アンケートの投票感謝です
圧倒的にののが1位!
お前ら全員おっぱい星人ってことかァ!?
この小説は変態しか読んでないってことだなァ!
太刀川と出水は目の前であまりにも自然に行われた膝枕に理解が追い付かずに目を回す。
しかし、流石はA級1位というべきか。不測の事態にも即座に対応し、何とか冷静さを取り戻した出水が恐る恐る口を開いた。
「あ、あの…柚宇さん…?」
「ん?どした~?あ、出水くんもゲームする?」
「あ、いや、それ…」
「それ?……どれ?」
「あ、いや、なんでもないっす…」
「そう?ゲームしたいならいつでも言ってね~」
国近はどうやら膝枕を何とも思っていないようだ。そのことに出水は額に汗を流しつつ困惑する。え、これ俺が変なのか?ーーと。
そんな出水のポンポンと肩を叩く男がいた。出水が所属する隊の隊長・太刀川慶である。
「出水。お前は変じゃない、俺はちゃんとわかってる」
「た……太刀川さん…!」
太刀川が親指を立ててドヤ顔をし、出水が両手を口元に当てて感動のポーズを見せる。
太刀川隊の友情を示す感動のシーンだ。涙なしでは見られない。
それはさておき。
その後も2人は茶番劇を繰り広げていたが、それに終止符を打ったのは他でもない太刀川だ。
「出水、お前は気付いていないみたいだな」
「…な…気づいてないって…何に?」
「…ふっ…アレを見ろ」
太刀川は出水を鼻で笑うと、ある方向を指さす。出水は太刀川の行動に若干イラっとしつつも、大人しく太刀川の指の先を見た。
指が指し示すのは、先程とは変わらない光景。国近がゲームをしながら京佳に膝枕をしている情景だ。
先程見たのと変わらぬ光景だ、そう感じた出水は国近に聞こえないよう小さな声を発し、太刀川もそれに倣う。
「膝枕でしょ?気づいてるに決まって」
「違う。ただの膝枕じゃねえ」
「え…?」
出水は驚愕する。
ただの膝枕じゃない?なら一体何だというのか。
「よく見ろ、出水。京佳が起きた時の視点を考えるんだ」
「視点…?……!まさか…!」
「ああ、そうだ…!」
太刀川のヒントを元に考えた出水は、1つの答えを導き出した。
その答えとは、京佳が目を覚まして一番最初に目にするものである。
普通は天井、もしくは膝枕をしている人物の顔が目に入るはずだが、それなら何も問題はない。
今回の場合、それ以外の物が最初に目に入るから、太刀川と出水は騒いでいるのだ。
京佳が目を開けると、真っ先にあるものが目に入る。
そのあるものとは、もう皆さんお分かりであろう。
そう、国近のおっぱいだ。
Eカップというボーダー内でも五指に入る胸の持ち主である国近に膝枕をされるというのはそういうことだ。
つまり、京佳が目を開けるとそこにはた芳醇に実った果実が2つ並んでいる、しかもそれを下から独占して見れるという。まさに男にとっての楽園である。
「出水。俺は思うんだ。隊長として、作戦室でそんな不純なことを許していいのか?って」
「…太刀川さんの言う通りです、俺も隊員として見過ごせません!」
太刀川と出水はもっともな理由を口に出す。
決して京佳にだけイイ思いはさせない!とかは思っていないし、嫉妬とかそういうのでもない。
大事なチームメイトに”お前だけふざけんなイケメン”とか思うわけがないし、別に国近の果実を下から眺めるのが羨ましいとかは一切思っていない。
ただ隊長として、そして隊員として…己の責務を全うするだけだーー。
「とりあえず、京佳はまだ寝てる。起きる前にやめさせるぞ」
「出水、了解。…柚宇さ~ん!」
「ん~?」
出水の呼びかけに国近は声だけで反応する。すかさず出水は攻撃を仕掛けた。
「俺ら今日、ケーキ買ってきたんすよ。みんなで食いません?」
「え~!食べたい~!」
太刀川と出水は心の中でハイタッチをした。
実際、出水と太刀川がケーキを買ってきているのは事実であり、給湯室の冷蔵庫には5切れ(5種類)のケーキが保管されている。ケーキを食べるとなればソファに移動するだろう。その場合、膝枕を辞めざるを得ない。
出水は自らの完璧な作戦を自画自賛し、太刀川はそれを心中で称えた。
