サッパリとした男前 とりまる   作:mowさん

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こんにちは
遅くなりました!ちょっと最近流行りのウイルスに罹ってしまいまして…。
今回は多分のの回です。


10話 藤丸のの

 

ボーダー本部。

三輪隊の作戦室、その一角にある4畳半程度の和室に3人の女子が集まっていた。

そのうちの1人。綺麗な黒髪が目を引く、まさに大和撫子というのがふさわしい女子ーー三輪隊のオペレーターである月見蓮ーーが口を開いた。

 

「それで、のの。相談って何?」

 

その視線の先にいるのはふわふわの茶髪をボブに切りそろえた女子。弓場隊のオペレーター、藤丸ののだ。

本日、月見は藤丸に「相談がある」と持ち掛けられたため、三輪隊の作戦を男子禁制にして女子会の会場にしている。

 

月見は締め出してしまった男子たちに申し訳なく思いつつも、堂々と女子会を決行していた。彼らは女子会を開催するための尊い犠牲となったのだ。南無。

そんな三輪隊を裏で統べている月見だが、聡明な月見を持ってしても相談の内容を予想できなかった。中々口を割らない藤丸に対し質問を投げかける。

しかし、藤丸は「いやあ、そのー」という感じで言い淀む。見かねた月見はもう1人の女子に話を振った。

 

「…羽矢も何か言ってあげて」

 

羽矢と呼ばれた茶髪ロングの女子は、湯吞に注がれた緑茶を静かに啜る。

彼女は今期新設された王子隊のオペレーター、橘高羽矢。

橘高と藤丸、月見は同い年であり、気の許せる友人として以前からよく一緒に行動している。

また、藤丸と月見は橘高の秘密を知る数少ない人物でもあった。

 

「のの、あんた普段はもっとズバズバいうタイプでしょ?何で言い辛そうにしてんのよ」

 

「確かにそうだなぁ。…よし、単刀直入に言うぞ」

 

藤丸が大きく息を吐き、覚悟を決めた瞳を見せる。

そんな様子を見ていた2人も自ずと真剣な表情になり、相談に対して真摯に向き合う姿勢を見せた。

数秒後、藤丸の口が開く。

 

「…京佳が……帯島に取られちまうかもしんねえ…!」

 

「「…はい??」」

 

その言葉を聞いた月見と橘高は思わず間抜けな声を上げた。

意味が分からなかったが、藤丸の瞳は真剣そのものだ。真剣な相談という事は理解しているが、如何せん相談内容が意味不明すぎる。

考えることを諦めた月見が、右手で頭を押さえながら言う。

 

「…どういうことかしら?」

 

「つまりだなァ」

 

変わらずに真剣な表情を見せている藤丸が詳しい説明を始めた。

烏丸京佳が弓場隊の新人である帯島ユカリの師匠になった。このままだと帯島に京佳が取られてしまうかもしれないーーと。

その説明を聞いた2人は「そもそも京佳くんはお前の物じゃねえだろ」というツッコミをいったん飲み込み、驚きを露にした。何せ、京佳が弟子を取るというのは初の出来事だったからだ。

 

「へえ、京佳くんがねえ…」

 

「京佳くんの弟子かあ…。京佳くん、よくOKしたわね」

 

「まァ、弓場の頼みじゃ断れねぇだろうよ」

 

藤丸の言葉に2人は納得する。

圧倒的な兄貴肌である弓場の直々の頼みを断れる人間は多くないだろう。それは京佳であっても同様だ。

 

「あー…それは断れないわね…。京佳くん、今回が初弟子よね?」

 

「そのはずよ。…まあ、そもそも京佳くんに弟子入りしようとする人間があまりいなかったからでしょうけど」

 

橘高の問いに答えたのは月見だ。いつもと変わらない落ち着いた様子で述べる。

月見の言う通り、今まで京佳に弟子入りしようとした人間はほとんどいない。理由は京佳が慕われていないから…ではなく、人気すぎる故だ。

京佳には男女問わずファンが存在し、その数はボーダー内では3指に入る。ちなみに残りの2人は京介と嵐山だ。

そんな大人気イケメンの京佳の弟子になろうものなら、周囲のファン達の嫉妬の視線を一様に浴びることになる。その視線から生まれる圧倒的な圧力に耐えれるメンタルを持つ人間などいないだろう。

