喫茶リコリコにオーナーがいたら。   作:ゆずれもん 

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後書きに原作のネタバレ含んでいるので閲覧注意です。


ep.3

「久しぶりだな、ウォールナット──」

 

「あぁ、久しぶりだな、とは言っても1か月ちょっと前に話してるけどな。」

 

驚きの表情を向ける千束とたきなを間に会話を続ける。

 

「よく俺の居場所が分かったな。」

 

「な~に、僕にかかればネットの海をちょちょいのちょいよ!」

 

「俺に直接連絡してきてくれたら良かったのに...」

 

「君を驚かせるには丁度いいデモンストレーションだったろ?」

 

「まじリコリコのメールのほうにウォールナットからメールって聞いたときは心臓飛び出るかと思ったわ...」

 

 

 

「ちょちょちょちょっと待てぇい!!」

 

2人に構わず話してると流石に千束からストップが入る。

 

「え?え?え?二人は知り合いなの!?」

 

「まぁな、仕事仲間というか、ほら、協力者だよ。」

 

「...あ~、そういうね」

 

 

ある程度の事情を知っている千束は察してくれたがたきなはまだぽかんとした表情だ。

 

まぁ詳しい事はまた今度話すことにしてとりあえず今は...

 

 

「わり、ちょっとクルミと2人で話したいことあるからちょっとお店戻ってくれるか?」

 

「え~何話すんだよぉ~」

 

「ほら、いきますよ千束さん。」

 

たきなにすまん!と手を合わせて千束を連れてかせる。

 

2人が部屋を出て行ったのを確認して話を切り出す。

 

「さてと、クルミに確認したいことあるんだけど...」

 

「お、なんだー?」

 

「先月ラジアータをハッキングしたのお前だろ?」

 

「...っ!」

 

途端に焦った表情を見せるクルミをひとまず落ち着かせる。

 

「いや、別に怒ろうってわけじゃないよ。その時は俺がDAに関わっていること知らなかったんだろ?」

 

「そうなんだ!君に迷惑をかけるつもりは...」

 

「でも!あの事件が原因でたきなはここに左遷されてきたんだ。

今すぐじゃなくてもいい、いつか、ちゃんと謝っとけよ。」

 

あぁ。と小さくうつむきながら呟く。

 

今のたきなじゃ難しいかもしれないけど、いつか許せるようになるときがくるかもしれない。

それまでは──

 

「ま、とりあえずはあの2人に協力してやってくれ。」

 

「あぁ、わかった!」

 

「よろしくな、クルミ」

 

そう言って手を差し出すと、クルミのほうも握り返してきた。

 

その小さな手からは想像つかないような頼もしいメンバーがまたリコリコに加わったなぁと俺は満足感を覚えていた。

 

 

 

──────────────────

 

カランコロン

 

 

「っというわけで~、閉店ボドゲ会スタート!!」

 

千束の掛け声とともに歓声が沸く。

 

お客さんは決して多くないけれど、こうして地域の人のたまり場のようになれるのはここの良いところだ。

 

その輪にクルミがもうすっかり馴染んでいるのも流石というかクルミらしいというか。

 

それに対して...

 

たきなはさっと断って奥の方へ引っ込んでしまった。

こっちの方もある意味たきならしいといえばそうなんだが...

 

そんなたきなを見て千束が更衣室のほうへ追っていったので、俺もみんなに先に始めててと伝え奥に入っていく。

 

すると千束とミカさんの声が聞こえてきた。

 

「先生の頼みならきいてくれるでしょー楠さん。」

 

「お前まだ行ってなか──

 

 

ガラッ!

 

「指令と会うんですか!?」

 

「うおっ、バカ服!!」

 

千束が慌てて扉を閉め、こっちをにらむ。

 

慌てて目線を逸らす男2人。

いや、不可抗力ですよねミカさん...?

