その悪魔の実には意思がある   作:ゼガちゃん

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大変お待たせしました。

予告通りにエレジア編になります。

では続きをどうぞ。


幼少期・エレジア編
音楽の島


ガープの突然の来訪は、これまた突然終わった。

元々は海軍本部へ戻る道すがらだったらしく、ルフィに会いに来れたのは本当に時間が出来たからだ。

 

まるで嵐のようなルフィの祖父は最後に孫へ拳骨を落としていった。

理由は何とも我儘なものであった。

 

祖父が「行く」と告げると「またな」とルフィが返した。

すると「素っ気無い!!」と(ガープ曰く)愛ある拳をルフィに落とした。

海兵の人が呼びに来なければ、未だにルフィへの説教に時間を割かれていただろう事は想像するに容易かった。

 

一方のウタは何だかんだとガープを気に入ったのか、本当の祖父のように悲しんでいた。

ガープもウタを孫娘のように可愛がった。

今回の事で何かシンパシーでもあったのか、2人は本当に仲良くなっていた。

 

ウタの中では〝赤髪海賊団〟は別格として、ガープの乗る海軍の船の面々は気に入ったようだ。

ちなみに祖父の乗る海兵もウタの事を気に入ったようで「また会おう」と約束を取り付けていた。

それで良いのか海軍……。

 

さて、そんなガープと入れ替わる形でシャンクス達が帰還した。

 

「「お帰りシャンクス!!」」

 

港で出迎えたルフィとウタは船長の姿を見るなり、即座に彼の足へとしがみ付く。

 

「おいおい、そんな事をされたら動けないだろ?」

 

「娘を放ったらかしにした罰よ」

 

「なあなあ!! 今日はどんな〝冒険〟をしたのか教えてくれよ!!」

 

「おいおい、今回は次の航海の為の準備をしていただけだ」

 

両者どちらともにシャンクスに土産話を期待する。

けれども、彼の今回の航海は次の航海の為の下準備にしか過ぎないようだ。

 

2人を剥がし、目線を彼らに合わせる為にしゃがみ込む。

 

「次って、何処へ行くのか決めてるのか?」

 

「ああ、ウタの好きそうなところなんだ」

 

「本当っ!?」

 

シャンクスは自分の大事な娘の為に航海の準備を進めていたらしい。

それはウタには大層嬉しかったに違いない。

 

「なあ!! おれも連れてってくれよ!!」

 

「ダメだ」

 

「え~~~」

 

「今回は静かにしないといけない事が多いんだ。お前はジッとしてるだなんて無理だろ?」

 

今回の航海の目的地は本当にそういうところらしい。

なるほど、それはルフィには厳しいなと他の船員も納得する。

そこへウタがゆっくりと挙手しながら発言をする。

 

「あの、さ。我が儘を言っても良い?」

 

「ん? 何だ?」

 

「今回、ルフィを航海へ連れてってあげて欲しいの」

 

意外過ぎる娘からの提案。

どうした事かと疑問を抱くのは当然か。

 

「実はシャンクス達が居ない間にルフィのおじいちゃんが来て、航海へ連れてってくれたの」

 

「ルフィのじいさんって……なるほどな。手練れの海兵か」

 

シャンクスはルフィの祖父の事を知っているのだろうか?

1人で何やら納得していた。

 

「しかしだな。だからといってルフィを連れて行くのは……」

 

「駄目なの? シャンクス?」

 

無垢な瞳で父親を見る。

その顔を娘に向けられて「うっ」となるが、気持ちを取り直す。

 

「やはりな、ルフィを連れて行くわけにはいかな――――」

 

「ルフィを連れてってくれないなら、シャンクスの事を嫌いになっちゃうかもしれないな〜」

 

「連れて行くに決まってるだろ!!」

 

ウタがそんな事を言うものだから発言の掌返しが早すぎた。

言ってから ハッ!! となるがもう遅い。

溜め息を吐きながらも「しょうがない」と切り出す。

 

「ルフィのじいさんに借りが出来ちまったようだしな。今回はウタが言うから特別だ」

 

「本当か? やったー!!」

 

航海へ連れて行ってくれると分かったルフィのはしゃぎようと言ったら凄い。

両腕を上げて、港を走り回る。

 

「ったく、はしゃぎやがって」

 

「良いのかお頭? 同行を許して」

 

