筆が全然進まずにいました…。
今後も不定期更新ですが、できるだけ頑張ります。応援して頂ければ幸いです。
喫茶・あらん
三門市の片隅に店を構える、知る人ぞ知る名店だ。
御年64歳のマスター、吉村さんが切り盛りするこの店は派手さはないものの、マスター自ら淹れる絶品のコーヒーに昔ながらの料理、そしてレトロで落ち着いた雰囲気によって地域住民に古くから愛されてきた。
そんな静かで穏やかな雰囲気が流れる店内にて、1人の男前がマスターとともにカウンターに立っていた。白いシャツに黒いスラックスとエプロン…この店の制服に身を包んだ男前は、マスターからコーヒーの淹れ方を教わっているようだ。
「そう、コーヒーはじっくり蒸らしてから淹れるんだ」
「なるほど」
真剣な表情で手解きを受けている彼の名は、烏丸京佳。
ボーダーのA級隊員であるモテ男は、つい先日よりこの喫茶店でアルバイトを始めていた。
「いやあ本当、京佳くんが来てくれて助かったよ。急にアルバイトの子が辞めちゃって困ってたんだ」
「いえ。こちらこそありがとうございます」
小さく礼を返す京佳。
そんな彼の様子を見ながら、マスターは優しい笑みを浮かべた。
「…それにしても、京佳くんがコーヒーを淹れてる姿は絵になるねえ。まるでモデルさんだ」
「そんなこと言われたら照れちゃいますね。けど気持ちいいんでもっと言ってください」
「はは、いくらでも言ってあげるよ。よっ、男前!」
「ちょ、そんな……照れるっす」
和やかな雰囲気で談笑しつつコーヒーを淹れる2人。
京佳が一通りコーヒーの淹れ方を学んだ頃、店の扉に付いているベルが客の来店を告げた。
店内に入ってきたのは、2人の女子高生。それも、京佳が良く知る人物たちだった。
「いらっしゃいませ……あ、真木先輩に三上先輩。おつかれさまっす」
「あ、京佳くん!おつかれさま!制服似合ってるね!」
「おつかれ」
2人の女子高生…三上歌歩と真木理佐は京佳に向けて各々言葉を返す。
そんな様子を見た初老のマスターは、穏やかな笑みを浮かべながら口を開いた。
「京佳くんの知り合いかい?」
「はい。お世話になってる先輩です」
「そうなんだね。いやあそれにしても、こんなに若い子が来るのは珍しいねえ」
どこか感慨深そうな様子だ。
「そうなんすね」
「最近の若い子はさ、ほら…駅前とかにある…なんだっけ?…スターウォーズ……?みたいなお店の方が好きじゃない」
マスターの間違いが凄まじい。フォースでコーヒーを淹れている店があってたまるか。
「んー俺はあんま行かないんすけど、確かにそうかもですね」
「でしょ?だから若い子が来てくれるのは嬉しいんだ。君たちは、こういう昔ながらの喫茶店とかよく来るのかい?」
「た、たま~にです!!レトロな雰囲気好きなので!」
マスターの問いかけに、目を泳がせながら答えたのは三上だ。
ちなみに今の返答、真っ赤な噓である。
この女、こういった純喫茶に来るのは初めてだし、店に来た目的は京佳である。
どこからともなく京佳がこの店で働き始めたという噂を聞きつけ、シフトの情報を調べ、京佳が働いているタイミングを見計らって来店したのだ。
ただ、1人で来る勇気が無かったため、付き添い(マキリッサ)を連れてきているが。
「私は歌歩…この子に誘われて」
普段通りの表情で答える真木。
三上に誘われたのは事実だが、働いている京佳に少し興味があったのも事実。この店に来る口実ができたのは嬉しい誤算だった。
「そうなんだね。自分で言うのもあれだけど、ここはいい場所だからゆっくりしていってね。京佳くん、お嬢さん方を席に案内して貰えるかな?」
「了解です。じゃあお2人、ご案内します」
「うん、ありがと」
京佳に案内されて席に座る2人。そのまま京佳はメニューを渡し「注文が決まりましたらお声がけください」と残して再びカウンターに戻っていった。
そんな京佳の様子を恍惚とした目で見ていた三上は、京佳が十分離れたのを確認すると、小さな溜息とともに言葉を吐いた。
「かっこいい~……」
「歌歩、声漏れてるよ」