 

千束のだらしない格好は見飽きるほど目にしたが流石にいい年の女の子が下着姿で出てくるのは心臓に悪い。

ほら、いまだにちょっとバクバクしてる。

 

そんなことを考えているとあっという間に着替えを終えたたきなが再び現れる。

 

「私も連れて行ってください、お願いします。」

 

そう言って頭を深く下げるたきな。

 

それだけ、それだけまだDAへの思いが強いんだろう。

ここに送られてきて簡単に戻れるとは到底思えないけれど。

 

でもまぁ、

 

「連れて行くくらい、いいんじゃないか?

俺も本部に報告書出しに行かないとだし、

明日3人で一緒に行けば。」

 

そう伝えると千束も少し笑って答えた。

 

「わかったよ、たきな」

 

 

──────────────────

 

 

「早川さんは3階オフィスの方でお待ちください。

錦木さんは体力測定ですので隣の医療棟へ、

井ノ上さんは──」

 

相変わらずの厳重すぎるセキュリティを抜け、受付の方の案内を受けていると後ろを通る足音と共にぼそぼそと声が聞こえてくる。

 

「ほら、味方殺しの...」

「DAから追い出されたんでしょう?」

「組んだ子皆病院送りにするんだって。」

 

 

...なるほどね。

 

たきなはDA内に不安を抱かせないためのトカゲのしっぽか。

ラジアータのハッキングなんて公になったら疑心暗鬼のリコリスを必ず生むだろうしな。

 

とはいえたきなにこの声を聞かせ続けるのは酷だし、今にも千束のほうがぶちぎれそうだ。

 

俺はたきなの頭にそっと手を乗せて最小限の声でつぶやく。

 

「報告ミーティングが終わったら楠さんにたきなの話を聞いてもらうように頼んでおくから、今はどっかで時間潰しておけ。」

 

「はい、ありがとうございます。

...私、訓練所に行ってますから。」

 

そう言って走り出すたきな。

 

千束も追いかけようとするが腕を引いてそれを止める。

 

「千束も、さっさと終わらせてからたきなのフォローしてやれ」

 

一瞬、何か言いたげな表情をみせたが、すぐに溜息と共にわかった。と一言返事をして医療棟に向かっていった。

 

 

わかってるよ千束。

 

何とかしてあげたいのは俺も一緒だから。

 

 

──────────────────

 

 

「───以上、今回の報告になります。」

 

「うむ、ご苦労。ではいつも通りデータベースに保存しといてくれ。」

 

「了解です。ところで楠指令、この後少しでいいんでたきなの話を聞いてあげてくれませんかねぇ?」

 

「聞いて何になる。あいつの今の所属はそちらだろう。聞いてやる義理はない。」

 

 

あまりの物言いに思わずため息がこぼれる。

 

 

「はぁ、たきなから聞きましたよ?任務中に本部との連絡が途絶えたって。

ここの通信含む諸々のネットワークは全部ラジアータを介してる、つまりラジアータに問題があったんですよね?」

 

「...もうDAの人間ではなくなった君に教えることは何もない。」

 

「答えられないのなら構いません。でももしたきなにほんのわずかでも罪悪感があるなら、あの子の話を聞いてあげてくれませんか。

本当に聞くだけでもいいんで。お願いします。」

 

そう伝えて頭を深く下げる。

今の俺がしてあげれることはこのくらいしかないから。

 

はぁ、と小さなため息が聞こえる。

 

「数分だけだ、私も忙しいのでな。」

 

「ありがとうございます。」

 

そうお礼を言うとすぐに楠さんは部屋を出て行った。

俺は最後の報告書整理があるから急いで終わらせにかかる。

 

 

あとは頑張れたきな。

変わって、成長して見せろ。

 

 

 

──────────────────

 

 

やっべ、だいぶ時間食っちまった。

 

慌てて訓練棟に向かってると噴水広場の方へ走っていくたきなが遠くに見えた。

 

 

まぁやっぱりそうなるよなぁ...

