実は先々月程に怪我をしてしまいまして、投稿が遅れました。
今は殆ど回復しているのでゆったりまったりと書いていきます。
ではでは、続きをどうぞ。
海賊船 ゴーイングメリー号が誕生し、ルフィ達の航海も以前よりも快適なものとなった。
ただ、船の扱いに長けた者がナミしか居ないという大問題もあった。
とりあえずはナミが毎度指示を出す事で大きな被害に遭った試しはない。
「コックを仲間にしよう!!」
ある日、突如として提案したのはルフィだった。
曰く、旅はまだ続くのだからコックは必要不可欠な能力だ。
ナミも料理は出来るものの、やはり専門家には劣る。
食材の管理、配分といった事柄も必要となるのだから。
ルフィの食い意地の張った意見かとも思ったが、なかなか核心を突く。
「何でまた急に」
「この前の島で会ったおっさんのおでんが美味かったからな。それで思い付いた」
先日にウーナンという海賊を探すおでん屋を営む祖父の岩蔵と孫のトビオと出会った。
何でも岩蔵は彼におでんを食わせたいという変わった目的で探しているようだ。
ウーナンは黄金を集めており、何処かの島に隠したという噂が流れる。
黄金もだが、ウーナンを仲間にしたいとルフィ達も探す事になる。
同じ時期にウーナンの黄金を探しているというエルドラゴと激突する。
結果的にウーナンは故人となっており、おでんを食わせる事はできなかった。
だが、岩蔵とウーナンにしか分からない“何か”があって一応の終着点は見えた。
そんな一幕があった訳だが、ルフィはその時に食べたおでんの味が忘れられない。
おでんだけで言うなら世界一と評しても過言ではない程の出来だった。
岩蔵作のおでんは置いておいても、この先コックの能力は必要不可欠だ。
何せここの船長の胃袋は凄まじく、放っておくと食料を尽きさせてしまう。
他のメンバーも異論はないようだ。
しかしながらそう都合良く料理人が見付かるだろうか?
仲間になるかどうかも不明であるし、有言実行が可能なのかは難しいとナミは判断していた。
結論から述べよう。
その都合の良い事は起きた。
航海の最中にヨサクとジョニーというゾロの顔馴染みの賞金稼ぎに出会った。
彼等の話でこの先に〝バラティエ〟という海上レストランがあるとの事だ。
平たく言えば店が船のレストランだ。
そこには“訳あり”のコック達が働いている。
その“訳あり”には元々海賊だったりと、チンピラ上がりの面々が働いている。
ルフィも食事をすると同時にコックを仲間にしようと言い出した。
こうなっては仕方無いと進路をバラティエへ定めた。
無事にバラティエに到着――――とはならなかった。
途中、海軍が砲撃をしてきた。
ルフィがお得意の〝ゴムゴムの風船〟で跳ね返したまでは良かった。
跳ね返した先がバラティエの、しかも店長である人物の部屋だったの言うのだから大問題だった。
バラティエは二階建ての船で、お客の方には何の問題も無さそうだ。
しかしながら、店長の部屋は外から丸見えな程に大穴が出来上がった。
ルフィは「謝ってくる!!」とバラティエへ突撃していった。
「海軍のせいにしちゃえば良かったのに…………バカ正直なんだから」
わざわざ被害を出した相手に謝罪へ赴く海賊が居てたまるかと声を大にしたい。
最終的にルフィに非があったとして、要因の1つは間違い無く海軍にもある。
ただ、海賊旗を見て攻撃を仕掛けたともなると海軍側の意見が成立しそうなのが腹立たしい。
海賊と海軍を比較したらどちらの方の意見を鵜呑みにするのかは火を見るよりも明らかだ。
それでも逃走する選択肢もあったのだが、ルフィの辞書には「逃げる」の文字は無いようだ。
「タダ働きでもさせられるか? 1ヶ月くらい」
「料理食べに行きがてら見に行こうぜ」
「そうね」
全会一致で海上レストラン バラティエへ行く事に。
食事に有り付く事も然ることながら、“あの”ルフィの働きっぷりが如何程のものか気になる。