そのため、京佳に弟子入りを申し出た人間はほぼ皆無。例外として加古望が挙げられるが、「いや、俺射手じゃないし加古さん普通にめっちゃ強いし年上の女性に教えんのは気まずいんで…」と言われて断られていた。無念。

ちなみに同じ理由で京介にも弟子はいない。

 

「その帯島って子は女の子?」

 

「ああ」

 

「…それは…嵐が起きそうね」

 

橘高の質問に藤丸が答えると、月見の顔つきが鋭くなる。

初弟子というだけでも波乱を生みそうなニュースだが、それに加えて女子ときた。月見の言う通り、この話が広まればボーダーが嵐に包まれてしまうのは火を見るよりも明らかだった。

特に、このニュースを聞いた時の京佳ファンガールの行動が予想できない。

自分たちも京佳に弟子入りしにくる…とかであれば可愛いものだが、嫉妬を爆発させた過激派たちが何をするかは予測不能だ。

とはいえ過激派の人数は多くないうえ、過激派の筆頭が加古望(アホ)のため問題ないだろうが、万が一の可能性も捨てきれない。

 

「それでよ、京佳って年下に甘ェだろ?年も近えし、帯島が京佳に惚れちまう可能性が高ェ」

 

「惚れちゃうだけならいいんじゃないの?別に付き合うと決まったわけじゃないんだし」

 

「そりゃあそうだけどよ。ライバルが増えちまうだろーが」

 

藤丸の言葉に反応した月見。それに対して藤丸は即座に切り返した。

要するに、帯島が京佳に惚れたらライバルが増えてしまう、その前に何とかしたい、というのが相談の本質のようだ。

藤丸は真剣な表情をしているが、相談の内容が内容なので何とも言えない雰囲気になっている。

とはいえ、橘高と月見も10代の乙女だ。藤丸の気持ちは分からないでもない。

ライバルが増えるという事はつまり、自分の恋が叶う確率が下がるのと同義だ。まして、相手は強力なライバルが数多く存在する京佳。少しでもライバルを減らしたいという気持ちは理解できる。

とはいえ、まだ惚れると決まった訳じゃない年下のチームメイトに対して何か策を弄するというのは少し大人げないように思えるが、背に腹は代えられないのだろう。

 

「まあ、話は分かったわ。それで、どうするつもりなの?」

 

「わかんねェ…どーすりゃいいと思う?」

 

藤丸は橘高の質問に対して質問で返す。その質問に対して2人は「質問を質問で返すなァ!」と某殺人鬼よろしく激怒する…ということはなく、真剣な表情で思案を始めた。

数秒後、まず口を開いたのは橘高だ。

 

「なら、さっさと告白なりすればいいじゃない」

 

「いや、無理だなァ。あいつ、あたしのことを姉貴みたいなもんだと思ってやがる」

 

藤丸の言葉に橘高は納得する。

確かに、京佳から見た藤丸は気のいい姉貴といった印象だろう。頼れる先輩として見られてはいるが、女として見られているかと言ったら微妙だ。頭を撫でられたり背後からハグされても何の反応も示さないあたり、異性の恋愛対象としては見られてない可能性がある。

 

「というか、まだ恋に発展すると決まったわけじゃないんだし、そんなに焦らなくてもいいんじゃない?」

 

次に口を開いたのは月見。

飛び出した言葉は至極真っ当な意見だ。まさに正論と言えよう。

確かに京佳はイケメンであり、帯島が惚れる可能性はあるだろうが、100%ではない。

実際、月見と橘高は京佳のことをイケメンだとは思っているが別に惚れてはいないーー橘高は京佳を創作の際のモデルにしているため、惚れた惚れない以前の問題かもしれないが。

とはいえ、どんな理由があろうと2人が京佳に惚れていないのは事実。どんなにイケメンでも全女子が惚れる訳ではないという証左だ。

しかし、藤丸はその言葉をバッサリと切り捨てる。

 

「いや、ぜってェ惚れる」

 

藤丸は正に自信満々、曇りなき眼を凛と輝かせる。

その瞳を真っ直ぐに見据え、月見は静かに質問を紡ぐ。

 

「……その心は?」

 

「京佳ほどのイケメンによ、マンツーマンで指導されたら惚の字になるのは分かりきってるだろォが!」

 

正に迫真。藤丸は覇気溢れる表情で答えた。

あまりにも迫真過ぎたため2人は一瞬気圧されるが、橘高は負けじと反論する。

 

