ただ長期出張に行ってて執筆する気力がなかっただけだ(言い訳)
というわけで帰ってきました。お待たせ致しました。
これからの更新頻度は……仕事次第…ですかね
できるだけ頑張ります
藤丸ののにマカロンを渡した後、京佳の足は次なる目的地へと向かっていた。
さすがはボーダー1、2を争うモテ男。バレンタインに大量のチョコを貰っているため、お返しをする相手の人数も相当なものだ。
とはいえ、京佳が受け取ったチョコのうち殆どは匿名である。京佳と関わりのないファンガールが直接渡してくることは少なく、バレンタイン期間限定で太刀川隊作戦室前に設置される「烏丸宛バレンタインBOX」に入れていくことが殆どだ。
匿名の相手にお返しを用意するのは不可能だ。そのため、烏丸兄弟がお返しを用意するのは、匿名ではない相手だけになる。…それでもそこそこの人数にはなるが。
なお、「烏丸宛バレンタインBOX」は烏丸京介が所属する時代より引き継がれし、太刀川隊が誇る聖遺物である。
さて、そんなモテ男が向かうは、風間隊の作戦室だ。
ちょうど到着した京佳は、作戦室の扉をコンコンとノックする。
「は~い」
京佳を出迎えたのは、綺麗な黒髪をボブに切り揃えた小柄な少女。風間隊オペレーターの三上歌歩だ。
三上は京佳を認めると、花が咲いたような笑みを零す。
「おつかれさまです」
「あ、京佳くん。いらっしゃい!風間隊の皆はいないけど、折角だし少し上がっていかない?」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
三上と共に作戦室に入ると、室内に風間隊のメンバー達は見当たらない。その代わり、京佳も見知った1人の少女がソファに座ってお茶を嗜んでいた。
綺麗に切りそろえられた短めの黒髪と鋭い雰囲気を携えた女…ボーダーのマキリサこと真木理佐である。どうやら、三上とお茶をしていたらしい。
そんな真木が京佳へと顔を向ける。
「……京佳?なんでここに…」
「ちょうど良かった。真木先輩もいたんですね」
「まあね。それで、歌歩に何の用?」
「京佳くんはね、バレンタインのお返しを渡しに来てくれたんだよ」
真木の質問に答えたのは京佳ではなく三上だった。嬉しそうな表情で上機嫌に答える。
それに続き、京佳が紙袋からマカロンを取り出した。
「三上先輩のチョコ、美味かったです。これ、お返しです」
「ありがとう!わ~、マカロンだ!大事に食べるね!」
三上はマカロンを受け取り、大事そうに両手で持ちながらキラキラした瞳でそれを見つめる。
そんな様子を見た京佳は、頬をポリポリと掻きながら小さく呟いた。
「まあ…初めて作ったんで、口に合うか分かんないですけど」
「え!?手作り!?京佳くん、お菓子も作れるの!?」
「レイジさんに教わりながら作りました」
「…木崎さん、ほんと何でもできるね…」
「完璧な筋肉ですよね。尊敬します」
2人は木崎レイジを完璧超人だと思っているいるようだ。
が、2人は知らない。木崎レイジはとある人物の前ではポンコツ筋肉になってしまうことを。
「良かったな、歌歩」
「うん、嬉しい!」
「真木先輩も、ありがとうございました」
「「えっ?」」
京佳が真木にマカロンを差し出すと、真木と三上が同時に声を上げた。
2人とも目を丸くしており、予想外の展開に驚いているようだ。
「え、真木ちゃん、京佳くんにチョコあげてたの!?」
三上は真木がチョコを渡したことを知らなかったらしい。それなら驚くのも頷ける。
だが、渡した本人である真木が驚いている理由は不明のままだ。
