【完結】フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く3   作:タラバ554

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107 おじさんと変身

ヘスティアファミリアの朝の恒例行事、ラジオ体操。朝の運動が終わって食事を摂ったら各々の作業に移るのだが今日は珍しく全員で庭に集まっていた。

並べられたテーブルと椅子、そしてテーブルの上に鎮座する飲料水やポーション。

そしてゴツイカメラを抱えたおじさん。

今日、ヘスティアファミリアの庭から異世界に向けて配信が行われていた。

最初はPCを並べて画面を見ているヘスティアちゃんと春姫ちゃんにカメラを向ける。

 

「はい、それでは今日は前から告知していたおじさんが所属している『ヘスティアファミリア・チキチキ! リリルカ・アーデの下剋上!!』を配信していきたいと思いま~す。解説はファミリアの主神である」

「このボク! ヘスティアだよ!」

「はい、そして最近Lv3に上がる事の出来た」

「はっ、春姫です! 宜しくお願いします」

「尚、おじさんはカメラマン、そしてインカムで会話してます。PCの画面は見えないのでコメントとかはヘスティアちゃんと春姫ちゃんが読み上げてくれるので宜しく」

「さっそく書かれてるよ。『もげろおっさん』『ハーレム野郎が』『ヘスティアちゃん、春姫ちゃんかわいい』だってさ! おじさんに対しては兎も角、ありがとうね!」

「あっ、ありがとうございます!」

「はい、可愛い女の子ばっかり撮ってるとそーいうコメントばっかり書かれるので……ヴェルフ君、何か一言」

 

そう喋りながらカメラを横へスライドさせてヴェルフ君を映す。

 

「えぇ!? ここでオレに振るんですか? ……あー、是非リリ助の活躍を見てやってください」

「はい、ありがとう。因みにリリちゃんの装備全般がヴェルフ君の作品になってまーす。因みに地球では売れませーん。銃刀法に引っかかるから! 販売免許とか取るのめんどくせぇし!」

「『それぐらい取れよ(笑)』『おっさんぇ……』『じっくり装備見たい』地球でもヴェルフ君の装備欲しがる人居るんだね」

「こちらは『ファミリアの装備はヴェルフが作ってるの?』だそうです」

「あぁ、基本的にヘスティアファミリアの装備はオレが作ってる」

「ウチのファミリアのメイン鍛冶師のヴェルフ君、因みに彼も神を嫁に貰う(予定)の男なので恨み節は彼に向けてね。「ちょ!? おじさん!?!?」次、こちらは命ちゃん」

 

カメラを更に横へやると画面に移りこむ命ちゃん。

 

「えっと、ヤマト・命です。宜しくお願いします」

「相変わらず配信に慣れない命ちゃんです。因みに煽らないでねー」

「『寝取られの人だ』『寝取られ被害者』『おじさん被害者の人』だって」

「はうぅうう、その、命ちゃんはそんなのでは無いんです~」

「寝取られ……」

 

コメントに煽られて速攻で沈んでしまった命ちゃんを意図的に画角から外す。

 

「はいはい、NTR、NTR。つーかこの場合NTRされたのはイシュタルちゃんな気がするが……深く考えるとドツボなので準備してる二人の方に行くよ」

 

映し出される映像では庭の方へ向き直り、準備をしている二人が映る。

 

「二人共どう? 意気込みとか」

「えっと、僕としてはリリの仕上がりが楽しみです。時々僕も軽い手合わせはしてたけど……今日は全力って話なんで……頑張ります!」

「え"ぇえ! いや、ベル様! 私Lv2なんですから手加減してください! lv2と5の時点で無茶なのに全力なんて出されたらリリが死んでしまいます!」

「だってさ、ベル君」

「えっ……でもおじさんがリリの本気なら僕より強いって」

「絶対嘘です! 盛ってます! 絶対に盛ってます! おじ様は基本まじめな癖にこの手の事になると本気で他人を巻き込んで遊ぶんですよ! 見てください! カメラで隠れてますがこの口元! 絶対にやにやしてますよ!」

 

おっと、つい楽しくて口が……いかんいかん。

 

