その悪魔の実には意思がある   作:ゼガちゃん

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予告以内には何とか更新にこじつけられました。

ONEPIECEと言えば冒険以外にもバトル要素が無くてはなりませんよね。

今回は独自解釈もマシマシです。

では、以上を踏まえて続きをどうぞ。



Believe

「ん、ん? 寝てた、のか?」

 

横たわっていたルフィは目を覚ますと同時に身体を起き上がらせる。

いつの間にか寝ていたらしく、どうしてだろうと疑問を抱く。

 

「おれ、何してたんだっけ?」

 

確かウタに食べるものを渡して、ソファにあった楽譜をウタが歌い出し、黒い光が彼女の身体から吹き荒れたので近付いたら吹き飛ばされて――――

 

「っ!? ウタは?」

 

いくら子どものルフィでもウタの身に起きた出来事の異変さは気付いている。

辺りを見回す。

ルフィの居る場所は不可思議であった。

 

空はあるが、赤や青、オレンジといった色彩豊かである。

地面は海のように透き通っている。

まるで〝夢の世界〟だ。

そう、ウタが良く使うウタワールドと似ていて――――

 

「ルフィ!!」

 

「ウタ!! 何処だ?」

 

彼の名を呼ぶ声が。

自分の真後ろからだ。

そちらへ振り返る。

 

「な、何だこれェッ!?」

 

思わず叫び声が出る程だ。

言ってしまえば〝バケモノ〟である。

 

黒いハットを被ったピエロとも竜とも見える顔立ちで、両腕がピアノの鍵盤になっており、足は存在せずに宙に浮いている。

数珠のように並んだ髑髏の霊魂を首元に浮かばせている。

赤い顔をして上半身が巨大な案山子を彷彿とさせる。

 

奇しくも、シャンクス達が相対している〝トットムジカ〟と同様の姿をしている。

 

その左肩にウタは乗っていた。

光の球体の中に入っており、出られる状態に無いのは見て分かる。

証拠にウタは球体を叩いているが、ビクともしない。

子どもの力では割れないのは一目瞭然か。

 

「待ってろよ、ウタ!!」

 

バケモノを前にしてもルフィは臆さない。

眼前で友達を助けると宣言し、駆け出す。

 

「ダメ!! ルフィ!! 逃げて!! こいつは、トットムジカには子どものアンタじゃ、敵わない」

 

何故ウタがこのバケモノの名を知っているのかは分からない。

けれど、そんな事はどうでもいいとばかりにルフィはトットムジカとやらに向かって駆けていく。

 

トットムジカの目がルフィを見る。

右手で拳を作ると容赦なく走るルフィを殴り付ける。

 

「うわァッ!?」

 

「ルフィ!!」

 

ルフィは宙を舞い、地面へと叩き付けられる。

しかし、何事も無かったかのようにルフィは立ち上がる。

 

「あ〜、ビックリしたァ〜」

 

ルフィはピンピンしている。

忘れてはならない、彼がゴム人間である事実を。

ただの打撃はルフィには通用しない。

その事にウタはホッとする。

 

けれども、安心してばかりはいられない。

打撃が効かないとは言え、ルフィとトットムジカとの体格差は明らかだ。

 

「負けてたまるか!!」

 

先程の焼き回しとなり、ルフィはトットムジカへと突撃する。

策も何も無い、明らかに無謀な挑戦だと言えた。

 

「来ちゃ、ダメ――――」

 

ウタの叫びも虚しく、トットムジカの右拳がルフィへ叩き込まれる。

拳を振り上げれば、ルフィは地面へ倒れ伏している。

ダメージこそ皆無だが、このままではルフィの体力が尽きてしまう。

 

畜生(ちくしょオ)ォッ!!」

 

トットムジカからの猛攻は止まらない。

拳を何度も叩き込んでくる。

しかし、それでも立ち上がるルフィに業を煮やした。

 

「何をするつもり?」

 

異変に気付いたのはウタ。

トットムジカの前に音符が具現化した。

それがルフィめがけて飛んでいく。

 

「えっ!? うわぁっ!? 熱ゥッ!?」

 

その直撃を受けたルフィは悲鳴と共に身体を打ち上げられる。

ルフィの身体が落下していく際、彼の身体を叩き付けようと巨大な音符が頭上に出現して…………ルフィを地面へ押し潰すように落下した。

そうすると音符は消え、地面に倒れ伏すルフィの姿が。

 

「くっ、そォ〜」

 

ダメージはもちろんながら無い。

物理攻撃を寄せ付け無いこの身体のおかげでトットムジカの攻撃は何も通用しない。

 

しかし、だ。

 

「何だ? さっきの? 熱かったぞ」

 

先程の音符はただぶつけてきたものではない。

その音符には熱が込められていた。

 

痛みは無いが、音符に込められていた熱がルフィの体力を蝕み始めた。

この熱に耐えられたのも祖父ガープのスパルタ教育の賜物である。

今回ばかりは祖父に感謝しよう。

しかし、どうすればトットムジカとやらからウタを救い出せる?