ベックマンがはしゃぐルフィを見ながらシャンクスの判断が良かったのかと問う。

 

「まあな。前回はお前がルフィの同行に前向きだった理由を探しそびれたから丁度良いのかもな」

 

「なるほど」

 

どうやら自分もルフィの同行を許可した理由の中に組み込まれていたらしい。

 

「そしたら、準備をしようか。次の島はエレジアだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エレジア――そこは〝音楽の島〟と謳われている。

そこでは音楽の勉強もできる。

 

「うわぁっ!!」

 

そこでウタはと言えば、島を到着してからずっと目を輝かせていた。

普段であればルフィがその役を担うだろうに、今回ばかりはウタの方が心を弾ませている。

 

彼女のそんな姿に赤髪海賊団の一員も顔を綻ばせていた。

ちなみにウタではない方のスキンヘッドが特徴的ないかつい顔の〝赤髪海賊団〟音楽家のボンク・パンチ、チョンマゲのような髪型をしている猿で名前はモンスターの音楽家コンビも心が躍っていた。

 

今はエレジアで大きい建物――城という言葉がピッタリはまる建造物まで移動していた。

城というものを初めて見たルフィのテンションもここで上がる。

そして、その城を出入りする人たちの姿を見て「んん?」と首も傾げる。

 

「みんな、本を持ってるな。そんなに勉強する事があるのか?」

 

疑問の声を発するのは当然だがルフィであった。

エレジアへ到着するまで眠りこけていた彼だが、着いた瞬間に目を覚ますとは現金なものだ。

 

「知る事で、新しい発見が生まれるのさ少年」

 

突き出た頭とその頭に残るつぎはぎ、ウタのようにヘッドホンをしたサングラスを掛けた人物。

 

「このエレジアの国王のゴードンだ。よろしく」

 

「赤髪海賊団船長のシャンクスだ。今日はよろしく頼む」

 

ゴードンとシャンクスは互いに握手をする。

 

「しかし、驚いた。海賊がこちらへ来るものだから警戒してしまったが、話の分かる人物で良かった」

 

「海賊が来たら警戒するのは当たり前だ。ゴードンさんの考えは何も間違っちゃいない」

 

海賊というのは言ってしまえば爪弾き者でもある。

シャンクスのような人物はあまり多くない。

大抵が略奪等の粗暴な印象を抱くような存在が〝海賊〟だ。

 

「実は今日来たのは他でもない。この子にエレジアを見せてあげたくてな」

 

「ウタです。〝赤髪海賊団〟の音楽家で、〝歌姫〟になるのが夢なの」

 

「そうかい。それは素晴らしい夢だ。ところで君は音楽が好きかい?」

 

「大好き!!」

 

ゴードンの問いにウタは笑顔で応える。

彼女の屈託のない笑顔は本物であると彼も「それなら楽しめるだろう」と言ってくれる。

音楽の栄える国の王だけあって、ウタの姿勢はシンプルながらゴードンにも嬉しさがあったのだろう。

 

「音楽が好きな人は大歓迎さ。特に君のように未来ある若者が音楽が好きとあれば歓迎しない理由はないよ」

 

両腕を大きく広げてゴードンはウタの来訪を歓迎してくれた。

 

「せっかくだ。エレジアの授業を体験してみないかい?」

 

「あっ、えっと……」

 

「それは良い。参加したらどうだ?」

 

「う、うん」

 

ウタがゴードンの誘いに乗るかどうか悩んでいたが、シャンクスの方からそれに乗ってはどうかと促す。

言い淀んだのはきっとシャンクス達に迷惑を掛けてしまうのではという気遣いもあったのだろう。

 

「へェ~、何だか面白そうだな」

 

「君も参加するかね?」

 

「え? 良いのか? おれ、音楽の事はサッパリだぞ?」

 

ルフィも興味を抱いたところへゴードンは誘いを掛ける。

どういう事をするのか分かっていないルフィではあるが、ゴードンからしてみれば音楽に興味を抱いてくれるなら問題は何もない。

 

「音楽に限らず、何かに興味を持つというのは大事なのさ。自分の好きな事を知って貰いたいなら君も言ったように『面白そう』と興味を向けて貰う事がその第一歩なのさ」

 

「へェ~、言ってる事は良く分からないけど、何となくは分かった」

 

「それってどっちなんだよ」

 