表情を見るだけでその場に居たかのように何があったかわかる。

 

少しすると同じ方向から千束が走ってくる。

 

 

(ここからのケアは俺たちの仕事だぞ)

 

(うん、大丈夫。私に任せて)

 

 

こちらに気づいた千束とアイコンタクトを交わして俺は楠さんのもとに行く。

 

「約束は果たしたぞ。」

 

「ええ、ありがとうございます。後は俺たちの役割です。」

 

 

俺も元指令だからわかっている。

この決断を下す要因には指令という立場よりもっと上の力がかかっていることを。

 

この選択を選んだのは楠さんだったかもしれないが選択肢に入れさせたのは間違いなく上層部。

 

大方慢心しきっていたラジアータの機密性にひびが入って慌てて命令してきたのだろう。

 

『ラジアータがハックされたことを一切表に出さずに事態を収拾させろ。』と。

 

 

指令に挨拶を終えた俺は噴水広場に向かってくと、そっちから千束が走ってきた。

 

「伝えたいことは伝えたから、あとはたきな次第。

私は模擬戦に行かないといけないから、もし踏み出せずにいたらその時は背中を押してあげて。」

 

「あぁ、わかっている。ありがとな。」

 

「へへ、まぁ相棒で先輩ですから!」

 

 

自慢げに笑いながら練習場の方へ走っていった。

 

 

──────────────────

 

 

(おー、悩んでる悩んでる)

 

噴水広場へ行くとベンチに座ってうつむくたきながいた。

 

驚かせないよう足音をたてながらたきなのもとに行き、隣に腰を下ろす。

 

「...不思議なやつだよなぁ、千束って。」

 

「私にはまだ彼女の言っていたことが理解できません。」

 

「千束はなんて?」

 

「今はお店の皆との時間を試してみて、もしチャンスがきたらその時にしたいことを選べばいい、と...」

 

「ははっ、あいついつも『やりたいこと最優先!』とか言って好き勝手してるからなぁ。」

 

「今までDAで役に立つためだけに戦ってきて、今更やりたいことなんて...」

 

「たきなはまだ知らないだけだよ、DAの外にはまだまだ楽しいこともやってみないとわからないこともがたっくさんある!

何もわからない領域に一歩踏み出すのはすごく不安になるかもしれないけど、そんなときは俺も千束もリコリコの皆で支えてあげる。

俺たちは仲間だから。試してみたい事どんどんしちゃえばいいんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「...私行ってきます!」

 

「おう、思いっきり好きにしてこい!」

 

 

走り出すたきなの表情はまだ少しの緊張を含みつつも、

出会ってから見た中で一番の輝きだった。

 

 

──────────────────

 

 

たきなを見送って実戦練習場で見た光景は爽快だった。

 

俺がついたときにはすでに千束が優勢だったが、そこからたきなの豪快なグーパン...

 

 

模擬戦の片づけを終えてたきなのもとへ行くとフキと話しているようだった。

 

「これでおあいこですね。」

 

「ちっ、やっぱりお前使い物にならねぇリコリスだよ!」

 

「ぷっ、あははは!わりぃなフキ、うちの教育がなってなくて。」

 

「あんなリコリスは千束でもう十分なんだよ、元指令様」

 

可愛げのない嫌味に手を振ってたきなと共にその場をあとにする。

 

 

「...お堅い優等生様からすっかり悪い子になっちゃって。」

 

「...一体誰の影響でしょうね。」

 

2人で目を合わせ、徐々に笑いがこぼれる。

 

初めてたきなの笑顔が見れた。

 

きっとこれからはもっと見ることも増えるだろう。

 

小さなワクワクを胸に俺たちは帰路についた。

 




いやーアニメ最終話最高でした...
ただ、この話を書き始めたのが11、12話くらいだったんですが、
正直千束が死ぬ想定で考えていたのでどうしようどうしようと頭を悩ませています。
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