「え、嘘、聞こえてないよね!?」
「多分大丈夫……あのさ、そんなに好きなら早く告白すればいいのに」
感嘆の声に反応したのはマキリッサ。ジト目で三上を見つめている。
「え、む、無理ぃ……そんな勇気ない…」
「勇気って……それ、去年も聞いた。歌歩の勇気はいつになったら入荷するの」
「あー…そのぉ…入荷時期は未定となってますぅ…」
そもそも入荷予定があるのか疑わしい。
「はぁ……京佳がどんだけモテるか知らない訳じゃないでしょ。あんまウダウダしてたら他に取られるよ」
「うっ……」
真木の正論が三上の胸(とても小さい)に突き刺さる。真木の言う通り、京佳を狙う美女は多い。それは三上も理解している。…が、そう簡単にいかないのが色恋である。
理性と感情は別なのだ。告白できるものならとっくにしているのだ。好きだからこそ、今の関係を崩したくないからこそ、1歩踏み出せない。それが女心なのだ。
そう開き直った三上は、すかさず反撃の言葉を返す。
「それを言うなら真木ちゃんもでしょ。京佳くんのこと好きになっちゃったくせに、全然アプローチしないじゃん。興味無いですよ〜みたいな顔しちゃってさ」
「……はあ?なに言ってんの。そんなわけないでしょ」
三上の突拍子のない言葉に、真木は呆れた様子で返答した。しかし、三上は確信を持っているようで一切怯む様子が無い。
「噓。私にはわかるもん」
「わかるって、何を根拠に……」
「バレンタイン」
「……は?それが?」
「真木ちゃん、今まで男の人には義理チョコすらあげたことなかったのに、今年は京佳くんにあげてたよね。なんで?」
「なんでって……それは……」
真木はその言葉の先を即座に紡ぐことができなかった。
なぜ今まで男子にあげてこなかったチョコを、京佳には送ったのか。その答えを探すため、ぐるぐると思考が回る。
今まで男子にチョコをあげなかったのは何故?……興味がなかった。
では何故、今年は京佳にチョコをあげた?……あげたかったから。
何故、京佳にはチョコをあげたいと思った?…………それは…っ!
「っ!」
その答えに行きついた瞬間、真木の顔がみるみるうちに赤く染まっていく。それを自覚した真木は両腕で隠そうとするも、すでに手遅れだった。
「真木ちゃん〜?完全に恋する乙女の顔だよ?やっぱり好きなんだね、京佳くんのこと」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべたまま、三上が続ける。
「今日もさ、誘われた体だったけど…本当は京佳くんのこと見たかったんでしょ?」
「やめろ…言うな…」
言葉にされて恥ずかしさが増したのか、耳まで真っ赤に染まっていく。
普段のクールな表情からは考えられない表情に、三上以外の誰が見てもすぐにわかってしまうだろう。
気持ちを自覚した真木理佐は、言い訳のしようもないほどに、恋する乙女だった。
「…くそ、わかった。認める。認めるからもう言うな」
「ふふ、やっぱり素直が1番だね?真木ちゃん」
ニヤニヤと、若干ムカつく表情を見せる三上。
そうなったのは誰のせいだ、と真木は三上を睨みつける。が、三上としては顔が真っ赤のままで睨まれてもノーダメージであった。
「…なあ、歌歩」
「ん?」
「…歌歩は……私が京佳を好きになっても、よかったのか?」
真剣な声音…何かを恐れているかのような、そんな声だった。
「えっ…なんで?」
「いや、なんでって……普通に。ほら、ライバルが増えるだろ」
「あー、確かにそうだね」
あっけらかんと、三上は答えた。
「……恋愛ってのはさ、結構ギスギスするだろ。そのせいで歌歩との関係が壊れるのは…嫌だ。もしそうなるなら…その可能性があるなら……私は手を引くよ」
いつも強気な真木には似つかわしくない、弱気な声だった。
大事な友達と恋する人、どちらも大切にしたい。だが、それが叶わぬなら…せめて、友人だけは。
切実な少女の願いを聞き、三上は満面の笑みで、自信満々な声音で、真木の懸念などなんて事ないと言わんばかりの明るさで、言葉を口にする。
「その点に関しては名案があります」
