サッパリとした男前 とりまる   作:mowさん

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大変長らくお待たせしてしまいました。
これからはちゃんと更新したいと思います。頑張ります


16話 ホワイトデー①

 

 3月14日。所謂、ホワイトデーである。

 一般的にホワイトデーとは、バレンタインデーに女性からチョコを貰った男性が、お返しとしてクッキー等のお菓子を渡す日である。

 このイベントは基本的に、バレンタインデーに女性からチョコを貰うことが出来た勝ち組にしか参加できないイベントであり、チョコを1つも貰っていない負け組からすれば特に何もすることがない。

 勝ち組は女性にお返しをし、負け組はその様子を見て血涙を流す。それが、ホワイトデーというイベントだ。

 

 当然、三門市にもホワイトデーは存在している。

 ホワイトデーを間近に控えた今日、ボーダー玉狛支部に3人の男たちが集結していた――。

 

ーーー

 

「さて、お前たち。準備は良いな?」

 

「「うす」」

 

 ボーダー玉狛支部。

 元は川の水質管理に使用されていた施設を改造して造り上げられた基地の一画にて、3人の男たちが佇んでいた。

 1人は、鍛え上げられた筋肉を持つ男の中の男、ボーダー玉狛支部所属の木崎レイジだ。彼は落ち着いた筋肉の異名を持つ、ボーダーのナンバーワン筋肉だ。

 そんな彼の前に立つのは2人の男。もさもさした男前の烏丸京介と、さっぱりした男前の烏丸京佳だ。

 ボーダー屈指のモテ男たちと、ボーダー屈指の筋肉が揃った。A級の実力者である彼らがなぜ、この場に集まっているのか。もうお分かりだろう。

 そう――。

 

「今日はお前らにマカロンの作り方を教える。しっかりついてこい」

 

「「了解」」

 

 ホワイトデーのお返しを作るためだ。

 レイジはとある女性に、烏丸兄弟は大量のファンガールたちにお返しを送るため、本日は玉狛支部のキッチンでクッキングだ。

 エプロンに身を包んだ3人は戦場(キッチン)に足を踏み入れる。静謐な空気の中、静かな筋肉が口を開いた。

 

「お菓子作りで一番大切なことは、分量をしっかり計ることだ。目分量は絶対によせ。いいな?」

 

 レイジの真剣な言葉に、烏丸兄弟は力強い眼差しで答えた。そしてレイジ主導の元、マカロン作りがスタートした。

 3人とも料理ができるという事もあり、滞りなくマカロン作りは進んでいく。素晴らしい手際で調理を進めていき、あっという間に完成まで漕ぎつけた。

 

「おお~」

 

「うまそう」

 

 トレーの上に並べられた色鮮やかなマカロンを眺め、京佳と京介は思わず感嘆の声を上げた。ピンク色や緑色など、色とりどりのマカロンは鮮やかで美しく、見ているだけでも楽しい気分になってくる。

 ウキウキした様子の兄弟は、2人同時に物欲しげな目でチラリとレイジを見た。何を言わんとしているか一瞬で察したレイジは、やれやれといった様子で溜息を吐く。

 

「…1個だけだぞ」

 

「やったぜ」

 

 料理長の許可を得た2人は、焼き立てのマカロンを1つ掴み、豪快に頬張った。サクサクした生地の中にふわふわのクリームが隠されており、その2つが絶妙なハーモニーを奏でている。焼きたてという事も相まって、思わず笑顔になってしまう美味しさだった。

 普段はクールな2人の男前が珍しく破願していると、支部の入り口が勢いよく開いた。中に入ってきたのは、赤を基調とした制服に身を包んだ1人の美少女だ。

 

「ただいま~って、メッチャ良い匂いするんだけど!なになに!?何作ってるの!?」

 

 羽のようなアホ毛をぴょこぴょこさせながらキッチンへと向かってくるのは、ボーダー玉狛支部所属の小南桐絵。玉狛第一のエース攻撃手でありながら、簡単に騙されてしまうモテカワガールである。

 犬のように素早く甘い匂いを嗅ぎ付けた小南がキッチンに到着すると、トレーに並べられている大量のマカロンを見て目を輝かせた。

 

「マカロンじゃない!え、これ食べていいやつ!?」

 

「悪いが、これはホワイトデー用のやつだ。食うのはダメだ」

 

「ええ~~!ケチ~~……って、あれ?」

 

 唇を尖らせていた小南が何かに気付いたようだ。京介と京佳を交互に見ると、納得したような声を上げた。

 

「あ、とりまるのクローン!」

 

 納得し、「クローン」などと言っている小南を見て、京佳は首を傾げる。

 全くもって意味が分からないが、京佳はクローンという単語に聞き覚えがあった。

 京佳は記憶を掘り返す。数秒の思案の後、2か月ほど前に「実は双子じゃなくて、クローンだ」という噓をついたという話を京介から聞いたことを思い出し、ようやく小南の意味不明な発言に合点がいった。