失礼を承知で言うが、まともに働く姿が思い浮かばない。
皿洗い等の雑用を言い渡されたとして、皿を割っていそうだ。
ウェイターをやらせても注文した料理を勝手に食べてしまいそうだ。
どれだけの騒ぎになっているか、野次馬根性丸出しでバラティエへと赴く。
「おい!! 雑用!! 1番テーブルに運べ!!」
「雑用、客が来たぞ!! 空いてるテーブルに案内しろ!!」
「終わったら裏で皿洗い頼むぞ雑用!!」
店内へ赴いたゾロ、ナミ、ウソップ。
雑用と呼ばれるルフィがどれだけ他人に迷惑を掛けているのかと思いつつ、入店した。
どうせルフィの事だからろくに仕事も出来ないだろうと高を括っていた。
その想像を遥かに上回る働きっぷりをルフィは見せていた。
「ルフィが働けてる!?」
「ウソッ!? 信じられない……」
「意外なもんだな」
ウソップとナミが驚きに目を見開かせ、ゾロは感心している。
注文を取りに行き、料理の運搬も行えている。
正直、他人の料理を食べてしまいそうな程に食い意地の張った彼を知る身としては信じ難い光景だ。
「注文良いですか?」
「おう。良いぞ」
おおよそ店員とは思えない言動をしながらルフィはお客へ近付く。
メニューとにらめっこしながら注文を続けていくお客。
「これとか美味かったから食ってみろよ!!」
「そんなに美味しいのかい? それならこれも追加で頼もう」
唾液が出そうな程に舌を伸ばし、幸せそうな顔で告げるルフィ。
オーダーを取っている店員がオススメの料理を伝える事はあるが、まさかルフィまでその手法を取るとは思わなかった。
ルフィの表情からお客も注文をする事を決意している。
それだけ美味しそうな表情を作っていれば気になるのも致し方無い。
まるで今さっき食べてきたばかりの生の感想のようで、お客にとっても興味を惹かれる。
実際、さっき裏で食べていたので正確なのは間違い無い訳なのだが。
彼の美味しそうな表情に釣られ、追加注文をする客が後を絶たない。
「よう!! お前ら!!」
着席しているゾロ達に気付くと、ルフィはメモ帳を持って近付いてくる。
いつもの格好にエプロンを着用している。
「何というか、意外だったわ」
「何がだ?」
近付いたルフィへの開口一番がそれだった。
当の張本人はと言えば、投げ掛けられた言葉に首を傾げるのみ。
「おまえがレストランの仕事が出来てる事に驚いてるんだよ」
「昔どっちが店の手伝いをできるのかって勝負をしたからな。その時に覚えたんだ」
店の手伝いが勝負になるのだろうか、果たして結果をどう決めるのかという疑問はさておき、ルフィの意外過ぎる一面を見た気がする。
「それより、何を食うんだ?」
ルフィは気を取り直し、料理の注文を行う。
彼の意外な特技に面食らいつつも、メニューとにらめっこし始めるのだった。
ルフィが仕事をしている間も食事を続けていた。
しばらくすると休憩にでも入ったのか、こちらへ近付いて来た。
その時の彼は笑顔で、何か良い事があったのを示唆している。
話を聞くと――――
「良いコックを見付けたんだ」
ししし――――そう笑いながらルフィは告げる。
確かに麦わらの一味にとっても必要不可欠な役職である。
連れて行くか否かの最終決定権はルフィにある。
彼のお眼鏡にかなうとは――――運が良いのか悪いのか。
「っで? そいつは仲間になるのか?」
「おう。仲間なってくれたんだ」
「勝手に仲間にしてんじゃねェよ」
ルフィのお眼鏡にかなった人物がこの場に現れる。
髪は金髪。前髪を長く伸ばし、左目を隠している。
眉毛は右は眉尻が渦状にカールを描いており、薄っすらと顎髭を蓄えている黒いダブルスーツに黒革靴を履いたフォーマルな出で立ちのこの船では若い男だ。
「私は副店長のサンジです。お近づきの印に、私からのサービスです」
「あら、ありがとう」
「おい!! こっちには何も無しか!!」