ここでひとつ疑問がある。
今日に限って何故ケーキを買ってきたのか。その理由は新人が来るからである。
つまるところ、冷蔵庫にあるケーキは新人を歓迎するための物なので、本来であれば今食べてはいけないはずの物だ。
とはいえ、今ケーキを食べても新人の分は1切れ残るため数という面では問題ない。しかしそうなった場合、新人は4人に囲まれながら1人でケーキを食すという気まずいにも程がある状況になってしまうのだが。
この際しょうがない、と2人は一瞬で新人を切り捨てた。まだ会ってもいないのに、あまりにもな扱いである。
しかし、出水と太刀川に新人を気に掛ける余裕はない。
一刻も早く膝枕をやめさせる、そのことで頭がいっぱいだ。
「…あ~でも、後でいいかな。今動けないし。ごめんね~」
国近は数秒考えた後、京佳の顔をチラっと見ながら言った。
その答えを聞いた出水は「あ、おけっす」と短く答え、悲しい目で太刀川の顔を見た。
「太刀川さん…柚宇さんは俺らとのケーキより…京佳を…」
「お…落ち着け出水…!今のは…あれだ!京佳も含めて太刀川隊だろ?だから全員揃ってないと意味がないってことだ!」
太刀川が必死に励ますも、出水は目に見えて落ち込んでしまった。
こうなりゃ、俺が国近を振り向かすしかないな…!とまるで恋する乙女のような意気込みで、太刀川は国近に声を掛ける。
「国近、そろそろ忍田さんが新入りを連れて来るはずだからゲームやめとけよ」
「ん~、おっけ~」
太刀川がまるで隊長のような真剣な声音で言うと、国近は気の抜けた返事を返した。
返事はのほほんとしたものだったが、行動は素早い。すぐにセーブをし、ゲームを終了した。
いつもは適当な国近も必要な指示は聞く。国近柚宇は、やればできる子なのである。
一方太刀川は、真剣な顔つきで指示を出しながら内心ほくそ笑んでいた。
国近にゲームをやめさせれば、その場に座り続ける理由はない。
という考えのもと隊長権限で命令を出した太刀川。自らの欲望のために権力を使う、まさに汚い大人である。
「あと何分くらい~?」
「ん?そうだな…。約束が13時だから、あと10分くらいじゃないか?忍田さん、時間はきっちり守るタイプだし」
ゲームの電源を切りながら国近が問いかけ、太刀川が時計を確認しながら答える。
現在の時刻は12時48分。忍田が新入りを連れてくると言っていたのが13時なので、約束の時間まで10分程度だ。
「まあ、京佳はギリギリまで寝かせといてやろう」
「そっすね」
太刀川の言葉に今まで黙りこくっていた出水が反応した。
太刀川達の勝利条件は”京佳を起こさずに膝枕をやめさせること”。
膝枕のまま京佳を起こしてしまっては、起きた瞬間に国近の下乳が目に入ってしまうからだ。
その任務を完遂するため、太刀川は最後の手を打つ。
「京佳をソファに移動させるか。床だと体痛めそうだしな」
「!了解です」
太刀川の言葉に出水が凛々しい顔で答えた。
太刀川の最後の手、それは国近を移動させるのではなく京佳を移動させることだった。
京佳を寝かせたままソファに移動させるとなると、国近は膝枕をやめざるを得ない。
出水は太刀川の完璧な計画に気付き、心の中でスタンディングオベーション。普段はどうしようもないほどアホな隊長だが、重要な事案の時は頼りになる。
それを再認識した出水は、太刀川に対する尊敬の念を抱いた。
ーーー太刀川さん、一生ついていきます……!と。
あとは国近が席を立ち膝枕をやめれば太刀川と出水の任務は完了するのだが……そうは問屋が卸さない。
「え~?起きちゃうんじゃない?」
「こんだけ熟睡してりゃ大丈夫だろ。出水、移動させてやれ」
「了解です。柚宇さん、ちょっと失礼しますよ」
「はいよ~」
出水は立ち上がり、京佳と国近のもとへと向かう。私服のままトリオン体に換装した出水は、京佳の膝裏と肩の下に腕を入れて軽々と持ち上げた。
所謂お姫様抱っこというやつである。普通なら胸キュン展開のはずだが、今回はどちらも男だ。胸はキュンキュンしないが、代わりにキマシタワーが建ちそうではある。