ゴードンの言葉はルフィなりに咀嚼できたと考えるべきだろう。

この少年の言い方はどっちなのか分からず、思わずシャンクスはツッコミを入れる。

 

「ははっ、まずは付いてくると良い。案内しよう」

 

ゴードンは先頭を歩き、2人を案内する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴードンの案内でルフィとウタはエレジアの授業を受けていたのだが…………

 

「飽きた」

 

真っ先に言い出したのはやはりと言うべきかルフィだ。

最初は物珍しさはあったから良かった。

 

けれども基本的にジッとしている事が苦手である事に加えて、机に座って教科書とにらめっこする事はルフィには退屈で仕方無かった。

まあ、座学に関してはウタも似たような感想を抱いていたのは秘密だ。

 

シャンクス達はと言えば、ルフィがこうなる事は予期していた。

予めゴードンには「ルフィは飽きるぞ」と伝えていたが、彼からしてみればそんな事は二の次だったようだ。

少しでも体験して貰う事こそがゴードンにとっては大事だと言えた。

 

「ならば、実践といこう」

 

そうルフィが言い出したものだからゴードンは気を利かせて、種目を変更してくれる。

ルフィの性分だけではなく、ウタもつまらなそうにしているのをゴードンが見逃さなかったのもあった。

何だかんだと、子ども心を考えてくれる彼にはシャンクス達も頭が上がらない。

 

「実践とはいっても、ここで歌って貰うだけさ」

 

そう言って案内されたのは広々としたコンサートホールだ。

スーツでおめかしした男女が談笑している。

テーブルもいくつか置かれており、その上にはご馳走が並べられていた。

 

「うんまそォ〜〜〜っ!! 食って良いのか〜?」

 

「ああ、好きなだけ食べなさい」

 

「やった!! ありがとう歌のおっさん!!」

 

ルフィは並べられたご馳走に目を輝かせる。

ゴードンが許可を出すとルフィはご馳走を取ろうと駆け出した。

どうやら音楽よりも目の前の食べ物へルフィは御執心のようだ。

 

ちなみに彼の言う「歌のおっさん」とはゴードンの事だ。

音楽が上手という観点からのあだ名のようだが、ゴードンはさしたる不満もなくルフィにその呼び名を許可していた。

 

「すまない、ゴードンさん。あいつはどうにも自分の本能に忠実なようでな」

 

「いえ、気にしてはいませんよ。それに彼も歌っている時は楽しそうでしたので。そう思って頂けるのは一番です」

 

「そう言って貰えると助かるよ」

 

ルフィの自由奔放さは凄まじいものがあるが、可能ならば手加減をしてもらえると助かる。

ゴードンが寛容な人物であった事と、彼が子どもである事が助力となったのだ。

 

「あの、ゴードンさん……」

 

「ああ、すまない。それじゃあ準備を始めようか」

 

ウタの方はこの機会に乗り気なようで良かった。

彼女の歌を軽く聞いただけなのだが、10歳に満たない程の年齢だとは思えない程に素晴らしかった。

何より、純粋に〝歌〟を楽しみたい気持ちが如実に出ていると言えた。

その姿勢はエレジアの国民に通じるものがある。

 

ウタとしてもこれだけの人数の前で歌えるというのは長年見ていた〝夢〟にも近い。

〝歌姫〟を目指すつもりがあるというのであれば、彼女の晴れ舞台だ。

これまでは〝赤髪海賊団〟の面々、それとフーシャ村の数人程しか知らないウタの小さな小さなライブ会場。

それが何の因果か、この大きなコンサートホールで歌えるところまで来た。

 

これも全部父であるシャンクスの助力があってこそ。

自分1人では漕ぎ付けなかっただろう領域。

けれども……いや、ならばこそシャンクスの娘である自分の力を見せつけてやろう。

 

ゴードンに案内されるがまま、前へと躍り出る。

これまで船上やマキノの酒場でしか披露して来なかった会場よりもずっとずっと大きな会場だ。

 

「さあ、これを。今夜は君の歌声を聞かせてくれ。思う存分に歌いなさい」

 

「うん」

 

ゴードンから身の丈程のマイクを渡される。

ウタはそれを両手で掴み、一つ深呼吸を置くと――――彼女の歌声がホール中に響いた。

 

1つ、曲を歌い終えた後に贈られた数多の拍手が彼女のデビューの成功を物語る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、ウタの歌を聞こうとエレジアの国民がホールへと殺到した。