「何事もレディ優先だ」
傍目から見ても分かりやすい程に女性贔屓している。
この一味の紅一点のナミにデレデレしており、ウソップから言われるも何処吹く風と相手にもしない。
この後にサンジのデレデレした姿に呆れたバラティエのオーナーであるゼフが「いっそ海賊になっちまえ」と言っていた。
しかし、辞めるつもりはないとサンジは宣言する。
先程まで女性にデレデレしていた彼と同一人物なのかと疑ってしまう。
彼とゼフの間に何かあったと考えるのが必然であろう。
「何か知んねェけど、色々あんだなァ…………もぐもぐ」
「コラァッ!! おれの分を勝手に食ってんじゃねェよ!!」
客に出した筈の料理をルフィは手掴みでワイルドに食べる。
被害者のウソップは文句を言い付ける。
「そういや、海軍に捕まってた海賊がここへ逃げたとか聞いたな」
ゾロが割り込む形でルフィに聞く。
それを受けて「ああ」と端的に答えて頷く。
「さっきの奴が飯を食わせてやってたんだ」
「なるほどな」
この船長はそのシーンを見ただけでサンジとやらに惚れ込んで勧誘したのだ。
見たところ、本人は拒否しているみたいだが。
まあ、我が儘が服を着ているような少年に対して言ったところで聞く耳持たずだろう。
そう呆れている時だった。
「ここか? 飯を食わせてくれるって店は?」
そこへ入店した2人の男だ。
バンダナをした小柄な男と金色の鎧を纏う大男。
大男の方が小柄な男に肩を貸してもらいながらようやく歩いている状態だ。
「あいつ、さっきの」
「ギン…………そいつがクリークって奴か」
小柄な男――――ギンは先程にバラティエへ来ていた。
食事を所望したが、ギンが悪名高い海賊の一員だった事から追い出される結果に。
その後に裏でサンジから食事を提供され、ルフィがそれを見て気に入ったという流れがあったりする。
話を戻すと、ギンはクリークという男が船長を率いる海賊団の一員だった。
クリークは金色の鎧を纏う大男である。
しかし、随分と弱っているのが様子から見て取れる。
クリークの出現は誰も好意的に捉える訳がない。
弱っているのであれば、この場で仕留めて海軍へ引き渡した方が利口――――――だというのに、
「食え」
そんな思考へ至る筈なのに、それを蹴飛ばしてクリークの前へ食事を運んだのは件のサンジだった。
結果、バラティエの面々から顰蹙を買い、更にはクリークからは食事の礼とばかりにラリアットを喰らわされる始末だ。
「良い船だな。おれが貰おう」
不敵に笑いながらクリークは告げる。
その様子を見て、バラティエの面々の怒りは頂点に達した。
各々武器を取り、クリークへと突撃していく。
「そんな兵力で勝てると思うな!!」
金色の鎧の隙間から銃口が覗く。
直後、弾丸の雨が横殴りにバラティエのメンバーへ襲い掛かる。
致命傷こそ無かったが、それでもまともに動ける程に軽くもない。
「ったく、船を寄越せとか言う癖に店内で暴れてるんじゃねェよ」
そう言いながら“何か”をクリークの前へ放り投げられる。
行ったのはバラティエの店長のゼフだ。
「ほれ、持ってけ。〝
放り投げたのは袋。
それも身の丈を超える程の量の入ったものだった。
そんな店長の行動に面喰らったのはサンジ以外のバラティエの面々だった。
何故、そのような真似をするのか…………理由は不明だった。
だから、店員はゼフへと問い掛ける。
「ゼフ…………だと?」
目前のクリークは「ゼフ」の名に反応した。
その理由は、簡単に言うならゼフはかつて〝
「この船を頂くだけのつもりだったが、おまえが居るなら話は変わる。
〝
クリークは50隻の船と5000の兵力を有する海賊艦隊の提督だ。
これは〝
それだけの勢力であるならば〝
彼は〝
「兵力は足りていた。だが、圧倒的に〝情報〟が足りていなかった」
それこそが敗走の原因であると分析する。
未知への対処をする為にも〝