普段は使わない頭をフル回転させて…………

 

「止めて、ルフィ。逃げてよ。アンタじゃ、こんなのに勝てる訳がないんだから」

 

「そんな事、やってみなくちゃ分からないだろ!!」

 

「やらなくたって分かるよ!! 私に勝てないのに、アンタが勝てる訳無いんだから!!」

 

尚も突撃を試みるルフィへ、ウタはそのように突き放そうとする。

事実、トットムジカはルフィを普通の子どもと思っていたのか、物理攻撃のみで押し切れると思っていた。

しかしながら、それだけでは意味がないと判断して攻撃方法も変わる。

 

先程、投擲した音符にしてもただの物理的なものではない。

ルフィにも通用するのかを探るように様々な攻撃手段を用いている。

熱を持つ音符を投擲したのもその為だ。

 

「現実世界でシャンクス達がトットムジカを何とかしようとしてくれてる。ここはウタワールドなんだから、アンタは隠れていれば良い。私は――――」

 

「じゃあ、その間の“お前はどうなるんだよ!!”」

 

ウタの言葉をルフィは遮る。

この状況、トットムジカとやらが原因なのはルフィにだって分かる。

 

だが、問題はウタ本人の事だ。

現状、彼女はトットムジカに拘束されているも同然だ。

ここがウタワールドだとしたら、現実世界のウタは今どうなっている?

 

そちらはシャンクス達が何とかしてくれているのかもしれないが、その間にウタワールドに存在する“ウタは本当に無事でいられるのか?”

そんな保証は、トットムジカのおぞましさを目の当たりにしたら信用など置けるものか。

 

「お前が何と言おうと知るか!! おれは絶対に助けるぞ!!」

 

「けど…………待って、ルフィ!! 逃げて!! アンタを握り潰して動けなくするつもりよ!!」

 

トットムジカはルフィへ手を伸ばす。

大きく開いた手でルフィを握り潰す気なのだとウタには分かった。

 

しかし、ルフィへ迫る手をウタには止める術がない。

鳥籠に閉じ込められているも同然の彼女には為す術もない。

 

「おりゃァッ!!」

 

ヤケクソ気味にルフィはゴムゴムの力を利用して腕を伸ばす。

パンチが伸ばされるトットムジカの手に当たるも――――ペチンと音を起てるだけ。

ルフィの抵抗など無駄だと言わんばかりにトットムジカの進行は止まらない。

 

「くそォッ!! ちッ、くしょォォォッ!!」

 

自らの無力さを呪う。

紛れもない現実だ。

諦めない気持ちは大事かもしれない。

けれども、こういう場のようになると実力を伴ってこそだ。

 

「力が、必要だ。今だけで良い」

 

それは切実なルフィの心からの願いだ。

今、この場でウタを助けられないでどうする?

 

せめて、いつかの夢で見た少年の力が欲しい。

けれど、そんなものは無い。

無い物ねだりをしても意味がない。

 

けれど、真似できる所はある。

 

「ウタ!! 絶対に、助けるぞ!!」

   

唯一真似ができる「諦めの悪さ」で前進する。

絶対にウタを助けるという想いを前面へ出して。

 

ただ、そんな彼の想いを無情にもトットムジカの手がルフィへ迫る――――――その瞬間、ルフィの心臓が ドクンッ!! と跳ねた。

 

「なん、だ?」

 

自らの内側から不思議な熱が沸き上がる。

ルフィの身体に熱が走る。

この変化に留まっている間にもトットムジカの手が伸びてくる。

 

「しまっ――――」

 

一瞬の隙を突いてトットムジカの手がルフィの小さな身体を包み込む。

その直前、ルフィの身体が音符に包まれ、光り出す。

それにルフィが、“それ”が呼応して――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウタが物心付いた時にはウタウタの実を食べていた。

シャンクス達が目を離している間にウタが食べてしまったらしいのだが、残念ながらウタには当時の記憶は皆無だ。

 

まだ9歳程のウタにはウタウタの能力を制御するのは難しい。

無意識の内に使ってしまう。

その結果が歌を歌う際に聞いた者を無差別に眠らせてウタワールドへ送り込む事に。

 

ウタワールドと現実世界の状況を理解する事ができるのだが、それには大きく体力を消耗する。

長時間の使用をすると、激しい眠気に襲われる。

戦闘で使うのであればあまりにも強力だが、1人でも取り残せば無防備になるので、無敵という訳ではない。

誰か、他の仲間が居る時に使うのがベストだが、なかなか上手く行かずに迷惑を掛けてばかりだ。

 

それでもシャンクス達はウタの自由にさせてくれた。

本当にありがたい話だ。

 

今、このバケモノの目を通じて自分の父が、赤髪海賊団の仲間が、自分を助けようとこのバケモノと戦っている。

このバケモノの名前が「トットムジカ」だと言うのは直前に見た楽譜の曲名が書いてあった事から知った。

 

楽譜を歌ってから、ウタはウタワールドの発動を実感している。

恐らく、このトットムジカを呼び出す為の歌の影響なのだろう。

トットムジカの視界を共有しているのは、ウタの本体が取り込まれ、結果的に本来のウタウタの能力と同様に現実世界とウタワールドの両方の状況を把握できるが故の事だろう。

 

これまでと状況が異なるのは、現実世界とウタワールドが干渉し合う事は無かった。

ウタワールドは所詮は夢の世界であり、現実世界に影響を及ぼす事は有り得なかった。

なのに、トットムジカの存在を起点として両方の世界に被害をもたらしている。

ウタウタの実に夢と現実の境界線を曖昧にするだけの力、もしくは引き合わせるだけの力がある等とは想像してもいなかった。

 

先程も述べたようにウタワールドの方はこうしてウタの姿を具現化しているものの、現実世界のウタの身体はトットムジカに取り込まれている。

とりあえず、ウタワールドに自分の意識があるので死んではいない事は確認できる。

精神が死なない限りは大丈夫だ。

 

まずは状況を確認しよう。

 