「まあ……渡したが……これを私に?」
「何で真木先輩も驚いてるんですか」
「いや、私が渡したのは市販品だぞ?お返しなんてするほどの物じゃないだろう」
どうやら、ただの市販品を渡したためお返しは無いと思い込んでいたらしい。
しかし京佳としては、手作りだろうと市販品だろうと、どちらも嬉しいことに変わりはなく、お返しをするのは当然のことだ。
もし貰ったのがチロルチョコ1つだとしても、京佳は貴賤なくお返しをするだろう。
まあ尤も、京佳にチロルチョコなどを渡す女子が居るはずもないが。
「手作りとか市販品とか関係ないすよ。嬉しかったんで、お返しです」
「……あ、ありがとう」
真木は京佳からマカロンを受け取ると、小さな声でお礼を言う。
そこには普段のような鋭さは一切なく、少し恥ずかし気に視線を僅かに京佳から逸らしていた。
「…真木ちゃん、照れてる?」
「……照れてない」
「そっか~」
「…歌歩。なんだその顔は」
「べっつに~」
「おい、ニヤけるな」
「真木先輩、照れてるんすか?」
「うるさい、さっさと出ていけ」
「あ、はい。お邪魔しました」
京佳がちょっかいを出すと、真木が鋭い眼光を取り戻した。
それに射抜かれた京佳はそそくさと作戦室を後にしようとすると、背後から声をかけられた。
「京佳」
「はい?」
「……来年は楽しみにしておけ」
「え、もしかして手作りですか?まじか、超楽しみです」
「うるさい黙れ帰れ」
「はは、すみません。じゃ、真木先輩、また今度映画見ましょう」
「…はいはい。またね」
「三上先輩もありがとうございました」
「は~い!マカロンありがとね!」
京佳が作戦室から出ていくのを見送り、2人はソファに腰掛ける。
真木が卓上のティーカップに手をかけようとし、隣に座る三上からの視線に気づいた。
ジト目を向けてくる三上だが、真木には覚えがなく首を傾げる。
「歌歩?どうかした?」
「…別に何でもないよ」
「…そう?」
「うん。それよりさ、京佳くんに貰ったマカロン食べよ。あ、紅茶のおかわりいる?」
「そうだね。じゃあ、いただこうかな」
「は~い。じゃ、ちょっと待ってて」
三上がソファから立ち上がり給湯室に向かった。
「はあ……ライバル増えちゃったかなぁ」
給湯室で紅茶を淹れながら三上は小さく呟いた。
ーーー
「遅いわね…」
ボーダー本部の作戦室にて、こたつの中からそんな呟きが聞こえてきた。
いいとこの紅茶を啜りながら独り言ちるのは、物憂げな表情を見せる金髪の美女。
こたつ+紅茶という、微妙にミスマッチに見える組み合わせだが、彼女が放つ優美なオーラのせいか妙に様になっていた。
物憂げな表情のまま小さく溜息を吐き、ティーカップに口をつける様子は儚くも美しい。
「”もう少しで行く”って連絡来たのに…何してるのかしらね」
彼女はどうやら誰かを待っているようだ。こんな美女を待たせるとは…罪深い人間もいたものだ。
「…ま、京佳くんは人気者だし、気長に待ってあげるわ」
どうやら、彼女が待っている人物は京佳というらしい。なにやらイケメンそうな雰囲気だ。
彼女はそう言うと、再びティーカップに口を付ける。男に待たされているというのにこの余裕、なんて器が大きいんだろうか。
「…けど遅いわね。さっきボーダー本部に着いたって連絡来たのに。どこで道草食ってるのかしら」
そういう彼女の顔には、僅かながらではあるが不満げな様子が見え隠れしている。
つい数秒前「気長に待ってあげる」と言っていた人間のセリフか…?これが…?
