では、続きをどうぞ。
〝運命〟というのはもしかしたら簡単な事で変わってしまうものなのかもしれない。
これまでとは異なる事が起きれば、歴史を変えるのは可能なのかもしれない。
だが、それは絶対に可能とは言えないものであるし、変えたとしても本人達は何も知らないかもしれない。
しかしながら、大小様々ななれど、予想外というのは"この時点で起きていたのかもしれない。"
そうこの物語は輪廻転生を繰り返した“それ”が引き起こした奇跡の物語なのかもしれない。
あまりに僻地であるが為にゴア王国の中央部から忘れられているのだが…………今はその話は置いておこう。
そのフーシャ村の港に船が停泊している。
左目に三本線の入ったドクロマークを掲げた船――――海賊船である。
時刻は早朝。
粗暴なイメージしかない海賊船に似つかわない子どもが勝手知ったる我が家も同然に乗り込んでいた。
黒髪黒目の年端も行かぬ少年――――名を『モンキー・D・ルフィ』と言う。
彼は海賊達の寝静まる船で何かを探していた。
その目当てのものは時間を掛けずに見付かった。
「おっ、あったあった!!」
発見したのはナイフだ。
ルフィにはこのナイフが必要であった。
その為にわざわざ朝早くから海賊船へ出向いたのだから。
「今日こそ航海へ連れてって貰うんだ!!」
ルフィは海賊に憧れた。
より正確には“この海賊船の面々と触れ合った事で憧れるようになった。”
彼は常々に〝自由〟という不可視の概念に憧れた。
無論、このフーシャ村が嫌いだとかそういう意味ではない。
この村には好きな人はたくさん居る。
けれど、それだけではつまらない。
ルフィは1つの処に留まるのが苦手で、自由奔放に走り回る。
そんな時、この海賊船がフーシャ村を訪れた。
当初はルフィも海賊という事で警戒心は高かった。
彼の祖父が海軍の海兵なのもあり、「海賊=悪者」の図式が出来上がっていた。
けれど、この船の海賊達はそんな図式を瞬く間に壊した。
海賊達が来訪してから一カ月も経つ頃にはルフィを始めとして、村の面々も彼らを歓迎という形で受け入れた。
その海賊達との触れ合う事でルフィが心酔してしまう程に、憧れを持たせる程に――――。
何度も航海へ連れてって欲しいとこの〝赤髪海賊団〟の船長である『シャンクス』にお願いした。
けれど返事は決まって「駄目だ。血の気の多いおまえは乗せない」との事である。
どうすれば良いのかルフィには分からない。
次に考えたのが「海賊=戦う」という方程式だ。
ならば、怪我をしても平気な姿を見せれば船に乗せてくれるのでは? と、幼いながらに結論に達する。
「おれが遊び半分じゃないのを見せるんだ」
この思い付きは本日の夢でのアイディアだ。
これは天啓を受けて即実行に移す。
ルフィは早朝の内に船へやってきた。
昨夜もどんちゃん騒ぎをしていたからまだ誰も起きていない。
適当な刃物でも見付けて、自分の〝覚悟〟を見せてやろう。
ルフィは見付けたナイフを手にこの船の主の眠る部屋へ忍び込む。
「シャンクス!! 起きてくれ!!」
「んー、ルフィか? まだ眠いから寝かせてくれ」
ベッドで眠るシャンクスはルフィの大声という目覚ましを止めてくれるよう言葉短く告げる。
早朝というのもあるだろう。
けれどルフィは知っている。
昨夜、この海賊達は酒場で酒を飲みすぎたのだ。
そのどんちゃん騒ぎの結果、恐らくは全員が二日酔いとなった。
こういう時、どうあっても彼が起きないのはルフィも承知していたので渋々と引き下がる。
部屋を出ようとして――――ふと、部屋のテーブルへ目が行く。
そこには彼が被っている麦わら帽子、それと小さな木製の宝箱がある。
麦わら帽子はいつもの事なので気にはならない。
けれど、この宝箱には何が入っているのか?
興味本位でルフィは宝箱を開く。
中にあるのは果実であった。
青い、不思議な見た目をした果実。
村の果物屋にも売っていない珍しい果実だ。
航海中に手に入れた果物なのか?