このトットムジカはウタワールドの発動後と同時に出現したのだから、両方でセットである事は明白だ。

故にウタウタの実によるものだと推察が出来る。

もっと簡潔に言うならば、トットムジカ=ウタウタの力なのだ。

だからだろうか、能力者であるウタにはトットムジカの行動が予測できてしまう。

 

しかしながらトットムジカは自我を持っているらしく、ウタの指示を全く聞きはしない。

 

そう言える根拠はこのウタワールドだ。

本来なら能力者であるウタの意思が反映する出来事しか起こらない。

ウタの思い通りになるのがウタワールドという世界そのもの。

 

例えば欲しい食べ物があれば出てくるし、ケガも能力者が願うだけで治ってしまう。

だから、このトットムジカの存在はウタワールド内では不必要な存在だと思えば消滅する――筈なのだ。

 

ウタが願っているのに消えない。

止まって欲しいのに止まらない。

一応はウタワールドの創造主であるウタの願いは通じていない訳ではない。

小さくはあるが、トットムジカの行動は鈍くなっている。

ルフィへの攻撃が「具現化した音符の投擲」のみである事はウタが「ルフィに逃げて欲しい」と願ってトットムジカの行動とは合致していない事から起こる拒絶反応による結論なのかもしれない。

物理攻撃であれば、ゴムの身体であるルフィは大丈夫だ。

ウタの小さな抵抗は確かにルフィへの援助となっている。

 

しかし、トットムジカの行動の方が優先度が上がっている、明らかな敵意ある行動を取っている事そのものがやつが自我を持つと推測できた理由だ。

本来ならウタワールドの創造主である自分の意思が希薄になっていくのが感じ取れる。

最早感覚的なものと言って差し支えない。

けれど、トットムジカがルフィを掴もうと行動を起こした事を鈍らせる、止めるまでには至らない。

それが決定的にウタワールドの現状の支配者の逆転が始まった事を物語る。

 

現状、ルフィに迫る手を止める術を鳥籠に閉じ込められているウタには完全な制止が行えなかった。

シンプルに「捕える」という目標だったが故に動きが鈍ろうとも達成出来てしまったが故か。

 

「ルフィ!!」

 

ウタを助けようと足掻くルフィの名前を叫ぶ。

逃げるように促してもルフィは決して背を向けなかった。

 

勝てないと分かっているのに向かっていく。

それは力の無い者が行えば蛮勇に過ぎない。

力のある者でなければ、それは本当に無意味でしかない。

 

本人だって分かっている筈なのに止まらない。

どうして?

 

現実世界のウタが死のうと、ウタワールドに自分の精神がある限りは死なない。

例え肉体があろうとも。

先程、ルフィに対して言いかけたのはこの部分だ。

 

なのに、ルフィは自分の事を案じた。

自分に力が無い事を知った上で、でも彼はウタの身を一番に案じた。

 

そんな彼は無情にもトットムジカの大きな手に覆い尽くされ、握り潰される。

 

ゴム人間である彼はこんな事では死にはしない。

けれど、あの小さな身体では脱け出せない。

それにこのままでは窒息も有り得た。

 

このウタワールドでの〝死〟は現実世界での〝死〟に直結するのかまでは分からない。

だが、このままではルフィが危険な事には変わり無い。

 

「ルフィ!!」

 

再び、彼の名前を叫ぶ。

服の内側、胸元にぶら下がる指輪を掴む。

本物は現実世界にある。

けれど、これはウタにとっても現実世界で特別な意味を持つ〝宝物〟だからウタワールドでも"具現化できるように練習してきた。"

 

彼が、大切な少年がくれたウタにとっての〝宝物〟を握る。

なまじ、トットムジカの行動を理解しており、それを阻止できない自分の無力さに打ちのめされる。

せめて、ウタワールドの能力でルフィに戦えるだけの力を与えられたら――――

 

 

 

 

 

「効かないねぇっ!! ゴムだから」

 

 

 

 

 

直後、トットムジカの手の中から声がする。

このウタワールドに居るのはウタとルフィのみ。

 

「まさか、ルフィ!?」

 

「うおおおおおおおおおおおーーーーっ!!」

 

ルフィが無事である事に安堵すると、次には彼の雄叫びがウタワールドに木霊する。

トットムジカの閉じた手が彼の力業によって切り拓かれた。

両腕と両足を外側へと思いっきり押し出す。

そして、器用に跳躍してトットムジカの腕へ乗っかる。

 

トットムジカと能力で繋がっているウタは歌の魔王と呼ばれる存在が驚いているのを直接感じ取っていた。

ただ、驚いたのは何もトットムジカだけではない。

 

「ルフィ……なの?」

 

ウタ自身も彼の姿に困惑していた。

彼の容姿はそれだけ大きく変化していたからだ。

赤い袖なしのベスト、青の半ズボンに草履という格好をしている。

身長もウタの身近な人物の中ではマキノ位にまで伸びている。

 

確かにウタワールドはウタの想像したものを具現化させる事ができる。

他人のイメージを反映する事も難しい話ではあるが、不可能ではないだろうと予想もしていた。

現にウタはルフィが戦えるように考えもした――が、ここまで明確なイメージまではしていない。

考えられるのは、未だに練習していた「他人のイメージの具現化」に成功したと見える。

 

「今行くぞ、ウタ!!」

 

そんなウタの思考を遮るようにルフィはそう宣言するとトットムジカの腕を疾駆する。

 

しかし、ルフィを外敵を見なしたトットムジカの攻勢も始まる。

先程と同様、具現化させた音符をルフィへ投擲する。

 

