お疲れ様です
気合いで描き貯めてたやつです
次回更新は未定ですが、がんばりますのでおうえんしてください
「いや~、今週末からゴールデンウィークだな」
「そっすね~」
4月末、太刀川隊作戦室にて。
2つのソファーにそれぞれ寝転がってグタグタしていた出水と京佳が、ぐでっとした声音で雑談を繰り広げていた。
「さすがゴールデンウィーク…今年は7連休だぜ…!やべえ、テンション上がってきたわ」
「わかるっす。ブチアゲっすね」
出水の言葉に普段通りの様子で反応する京佳。
"ブチアゲ"にはお世辞にも見えないが、実際のところ内心はテンションブチアゲ↑↑であった。
「いや~いろいろ遊び行ったりしてえな」
「そっすね」
「お前はなんか予定あんの?」
「まあ…防衛任務とか、バイトとか」
「社畜か。それ仕事じゃねえか。ちげえよ遊びに行く予定だよ」
「あー…まあ結構入ってますね」
「ふーん、誰と遊ぶん?笹森?佐鳥?」
「いや、加古さんとかっす」
「へー、いいじゃん」
出水の第六感が告げた。ここでやめておけと。
だが、彼の口はその続きを言葉にしてしまう。
「ん?"とか"っつったか?」
「え、はい」
「…あとは?」
「ん~…っと」
数秒考えた後、京佳はスラスラと自らの予定を吐露していく。
「綾辻先輩と買い物行くのと、ののさんに飯誘われてるのと、国近先輩とゲームするのと、真木先輩、三上先輩に映画誘われてるのと、帯島に稽古つけるのと」
「…」
出水の表情が何やら物凄いことになっているが、京佳はそれに気づかない。
京佳を鬼の形相で睨みつけているが、当の本人は全く気付く様子はない。
「あ~、あと、草壁に"時間あったら勉強教えてくれ"って言われてます。ま、そんな感じっすね」
「……」
ふと、出水の顔から表情が消えた。
先程までの鬼の形相からは打って変わった、能面のような無表情。
しかし、その瞳に燃えるのは……確かな殺意。
それを以て、告げる。
「ぶっ殺すぞ」
「なんで!?」
突然の殺害予告に、京佳は思わず声を上げた。
「羨ましいからだよッ!!!!」
「ええ……」
ぶっ殺す理由:羨ましいから。
あまりにも俗。あまりにも理不尽。あまりにも哀れ。
「くそ、俺だって女子と遊びに行きてーよ!なんで俺は女子に遊びに誘われねんんだよ!!つーか柚宇さんとのゲーム俺誘われてねえよ!!!誘えよ!!」
切実な声であった。
腹いせにバコバコと殴られるソファとクッションが悲鳴を上げている。
「そんなん俺に言われても……俺が勝手に誘っていいか分からないですし」
「は~!?別にいいだろ!いっつも作戦室でやるときは誘ってくれるじゃん!」
「あーいや、なんか今回は国近先輩の家でやるらしいんで」
「……は????????」
出水の声音が1トーン落ちた。
寝そべっていたソファからゆっくりと起き上がり、先程までとは比べ物にならないほどに冷えた声を上げながら京佳を睨む。
「は?いや、は?何お前、柚宇さんち呼ばれてんの?は?意味わかんねえ。は?は?」
「ちょ、怖いっす」
「黙れ。何勝手に柚宇さんちに行こうとしてんだ????」
「え?いや、勝手にって…別に出水先輩の許可いらないでしょ」
「いるだろ!?」
「なんで?」
「なんでもクソもねえ!とにかく、柚宇さんちに行くなんて断じて許さん!先輩命令だ!」
「ええ……」
あまりにも酷い権力の乱用に、京佳は辟易する。
「そんなに来たいなら国近先輩に聞いてみればいいじゃないですか」
「聞けるわけねえだろ、バカか?」
「なんで?…てか、女子と遊びたいなら誰か誘ってみればいいじゃないすか。出水先輩なら余裕でいけるっすよ」
「あー!うるせーうるせー!四六時中モテまくり誘われまくりのお前にはわからねえだろうな!俺なんて……"あー出水くん?まあ悪くないけど……んー、ごめん。無しかなあ、あはは(愛想笑い)"みたいな感じなんだよ!!!」
「なんすかそれ…誰かに言われたんですか?」
「いや、言われてねえ」
―じゃあただの被害妄想じゃん。
という言葉を、京佳はグッと飲み込んだ。
懸命だ。わざわざ火に油を注ぐ必要はあるまい。
「ただ……クラスの女子が俺に向ける視線が語ってんだよ」
「視線からそこまで?」
「ああ。視線は雄弁に語るっていうだろ」
「いくらなんでも語りすぎじゃないです?」
テレパシーで脳に直接……とかでもないと有り得ない情報量である。
「うるせー!俺くらいになると余裕でわかるんだよ!」
「はあ……まあ…そっすね。流石です」
もう出水先輩ったらバチギレ。
