢いは強くなる。

 

「ほら」

 

簡素な言葉で、モージはマッチから始まった火のリレーを次の場所へと放る。

彼が放った先はシュシュが番犬として守ってきた店だ。

 

ゴォォォォォッ!!

 

瞬く間に火は店を丸呑みにした。

ブードルもナミも、一部始終を見ていたが理解が追い付かなかった。

唯一、現実を見ていたシュシュは即座にモージへ飛び掛かる。

 

「いい加減にしろ」

 

無情にもモージはシュシュを蹴り付け、頭を踏み付ける。

 

「シュシュ!!」

 

「待って!! 危ないわよ!!」

 

ブードルが心配して駆け寄ろうとするもナミが制止する。

このままブードルが行ったところで同じ目に遭うだけだ。

気持ちだけではどうにもできない。

自分達には圧倒的に力が不足している。

 

「グゥゥゥッ!!」

 

「海賊に逆らうのなら犬相手でも容赦はしないぞ」

 

足を退けてシュシュを解放する。

否、そんな優しい気持ちなどモージには有りはしない。

 

「やれ」

 

たった一言で場の雰囲気を氷点下にした。

ただただ冷たい、無情を行動ではなくて言葉で伝える。

呼応するのは相棒のリッチー。

前足を振り上げ、シュシュめがけて振り下ろそうとする。

 

「止めんか!!」

 

これ以上は見ていられないと、ブードルが飛び出す。

 

 

 

 

 

直後、リッチーは真横から飛来した“何か”に直撃して吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

何が起きたのかまるで理解が追い付かない。

現実を直視したのはリッチーである。

吹き飛ばされた先は放火した店。

そこへ飛び込んでしまうという事は、火の中に飛び込んでしまうと同義。

 

「グルォォォォォッ!?」

 

全身に火が回り、コンクリートの床に転がり回る。

何とか火を鎮火させようと本能が行動を起こしていた。

火はすぐに収まるが、それで力尽きたのか気絶している。

 

「リッチー!? 何が…………っ!?」

 

リッチーに気を取られ、飛来して来た“何か”を見落としていた。

方角的に先程吹き飛ばした男なのは間違い無い。

彼が何かを投擲してきた――――いや、それよりも生きていた事に驚きを隠せない。

この町にはブードルとナミ以外の町人が居ない事は確認済みなのだから。

 

「この犬頼む」

 

先程まで犬が居た場所、そこに今さっきリッチーの――――ライオンの腕力を以て吹き飛ばされた筈の男が立っていた。

地に伏せた犬を後ろの2人に任せ、男はモージへと歩み寄る。

 

その表情は麦わら帽子の鍔で良く見えない。

けれど、彼の放った静かな声音とは裏腹の怒りの感情が受け取れた。

その上、指を鳴らした後に拳を固く握り込む。

 

無意識の内にモージは後退る。

どんな手品を使ったのか知らないが、人一人を乗せる巨体を持つリッチーを吹き飛ばしたのだ。

しかも見たことのない、得体の知れない男が起こしたと考えれば恐怖を抱くのも無理ない話。

本能が「この男は危険だ」と告げている。

 

「まっ、待ってくれ。殴った事は謝るから!! 宝もくれてやるから!!」

 

「そんなもの、どうでもいい」

 

モージの口から出た命乞いは一蹴される。

謝罪など、宝など要らない。

自分の事など“今はどうでもいい。”

“そんな事では決して許されない事をモージは行ったのだ。”

 

「この犬の〝宝物〟はもう返ってこないんだ」

 

火の勢いは消えつつある。

しかし、だ。

火が消えたとして、“彼”の〝宝物〟はこの世から消え去った。

例え、同じものを用意しても見た目だけの張りぼてでしかない。

 

「身体を張ってでも守りたかったものを簡単に燃やしたお前をぶっ飛ばす事がこの犬には出来ない」

 

そして、麦わら帽子の男はモージの襟首を掴む為に“腕を伸ばした。”

 

「こ、これは!? バギー船長と同――――」

 

言葉は紡がれなかった。

次の瞬間、真正面の男の怒りに満ちた表情が視界に入ったから。

 

「だから、代わりにおれがお前をぶっ飛ばす!!」

 

伸ばされた腕が引き戻される。

もう片方の固く握り込まれた鉄拳がモージの脳天へ叩き込まれ、その勢いのままにアスファルトに顔面を打ち付け――――モージの意識は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

「す、すごい」

 

一方的にモージを圧倒したルフィの強さを改めて実感した。

シュシュに気を取られ、気付けばモージを殴り付けるシーンしか見ていなかったが、彼の強さは本物である事を把握する。

気絶させたモージはいつの間にか来ていた部下(恐らくはルフィが殴り飛ばした面々)が連れて帰って行った。

 

「悪いなこれしか取り返せなかった」

 

彼らの事など、目にも付けない。

ルフィはシュシュへモージが持っていこうとしたペットフードを渡していた。

先程まで取っ組み合いをしていたのに、対等な男として見ているようだ。

 

「あれ? おっさんは?」

 

シュシュと話をしていたルフィはこちらを振り返る。

気付けばブードルは居なくなっていた。

 

「もしかして、バギーのところに?」

 

これ以上の事は見過ごせないとでも思ったのか、ブードルは恐らく飛び出していったのだ。

 

「よう、ルフィ」

 

「ゾロ!!」

 

ルフィに声を掛ける男性――――今、ゾロと呼ばなかったか?

 

「〝海賊狩り〟のゾロ?」

 

「悪いが〝海賊狩り〟は引退した。

 今は海賊をやってる」

 

どうやら、本物らしい。

けれど、恐らくはルフィと共に海賊をやっている。

 

「これからバギーって奴のところに行こうとしてたんだが、案内役に逃げられたがどうやら先に合流出来たみたいだ」

 

「ああ、でもおれもこれからバギーって奴のところに行くつもりだった」

 

海賊を名乗るルフィが同業の下へ赴く。

同盟を結ぶとは考えにくい。

正直、考えられるのは…………

 

「バギーと戦うつもり?」

 

「ああ」

 

まるで当然のようにナミの問いに頷く。

しかし、それは危険すぎる内容でもある。

何故か、理由を問おうとして――

 

「あの犬の為?」

 

「ああ。友達だからな」

 

あっさりと告げた内容、しかしながらナミには仰天する以外の言葉が出なかった。

海賊同士の戦いの理由が「友達の為」だと言い出す。

 

馬鹿馬鹿しく思い、けれども彼の思考を先読み出来てしまった自分も居た。

不思議で仕方ない。

けれども、分かってしまったのだから仕方ない。

 

「それにどのみち、いつかは戦う事になるんだ。

 早いか遅いか、それだけだ」

 

偉大なる航路(グランドライン)〟の地図を持つなら目指す先は同じだ。

今ぶつかる――――それだけの事だ。

 

「了解。なら、乗り込むとするか」

 

ゾロも乗り気の様子だ。

それを見たナミは「呆れた」と呟く。

 

けれど、不思議と何とかなるとも内心で思ったのは…………秘密だ。




如何でしたでしょうか?

原作との相違点は、
・ナミとの外での会話が長くなって、ブードルと先に出会う。
・バギーとはこれから会う。

といったところです。

ルフィは何となく野生の勘でナミの事を覚えているという感じです。
ナミの方は覚えていないようにも見えますが果たして?


モージとの戦闘は間近でしたが、腕を伸ばしたところは見てません。
まだゴム人間だとは気付いていません。

ちょっと駆け足気味の展開ですが、次回をお待ちください。
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