これまでとは打って変わったルフィはそんなものには動じない。

腕を後ろ手に引いて――――

 

「ゴムゴムの(ピストル)!!」

 

勢い良く、真正面へ拳を振りぬき……伸ばした。

リーチはもちろん常人や大人とも比較にならない。

それが音符に直撃いたかと思えば、駒のように何度も回転しながら明後日の方向へ吹き飛んでいく。

 

ルフィの駆ける足は止まらない。

それを見たトットムジカはもっと大きな、ルフィの身長を大きく上回る大きさの音符を具現化させる。

向かってくるルフィの進行を妨げるかのように、音符をまたも真向から投擲する。

 

「ゴムゴムの……」

 

両腕を後ろへ伸ばす。

迫る巨大な音符など関係ないとばかりに速度はグングン上がっていく。

あわや、ルフィへと直撃するかと思われた瞬間だった。

 

「バズーカ!!」

 

後ろへ伸ばしていた腕が戻ってくる反動を利用し、そのまま両手を前へと突き出す。

その勢いはまさにバズーカにも劣らない。

なんせ、迫り来た巨大な音符を弾き返す程の威力であったから。

 

それは球体で守られたウタの方へ向かっていく。

上部を掠めるも、小さなヒビが入るのみ。

まだ脱出は出来ない。

 

「下がってろ、ウタ」

 

いつの間にか目の前まで来ていたルフィはそう告げる。

その時には既に右足を天高く伸ばしていた。

 

「〝ゴムゴムの〟!!」

 

伸ばした足が天から落下してくる。

先程と同様、戻る反動を利用して――

 

「〝戦斧(オノ)〟!!」

 

ウタを閉じ込める球体を踏み付ける。

 

パリイイイイイィィィィィンッ!!

 

ガラスが割れるような音と同時、球体が粉々に砕け散った。

それはウタの解放も意味している。

 

「よし!!」

 

「えっ、嘘でしょ!?」

 

ウタを抱えると、トットムジカの肩から勢いよく飛び降りる。

凄まじい高さにウタは驚きを隠せない。

 

「〝ゴムゴムの風船〟!!」

 

直後、ルフィは大きく息を吸ったかと思えば身体を急激に膨らませた。

ポヨンッ!! 風船のように膨らんだルフィを下敷きにウタは無事に地面へ着陸する。

 

「大丈夫か? ウタ」

 

「う、うん」

 

急に膨らんだかと思えば、いつの間にか体型は元に戻っている。

一息吸うだけであんなにも大きくなるとは……これもゴムゴムの実の特性なのだろうか?

 

そんな場違いな思考をしている間にもルフィはトットムジカへと照準を合わせる。

 

「ルフィ、あいつと戦うつもり?」

 

「そうだ」

 

これまでのトットムジカの行動を考えれば、こちらへ敵意を剥き出しである事に間違いはない。

ルフィも戦うつもりで、トットムジカを睨み付ける。

両手を合わせて、ポキポキと関節を鳴らす。

 

「待って。いくらルフィがウタワールドの力で強くなってるって言っても一時的なものに過ぎない!!

 普通、普段の自分の身体と違うなら動きが身体に付いてこれない。いつアンタが倒れるか分かったものじゃないんだ!!」

 

「大丈夫だって」

 

「その根拠は、何処から来るのよ!!」

 

「ゴムだから」

 

「答えになってないじゃない!!」

 

「心配すんなって。本当に何とかなる気がしてんだ」

 

ルフィの返答はウタにとっても頭痛がする。

そんな根拠のない事ばかり言った上に、バカまでに前向きな事しか言わないのだから。

 

「おっと、来たぞ」

 

そうこうしている間にもトットムジカの行動は明らかな変化を見せる。

ウタワールドの創造主でもあり、自分の存在を確実なものにするべく、ウタを奪い返そうとしてくる。

 

「ウタは渡さねェぞ」

 

ルフィはそんな事など分からない。

本能的に察知したとしか言えない。

 

トットムジカは新たに『音符の戦士』とも呼べる存在を顕現させる。

赤紫色で八分音符のマークが描かれた衣服を着込んだ槍と盾を持った細身の戦士。

藍色で二連八分音符のマークが描かれた衣服を着込み、槍に腕に盾を付けて銃を持った大柄の戦士。

その2人がルフィへ特攻してくる。

 

「すうううぅぅぅ!!」

 

一息に空気を吸い込むと、またも身体を膨らませる。

それで迫る戦士を受け止めると、上空へ吹き飛ばす。

 

それだけで終わらない。

そのまま身体を捩じり、吸い込んだ空気を地面へ一気に放出させる。

 

「〝ゴムゴムの〟」

 

身体を回転させながら上空へ浮き上がり、そのまま拳を構え――――

 

「〝暴風雨(ストーム)〟!!!!」

 

ドガガガガガガガガガガガガガガガ!!