「根拠になってないわよ。ただの憶測じゃない」

 

「羽矢ぁ、想像してみろよ?...訓練室で京佳と2人きり、優しくも真剣な表情の京佳に手取り足取り教わっちまったら…惚れるに決まってんだろ?」

 

「そんなこと…」

 

橘高は藤丸に反論しようとするも、脳内では京佳と2人きりのシチュエーションを妄想していた。ボーダー屈指の隠れヲタクである橘高のヲタク脳がフルに回転する。

 

ーーー

訓練室に京佳と2人で立つ橘高、初めての戦闘訓練が上手くいかずに落ち込む橘高に京佳が声をかける。

 

『羽矢さん、最初はそんなもんすよ。気にしないでください』

 

『でも…京佳くんが忙しい合間を縫って教えてくれてるのに……私ってほんと駄目ね…』

 

『…そんなこと言わないでくださいよ』

 

『えっ…?』

 

俯く橘高の手に京佳の手が重なる。驚いて顔を上げると、目の前には真剣な瞳で橘高を見つめる京佳がいた。

 

『羽矢さんはダメなんかじゃない。ちゃんと努力することができる…素敵な人です』

 

『そんなこと……っ!?』

 

再び俯こうとした橘高の顔に、京佳の手が触れる。

顎を優しく抑えられ、顔を動かすことができない。

 

『顔…下に向けんなよ』

 

いつもよりも低く鋭い声に橘高の息が詰まる。けれど、橘高は顔を逸らすことができない。

そのまま京佳の顔が徐々に近づいてくる。

 

『や、だめ…』

 

『…うるせえ口だな』

 

『あっ…』

 

そうして2人の唇が重なって...。

 

ーーー

 

「なるほど…」

 

妄想を終了させ現実に戻る。橘高のヲタク脳をフル回転させた妄想であり、京佳のキャラ崩壊もが甚だしいが、本人の表情を見るに大満足のようだ。あまりにもアホすぎる妄想である。「うるせえ口だな」とか少女漫画以外で初めて聞いた。もっと他になかったのだろうか。

数秒間黙りこくっていた橘高を月見が訝しげに見つめていたが、そんなことは気にせずに橘高は言葉を発する。

 

「これは…惚れちゃうわね、間違いなく」

 

「だろォ?」

 

「なんでそうなったの?」

 

月見と藤丸は正反対の反応を示す。藤丸は嬉しそうな笑顔を見せているが、月見は「意味が分からない」と言いたげな表情だ。

橘高が今の妄想だけで京佳に惚れてしまう事はないが、本人に目の前で同じ事をされたら…橘高といえど惚れてしまうかもしれない。

三次元に興味はない、と言っている橘高でさえこうなってしまうのだ。普通の女子なら一瞬で惚れてしまってもおかしくないだろう。

 

「こうなったら、ライバルが増える前に武器を使って仕留めに行くべきじゃないかしら?」

 

橘高が言う。何やら狩猟民族のような言い草だが、別に京佳を殺そうとしているわけではない。心を仕留める、という意味である。

藤丸はそれを瞬時に理解したが、武器とは一体何か、それが分からなかった。そのため、橘高に訝しげに聞き返す。

 

「武器ィ?」

 

「ええ、それよ」

 

橘高が指さしたのは…藤丸の胸部。服の中で大きく実った2つのメロンだ。

藤丸は自らの最強の武器に目をやる。両手で下からメロンを持ち上げながら言った。

 

「これでかァ?京佳が胸ごときに靡くとは思えねェけどなァ…」

 

たゆんたゆんと柔らかく揺れるメロンを見た橘高は思わず眉間に皺を寄せ、自分の胸に手を持っていく。だが、世の中は無常。自らの胸部にたゆたゆに実ったメロンなど存在せず、手は胸の前の虚空を切った。

 

「まあ、確かに...」

 

1人落胆しつつ、何とか口を開く橘高。

確かに藤丸のふじまるは強力な武器だが、京佳が相手となると話が違うのではないか。京佳は胸ごときでは靡かないんじゃないか、と予想した。

 

「そんなことないんじゃない?男子ってのは基本、大きなおっぱいが好きなのよ」

 

口を開いたのは月見だ。橘高の唐突な掌返しに困惑していたが、漸く冷静さを取り戻したようだ。

自信満々の月見。どこからその自信が湧いてくるのだろう、と橘高は疑問を浮かべる。

 