シャンクスは夜食にでもこっそり食べようと宝箱に偽装して食料室から持ってきたに違いない。
朝から来たので空きっ腹であったので朝飯代わりに丁度良いと興味を引いた“それ”をルフィは無意識の内に持ち上げ、かじる。
「うぇぇぇっ、まずぅっ!?」
何とも不思議な味だ。
食べきったのが不思議な位だ。
宝箱の蓋を閉め、ルフィはシャンクス達が起きるのを待とう。
ルフィは船長室を後にした。
場所は村の酒場へと移される。
そこでは先程の海賊達がどんちゃん騒ぎをしていた。
結局ルフィは持ち出したナイフを左目の下へ浅く突き刺した。
当然「いてぇっ!!」と叫び、そのまま手当てされる。
その足で酒場まで来た訳だ。
今回の祝杯の理由はルフィの無茶な行動を祝っての事らしい。
無茶苦茶な理由付けではあるが、とにかく騒げれば何でも良かったのだ。
「あーっ!! 痛くなかった」
「嘘つけ!!」
痛みはまだ引かないのか、涙目になりながらルフィは言う。
先程まで痛みを訴えていた少年を思い出すと説得力は皆無であった。
「おれは怪我するのだって全然恐くないんだ!! だから次の航海に連れてってくれよ!! おれだって海賊になりたいんだ!!」
「お前には無理だ。カナヅチだったら尚の事、海の上では致命的だ」
ルフィの決死の行動も虚しく、シャンクスはルフィの動向を一刀両断する。
「ケチ!!」
「まあ、そう言うなルフィ。あいつはお前の心配をしてるんだ。海は楽しいだけじゃなくて辛い事、過酷な事も起こるからな」
「本当かー? からかって楽しんでるだけだろ?」
シャンクスの肩を持つのは〝赤髪海賊団〟副船長の『ベン・ベックマン』だ。
煙草を口に咥え、如何にも「大人な男性」と言える。
「やーい、カナヅチ〜」
「ほら」
「まあ、うん」
船長をフォローしたつもりが、残念な事にシャンクス自身が無駄にしてしまう。
しかもルフィが気にしてる事を平然と言うのだから困ったものだ。
「ほらルフィ。これを飲んで機嫌を直して」
酒場の女店主の『マキノ』がルフィへジョッキに注いだジュースを渡す。
「ありがとうマキノ」
「お前、金がねえだろ」
「だから〝宝払い〟だ。将来すっげえ宝を見付けて持ってくるんだ」
「お前なあ、それは詐欺も同然だぞ」
ルフィの中では海へ出るのは決定事項らしい。
シャンクスは「はあ」と溜め息を吐きながら現実を叩き付ける。
「ったく、そもそも子どものお前が海へ出て戦える訳が無いだろ?」
「そんなことねェ!! 鍛えてるおれのパンチは
「へぇ、
ルフィが意気揚々と告げるも、シャンクスは当然ながら「子どもの言う事」と取り合わない。
ベックマンの言葉を借りるならルフィに海の過酷さを伝える為だと言う。
「ルフィってば、またシャンクスを困らせてる」
そこへ割って入るのはルフィより2つ上の少女『ウタ』だ。
右側の髪が赤く、左側の髪が白い。
左目が隠れる程に左の前髪は伸ばしており、それぞれ左右の後ろを輪っかにして纏めている。
耳にはヘッドセットのようなものが付けられている。
〝赤髪海賊団〟音楽家――――それが彼女の肩書だ。
そして船長のシャンクスの娘だと言う
「いい加減に諦めたら?」
「嫌だ!! 諦めねェ!!」
ウタに言われて引き下がるなら苦労はない。
短い時間だが、この少年が簡単に引き下がらない事をウタは理解していた。
「私に勝てない癖に良く言うわよね」
「何を〜!! おれは負けてないだろ!!」
ウタの挑発にルフィは簡単に乗っかる。
「なら、勝負しましょう」
「おう!! 望むところだ!!」
そう言うと2人は勢い良く店の外ヘ。
始まったのはチキンレース。
テーブルの上に3本のチキンと飲み物がある。
これを食べきった方の勝ち。
食べ切る前に後ろに置いた猛犬に体当たりされたら負けである。
マキノが「危ないから止めなさい」と言うも、2人は「嫌だ」と口を揃えて返した。
シャンクスはと言えば「やらせてやれ」と肯定的だ。
それを受けて2人は勝負を開始する。
ルフィが優勢で進むが、ウタが自分のジュースを渡す。
それを飲んでる隙にウタはチキンを食べきってその場から逃げる。
一方のルフィはと言えば、猛犬に後ろから衝突され吹き飛ぶ。
「この勝負、ウタの勝ちだな」
〝赤髪海賊団〟コックの『ラッキー・ルウ』が宣言する。
随分と太った眼鏡を掛けた男が勝利の宣言と同時にルフィは起き上がる。
「ずるいぞ!! ウタ!!」
「海賊の勝負なら卑怯も何も無いわ。負けを認めなさい」