 

2人の戦士へ、下から拳をまさしく暴風雨のごとく連続で叩き込む。

 

「うおおおおおおおああああああっ!!」

 

雄叫びを上げ、迫る戦士を天高く突き飛ばす。

これを見ると先程のルフィの発言は適当だったとは思えない程に洗練されていた。

 

そして、2人の戦士が見えなくなった頃、ルフィは着地し、トットムジカへ再び向き合う。

こいつらはトットムジカの産み出した言わば下っ端に過ぎない。

本体を倒さない限り、何も終わらないのだ。

 

「ルフィ!! そいつは"私以上にウタウタの能力を使えてる。戦っても勝ち目なんてないよ!!"」

 

けれども、ルフィの出鼻を挫く発言をしたのは他ならないウタだ。

 

「何でそんな事を言い切れるんだよ? やってみなくちゃ分からないだろ?」

 

「分かるわよ。だって、私とトットムジカは"繋がってるんだから"」

 

ウタが奇妙な事を言い出す。

繋がっている――物理的な意味ではない。

それをルフィが理解するかは別問題だ。

雰囲気から例え話のようなものである事が把握できる位なものだ。

 

「どういう事、だよ?」

 

ウタの話を聞きつつ、トットムジカの呼び出す音符の戦士を撃退していく。

絶え間なく、こちらへ攻撃を繰り返してくる。

しかし、不思議とルフィには問題が無いと直感していた。

それだけ、彼にとって音符の戦士は脅威とは言えなくなっていた。

 

「このウタワールドは私の能力で呼び起こしたもの。本当だったら私の思う通りの事しか起きない筈なの。

 なのに、私の思った事が何一つとして実現しない!! このウタワールドはトットムジカに支配されつつあるのよ!!」

 

ウタの創る世界を乗っ取られた。

このウタワールドが創造主の都合の良い事しか起こらないのは以前にウタが教えているのでルフィも知っている。

 

「もうトットムジカにとって都合の良い事しか起こらない。

 このウタワールドに居る以上、ルフィじゃどう足掻いたって勝てない」

 

支配権がウタからトットムジカへ変更となる事は、勝機をもぎ取られるも同然の事なのだ。

 

「それにあいつは動物なんかとは違う。

 『寂しい』とか『認められたい』とか『誰かに見付けて欲しい』っていう、音楽が好きな人の負の感情の集合体――悪いイメージを形にした、実体のない存在なんだ。

 そんなのを倒す方法なんて、ある訳が……」

 

 

 

 

 

「うるせェ!! そんな事、勝手に決めんな!!」

 

 

 

 

 

しかし、ウタの言葉を全て聞いた上でのルフィの返答はこのようなものだった。

青筋を浮かべて、彼はウタの決め付けにケチを付ける。

 

「な、何を言って――」

 

「だってそうだろ!! あいつに都合の良い事しか起こらないって言うなら"今のおれの姿は何なんだ?"」

 

言われ、ルフィの姿に変化が無い事に気付く。

それは完全にウタワールドが支配されていない事を意味しているのではないか?

 

「お前の言う事が本当だったとして、おれはまだ戦えてる。それに、力がまだまだみなぎってくるんだ!!

 なのに勝てないとか、倒せないとか、勝手に決めんな!!」

 

まだ勝負はこれからだとばかりにルフィは迫り来る音符の戦士をバッタバッタと薙ぎ倒す。

それでも息を乱さず、彼はウタへ言葉を投げ付ける。

自分の持つ力を彼は微塵も疑ってなどいない。

本気でトットムジカを倒すつもりなのだ。

 

「お、りゃあっ!!」

 

迫る音符の戦士を力の限り殴り飛ばした。

勢いが付いて、あわやトットムジカと衝突するかと思われた。

寸前、殴り飛ばされた音符の戦士は不可視の壁に激突する。

 

「何だあれ?」

 

「バリアみたいなものよ」

 

さっきまでそんなものが無かったのは、恐らくはルフィを脅威として認識していなかったから。

ウタがルフィの強さに感嘆し、尚且つトットムジカも障害と認識したのかもしれない。

 

畜生(ちくしょオ)ォ!! あれを何とかしねェと!!」

 

「…………バリアを、いえ何ならトットムジカさえも何とかする方法は無い訳じゃないわ」

 

「本当か!?」

 

ウタには何か秘策があるらしい。

それを聞いた瞬間、ルフィはどうすれば倒す方法があるのか話に耳を傾ける。

 

ウタが何かを決めたのか、その"心境の変化"がトットムジカへと逆流する。

本体のトットムジカ、けしかけてくる音符の戦士の動きが遅くなる。

1体1体の進む速度が遅い。

彼女の話に集中しつつ、音符の戦士を倒すの事は"今の状態のルフィでも造作ない。"

 

無防備なトットムジカへ攻め込みたいが、バリアの突破が出来なければ意味がない事を直感で理解していた。

 

「このウタワールドの支配権はトットムジカにあるけれど、私が創った事には変わりない」

 

この世界を維持しているのは他ならないウタだ。

先程にウタの中で結びついた「ウタウタの能力=トットムジカ」とするが、"ウタワールドを維持できるのは能力者であるウタだけなのだ。"

だからこそ、トットムジカはウタを取り込もうとしている。

 

「現実世界の私はトットムジカの中に居る。シャンクス達の行動を知れたのはまだ私の意識が残っていたからトットムジカを介して知る事が出来たの」

 

ここで言いたいのはトットムジカに自分が閉じ込められているという事実。

つまり、ウタウタの能力をその身に宿すウタ本人が必要なのだ。

だから、トットムジカはウタを取り込んだし、意識を未だに残している。

そこから導き出される結論は――

 

 

 

 

 

「現実世界の私を殺せばウタワールドは永遠に閉じるから、トットムジカは外にずっと居られない」

 

 

 

 

 

少なくともウタワールドを維持できないようにしてしまえば、トットムジカは自然消滅する。

現実世界はシャンクス達が止めている。

それでも、未だに止まらないのだとしたらウタ本人をこのウタワールドへ閉じ込める事をすれば良い。

現実世界のウタが消滅する事で、現実世界とウタワールドとの繋がりは消滅する筈だ。

結果、トットムジカも道連れにウタワールドに永遠に閉じ込める事ができる。

 

あくまで可能性の話だが、ウタワールドの特性は知っている。

試してみる価値はある――――

 

 

 

 

 

「バカか!! そんな事する訳ねェだろ!!」

 

 

 

 

 

しかし、ルフィの一喝で以て、彼女の提案は否決された。

そんな選択肢は最初から用意されていないと言わんばかりに彼はここ一番に怒りの感情を露わにしていた。

 

「お前が死んで、どうするってんだよ!!