「渡すつもりはない。あれはおれと仲間達をわかつ誇りだ。
おまえに渡すには少々重すぎる」
「なら、奪うまでだ」
渡すつもりがないのであれば実力行使に出るまで。
海賊らしい思考回路だ。
そんな暴論をバラティエの面々が許す筈もない。
確かに返り討ちにあいこそしたが、この場所を譲る気など毛頭ないのだから。
彼らの選択肢はただ1つ――――戦う、それだけだ。
「確かに〝
〝
だが、言い換えるならばクリークは〝
「この船を足掛かりに兵力を整え、再び〝
そして、このおれが〝
「ちょっと待て!! 海賊王になるのはおれだ!!!!」
クリークの宣言に水を掛けるように割って入る声があった。
前へ躍り出たのはルフィである。
「お、おい……」
バラティエの面々が引くように言う。
しかし、ルフィは首を横に振る。
「引けないねェ。ここだけは」
クリークを眼前にし、尚もルフィの答えは揺るがない。
両者互いに目を逸らさない。
睨み合いの膠着状態だったが――――
「何だルフィ、戦闘か? 手を貸すぜ」
まだ席に着いていたゾロが横から訊ねる。
ウソップも何食わぬ顔で居るが、ゾロが発言する直前に「止めておこうぜ」と小声で言っていたので内心でビビり散らかしている。
ナミの姿が見当たらないが、恐らくは船に戻ったのだろう。
「ゾロ、ウソップ、居たのか。良いよ、手ェ出さなくて」
クリークとは同じ目標を持つ者同士。
いずれはぶつかる相手であるのならば、彼とはルフィ自身が戦うべきだと判断した。
「それがおまえの仲間か? 随分とささやかだな?」
「何言ってんだ!! あと2人居る!!」
「それ、おれを入れてるだろ」
ルフィの発言に勝手に仲間にされているサンジは物申す。
ここには居ないがナミも聞いていれば「手を組んでいるだけで仲間じゃないわよ」と言いそうだ。
「5000で挑んでも〝
たった5人で越えられると思っているのか?」
「何とかなるんじゃねェか?」
「呑気だな。あと、おまえもおれを勝手に頭数に入れてるんじゃねェよ」
先程から否定しているというのに敵側のクリークからもサンジはルフィの仲間にカウントされている。
こんな不条理が許されてたまるかと抗議の声を上げるも誰も取り合ってくれない。
ルフィの楽観的な考えは分からないでもないが、きっと仲間になった日には苦労する未来が見えた。
「まあ、おれの言う事を聞かないのも織り込み済みだ。
考える時間を与えてやりたかったが…………そうもいかなくなったんでな」
「まさか、〝
「ああ。部下を乗せた船がここへ到着する」
クリークの起こそうとしている事に真っ先に気が付いたギンはクリークへ訊ねると、既に行動に移していた事が判明する。
こうなる事はギンからバラティエの特徴を聞いた時点で察していたようだ。
だから、交渉とは裏腹に最初から戦闘態勢を整えていたという訳だ。
「おれの船ももう限界が近くてな。悪いが、さっさと奪わせて貰おうか」
バラティエの扉越し、そこから巨大な船が見えた。
あれがクリークの船だと把握するのに考える時間は不要だ。
「行くぞギン」
「待て!! 逃げんのか!!」
「慌てるな。戦うのにも準備ってものがある。おまえらを潰す為の武器を用意してきてやるから待っていろ」
クリークは万全の状態で戦いを挑む。
その為にも一時、船へ戻って態勢を整える必要性があった。
ギンとクリークは乗ってきただろう小船へと乗り込む。
戦力が無いと言うなら止めるのは今――――なのだが、残念な事に悲しいかなバラティエの面々では実力不足も相まって深追いできない。
そうでなくてもゼフが止めているので動けないのだが。
しかしながら、数の上では圧倒的に負けている。
このまま敵が雪崩れ込んで来れば敗北は濃厚だ。
クリークが船へ戻っていくのを黙って指を加えて見ていた――――その最中だった。
クリークの巨大な船が真ん中から真っ二つに割れたのだ。
ドッバァァァンッ!!