「まさかとは思うけど、私と会う前に他の女と会ってるんじゃ…」
まさか、そんなわけないでしょう。
「…私を差し置いて、他の女とお茶でも飲んでるんじゃ…!?」
ははは、いやいや、そんなわけないですよ。
「……可愛い後輩にバレンタインのお返しを渡しに行って、すぐに帰ろうとしたら呼び止められて、『少しお茶でもどうですか?』って言われて言葉に甘えてお茶をした結果、私のところに来るのが遅れてるんじゃ…!?」
盗聴器でも仕掛けているんじゃないか、と疑いたくなる程に正確な予想だった。恐い。
「これは……来たら問い質さないといけないわね…」
完全に彼女の妄想なのだが、問い質すことが確定してしまった。妄想のくせに大正解を引き当てているから質が悪い。
そんなこんなで数分後、作戦室の扉がノックされた。その音を聞いた瞬間、不満げだった表情が一気に明るくなる。
上機嫌に扉へ向かって開けた瞬間……彼女の表情は先程までと比べ物にならないほど不満を爆発させていた。
「……おい、なんだその顔は」
扉の先に立っていたのは、ミスター仏頂面でお馴染みの男、A級4位二宮隊隊長の二宮匡貴だった。
そんなかつてのチームメイトを見た金髪美女こと加古望は、不満を一切隠すことなく大きなため息を吐いた。
旧知の仲とはいえ、あまりにも失礼である。
「はあ……二宮くん、何の用?」
「今日はホワイトデーだろ。ほら」
「え、二宮くん、ホワイトデーのこと知ってたの?」
「知ってるに決まってるだろう」
そう言う二宮の手には、誰もが知っているブランドの紙袋が握られていた。大きさからして中身はバッグだろうか。義理チョコへのお返しとしては大盤振る舞いだ。
加古は本命以外にも多数の知人に義理チョコを渡しており、元チームメイトである二宮にも(不本意だけどしょうがないし、渡さないで後から文句言われたら面倒だから)渡していた。
どうやらそのお返しという事らしい。
「二宮くんってそういうことできたのね」
「ふざけるな。去年も渡しただろうが」
「そうだったかしら。それにしても、ホワイトデーにブランド品を寄越すなんて、なかなか良いセンスしてるじゃない」
「お前が言ったんだろうが」
加古は二宮にチョコを渡す際、「お返しはブランドのバッグでいいわよ」なんてことを言った記憶がある。
とはいえ、加古としては9割冗談で言ったものであり、まさか真に受けるとは思っていなかった。
二宮匡貴、相も変わらずおもしれー男である。
「まあ、いいわ。ありがとね」
加古が礼を言うと今度は二宮が表情を変えた。何とも言えない…いや、何故か加古を慮るような表情をしている。
何よその顔、という加古の問いに、二宮は表情を変えないまま答える。
「……お前が素直に礼を言うとはな。体調が悪いなら医務室まで連れてってやるが?」
「…あら?喧嘩なら買うわよ?」
「馬鹿言うな。俺は弱い者イジメはしない」
「ふふ、面白いこと言うわね。…殺してあげるからブース行きましょ?」
「妄想は程々にな。出来もしないことを堂々と口に出すな」
「大きいのはトリオンキューブと態度だけみたいね。脳みそも大きければ良かったのに」
神聖なホワイトデーだというのに、周囲が鮮血で染まりそうな殺気が周囲を渦巻く。
もしここに小動物がいれば一目散に逃げ出すだろうし、小学生がいたら号泣しているのは間違いない。
そんな阿鼻叫喚の地獄絵図といえる険悪さMAXの雰囲気を切り裂いたのは、この空気に全く気圧された様子のない男の声だった。
「あれ?二宮さんも来てたんすか?すみません加古さん、遅くなりました」
2人は殺気を収め、声の方へと顔を向ける。そこには、加古が待ち焦がれていた人物…烏丸京佳が立っていた。
「あ、京佳くん。遅かったじゃない。そのせいで変なのが来ちゃったのよ」