さすがに国民が押し寄せるとなると、いくら広くてもキャパシティーをオーバーしてしまう。

ゴードンとしても彼女の歌声を知って貰おうと拡声器を用いて彼女の歌声を国中へ届ける方向性へシフトした。

 

今度は彼女の歌声のファンとなった面々が「これを歌って欲しい」と次々に楽譜を渡してきた。

ウタも歌う事の喜び、それと自分の歌声がこんなにも評価されると思っていなかったので嬉しくなってリクエストに次々と応えていった。

 

ゴードンが「素晴らしい!! 君さえ良ければこのエレジアに永住して音楽を本格的に学ばないか?」と誘われる一幕があった。

途中に休憩を挟み、シャンクスとゴードンの提案した内容について話していたらしい。

けれど、ウタは〝赤髪海賊団〟の音楽家である事を選んだ。

 

ゴードンも無理強いはするつもりは無いようで、ウタの意思を尊重した。

その代わり、エレジアの国民が持ってくる楽譜を次々と手渡されて一晩歌う事になる。

 

一通り、要望に応えた後にウタは休憩へと入る。

 

「お~い、ウタ。これ美味いぞ」

 

「ルフィってば、私の歌は聞いてたの?」

 

「おう!! バッチリだ!! でも、あんだけ歌えば喉が渇くだろうからってんで持ってきたんだ」

 

ルフィは飲み物を持ってきてくれたのだ。

これは意外や意外である。

 

「へえ、ルフィってば気遣いも出来たんだね」

 

「歌のおっさんの授業でそんな感じの事を言ってたのは覚えてたからな」

 

殆ど寝ていたのだが、恐らくは「飲み物」というワードで覚えていたのだろう。

覚え方は考え物だが、それをベックマンに話をしたらしい。

彼は一言「お前が持って行ってやれ」と言ったそうだ。

果たして副船長の真意は何処にあるのかは分からない。

けれど、今はルフィの気遣いが嬉しい。

 

「でも、ありがとう」

 

素直に礼を述べて飲み物を受け取る。

 

「それにしても、あんなに歌ってて疲れないのか?」

 

「歌うのが好きだからね。それにいつか〝歌姫〟って呼ばれるようになって、歌で皆に幸せを伝えて、歌で世界を変えたい。

 それが私が思い描く〝新時代〟だから」

 

「〝新時代〟……へェ、良いな、それ」

 

ウタの〝夢〟は分かったが「歌で世界を変える」の部分がピンと来ていない。

けれど、彼女の〝夢〟を笑わない。

彼女が真剣に考えている事なのだ。

 

それに彼女の〝新時代〟のワードにルフィは惹かれた。

 

「あれ? 何だろう、あの楽譜?」

 

そう言ってウタが目を向けたのはソファに置いてある古ぼけた楽譜であった。

何故だろう?

それに呼び寄せられるようにウタは楽譜を手に取った。

 

誰かの忘れ物だろうか?

何人もがウタへリクエストをしていたが、この曲はまだ歌っていない。

これだけ古ぼけていればウタだって印象に残る。

 

「ウタ、それって?」

 

「うん。楽譜みたいだね」

 

「歌えるのか?」

 

「もちろん」

 

せっかくだし、歌ってみよう――そう思ったウタは手に取った楽譜を口ずさむ。

 

 

 

 

 

直後、ウタを中心として黒い光が渦を巻きながら放出された。

 

 

 

 

 

「ウタっ!?」

 

何が起きたのか分からなかった。

それでもウタの下へルフィは駆け寄ろうと近付いた。

彼女の肩に触れた直後、それを拒むように突風が吹き荒れてルフィの身体は容易く吹き飛ばされる。

 

「ルフィっ!!」

 

吹き飛ばされたルフィをシャンクスは受け止める。

 

「このままでは危険だ!! 早く避難を!!」

 

ゴードンは緊急性に気付き、避難するよう号令を掛ける。

 

「くそっ!! ウタ!!」

 

一方、シャンクスはウタへ声を掛ける。

彼女の顔がシャンクスの方を向いた――――次の瞬間、ウタを包むように黒い光が足下から吹き上がった。

 

「何が起きている?」

 

その疑問を置いてけぼりにし、ウタを包む黒い光がより大きさを増していった。

このホールの壁を砕く程に巨大化――――いや、更に大きさは増していくばかり。

 