めんどくさくなってきた京佳は、反論するのをやめた。
「あー…くそ………俺もおっぱい揉みてー……」
心の奥底から洩れた声だった。
出水公平、思春期の欲望がダダ洩れである。
そんな情けない先輩の姿を見ながらも、京佳はいつも通りに言葉を返した。
「は?"も"?……あの、一応言っときますけど、別に俺おっぱい揉んでないっすよ」
「嘘つけ。普段からあんだけ女子に囲われてて揉んでねえわけねえだろ」
「何すかそのバカな理論……」
むちゃくちゃな理論だった。思わず京佳も溜息を零しそうになる。
「つーかよお。本当に揉んでなくてもお前ならいつでも揉めるじゃん」
「はあ?何言ってんすか?」
ここで初めて、京佳は出水に向けて"この人バカなのか?"という冷ややかな目線を向けた。
しかし、後輩からの白い目を一切気にも留めず、出水は自らの理論を展開していく。
「お前が"すんません、ちょっとおっぱい揉んでいいすか?"って聞けば一発だろ」
「聞けるわけ。セクハラっすよそれ」
令和の世では一発アウト…いや、一発スリーアウトの発言だった。
「いいや。お前ならいける。試しに言ってみろ」
「いやいや無理でしょ」
「無理じゃねえ」
「無理ですって。俺のこと性犯罪者に仕立てようとしてます?」
「ちげえよ。……まあ確かに、俺が言ったならセクハラだ。懲役10年執行猶予無しってとこか」
「いや罪おっも」
「ただし、お前が言ったなら無罪確定だ」
「なんで?」
自信満々に力説する出水の圧力に、京佳はタジタジであった。
エビデンスもクソもない滅茶苦茶な理論だが、なぜか出水の瞳には絶対的な自信が宿っている。
「俺がおっぱいを揉めねえってのは分かってる……一生無理かもしれねえ……」
「一生は絶対に言いすぎでしょ」
「ただ、お前ならできるんだ。頼む、俺の夢を継いでくれ…!」
「人に継がせる夢がそれでいいんすか」
「人の夢は…終わらねえ……!」
「最低な黒ひげ?」
「お前に俺のトリオンを預ける……。いつかきっと、立派におっぱいを揉んで返しに来い……」
「最低なシャンクス?」
「そして……揉んだ感想を……俺に聞かせてくれ」
「あ~……さては、それが目的ですね?」
「違う。ただ…そうだな、できるだけ色んな人の…おっぱいを揉んできてくれ……そんで、それぞれの違いを詳しく……教えてほしい……」
「うわ~。控え目に言って最低ですね」
長々と力説していたが、結局は出水自身の欲望のためだと判明した。
率直に言えば最低 of the 最低(最低)だった。
「誰でもいいから聞いてみてくれよ!絶対いけるから!」
「うわ……必死すぎ………」
流石の京佳もドン引きである。思いっきり顔が引きつっている。
京佳は"キモイ"と口に出さなかった自分を褒めたい気分だった。
「頼む!後生だ!焼肉奢る!」
「…………焼肉?」
「…お?」
ぴくり、と京佳の端正な眉が動く。
出水は確かな手応えを感じた。
(……ふッ、なるほどな。京佳……お前は焼肉に目がなかったな。そんで意外と押しに弱い……!)
それらの情報から、出水が導き出した解とは―。
―焼肉を餌に押せば……いける……!
「ああ、焼肉だ。しかも高級な肉だぜ?」
「……こ、高級……?」
「好きなだけ食わせてやる」
「好きなだけ……!?」
「食いつきすぎだろ。ピラニアかお前」
「ピラニア……!?」
「なんでそこにも食いつくんだよ。ピラニア食う気なんかお前」
焼肉の話になると、京佳はIQが著しく低下するようで。
どんだけ肉好きなんだよ…と呆れつつも、出水は攻めを継続させる。
「タンもカルビも、シャトーブリアンだって食えるぞ」
「しゃ、しゃとーぶりあん…!?」
「なに?その口調」
何故か舌足らずになった京佳にツッコミを入れる。
その直後、京佳は何か天啓が舞い降りたような表情を見せた。しかし、すぐにいつもの表情へと戻り、渋々といった様子で首を縦に振った。
「…はあ…。出水先輩がそこまで言うなら、わかりました」
「おお!流石だぜ京佳!」
キターーーーーー!
出水は歓喜した。それはもう心の中で叫びを上げた。
某目薬のCMよりも高らかに、大きく、声を上げた。
「誰でもいいんすよね?」
「ああ。人選はお前に任せるさ」
「了解っす。ちょっと電話失礼します」
そう言って京佳はスマホを取り出し、電話をかける。
数秒後、相手が応答したらしい。スラスラと話し始める。
「おつかれさまです。ちょっとお願いがありまして。はい、胸見せてもらえません?」
(うおおおお!?揉むだけじゃなく見るまで!?京佳ァ!お前が真の漢だァ!)