 外でシャンクス達はウタの為に戦ってるんだ!!

 おれもそうだ。なのに、お前が死んでどうするんだよ!!」

 

「大丈夫だよ。私の身体は失われたって、心はウタワールドで生きていける。だから、死ぬ事にはならないよ」

 

ルフィの叫びに対し、ウタは穏やかに返す。

同時に彼女の〝死生観〟をルフィへ伝える。

 

精神さえ生きていれば、ウタワールドで生きていける。

故に、肉体の消滅は彼女にとって〝死〟ではない。

〝生〟には心さえあれば良い。

それが彼女にとっての〝死生観〟だ。

 

彼女の得たウタウタの能力が、彼女にとってそのような〝死生観〟を植え付ける結果となった。

 

「そんなの、お前の考えだろ!!

 おれも、シャンクスも、"全部ひっくるめて"お前を助けるんだ!!」

 

しかし、ウタの死生観などルフィには関係無い。

きっと、それはシャンクスだって同じだ。

彼女からシャンクスも戦っている事は聞かされたのだ。

なら、彼がどのように思ってトットムジカに立ち向かうのか、考えるまでもない。

それはルフィ自身が述べた通りの理由だろう。

 

ただ、ルフィよりもシャンクスの方が気持ちは絶対に強い。

そう、何故なら――――

 

「娘の為に、シャンクスは命張ってるんだ!! 心だけ無事なら良いなら、必死になって戦う筈がねェだろ!!」

 

「本当、何でそこまで出来るのかな?」

 

ルフィの言葉にウタは何故か疑問を口にした。

如何なる理由であるのか?

その答えは、次に繰り出された彼女の言葉に記されていた。

 

 

 

 

 

「私は、シャンクスの本当の娘じゃないんだ」

 

 

 

 

 

「えっ!?」

 

ウタはシャンクスの実の娘ではない――――初めて聞かされる事実にルフィも驚きを隠せない。

敵船から奪った宝箱の中に居たそうだ。

その後は赤髪海賊団に拾われ、育てられた。

 

降ってきた突然の情報にルフィの脳の処理の方が追い付かない。

しかし、ウタの独白はルフィの思考を置いていく。

 

「私はシャンクス達に隠してる想いもある。海賊行為は嫌いなの。争いが無くて、食べるものに困らなくて、音楽が絶えない世界が続けば良いって思ってる!!」

 

「…………」

 

「私には、赤髪海賊団に居た時間しか知らない。本当の両親は誰で、何処で生まれたのかも――――私は“本当の自分の事を”何一つ知らずに生きてきた」

 

彼女にあるのは〝赤髪海賊団〟の時の記憶のみ。

物心付いた時にはシャンクス達と冒険していた。

その過程で、彼女はシャンクスの実の娘ではない事を知らされる。

 

彼女の独白にルフィは口を挟まない。

押し黙り、音符の戦士を退けながら彼女の言葉に耳を傾ける。

 

「シャンクス達と一緒に居るのは楽しいよ。だけど、私は“こんな事を考えてもいるんだ。”

 でも、シャンクス達が、ルフィが、この島の人達が私の能力のせいで苦しんでるのを見てられない。

 トットムジカは私の能力なんだから、シャンクス達に迷惑を掛けられない。

 元から力も何も無い私には、自分の全てを使うしかトットムジカを止める方法は無い!!」

 

自分でもスラスラとネガティブな発言をしている自覚はある。

それでも、トットムジカがウタの能力そのものである以上、自分で決着を付けようと心に決めた。

誰も傷付かないウタの理想を実現できる。

自分の追い求めてきた理想とする〝新時代〟の為の最善最良の道を行ける。

 

「色々と言ってくれて嬉しかったよルフィ。アンタだけは何とか現実世界に戻してあげるから、シャンクス達に今の話をしてきて。

 このトットムジカを止めて――――これから来る〝新時代〟の為に」

 

自分の求める〝新時代〟はもう叶えられそうにない。

シャンクス達にだって話した事がない内容まで伝えた。

なら、これから先の未来をルフィに託そう。

いや、彼だからこそ託せるとウタは思えた。

 

この想いこそ、彼女が起こしたトットムジカの動きを鈍らせる程の"心境の変化"だ。

 

 

 

 

 

「だから!! さっきから、お前が勝手に決めんなって言ってんだろ!!」

 

 

 

 

 

託された張本人の怒号が鳴り響いたのは直後だった。

彼女の独白を受け、ルフィの放つ一言はさっきと同じものだった。

しかし、決定的に違うのは彼の怒りが如実に表れていた事だ。

 

「血が繋がって無くたって、本当の家族になれるのを教えて貰っただろ!!」

 

思い出すのはオレンジ髪の色の少女とその母親が教えてくれた。

血の繋がりが無いとか関係ないと言わんばかりに本物の家族にしか見えなかった。

 