「いかん!! この場を離れるんだ!!」

 

「くっ!!」

 

苦虫を噛みながら腕に抱えるルフィの存在を思い出し、今は彼を助けるべきだと判断する。

ゴードンと共に建物の外へと避難する。

 

「お頭!! 何が起きてる?」

 

「良くない事としか言い様が無いな」

 

外に居たベックマンが状況を確認する。

しかし、シャンクスの答えは要領を得ないもの。

 

ベックマンも詳細を聞き出したかったようだが、それには及ばなかった。

直後、エレジアの中央部にある城の屋根を破壊しながら〝バケモノ〟が姿を見せた事で全てを理解した。

 

黒いハットを被ったピエロとも竜とも見える顔立ちで、両腕がピアノの鍵盤になっており、足は存在せずに宙に浮いている。

数珠のように並んだ髑髏の霊魂を首元に浮かばせている。

赤い顔に上半身が巨大な案山子のようで、まさしく異形――――〝バケモノ〟が当てはまる存在だ。

 

「あれは…………何だってんだ?」

 

「このエレジアに封印されし〝歌の魔王〟――――名を〝トットムジカ〟と言う」

 

疑問に答えたのはゴードンであった。

 

「ゴードンさん、あれを知ってるのか?」

 

「その前に聞かせてくれ。彼女、ウタは…………能力者なんじゃないかね? 〝ウタウタの実〟の」

 

「何故、そう言い切れる?」

 

「その悪魔の実こそがトットムジカを呼び寄せる力を持っているからだ」

 

問い掛けにシンプルに答えた。

そう、あまりにもシンプルなものだ。

 

「ウタウタの実の能力者はウタワールドと呼ばれる能力者の創造した〝夢の世界〟へ引き込む能力があるだろう?」

 

「そこまで知っているのか。その通りだ。ウタは歌って人を眠らせ、眠らせた相手の意識をウタワールドへ送り込むことができる」

 

ゴードンはウタウタの実の力を知りすぎている。

しかし、今は情報の入手が最優先とシャンクスも知る限りの情報を伝えていく。

 

ウタワールドとは言ってしまえば、一時的に能力者本人とその歌を聞いた人との夢を能力者の夢と"共有させる"というものだ。

その夢の世界では能力者の思いのままの出来事を起こせる。

 

だが、この能力には欠点ももちろんある。

それは能力者本人の体力を著しく疲弊させるというものだ。

能力者が眠る事でウタワールドは解除される。

 

何故この場でウタウタの実の能力の確認を行うのかというと、あのトットムジカとも関係があるのだと言う。

トットムジカはウタウタの実の能力者が禁忌の楽曲〝TotMusica〟を歌う事で現れる〝歌の魔王〟だと。

そして、出現場所は――――

 

「ウタワールドと現実世界に顕現する。そして、両方の世界で破壊の限りを尽くす。倒す方法は両方の世界で"同時に"攻撃するより他にない」

 

「何て厄介な」

 

「けれど、話を聞く限りはウタワールドの維持が必要って事だ。なら、ウタの体力が尽きるのを待てば自動的に解除される筈だ」

 

最悪の展開ではあるが、解決方法はあるとベックマンは告げる。

トットムジカの弱点は能力者であるウタと連結している。

ならば、両方の世界で攻撃する等とは言わず、こちらの世界からだけでも攻撃を続ければトットムジカの方が先に根を上げるに違いない。

 

「それに考えてる暇は無さそうだ。そのトットムジカとやらが動き出すぞ」

 

これまで顔を左右に振るだけだったのだが、街へ狙いを定めると――目から赤い光線を放つ。

光線に遅れて街に爆炎が一直線に描かれる。

 

「このままじゃ、エレジアの被害は甚大だ」

 

「お頭、奴を止めないと!!」

 

「分かってる!! 分かってるが……あの中にはウタが、居るんだ」

 

これまで大切に育ててきた娘があのバケモノへと取り込まれる様を目の前で見てしまった。

もし、トットムジカへの攻撃がそのままウタへのダメージに繋がったら?