出水が大興奮し、弓場拓磨のような語尾になっている間にも、着々と会話が進んでいく。
「はい。ちょっと興味があって。…はい。―え、いいんですか?あざす。…今?今は作戦室います。……あ、まじすか。了解です。じゃ、失礼します」
そう言って電話を切る京佳。
出水の方に向き直り、サムズアップ。
「おっけーらしいです」
「ほら、言っただろ?」
「今ちょうど本部にいるらしくて、ここまで来てくれるらしいっす」
「え!?いや、俺いるけど!?」
「別にいいんじゃないっすか?気にしないっすよ、多分」
「!?!!?!?!?!?」
予想だにしていなかった展開に、出水の興奮は最高潮に達した。
棚から牡丹餅どころの話ではない。棚からメルセデスベンツが出てきたくらいの衝撃である。
「ち、ちなみに……誰呼んだんだ?」
「秘密っす。けど……めっちゃデカいっすよ」
「この野郎~!焦らすなよ~!」
出水の妄想が広がる。
誰が来るのだろうか。
敬語だったから京佳より年上だよな……!
京佳より年上でデカいといったら……ののさん?柚宇さん!?もしくは大穴で、意外と"ある"とされている熊谷……!?
う、うっひょ~!!!!!
流石は京佳……京佳さん!いや、京佳の兄貴ィ!俺はアンタに一生着いていくぜェ!!!
出水の脳内はスーパー大興奮パラダイスであった。
「あ、着いたみたいっす」
「お、おう…早いな」
京佳とともに扉へと向かい、ドキドキしながら扉を開ける。
そこに立っていたのは、圧倒的に"デカい"胸を持つ、高身長ムキムキの男だった。
「あぇ?」
「お疲れ様です、レイジさん。すみません、急に」
「……はあああ!?」
出水の叫び声が木霊した。
「ちょ、なんすか。うるさいな」
「なんすか。じゃねえよ!どうなってんだ!なんでレイジさんが来てんだよ!」
「なんでって、胸見せてくれるらしいっす」
「……は?」
「だって出水先輩……誰でもいいって言いましたよね?」
「……ぐ…ぅ…ッ!!!!」
確かに言った。"誰でもいい"と。
だがまさか、ボーダーナンバー1筋肉が来るとは夢にも思わないではないか。
天国から地獄に落とされた気分だった。
「け、けどなァ……!お、俺のワクワクをお前……お前ェ……!」
「ちなみに俺、嘘はついてないですよ」
その通り。京佳は嘘は言っていない。
女子を呼ぶとは一言も言っていないし、京佳の言葉通り…木崎レイジの胸はデカい。
「つーわけで、約束通り焼肉よろっす」
「なッ……!」
「まさか、A級1位部隊に所属するナンバー2射手たる出水先輩が……約束を反故にするなんて有り得ないっすよね?」
「……がッ……!」
嵌められた……否、負けた。
そう理解した出水は……両の眼から血涙を流し、口から血を吐きながら崩れるように地面に倒れ込んだ。
「どうした、大丈夫か」
「あーいや、こっちの話なんで気にしないでください」
「そうか」
「それより本題に入りましょう」
「ああ……筋トレに興味があるんだったな?」
「はい。なのでレイジさんの筋肉……特に胸筋を参考にしたくて」
「なるほどな。…いいだろう、好きなだけ見ろ」
ムッキムキィ……!
「うわ、すっげ。触ってもいいすか?」
「ああ、いいぞ」
ガチッ!
ムキッ!
「おお~…!かっけえ…!俺もこの筋肉目指して頑張ります」
「そうか。…もしよかったらメニューを作って渡すが、どうする?」
「いいんすか?ぜひお願いします」
「筋肉は裏切らない。頑張れよ」
「はい」
「そうだ。この後は暇か?もしあれなら、今から一緒にトレーニングするか?」
「いいんすか?俺、初心者っすけど」
「構わん。いろいろと教えてやろう」
「まじすか!ぜひご一緒させてください」
「ああ。じゃあ早速行くか」
「はい、お願いします!」
そうして、そそくさと作戦室を出ていく2人と、地面に項垂れる1人。
自らの私利私欲(おっぱい)のために大事な後輩を利用しようとした挙句、その後輩に一杯食わされる始末。
あまりにも滑稽で、惨めで。
出水の心は、完膚なきまでに叩き潰された
「ああああああああああああああああ!!!!!」
張り裂けるような叫びと、一筋の涙が作戦室に散った。
……。
……。
……。
―数十分後、太刀川隊作戦室。
「おつかれさん~………うわァ!?出水ィ!?死んでる!?」
「太刀川……さん」
「あ、良かった生きてた。な、なにがあったんだ?」
「お……」
「お?」
「…おっぱい……」
(……なんだコイツ)
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