凄まじい轟音と共にかつて船だったものが数多の木片へと変貌を遂げる。
クリークは船の老朽化を疑ったが、そんな割れ方ではない。
クリークの船員は壊れた木片に捕まり、全員無事だ。
まるで何者かの手によって船が割られたかのような…………
「うわぁっ!?」
船が割れた余波で大きな波が発生する。
それはバラティエの船体をも大きく揺らすものだった。
「今の内に客を裏口へ案内して避難させとけ」
「は、はい!!」
客はまだ残っている。
避難させるようにゼフが指示を飛ばす。
「ルフィ、あいつらと一戦交えるんだろ?」
「ああ、どうせいつかはぶつかるんだ。遅いか早いかだしな」
「よし!! おまえらに任せた!! おれは援護に回る!!」
既に臨戦態勢のルフィとゾロは船外へ出る。
続いてウソップが足を震わせながら良いポジションを確保する。
木片が散らばった結果、海上に数多くの足場が用意されている。
〝悪魔の実〟の能力者であるルフィでも十分に戦えるだろう。
「ゾ、ゾロの兄貴!! ルフィの兄貴!! ウソップの兄貴も!!」
バラティエの真下、何故か小船に乗るヨサクとジョニーがそこには居た。
彼らはゴーイングメリー号に乗っていた筈なのだが…………どうしてここへ? それも小船に?
その疑問は彼らの放った一言で判明する。
「ナミの姉貴が船を奪って何処かに行ってしまいました!!」
「「「な、何だってェーーーーーーッ!!!!」」」
この状況、どさくさに紛れてナミはとんでもない事をしていた。
確かに彼女は手を組んでいる間柄だと再三告げていた。
ルフィは既に仲間意識で居たようだが、やはり彼女の方は別だった。
「おい、ゾロ、ウソップ。ナミを追ってくれ」
「放っておけよ」
「いや、メリー号は返して貰わなきゃだろ」
ルフィは即座に追うように指示を飛ばすも、ゾロはそれを拒否する。
横でウソップが言っているが、それもその通りだ。
ナミの行為は明らかに裏切り行為だ。
手を組むと言う関係性ではあっても、この行動は見限っても仕方の無い行動。
それなのに彼女の為に動く道理はないとゾロは主張する。
「おれはあいつが航海士じゃないと、嫌だ!!」
しかし、ルフィの理由はシンプルなものだった。
彼の航海には"ナミが居てくれないと困るというものだ。"
「はあ、分かったよ。行くぞウソップ」
「お、おう」
ルフィはバラティエの一件もある。
それにクリークとの決着も付ける必要がある。
なので、この場に残る必要がある。
「お前ら、今の内に〝ヒレ〟を出しとけ。この船を戦場にする訳にはいかねェからな」
後ろでサンジが指示を出している。
ややあって、波が収まると同時に船体の脇からだだっ広い分厚い木の板が出てきた。
ここを主戦場としようという事か。
「おい、船を壊したのはあいつじゃないか?」
その最中、クリークの船員がある一点を指差す。
そこには小型のボートが漂っていた。
棺船と呼ばれるものに1人乗っている人物が居た。
色白肌に黒髪、「く」の字を描くように整えられた口ひげとモミアゲ、独特の模様を描いた金色の瞳と鷹を彷彿とさせる鋭い目つきが特徴の男性。
羽飾りのついた大きな帽子に、裏地や袖にペイズリー風の模様のあしらわれた赤と黒地のロングコート、白いタイトパンツにロングブーツという、西洋の上流階級のような出で立ちをしている。