「おれは負けてねェ!!」
「出た。負け惜しみ〜」
両手を挙げながら指を閉じて開いてを繰り返しながらウタは告げる。
「それよりルフィ。大丈夫なの? 痛かったんじゃないの?」
「ん? あれ? そういえば全然痛くねえな」
何でだ? マキノに問われた筈のルフィの方が首を傾げる。
聞きたいのはこちらの方なのだが――――
「強がり言っちゃってぇ~」
「強がりじゃねえぞ!!」
「へえ、強がりじゃないなら証明してみせてよ」
「望むところだ!! 勝負だ!!」
ルフィとウタは両腕をグルグルと回し始める。
勢いを付けてパンチでも繰り出そうとしているところに――
「いい加減にしろ」
2人がまたも喧嘩を勃発しようとした時、両者へ拳骨――――もとい、剣の柄を叩き込む。
「いったぁ〜」
「何かしたのか? シャンクス?」
痛がるウタ、対してルフィはまたも首を傾げる。
何が起きたのか本当に理解していない様子だ。
もちろんながら手加減はしている。
なのに痛みが無いとルフィは言う。
この少年は良くも悪くも素直な性格をしている。
故に、この発言は強がりでも何でもない。
ナイフを刺した時には痛がったのだから。
「む〜。何もないなんておかしいぞ!!」
「だってよ、痛くねぇんだからしょうがねェだろ?」
「強がりは言わない」
ウタはルフィの頬を左右へ強く引っ張る。
そんな口はいたずらしてやろう――――そんな軽い気持ちだった。
次の瞬間、ルフィの頬があり得ない位に伸びた。
「えっ!?」
「「「はあああああっ!?」」」
「何だこりゃあああああーーーーっ!?」
海賊団の面々も含め、ルフィ自身も驚きを隠せない。
一体全体何がどうなっている?
驚きのあまり、引っ張っていた手をウタが放す。
すると、ルフィの頬は元に戻る。
だが、先程の奇妙な現象は錯覚などではない。
その事はこの場の、特に赤髪海賊団の面々は知っていた。
「まさか!!」
シャンクスは肌身離さずにいた木箱を開ける。
そこに入っていた果実は空っぽであった。
「おい!! ルフィ!! まさかとは思うが、この箱に入ってた果物を食べたんじゃないか!?」
「う、うん。何か大事そうにしてたから美味しいのかなって」
ルフィは包み隠さずに返答する。
その受け答えに更にシャンクス達は頭を悩ませる。
しかし、伝えなければならない。
「お前が食べたのは〝悪魔の実〟って呼ばれる海の秘宝だ!!」
「悪魔の実って、良くシャンクス達が言ってた?」
色んな能力を得られるという摩訶不思議な果実。
人智を超えた能力を授かる代わりに一生泳げない身体になってしまう。
ルフィはそれを食べてしまったのだ。
「お前が食べたのは〝ゴムゴムの実〟だ。全身ゴム人間になって、一生泳げなくなる!!」
一拍、二拍、その後にルフィはシャンクスの言う事を理解して――――
「うそぉぉぉぉぉーーーーっ!?」
「ばかやろぉぉぉぉぉーーーーっ!!」
摩訶不思議なゴム人間となってしまったルフィと保管していたシャンクスの叫びが村中に響くのであった。
しかし、これは〝運命〟が動き出した瞬間でもあった。
“これまでとは全く異なる運命を”
如何でしたでしょうか?
原作であった怪我する部分を文章でサラッと流す事に。
原作とのおおまかな相違点として
・シャンクスと出会って1ヶ月程で原作1話冒頭の展開をする。
・悪魔の実を食べるタイミングが変わる。
ルフィが何処に住んでるのかわからず、短剣を何処から持ってきたのか気になったのでシャンクスの船から拝借した事にしました。
映画連動シリーズのアニメでマキノの酒場へ訪れる描写があったので、何処かに住んでるのでしょうけど分からなかったので。
作者は単行本で読んではいないので、SBS等で情報が出ていれば教えて頂けると幸いです。
ちなみにシャンクスが悪魔の実が無くなってる事に気付かなかったのは二日酔い手前で起こされて寝ぼけ半分でろくに確認せずに外へ出たからです。
あとはREDの時系列での変更点でウタがまだ居ます。
映画までの下準備があったとはいえウタは凄い人気ですね。
作者もルフィとの絡みを見ていて普段は見れないルフィの表情を引き出していて気に入りました。
最期の生死は不明ですが、後者の説が濃厚なのが残念です。
後者の説が濃厚でも何かしらの形で再登場したらそれはもう嬉しさ爆発は間違い無いです。
ウタについて話していると長くなりそうなのでこの辺りで。
では、また次回に。