シャンクスはウタの事を守る意味を込めて「娘」だと言ってくれている。

けれど、見ていてシャンクスがウタをどれだけ大切にしているのか良く分かる。

あの母娘のようにシャンクスとウタは間違い無く父と娘で、家族なのだ。

 

「嫌いなもの、言えない事があるのも普通だ。考え方だって変わるかもしれねェだろ!!」

 

長い黒髪の女性が教えてくれた。

人には言えない苦手なもの、嫌いなものがある。

彼女は嫌いなものの理由を言えなかったが、そういうものもある。

ルフィにも嫌いなものや言いたくない事があったりするのだからシャンクスにだってある筈だ。

けど、それだって相手にしろ、自分にしろ何かしら考え方が変わるかもしれない。

そう、彼女の死生観に関しても言える事だ。

 

「生まれた場所を知らないからなんだ。お前が生きてきた時間は誰にも否定できない『ウタだけの歴史』だろ!!」

 

ロビンという女性が教えてくれた。

ルフィには分かりづらい内容ではあったが。

人にはそれぞれ自分だけの歴史がある。

自分の過ごしてきた時間は決して嘘ではない。

楽しかった事、辛かった事、それらを全ては誰にも否定できない『ウタだけの歴史』だ。

 

「ウタは〝赤髪海賊団〟の音楽家で将来は〝歌姫〟になるんだろ!!

 お前の考えてる〝新時代〟にしたいんだろ!!

 それなのに、こんなところで終われるのかよ!!」

 

「っ!!!!」

 

彼の言葉にウタの心は揺さぶられる。

そして、トドメの一言を突き付けられる。

 

「お前の想いをぶつけろよ!!

 おれを、シャンクス達を信じろ!!」

 

そこまでの言葉があったからこそ、最後の一言が心に届いた。

幼馴染みの言う通りなのかもしれない。

自分はこれまで想いの丈を誰かにぶつけた事は無かった。

 

ウタの考えはシャンクス達と違っていれば、これまでの関係が崩れると思っていたから。

けれど、トットムジカを通じて見えるシャンクス達の姿――――これまで目にする事の無かった彼らの戦う姿を見た。

必死にウタの為に死に物狂いで戦ってくれている。

微かに聞こえる「ウタを助ける」の声が信憑性を上げてくれる。

 

ただ信じれば良い――――こんなにも単純な事に何も知らないルフィの方が気付いていた。

彼等ならどんな事があろうとも受け止めてくれるという事に。

 

「本当、いつの間にか大きくなってたんだね」

 

ウタが知らない間にルフィは様々な経験をして、精神的にも大きくなっていた。

きっと、これまでの〝冒険〟が彼を成長させたのだ。

 

「うん。ありがとう、ルフィ」

 

ならば、ルフィよりも多くの〝冒険〟をしてきたウタが下を向いて成長を止める訳にはいかない。

ネガティブな思考を振り払うように顔を上げ、前を向く。

 

「後でシャンクスに私の想いの丈をぶつける!! ゴチャゴチャ考えるのはその後にする!!」

 

「そうか!! ししし!!」

 

ウタの答えは問題の先送りにも見えるが、何かが吹っ切れたようだ。

それを見た事でルフィも嬉しくなる。

 

ここで、音符の戦士の動きが鈍くなる。

ルフィが最後に近付いてきた音符の戦士を蹴散らすと、トットムジカも動きを止める。

 

「何だ? 動きが止まったぞ?」

 

「トットムジカはウタワールドを乗っ取っても、本来は私の能力の一部よ。

 あいつの動力源が負の感情――――悪いイメージを利用しているけど、私が良いイメージをしてるから動きが鈍くなったのよ。

 でも、それも一時的なものでしかない」

 

「はー、なるほどなー」

 

「…………多分、良く分かってないでしょ?」

 

ルフィが適当な返事をしているので、話を半分も理解していないと予想が付く。

図体や精神が大きくなっても彼の根本はまだ6歳の頭脳だ。

恐らくだが、今のルフィの肉体と変わらない年齢に達しても小難しい話を理解できない事には変わりなさそうだ。

 

感覚的にウタは理解していた。

あまりにも思考がネガティブになっていたのはトットムジカの負の感情がウタへと流れ込んできたから。

少しの悪いイメージをそのまま増幅させた。

 

今はその真逆の感情をウタは抱いている。

〝希望〟というトットムジカの抱く感情とは全く別種のイメージがウタがそうであったように今度は"向こうへ逆流した。"

その結果なのか、トットムジカの動作は鈍くなったようだ。

しかし、トットムジカの方は〝希望〟を認めない。

より大きな負の感情である〝絶望〟を大きくさせる。

 

「トットムジカを倒す方法があるのかは分からないんだよ?」

 

「大丈夫だ。何とかなる」

 

ウタの懸念をルフィは何の考えもないような回答しかしない。

けれど、何とかなる気がする。

 

外ではシャンクス達もあの手この手でトットムジカを止めようとしている。

恐らくは戦う事が鍵になってくる。

 

「ん? あいつ、動き出すぞ!!」

 

ルフィが言うと、トットムジカは動きを再開した。

やはり、標的となるのはウタ――――否、妨害を行うルフィに攻撃の対象を絞り出した。

 

音符の戦士を新たに産み出す。

数は多い。

けれど、これら全部を薙ぎ倒す。

 

「やってやる!!」

 

ルフィは自らの拳同士を打ち付け、気合いを入れる。

視界に入る音符の戦士を見据え――――

 

「未来だけ信じてる♪

 誰かが嘲ってもかまわない♪

 走ってる情熱が♪

 あなたをキラめかせる♪」

 