出水はソファの上に京佳をゆっくりと下ろし、トリガーをオフにする。役目を終えた出水は、再びソファに身を沈めた。
運んでいる間も京佳は穏やか顔で眠ったままであり、一切起きる気配を見せなかった。
「全然起きなかったね~」
国近が言いながら立ち上がり、京佳が眠るソファへと向かっていく。
そんな国近を横目に、出水と太刀川は雑談に花を咲かせていた。
「ほんとにな。眠れる森の何とやら……だな」
「はは、キスしないと起きないってやつですか?」
「そうそう、もしそうだったらお前どうする?」
「いや~流石に男にキスすんのはな~。募集したら女子が山ほど応募してきそうなんで心配ないんじゃないすか?」
「それもそうか。はっはっは」
太刀川と出水はソファの上で顔を向け合い、2人で気分良さそうに笑う。
それもそのはず。何せ国近の膝枕を中断させ、国近の下乳を守ることに成功したのだから。
別に羨ましいとか嫉妬とかそういうのじゃなく、純粋なボーダー隊員としての責務から生まれた失敗は許されない任務。それを達成することができた。
やはりA級1位たる俺たちに不可能はないと、自分達の実力を再確認した2人は自負心を更に強いものにする。
しかし、悲劇はまだ終わらない。
完全に祝勝モードに入っていた2人は気付いていなかったのだ。
今、京佳と国近がどういう状況にあるのかを。
「なあ、くに……っ!?」
「?どうしたんですか、太刀川さ……っ!!」
太刀川が出水から視線を外し、国近の方を見た瞬間に絶句する。太刀川の挙動を不審に思った出水も国近の方を向き、同じように絶句した。
テーブルを挟んだ向かい側にあるソファに京佳が仰向けになってスヤスヤと寝息を立てている。
これはいい。出水がソファに運んだのだから、そこに京佳がいるのは当然だ。
そして、同じソファに国近が座っているのもいい。
2人が絶句した理由、それは…。
国近の太ももに再び京佳の頭が乗っていたからだ。
「うそ…だろ……」
太刀川が絶望の声を上げる。
膝枕を見たからではない。今の膝枕には先程と比べて決定的な違いがあったからだ。
つい数分前まで床で行われていた膝枕とは違い、国近の手がフリーになっている。
ゲームのコントローラーが握られていた手は…今は京佳の頭に添えられていた。
慈しむような目線を京佳へと向ける国近。スヤスヤと眠る京佳の頭部へと右手を持っていき、優しく頭を撫でている。
そんな国近の振る舞いを見た男2人は愕然とした。まさかここまでしても膝枕をやめないというのは予想外だったのだ。
否、1回は確かに膝枕をやめたのだ。しかし、再び膝枕になってしまった。
なぜこんなことになったのだろう……。油断や慢心は確かにあったかもしれない。それを考慮しても、ここまで状況が悪化するとは思ってもいなかった。
しかし、これ以上何か言っても怪しまれる可能性がある、打つ手がなくなった2人は、今にも死にそうな声音で口を開いた。
「太刀川さん……」
「…なんだ、出水」
「……羨ましいです…」
「そうか。…俺もだよ」
先程までの”ボーダー隊員としての責務”とは何だったのか。
完全にメッキが剝がれた2人の口から、桜のように本音が散った。
ーーー
「失礼する」
太刀川隊の作戦室に1人の男が訪れた。ボーダー本部長・忍田真史である。
忍田は作戦室の扉をノックして中に入ると、そこには太刀川隊の隊員がソファに座っていた。
京佳と国近が同じソファに座り、その向かいには太刀川と出水。先程目覚めたばかりの京佳はまだ眠そうだ。
京佳が目覚めた際、膝枕されているにも関わらず平然と「おはようございます」と言い、それに対して国近も至って普通に平然と返事をした。
それを見た男2人が再び絶句したというシーンがあったが割愛する。
「慶と出水の元気がなさそうだが……何かあったのか?」
そんな作戦室の様子を見た忍田は首を傾げた。
忍田の目から見て、同じソファに座る太刀川と出水は見るからに元気がない。
体調が悪いのか、それとも何かあったのか。
何かあったのか、と聞かれれば答えはYESかもしれない。
しかし、実際は太刀川と出水が紆余曲折の果てに勝手に燃え尽きただけなので、何もなかったと同義と言っていいだろう。