無事でいられる保証はない。

 

剣の柄へ手を掛けるが、震えている。

分かっている。

ここで止めなければ、ウタは背負わなくて良い不孝を背負う事になると。

だから、止めなくてはならない。

頭では分かっていても、己の力でトットムジカもろともウタを失ってしまうのではないかという不安の種があるのも事実。

 

その葛藤を副船長であるベックマンは理解していた。

彼も言える事は言い切った。

船長の号令無しに勝手に動けないジレンマもある。

シャンクスの気持ちも分かるが……このままではエレジアは滅んでしまう。

他でもない、赤髪海賊団が愛する娘の手によって――――

 

「……ウ、タ……」

 

そんな時、ウタの名を呼ぶ声がした。

声の発生源はシャンクスの腕の中で眠るルフィだ。

彼の寝言は続く。

 

 

 

 

 

「ぜっ……たい……助け、る……」

 

 

 

 

 

シンプル。本当にシンプルな言葉だ。

ルフィの寝言は、それでも狭まっていたシャンクスの視界を開かせた。

ウタの事でどうすべきかだけ考えていて、最もシンプルな"戦う理由"を見落としていた。

 

「そうだな、ルフィ。ありがとう」

 

まさか、お前に気付かされるとはな――心の中で呟きながらルフィをゴードンへ預ける。

 

「ルフィはあの時、ウタの一番近くに居た。それで眠ってるって事は、あいつは今"戦ってるんだ"」

 

ウタワールドは歌を聞いて眠った相手を連れていく。

この騒ぎで起きないルフィはそこで戦っているのだ。

 

子どもだからとかは関係が無い。

だってルフィは〝男〟なのだから。

 

「"家族"であるおれ達がウタを絶対に助けると誓わないでどうする? 絶対にウタをあのバケモノから助けるぞ!!」

 

「当たり前だろ」

 

ウタを助ける――何ともエゴだが、それこそが今トットムジカと相対する一番の理由だ。

シャンクスの言葉に船員もトットムジカへ視線を向ける。

今回の相手はあの巨大なバケモノ。

 

魔王だか何だか知らないが、赤髪海賊団の大切な(ウタ)に、友達(ルフィ)に、手を出した事を後悔させてやる。

封印だなんて生ぬるい事は言わない。

もう二度とこの世界へ顕現できない程に完膚なきまでに叩きのめす。

 

シャンクスは剣を抜き、その切っ先をトットムジカへ向ける。

 

「野郎ども気合入れろ!! ウタを、ルフィを、おれ達の"大事なもの"を助けるぞ!!」

 

「「「「「オオオォォォォォッ!!!!」」」」」

 

船長の号令と同時、トットムジカへ突撃する。

大切な存在を助ける為に動き出す――。




如何でしたでしょうか?

原作というよりはREDとの相違点は、
・ルフィがエレジアまで付いてきた。
・〝新時代〟のマークを作っていない。
となります。

ガープに乗せて貰ったという事を理由にルフィのエレジア行きの同行を認めさせました。
娘にお願いされ、嫌われそうになると手のひらを返す父親シャンクスはもてあそばれてますね、これは。

エレジアにはゴードンと同じ位の男性は居るでしょうからそういう時はあだ名をつけると思って「歌のおっさん」としました。

ゴードンからの勧誘を受けるもシャンクスと居る事を選択したシーンは映画のそのシーンを脳内再生して下さい。
文章にてさらっと流しました。
今後、原作展開となりそうな部分はこのようにカットする事があると思います。

トットムジカ、ウタウタの実の事はゴードンも知っていそうなので「知っている」という事にしました。
なんせ国王ですしね。

シャンクスの葛藤を勝手に追加しました。
この頃の彼って30手前ですし、必死に育てた娘に手を上げるも同然の行動になる事ともなれば葛藤しそうだなと思いました。
まあ、すぐに解決しましたが。

ウタはトットムジカに取り込まれているので歌っておらず、トットムジカも破壊の限りを尽くすので歌っていないので追加でウタワールドに行きません。

映画でもウタの体力が尽きて寝ればトットムジカは姿を消していたそうなので、そのご都合主義な展開も追加しました。
許して下さい。


さて、最後の文字を編集してみました。
こうした方が良いとアドバイスしてくれた方が居ましたので試してみました。
この場を借りてお礼を申し上げます。
教えていただきありがとうございました。


さて次回なのですが思っていたよりも時間が掛かりまして、更新は明後日もしくは金曜日の予定です。
連日投稿をしようと予告していたのに申し訳無いです。

なる早で書きますので、待っていて下さい。
ではまた。
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