 そして、そんな突拍子もない噓を2か月以上信じている小南に、京佳は憐みの目線を送った。

 

「小南先輩、すみません。クローンってのは噓です」

 

 不意に京介がネタバラしを始めた。それを聞いた小南は驚愕で目を剥く。

 

「えっ!?そうなの!?え、じゃあ何なの?」

 

 京佳が「普通に双子です」と答えようとした瞬間、それを声に出す前に京介が再び口を開く。

 

「実はこれ、俺の父親です」

 

 あまりのも突拍子のない噓をつく京介に、京佳は思わず溜息を吐きそうだった。

 こんな同年代の父親が居てたまるか、と京佳は心の中でツッコミを入れ、流石にこれは騙せないだろ……と高をくくっていたが、

 

「えっ!?そうなの!?」

 

「まじか」

 

 悲しいかな、小南があっさりと信じてしまった。これには京佳も驚きを隠せない。

 チラリと横目で京介を見やると、アイコンタクトで「な?小南先輩、面白いだろ?」と訴えてきた。

 確かにこれは面白いと京佳は思った。それと同時に、どのレベルまで騙せるのかが気になったので、先程以上に意味不明な噓をついてみることにする。 

 

「ちなみに、レイジさんが母親です」

 

 そう口に出すと、京介とレイジが似たような仏頂面で「それは流石に無理だろ」といった視線を京佳にぶつけた。

 京佳も「まあ流石に無理か」と心で呟き、ネタバラしをしようとした瞬間、小南の様子がおかしいことに気が付いた。

 アホ毛が特徴的なモテカワ騙されガールは、その表情を驚愕の色に染めていた。両手で口元を覆い、震えた声を絞り出す。

 

「え……そうだったんだ…」

 

「うそだろ」

 

「このレベルでもいけるのか……」

 

「……」

 

 大方の予想を覆し、小学生でも信じないような噓を信じてしまった小南。あまりの騙されやすさに、普段はクールな男たちも驚きを隠せない。

 京佳と京介は呆れ交じりの声を出し、レイジは頭を抱えて眉間に皺を寄せていた。

 

「……よし、ラッピング進めるぞ」

 

「あ、はい」

 

 もはやネタバラしすら面倒になったのか、未だに驚愕している小南を放置し、レイジがラッピングに手を付け始めた。

 小南が「言われてみれば、家族っぽいわね……」などと呟いているのを完全に無視し、男3人はホワイトデーの準備を進めていった。

 

 後日、小南によって「烏丸兄弟の母親はレイジ」という意味不明な噂がボーダー内に流されることとなる。それを耳にした諏訪の腹筋は死んだ。

 

ーーー

 

 3月14日。遂にやってきたホワイトデー当日。

 ボーダー本部は、バレンタインデーの時とは一風変わった雰囲気に包まれていた。

 多くの女子たちがチョコを上げた男子からのお返しを楽しみにしており、普段はクールな彼女も例外ではなかった。

 ここはとある部隊の作戦室。そこに備えられたデスクに座るツインテールの少女は、どこか落ち着きのない様子で時計をチラチラと眺めている。

 彼女の名前は草壁早紀。いまだ中学生という若さでありながら、その敏腕で癖のある隊員を纏めるA級部隊の隊長である。

 普段はクールで感情が表に出にくい彼女だが、今日は滲み出るワクワクを隠せないでいた。ある人物の来訪を今か今かと待ちわび、ソワソワしている。

 そんな状態で待つこと数分が経ち、遂に作戦室の扉がノックされた。

 椅子から勢いよく立ち上がり、素早く扉へと向かう。逸る気持ちを抑えながら、手鏡で身だしなみのチェックも忘れない。

 身だしなみを確認し終え、扉の前で数回深呼吸。そして意を決して扉を開くと、そこにはさっぱりとした男前が佇んでいた。

 

「草壁、おつかれさま。悪いな、急に来ちゃって」

 

「お、おつかれさまです。京佳先輩。いえ、私は全然大丈夫です」

 

 草壁が柔らかい表情を見せる男前――烏丸京佳に挨拶を返すと、京佳は手に持った紙袋から小さな箱を取り出した。

 透明な箱は水色のリボンに彩られ、中には4色のマカロンがまるで宝石のように並んでいる。京佳は小さな宝石箱を草壁に差し出した。

 

「バレンタインはありがとう、美味しかった。これお返し。よかったら食べて」

 

「ありがとうございますっ」

 

 草壁は箱を受け取ると勢い良く頭を下げた。京佳からのお返しに今にも飛び上がりそうだったが、想い人を前にそんなはしたない姿を見せるわけにはいかず、グッと堪える。

 その代わり、大事なものを抱きしめるように、京佳から貰ったお返しを両手で優しく包んだ。

 

「お邪魔してごめんな。じゃあ、また」

 

「あっ、あの……」

 

 用事を終えた京佳がそのまま立ち去ろうとするところを呼び止める。しかし、緊張からか次の言葉が中々紡げない。

 不思議そうな顔で首を傾げている京佳を目にし、早く言わなきゃという焦りが襲い来る。緊張で足元がぐらつく中、優しい声が草壁を包んだ。

 