心配に思った忍田の問いかけに答えたのは他ならぬ太刀川だった。
「何もないんで…、それで新人ってのは?」
「ああ、紹介しよう。入ってきなさい」
太刀川は質問に答え、すぐに新人の話題へと転換する。
ここまで素早く話題を変えたのは、先ほどまでの自分達の醜態を師匠である忍田に感づかれたくなかったからだ。
その目論見は成功し、忍田は疑問を感じることなく話題の転換に乗っかった。
忍田が扉の外に向かって呼びかけると、扉を開けて部屋に入ってくる人影が1つ。
おかっぱのようなぱっつん前髪をした、如何にも坊ちゃんといった風貌の男子だった。
「この子は唯我尊。この部隊に入隊させることになった。新たな仲間として迎えてやってくれ」
唯我、と紹介された男子はおかっぱを靡かせながら腕を組んで堂々と佇んでいる。
出水は心の中で「こいつ態度でけーな」と呟くも、口には出さない。太刀川も同様だ。
国近と京佳は唯我の態度など一切気にせず、この後食べる予定のケーキに胸を躍らせていた。
「私は失礼する。頼んだぞ、慶」
「りょーかい。任せてください」
忍田が部屋から退出し、唯我が残された。
数秒の沈黙の後、組んでいた腕を開いた唯我がエラそうな態度で口を開いた。
「ボクの名前は唯我尊。知っての通り、ボクの親は最大手スポンサーの社長さ!」
髪をふぁさぁ…と靡かせ、堂々とした態度を見せる唯我。
そんな唯我の言葉を聞いた4人の反応は薄い。そのことに気付き、唯我は困惑する。
唯我としては、大手スポンサーの御曹司というだけでチヤホヤされると思っていたが、そんな様子は一切ない。
沈黙に包まれる作戦室。その静寂を破ったのは隊長である太刀川だった。
「とりあえず俺たちの紹介しとくか。俺は隊長の太刀川慶。どうぞよろしく。んで、こいつが出水公平」
「あー…よろしくな」
太刀川の言葉に合わせ、出水が軽く手を上げて挨拶する。
その調子で、太刀川は残った面子の紹介も始めた。
「このさっぱりした男前が烏丸京佳」
「さっぱりした男前です、よろしく」
「そんでウチの紅一点、国近柚宇」
「よろしく~」
「……よろしく頼むよ…!」
予想と違った反応に戸惑いながらも、唯我は挨拶を返した。
そんな唯我を横目に国近は立ち上がる。
「さ、お待ちかねのケーキの時間だ~」
「あ。俺お茶淹れますよ」
「お、気が利くね~京佳くん。じゃ、行こっか~」
まるでケーキがメインだと言わんばかりの国近の態度だが、実際ケーキの方がメインだと思っているので誤解ではない。
ちなみに京佳もケーキのことで頭がいっぱいになっており、うっきうきで茶を淹れに行った。
「ケーキ?」
国近らの発言を聞いた唯我は首を傾げた。その様子を見ていた太刀川が唯我が持っているであろう疑問に答える。
「まあ一応、お前の入隊祝いってとこだな」
太刀川の言葉に唯我は胸がジーンと熱くなる。
自分のためにケーキを用意してくれていた…しかもそれをみんなでたべるだなんて…!なんていい人達なんだろう…!と。
ただ、唯我は知らない。太刀川たちは先程、私利私欲に塗れた理由で先にケーキを食べようとしていたことを。
まあ、当の唯我は嬉しそうなのでいいのではないだろうか。知らぬが仏とはこのことだ。
しかし、プライドが死ぬほど高い唯我は素直な感謝の気持ちを表すことはない。まるでツンデレのような反応を見せた。
「ふ…!安物のケーキは食べる気にならないな…!まあ、どうしてもと言うなら食べるのもやぶさかではないが…!」
「あ、そう。じゃあ京佳に食わせるわ」
「え、あれ…」
そんな唯我のツンデレは出水によって粉々に砕かれ、唯我は再び困惑した。
唯我としては「そんなこと言うな。安物で悪いが頼むから食ってくれないか?」みたいな展開を予想していたのだが、全く違う方向に転がっていく。
「食べよ~」
唯我が戸惑っている間に、国近と京佳がケーキと茶をお盆に乗せ、取り皿やスプーンを持って歩いてきた。それらを机の上に置き、2人は先程と同じ並びでソファに座る。
「さ、選んで選んで~!」
机に並べられたケーキは5つ、それぞれ違う種類のケーキだ。