「……名案?」
首を傾げる真木。
三上が語るそれは、真木にとってあまりにも衝撃的なものだった。
「私と真木ちゃんで同盟を組もうよ」
「は?同盟?」
「うん。2人で協力して京佳くんを堕としにいくの」
「…本気?」
「うん、本気。ほら、1人より2人の方が強いじゃん?」
自信満々に語る三上。
1人より2人の方が強い…それだけ聞くと何だかアホっぽい理論ではあるが、完全に正しい理論である。
「…」
思案する真木。
導き出した結論は…確かに悪くない案かもしれない、というものだった。
京佳を手に入れるうえでライバルは山ほどいる。しかも、全員が魅力的な女性たちだ。その大量のライバルを出し抜くのは至難の業だろう。
だが2人で手を組めば、難易度は高いのに変わりはないが、確率は上がるだろう。三上の言う通り、2人の方が強いのは恋愛という戦いにおいても明白なはず。
しかし、真木は最終的に必ず発生する"問題"から目を背けずにはいられなかった。
「協力するのはいいけど…それ、上手くいったら最終的には私と歌歩で争うことになるよ」
「まあ…その時は恨みっこなしか~……一夫多妻制採用する?もしくは…愛人?」
「……はは、いやいや、流石にないでしょ」
「あはは、そうだよね。冗談だよ」
噓である。
真木は「まあ最悪…本妻が歌歩なら愛人ってのも悪くないか…むしろ燃えるかもな…」とか本気で思っているし、三上も割と本気(8割)で提案していた。
「……」
「……」
視線が交錯する。親友と言っていいほど仲が良い2人は、それだけで互いの意図を汲み取った。汲み取ってしまった。
「え、あ…あはは…」
「いや、まあ……正直言うと……無しではない…か?」
「私も……半分、本気で言った…かな?」
嘘である。
8割くらいは本気であった。
しょうもない嘘をつくな、みかみか。
「…」
「…」
再び無言、そしてアイコンタクト。
数秒後、お互いに気まずそうに目を反らした。
「ほら!ま…まだ堕とせるって決まったわけじゃないしねっ!」
「そ、そうだな。うん。この話は一旦置いておこう」
そうして2人は、問題を先送り…否、未来の自分たちに丸投げした。
あとは上手くいった場合の自分たちが何とかするだろうと信じて。
「まあ愛人云々は抜きにして…歌歩の話には乗らせてもらおうかな」
「ほんと?…じゃあ、今日からよろしくね」
「うん、よろしく。…話もまとまったし、遅くなったけど注文しようか。どれにする?」
「ん~どうしようかな~」
…かくして、真木と三上による『烏丸京佳を2人で陥落させよう同盟~まあ愛人も悪くない、かな?いやむしろ昂る~』が結成された。あまりにもヤバい契約である。
自らを虎視眈々と狙う肉食獣2匹が手を組んだことなど露も知らない烏丸京佳は、黙々と、淡々と、ラテアートの練習を続けている。
「私は…このブレンドで。歌歩は?」
「ん~…あ、私これにしようかな。ラテアート」
「いいね。じゃ、頼もうか」
真木が店員を呼び出すと、やってきたのは2人の標的たる京佳だった。
何も知らない京佳は、いつも通り仕事を全うする。
「ご注文お伺いします」
「私はアイスのブレンド。歌歩はこのラテアートのカフェで」
「了解っす。ちなみに、ラテアートは何書いてほしいとかありますか?」
「これって京佳くんが書くの?」
「いや、俺はまだ練習中なんで」
「そうなんだ。でも折角だし京佳くんに書いてほしいな。ダメ?」
上目遣いで京佳を見上げる三上は、さながら小動物のようだ。
やる人間によってはあざとさが香る仕草なのだが、三上の場合は純粋な可愛さしか感じない。何とも不思議なものだ。
「まあ……先輩がそう言うなら。じゃ、何書きます?」
「ん~…おまかせで!」
「了解っす。ばっち任せてください」
自信満々にサムズアップする京佳。練習中って言ってたくせに何でこんな自信満々なんだよ……というツッコミを、真木は溜息とともに飲み込んだ。
ーーー
「あ~…」
「……」
運ばれてきたラテアートを見て、三上は思わず声を漏らす。