極め付けは彼の背の丈を超える巨大な刀剣が背負われている。
「あいつは…………まさか!! 〝鷹の目〟!!」
その男の登場に一番に驚きを見せていたのはクリーク達でも、バラティエの面々でもない――――ゾロであった。
「〝鷹の目〟って、確か世界最強の剣豪じゃ…………」
ゾロの告げた異名に反応したのはウソップ。
辺境の島にさえ届く異名の意味を正しく理解している。
それこそ彼が言った「世界最強の剣豪」という分かりやすい意味が込められている。
彼が〝鷹の目〟というのはクリークを始め、この場の全員が気付いた。
だが、そんな彼が何故〝
「わざわざ〝
そう叫んだのはクリーク。
それに彼らを追い込んだのは他でもない〝鷹の目〟と呼ばれたあの男のようだ。
クリークの問いに対し、〝鷹の目〟はクリークの方を一瞥する事もなく答えた。
「暇つぶし」
たった一言。
しかも、内容はかなり横暴なものだ。
「そんな事で…………ッ!?」
「それだけじゃない。昼寝をしていたんだが、寝起きの運動をするのにも最適だったのもあるな」
どちらにせよ理不尽な事に変わりはない。
一度ならず二度までも被害に遭ったのだから怒りの感情が発生するのも無理ない話だ。
「それにここへ来たのは別の用事があったからだ」
〝鷹の目〟はその場で立ち上がる。
棺船を蹴り、思いっきり跳躍する。
辿り着いたのはバラティエの船、正確にはルフィの隣だ。
「久しいな。ゴムの少年」
「やっぱり!! 鷹のおっさんだったか!! ひッさしぶりだな~~~ッ!!」
先程までの剣呑な空気は何処へやら。
旧友と言えてしまう程の間柄だと分かる会話が成り立っていた。
「何だ、2人は知り合いだったのか?」
「ああ、子どもの頃に立ち寄った島で迷子になった事があってさ。その時に鷹のおっさんに助けて貰ったんだ」
異名の頭文字を取ったあだ名を付けられているが〝鷹の目〟は何も言わない。
昔に会ったと言うが、〝鷹の目〟の方から親しげにしている辺り本当の事なのだろう。
「その呼び方も懐かしいな」
「〝鷹の目〟だっけ? そう呼ばれてたんだな」
子どもの頃に出会ったからなのか、〝鷹の目〟という言葉を使う機会も無かっただろう。
ルフィからしたら仕方無い事だが、今その異名を覚えた。
「ところで、あの時の少女も一緒か?」
「ウタか? ウタならシャンクスと一緒だ」
「何? 〝赤髪〟の船だと? それは妙だな」
当時、ルフィはウタと共に居た。
なので〝鷹の目〟もウタの事は知っている。
しかし、シャンクスの船に居ると告げた瞬間に〝鷹の目〟は逡巡する。
どうやら今の発言に引っ掛かりがあったようだ。
「今だ!!」
のんびりとルフィと話す〝鷹の目〟を狙って、クリークの部下が銃を発砲する。
狙いは寸分違わずに彼の方へ真っ直ぐに向かっていった。
しかし、〝鷹の目〟は慌てる事無く背負っている巨大な刀剣を抜く。
刀剣の名前は『夜』。
世界でも最も高評価を受けている刀剣で、最上大業物12工と呼ばれる中の1つだ。
それを引き抜き、『夜』の切っ先を僅かに横へ動かす。
たったそれだけの動作。
それだけで放たれた弾丸は軌道をズラされる。
頭上に広がる空の方向へと弾丸は何処かへ跳んでいった。
『…………ッ!?』