「それ、京佳くんもなの?」

 

「ええ、本人が言ってたわよ」

 

「え!?」

「あァ!?」

 

月見の爆弾発言に2人は目を見開く。

本人が言ってたとはどういうことだ?京佳が自ら月見の前で「おっぱいすき」とでも言ったのだろうか。

もしくは、月見に対して「おっぱい触らせてください」とでも言って頭を下げたのだろうか。

どっちにしろただの変態であり、京佳がそんな行動を取るとは考えにくい。

様々な憶測が2人の脳内を飛び交う中、月見が口を開く。

 

「昨日、出水くんと京佳くんがラウンジで話してるときに通りかかってね。たまたま聞いちゃったのよ」

 

月見はそのまま、昨日聞いた話を2人に伝える。

 

昨日、月見が三輪隊の作戦室へ向かう途中、ラウンジを通りかかると偶々出水と京佳を見かけた。

急いでいたため話しかけはしなかったが、2人の会話が少し聞えてきたのだ。

 

『なあ京佳。お前、胸とおしりどっち派?』

 

『胸っすね』

 

『即答かよ』

 

といった如何にも男子学生特有のトークだったらしい。

月見がそれを伝えると、2人はホッとした表情になる。

 

「よかったわ、男子がよくする会話を聞いちゃっただけなのね。てっきり私は京佳くんが蓮に対して、胸を見せてください、とか言ったのかと思っちゃったわ」

 

「そんなわけないでしょ」

 

橘高の言葉にため息混じりのツッコミを入れる月見。

 

「そりゃあな。そんなこと蓮に言ってたら変態だしなァ」

 

「ええ、それはさすがの私もドン引きよ」

 

何はともあれ、月見の活躍で3人は強力な情報を手に入れた。

そう、京佳は胸派だということ。そして、今ここにはボーダーTOPのサイズを持つ女子がいる。

戦いは敵の弱点を突くことが大事。そして、こちらには敵の弱点になりうる強力な武器がある。

つまり、相手の弱点を突く準備は万全という事だ。

 

「京佳が胸派ってこたぁ、この胸を使って誘惑しちまえばいいってことだな?」

 

「ええ、他に取られるのが嫌ならさっさと自分のものにしちゃいなさい」

 

「要するに、既成事実を作っちまえってことだろ?」

 

「いえ、そこまでは言ってないけれど…」

 

藤丸の言葉に困惑する月見。

恋愛における既成事実ってのはつまりセッ…のことを指すのだが、本当に意味が分かってるのかと月見は不安になる。

それは橘高も同様で、不安げな表情で藤丸に声を掛けた。

 

「既成事実まではいかなくていいわよ…。色仕掛けで相手に自分を意識させて、その後にアタックして落とすってことよ」

 

「なるほどなぁ…!よし、じゃ行ってくるわ」

 

「…え?今から行くの?」

 

「噓でしょ?行動力すごすぎない?」

 

藤丸が不意に立ち上がる。残りの二人は呆気にとられつつも言葉を吐いた。

 

「ったりめーよ。善は急げっていうしなァ」

 

そう言って藤丸は作戦室を出ていく。

色々とツッコミを入れたい部分があったが、もう今となっては後の祭りだ。

湯吞に注がれた茶を啜りながら、月見が最も懸念していることを口に出した。

 

「…今思ったけど、胸を使って色仕掛けって……ののに出来るのかしら?」

 

「…さあ?」

 

2人の懸念は最もだ。

藤丸は容姿こそ整っているが、その豪快すぎる性格ゆえかあまりモテない。そのうえ自分から他人を好きになるということも今まで無かった…というより、恋愛というものにあまり興味がなかった。

故に、藤丸は恋愛経験0なのである。

そんな彼女が急に色仕掛けでアタックするなど……よく考えたら不可能なのではないだろうか。

不安しか残らないが、2人にはどうすることもできない。あとは藤丸次第だ。

心の中で応援しつつ、2人は再び湯飲みに口を付けた。

 





2回目のアンケ入れてます
各アンケートの上位の方から書いていこーかなーと。

第二次 書いて欲しいキャラ

  • 那須玲
  • 熊谷友子
  • 真木理佐
  • かわいいかわいいマリオちゃん
  • 香取葉子
  • 小佐野瑠衣
  • 今結花
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