同じくラテアートを見た真木は、何か言葉を発そうとするがそれが声になることはなく、ただ口をモゴモゴと動かすに留まる。
京佳が運んできたラテアート。そこに書かれていたのは、何とも形容しがたいものであった。耳のある動物……ということだけが辛うじて分かるが、それ以上の情報が入ってこない。2つの目(多分、位置的に)は左右で大きさがバラバラであり、恐らく口だろう部位は形がぐちゃっとしていて見るに堪えない。
まあ要するに、端的に言うとド級の下手クソ、ド下手クソであった。
「そ、その~、私は好きかも!あ~……なんか、ほら!味がある感じで!かわいい猫だね!」
「これ、ライオンっす」
「だよね!かわいいネコ科の動物だね!って言いたかったのに間違っちゃった!あはは!」
その誤魔化し方は無理があるだろ…と真木は思わず顔を顰めた。
三上からアイコンタクトが飛んでくる。『真木ちゃんも何かフォローして』と。
なんで私まで…と思いつつ、三上の頼みは無下にできないため、仕方なくといった様子で口を開く。
「そ、そうだな。ほら、この耳の部分……とか、うん。歌歩の言う通り、味があっていいと思うぞ」
「そこ尻尾っすね」
「そうだよな!私もそう思ってた!尻尾だよな!いやあ、いい尻尾だな。まるで今にも動き出しそうだな、ははは」
それはさすがに無理があるでしょ…と三上は冷たい目を向けた。そのまま恐る恐る京佳の顔をチラリとみると、予想に反して満足げな表情を浮かべている。
「そっすよね。その尻尾の部分、自信あるっす」
(あれ!?それでいけるんだ!?)
「うんうん、いい絵だよ。ほら……あれだ。……ピカソというか、ゲルニカというか、まああれだ。個性的で、いいな、うん」
(真木ちゃん?それ褒めてるのか微妙なラインじゃない?)
「え、ちょ…それって…」
(ほら、さすがに通じなー)
「………褒めすぎっすよ」
(通じた!?)
照れくさそうに頬をかく京佳。あまりにもチョロい…というかアホい。
「まあ、おれ………令和のピカソ的には、もうちょい上手く描けたかなって感じっすけどね」
(自認!?令和のピカソが自認なの!?)
「そうだな。これからも精進するといい」
(真木ちゃん?なにその師匠面)
「はい。令和のバンクシーとして、精進していきます」
(なんか変わってる!しかもそれただのバンクシー!いるから!令和のバンクシーはもういるから!)
「ありがとう、烏丸・バンクシー・京佳。じゃ、いただくとするよ」
(セカンドネームになっちゃった!?)
「うす。ごゆっくりバンクシー」
(語尾バンクシー!?)
京佳は満足気な様子でカウンターへと戻っていった。
「何とかなったな」
「そ、そうだね…」
カオスなやり取りを後にしても普段通りの真木を横目に、三上は苦笑いを浮かべながらラテを一口。ほろ苦いコーヒーとミルクのコクが見事にマッチしており、思わず声が漏れた。
「美味しい…!」
「ん、本当だ。味は良いね」
コーヒーに舌鼓を打ち、優しく微笑む2人の美少女。
このにこやかな表情の裏でヤバい契約が交わされたとは、誰も気づくことはないだろう。
第二次 書いて欲しいキャラ
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那須玲
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熊谷友子
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真木理佐
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かわいいかわいいマリオちゃん
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香取葉子
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小佐野瑠衣
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今結花