「どうした?何か用事でもあった?焦らずに言ってごらん」

 

 包み込むような声が届き、緊張が解れる。たったこれだけの言葉で気持ちが楽になるなんて私はチョロい女なのかもしれない、と草壁は思った。

 チョロい女だとしても、京佳の声で緊張が解れたのは事実。あと必要なのは、勇気を振り絞ることだけだ。

 草壁は息を吸い、大きく吐く。それを数回繰り返し、ようやく言葉を紡いだ。 

 

「…よかったらお茶でも飲んでいきませんか?良い茶葉があるんです」

 

 それを聞いた京佳は目を丸くした。草壁の緊張している様子を見て、もっと重要な頼み事をされると思っていたのだろう。しかし実際は、可愛い後輩からのお茶の誘いだった。

 京佳はこれからもお返しを配って回らなければいけないため長居はできないが、少しくらいならいいだろうと判断した。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて、一杯頂こうかな」

 

「あ、ありがとうございます。早速用意しますね」

 

 京佳が了承すると、花が咲いたような笑みを見せる草壁。普段のクールな隊長ではなく、完全に1人の恋する乙女の姿だった。

 

ーーー

 

「おう、京佳ァ。遅かったじゃねえか」

 

「すみません」

 

 草壁とのお茶会を終えた京佳が次に向かったのは弓場隊の作戦室。そこで待つのは、ボーダー最強のOP(オペレーターではなくおっぱいぱわー)である藤丸ののだ。

 京佳が作戦室の扉をノックすると、藤丸はいつも通りの様子で扉を開ける。しかし、表情は見るからに明るく、見る人が見ればこの瞬間を楽しみにしていたのが一目瞭然だろう。

 

「はい、ののさん。バレンタインはありがとうございました」

 

「おう。いいってことよ」

 

 そんな藤丸に対し、京佳は手作りのマカロンが入った箱を差し出す。藤丸はそれを受け取ると嬉しそうにはにかんだ。

 

「マカロンか。良いセンスしてんじゃねーか」

 

 藤丸は綺麗に包装された箱を手に持ち、上機嫌な口調で言うと、京佳は少し照れ臭そうに口を開く。

 

「マカロン作ったのは初めてなんで、お口に合うかは分からないすけど」

 

「手作りィ?」

 

 藤丸は驚愕し、手に持ったマカロン入りの箱をまじまじと見つめる。あまりのクオリティの高さにてっきり市販品だと思っていたため、驚きを隠せなかった。

 改めて見ても手作りには見えないほどの完成度で、思わず感嘆の息を吐いてしまうほどだ。

 

「へえ……すげェな。スイーツ作りもいけんのか」

 

「レイジさんに教えてもらいました」

 

 京佳がレイジの名前を出すと、藤丸は納得したように頷いた。レイジが料理上手の最強万能筋肉なのは、ボーダー隊員の間では有名な話だからだ。

 

「あ、そういえば帯島いますか?アイツにも渡したいんすけど」

 

「帯島は今日は来てねェな。あたしが渡しとくか?」

 

「じゃあお願いしていいすか」

 

「おうよ」

 

 京佳は藤丸にもう1つマカロンを手渡す。藤丸はそれを受け取ると優しく微笑んだ。

 

「ありがとな。またいつでも遊びに来いよ」

 

「はい、弓場さんにもよろしく伝えてください」

 

 では失礼します、と続けて京佳が退出していった。残された藤丸は、手に持ったマカロンを眺めて小さく息を吐いた。

 藤丸はマカロンを大事そうに持ったまま近くの椅子に腰掛ける。そして徐にスマホを取り出すと、ブラウザの検索欄に文字を入力し始めた。

 

「へへ…」

 

 検索欄に入力された文字列は”ホワイトデー マカロン 意味”。

 その検索結果を見た藤丸は、ニヤニヤとした笑みを零した。嬉しそうに持ち上がっている頬には、仄かな紅が差している。

 ホワイトデーのマカロン。それが意味するのは『あなたは特別な人』という告白。

 とはいえ、京佳にそのつもりはないだろうし、もしかしたらマカロンを渡す意味なんてのも考えていないかもしれない。そうだとしても、藤丸の心は満たされていた。

 だからこそ、悔しさも感じる。このマカロンを渡しているのは自分だけではないという事実に。

 自分だけを特別だって言わせたい、自分だけを見ていてほしい。そんな独占欲にも似た想いを自覚した彼女は、ニヤリと口角を上げた。

 

「ぜってェあたしのモノにしてやる」

 

 恋する乙女が見せる、可憐で獰猛な表情。

 美麗で、それと同時に荒々しくもある表情。

 どうしようもなく魅力的で、綺麗だった。

第二次 書いて欲しいキャラ

  • 那須玲
  • 熊谷友子
  • 真木理佐
  • かわいいかわいいマリオちゃん
  • 香取葉子
  • 小佐野瑠衣
  • 今結花
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