背後から歌声が聴こえる。

誰の声かなど、ルフィには振り返らなくても分かる。

 

幼くとも彼女の〝歌声〟には人を奮い立たせるだけの〝力〟が宿っている。

何と言っても、彼女は〝赤髪海賊団〟の音楽家で未来の〝歌姫〟なのだから。

 

「ごめんねルフィ。私には“これ位しか出来なくて”」

 

「何言ってんだ。そんな事ねェよ」

 

ウタは謝るが、その必要は無いと返す。

彼女の歌声を聞いたルフィは身体の奥底からまた力が溢れ出す感覚があった。

そして、彼の服装も黄色のベストにズボンが赤に変わる。

 

ウタはルフィをサポートしてくれる。

ルフィはそれを信じて戦う。

シンプルな戦闘の陣形だ。

 

「私は信じる。皆と、シャンクスと、ルフィと、あいつを倒せるって」

 

「おう!! やるぞ!!」

 

もう迷わない。

ウタは赤髪海賊団を、シャンクスを、ルフィを信じると決めた。

彼は迫りくる大軍を前にしても臆さずに応える。

 

「あいつをぶっ飛ばすぞ!!」

 

「うん!! やろう!! "皆で!!"」

 

少年と少女は目の前の元凶を倒す――――そう、宣言する。




如何でしたでしょうか?
今回は長くなりました。

補足も含めてあとがきも長めになります。

トットムジカが降臨して、ウタワールドに居るのは近くで歌を聞いていたルフィのみです。
なので、彼と能力者であるウタ以外にはトットムジカのみ。
そして、見るからに不気味なトットムジカの肩に閉じ込められるようにされていたウタを見てトットムジカを「敵」と認識しています。

明らかに見た目がバケモノですが、山賊相手にも怯まなかったし、何よりウタはルフィにとっても「友達」なので脇目も振らずに助けに向かいます。
子どもなのに彼のメンタルの強さときたらとんでもない。

またウタワールド内にてルフィの姿の変化について。
映画本編でウタの能力で「本人の望む物の具現化」と「何人かのキャラの容姿の変化」が出来た事からの解釈となっています。

前者の部分は音符をゾロにピンポイントにお酒を、女の子に人形を変化させて居た事から「多少なりとも」他者の思考を読み取って具現化させる事が可能なのではという点。
後者は小さくされたベポ、ブルーノのように弱体化が可能ならば「その逆に強化」も可能なのではないかと予想しました。

と言う訳で、ルフィのように「良い意味」での変化も起こるのではとの解釈となります。


第一形態のトットムジカの強さは本来のものもありますがウタの身体と経験が混ざって却ってそれが「足を引っ張っている」ので映画本編よりも弱い状態にあります。
それに加えて互いの感情や思考が「ほぼ」共有されています。
故にウタが急にネガティブな思考や発言をしたのは「この為」となります。
逆にウタがプラス思考になると、トットムジカの動きの方がにぶくなっています。
音符の戦士も同じです。

なのでほぼほぼ初期のルフィ1人で何とかなっています。
何ならウタの話を聞きながら余裕を持たせるような状態にしたとはいえ音符の戦士を撃退してますし。
最低でも身体能力はアラバスタ編以降程はあります。
ストームしてますし。

恐らくこのトットムジカが一番の独自解釈ですね。


ようやく下準備を話せます。
ここへ来る前にナミ、ハンコック、ロビンと関わって貰ったのは全て「ウタの死生観へ指摘する為」でもありました。
当初はこの話の前の登場キャラはナミだけの予定で、残り2名はこの後の予定だったのですが、彼女への言葉を投げる時の説得力が欲しくて早期に彼女等の力が欲しくて出番の先回しにしました。
ビビ等はまたの機会に(ごめんよ)
子どものルフィの「考え方の成長」を促してくれました。

正直、作者もウタの本編での集団自殺紛いの行動は如何ともし難い感情があります。
あの一件はウタの「死生観」が招いた結果でもありましたので。
いくらここでトットムジカをどうにかしてもウタ本人の「死生観」を何とかしない限りはエレジアに残っても、仮にシャンクス達と戻っても、仮にルフィと共に海へ出る選択をしても、下手をすると映画と同じ事を行いそうだなと感じました。
誰かに打ち明けたり、何かしらのきっかけは必要でしょう。
ただ、このままだと誰にも打ち明けずに突き進んでしまうかもしれません。
現にシャンクス達やゴードンも彼女の「死生観」に関しては知らないような印象を受けました。

この時点で彼女の「死生観」が映画本編時間軸と変わらないのは特典等の情報から明らかになっていたので。
まあ、まだ「死生観」周りは解決はしていないですし、これを乗り越えてからですが。

あとは作者の趣味でワンピースの曲の出だしを使いました。
ウタにして欲しい事を考えた時、自然とこの曲が出てきたので。
ウィーアーはちょっと合わなかったので今回は無しで。

歌で力が付くのは「ウタワールドだから」なのと「特定の人物だから」という事で。
でないとコブコブの実との差別化が出来ないかなと。
あとで何か考えておきます。
とりあえず考えるな、感じるんだ状態です。



さて、補足も含めて長くなりました。
戦闘シーンも見辛かったらアドバイス頂ければ直していきます。
ちなみに途中まで技に〝〟の表記が無かったのはわざとです。
バラティエ編まで技に〝〟の表記が無かったので、せっかくなら真似してみようと思いまして。

作者の見落としがあればこっそり教えて下さい。
答えてからここに補足しておきます。

では、また次回に。
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