「おい、もしかして俺のことか」
「あら、正解。二宮くんにしては名推理ね」
「烏丸。こんな捻くれた大人にはなるなよ」
「あはは。相変わらず仲良しですね」
京佳の能天気な声に2人は「どこをどう見たらそう思うんだよ」と心の中でツッコミを入れる。
そんな2人の胸中を知ってか知らずか、京佳は手に持っていた手作りマカロン入りの袋を差し出そうとして……フリーズした。
「?京佳くん?」
「か、加古さん、その袋…」
京佳の目線の先には、二宮が加古に渡したブランドの袋がある。
「ああ、これ?二宮くんがくれたのよ。ガラじゃないわよね~」
「黙れ」
二宮と加古がいつもの掛け合いをする中、京佳の視線は自らの手に持ったマカロン入りの袋へと注がれていた。
そして再びブランド品へ行ったと思えばマカロンへ戻り、またブランドへ行ってマカロンに……。
京佳の視線がシャトルランするたび、彼の顔色は少しずつ落ち込んでいく。
そして何を思ったのか、差し出したマカロンを引っこめると、ゆっくりと体を180度回転させ、Uターンを開始した。
「ちょ、え、京佳くん!?どうしたの!?」
踵を返そうとした京佳を加古が呼び止め、何故そうなったのか理由を問う。
数秒の沈黙の後、京佳が静かに口を開いた。
「……ブランド品と比べたら、俺が作ったマカロンが情けなく見えてきたんで……すみません、出直してきますっ!」
そう言って走り出そうとした京佳。しかし、加古が腕を掴みギリギリのところで引き止める。
なんとか京佳の気分を戻し、京佳のお手製だというマカロンを手に入れるべく必死になって声を上げる。
「ま、まって京佳くん!贈り物っていうのは気持ちが大事なのよ!」
「でも、ブランド品と俺のマカロンじゃ、気持ちが籠ってても勝てないですよ!」
「そんなことないわ!……ちょっと、二宮くんも何か言いなさいよ」
「は?…ふざけ…っ!?」
これまでの流れを静観していた二宮に対し、加古からの応援要請。それを即断ろうとした二宮だったが、加古の目を見た瞬間、全身に悪寒が走った。
(こ、こいつの眼……断ったら本気で俺のことを殺すつもりだ……!摸擬戦とかじゃなく、俺の人生を本気で終わらせる気だ…!)
加古の凄まじい眼光から発せられる殺気。それは二宮匡貴に死を幻視させるほどの力を孕んでいた。
本気で殺すはずがないと理性は囁いているが、二宮は本能で理解した。本気で自分を殺すつもりだと。何もかもを無視して本気で殺すという"凄み"を感じたのだ。
「そ、そうだ、落ち着け烏丸。俺の一切気持ちの籠ってない適当に選んだブランド品なんかより、お前のプレゼントの方が何倍も価値がある」
「そうよ!こんな仏頂面で愛想の欠片もない上に気遣いも下手くそなトリオンしか取り柄のない男が何も考えないで買ったブランド品よりも、京佳くんが一生懸命作ったマカロンの方が何百倍も価値があるわ!」
「(好き勝手言いやがって……後で覚えとけよ…)」
京佳を慰めるのに便乗してあまりにも好き勝手言われている二宮の額には青筋がくっきりと浮かんでいる。
とはいえ今言い返すと人生が終わるのが目に見えている。怨恨を忘れぬよう、そっと心に刻んでおいた。
「そ、そうですかね?」
「そうよ!二宮くんのプレゼントには価値はないの!わかった!?」
「はい!わかりました!加古さん、ホワイトデーのお返しです!どうぞ!」
「ありがとう、京佳くん。大事に食べるわね」
ようやく京佳は元気を取り戻し、加古は京佳の手作りマカロンを手に入れることが出来た。
めでたしめでたし。
二宮「めでたくないが?」
第二次 書いて欲しいキャラ
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