この場の大半が息を呑む。
弾丸が当たらなかった事を不思議に思う者が殆どだ。
そんな中、彼の人並外れた技術に気付く者も居る。
「おれはお前に会う為に海へ出たんだ」
たったあれだけの所作で実力を知れた筈だ。
これから〝鷹の目〟へ、『世界最強』の称号を持つ筈の者へ、まるで挑戦するかのような入りを行う者が居た。
既に彼はバラティエの出した〝ヒレ〟の上に立っていた。
「何を目指す?」
「最強!!」
獰猛な笑みを浮かべ、気合を入れる動作か額に手拭いを巻く。
「暇なんだろ? 勝負しようぜ」
彼は最初から挑むつもりでいた。
その為に勝負を申し出た。
「いっぱしの剣士であれば剣を交えるまでもなく、おれとぬしとの力の差を見抜けよう」
〝鷹の目〟の言葉は『確信』を持っての事だろう。
真実として『世界最強』の称号を有する彼と挑戦者の間には大きな差がある。
「このおれに刃を突き立てる勇気はおのれの心力か…………はたまた無知なるゆえか」
〝鷹の目〟もまた同じ舞台へと降り立つ。
挑戦者は腰に挿している3本の刀を両手、そして口へと装備する。
その姿を見て、挑戦者が〝海賊狩り〟の異名を持つ男だとこの場の誰もが気付く。
空気が変化するのを肌で感じる。
〝鷹の目〟程ではないにせよ、この海でも〝海賊狩り〟の異名は轟いている。
どちらが勝つのか…………注目が集まるのは当然であると言えた。
「おれの野望ゆえ。そして親友との約束の為だ」
挑戦者――――〝海賊狩り〟ロロノア・ゾロが『世界最強』に挑む。
もう今は居ない
「哀れなり。弱き者よ」
しかし、彼の意気込みさえ『世界最強』は蔑む。
隔絶した強さを持つ事を認識さえ出来ない相手だと思うと、"可哀そうなものを見る目になった。”
如何でしたでしょうか?
開幕の降りは初代ワンピースの映画のものです。
丁度挟める内容だったのでツッコミました。
バラティエ編もすんごい駆け足で進みました。
元々ササッと終わらせる予定でしたので、バラティエ編もあと2回程で終われればなと思ってます。
さて、今回は色々と言い回しや展開などに前後が見られますね。
ミホークの名前は出てはいましたが、この場では〝鷹の目〟で統一してます。
まだ名乗っていませんので。
最後のミホークの言葉はゾロが勝負を挑んだ直後の発言でしたが、後のミホークの活躍を思うと、ゾロの挑戦は本当に無謀に見えているのだろうと思えますのであえて強調させたくて後回しに。
手加減されなかったら命を落としていてルフィの今の航海も終了していたでしょうから。
ミホークの昼寝の件は実写版のものです。
作者は観れていませんが、話だけは聞きましたので入れてみました。
そしてミホークといえば「ルフィと出会っている」というまさかの展開に。
これはバラティエ編後に番外編で書く予定ですので、しばしお待ちを。
そして何やらミホークは何か疑問を持っていたようですがはたして?
あと本編内では書きませんでしたが、原作通りにルフィはミホークとシャンクスに面識がある事を知りません。
その上でシャンクスの名前を出しています。
ルフィらしいですね。
一方、ミホークはシャンクスから聞いていたのでルフィの事を一方的に知っているのも原作通りですね。
さて、今しばらく亀更新が続く事を許して下さい。
では、また次回に。