ショートケーキ、チョコレート、チーズ、モンブラン、イチゴのタルト、どれも美味しそうな輝きを放っている。
「京佳、こいつケーキ食わねーらしいから2つ選んでいいぞ」
「あっちょ」
「まじっすか。じゃあこの2つで」
出水が唯我を指しながら言う。
唯我が何か声を上げようとするも、それよりも先にウキウキの京佳がチーズケーキとタルトを自分の取り皿に移した。
太刀川、出水、国近もそれに続き、あっという間にケーキは無くなる。
唯我が啞然としていると、出水がモンブランをもぐもぐしながら口を開いた。
「唯我、お前何してんだ?突っ立ってないで座れよ」
某射手ランク1位よろしく言葉を放つ。
その言葉を聞いた唯我はわなわなと震えながら口を開いた。
「なんだこの雑な扱いは!ボクはスポンサーの息子だぞ!?もっと敬ったらどうなんだ!」
大声で慟哭する唯我だが、太刀川ら4人は全く動揺していない。
むしろ、何言ってんだこいつ?という感情を孕んだ目で唯我を見つめていた。
そんな中、チョコレートケーキを口に入れながら太刀川が言う。
「まースポンサーの息子っつってもなー。すげーのはお前の親父さんで、別にお前はすごくねーだろ。それで敬えとか言われてもなー」
「ぐっ」
「つーか、別に雑じゃないだろ。お前が食わねーって言ったんじゃねえか」
「うっ…」
太刀川の正論が唯我に突き刺さり、続いた出水の正論が唯我を殴る。
しかし、唯我は折れない。すぐさま反撃に出る。
「ふ…!いいのか、そんなことを言って!ボクが父に言えば…!」
「また父親か。お前自身は何ができんだよ」
その反撃は出水の一言で止められた。出水の言葉に、唯我はたじろぐ。
「それは…」
「ほら、なんもできねえだろ」
言い淀んだ唯我に対し、出水は更に追撃する。
実際、出水の言う事は唯我にとっての図星だった。
唯我は今まで親の七光りとして生きてきた。何かあれば父親の名前を出してきたし、父親が何とかしてくれた。
自分自身の力だけで何かを成し遂げた記憶など殆どない。
唯我は自分自身に大した力がないことを知っている。しかし高いプライドが邪魔をし、それを認めることはできなかった。
等身大の自分から目を背け、父の力を借り、まるで自分が強くなったように暗示をし、自分を騙しながら生きてきた。
「なんか…思ってたよりも薄っぺらい人ですね」
「酷すぎる!」
黙ってしまった唯我に、京佳の言葉が深く深く突き刺さる。
会心の一撃をくらった唯我は、涙を流しながらその場に膝をついた。
「ありゃ?」
そんな唯我の様子を見た出水は困惑する。まさかここまでメンタルが弱いとは思っていなかったのだ。
唯我は今までの人生、悪口やら批判やらを直接言われたことが無かったのでメンタルが豆腐なのは当然っちゃ当然だが、出水にはそんなこと知る由もない。
「あーあ、出水先輩。言い過ぎっすよ」
「え、ちょ、これ俺のせいか?トドメ刺したのお前じゃね?」
「何言ってんすか。俺じゃないっすよ。ですよね、国近先輩」
「ん~…これは出水くんが悪いかな~」
「まじかよ…」
「はっはっは。ウチはいつも通りだな」
全ての罪を出水に押し付けることに成功した京佳。
それに加担した国近。
その様子を見て笑う太刀川。
いつも通り、何も変わらない太刀川隊の風景がそこにはあった。
ただひとつ、地面に膝を付く唯我を除いて。
「まあ、唯我」
「…はい?」
グズグズと涙を流す唯我に太刀川が声をかける。
「ウチはこんな感じだ。お前のことを特別扱いなんかしない。それが嫌なら他のとこへ行け。それでもいいなら……俺達は歓迎するぞ」
その言葉を受け、唯我が周囲を見渡す。
先程までわちゃわちゃしていた面子は、全員真剣な眼差しで唯我を見ていた。
唯我はゴクリと喉を鳴らし、ゆっくりと口を開いた。
「よろしく…お願いします」
「おう。ようこそ、太刀川隊へ」
こうして、太刀川隊に新たな仲間が加わった。
ちなみに唯我の分のケーキは既に京佳が食べてた。
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