「そんな事無いよ? リリちゃんが本気だせばベル君とだって張り合えるはずだけど」

「いーや嘘です! そうやって何時もリリを騙せるなんて思ったら駄目です! Lv5とLv2が同様に戦えるはず無いんです! 常識的に考えて!」

『コメントで『可愛い』『もっと怒らせて♡』『泣き顔見たい』だって……リリルカ君って妙なファンが居るよね……』

『『可哀そうじゃないと駄目』とか『メスガキムーブが板についてる』とかもありますが、めすがきむーぶとは?』

『おぉっと春姫君! 君は知らなくていいぞ!』

 

相変わらずリリちゃんのファンって変なの多いな。

 

「まぁ勝てないにしても全力でぶつかれるでしょ?」

「それはまあ……そうなんですが」

「配信で得た収入はちゃんと渡してるし、何か嫌なの? なんなら配信やめる?」

「う"、それは……リリも欲しい物があるので配信は良いのですが」

 

この手の配信、実はスパチャとか宣伝の収入は出演した人に割り当ててる。お金の使い道は個々人に任せてるから基本知らない体だけどカードとか通帳自体はおじさんが作ったから何買ってるかは知ってる。

ま、趣味は人それぞれって事で。

 

「問題ないならそろそろ始めるか。リスナーも待ってるみたいだし」

「「はい」」

 

対峙するリリちゃんとベル君。リリちゃんは魔月(まこう)を、ベル君はヘスティアナイフを構える。

離れて二人が画角に入る様にしてから二人に声をかける。

 

「OK、二人のタイミングで始めて!」

 

次の瞬間にベル君の姿は通常速度の配信画面から消えた。

ベル君は純粋にスペックから普通に見ては姿を捉えきれない、リリちゃんは逆にベル君の攻撃をどっしりと構えて魔月で受け流しをしている。少しづつ場所を変え、立ち位置を変え、受け方を変えながら行われる防御に盛り上がるコメント。

オラリオの……もっと言えば冒険者をやってる奴からしたら有り得ない光景。

lv5の攻撃をいなし続けるlv2。

段々とベル君の攻撃速度が上がって来た所に魔月の刀身が燃え上がり、防いだ次の瞬間に離脱したはずのベル君を追う様に炎の斬撃がカウンターを叩き込む。

ヘスティアナイフで斬撃を防ぐ、炎の斬撃は音を立てて割れる……と同時に爆発、炎上。

 

この効果を知らなかったヘスティア、春姫、命の3名は驚いている。

 

肝心のリスナー達はというと……。

 

『ライダーだしな』

『ダイダー=爆発』

『島を爆発で更地にした逸話は異世界にも引き継がれたか』

 

等と言う始末。

 

『おじさーん! 島を爆破で更地って何さー!』

 

ヘスティアちゃんが何か言ってるけど無視無視、今は配信カメラマンなので!

動く彼らに合わせておじさんも立ち位置を変える、時に近づいたり、ジャンプして空中から撮影して見たり。

10分も打ち合ってどちらもダメージ無し、リリちゃんはちょっと息上がってるけどベル君は特に変わりなし。

大分健闘してるけどやっぱ変身しないと同じステージには立てないね。というか魔月の炎の斬撃の爆発効果をさらっと乗り越えてるベル君やばぁ……。

コメントでは早すぎて見えないって言うコメント続出なので再生速度を落として見る様にアドバイスしておいた。0.5倍速で良い感じらしい。

……変身したら視認出来ないとか無いよね?

リリちゃんが魔月を構えたまま変身ポーズに入った。ここぞとばかりにベル君が責め立てるが多分乗り切れる。

何せ変身を止められたら元も子もないので開発三人組(おじさん、ヴェルフ、アスフィ)に攻撃されながらでも変身できる様に訓練したからアレだけは止めれないと思う。

右手に魔月を逆手に持ったまま上半身を左に捻り、左手を縦、右手を横にして脇を固める。

 

『来た!』『来ぞ!』『来る!』

 

責め立てるベル君のナイフを足さばきを中心に避け、時に右手の魔月で弾きながらポーズを取る事でベルトにエネルギーが貯まる。エネルギーが貯まるにつれてベルトのバックルに仕込まれたギミックが左右にスライドして開いて行く。

遂にギミックが全て開きチャージが規定値を超えリリちゃんの全身から白いオーラがあふれ出す。変身の為のエネルギーチャージが完了した証。

変身プロセスは進みリリちゃんはチャージポーズから変身ポーズへと構えを変える。当然変身させまいとベル君が攻撃速度を更に上げ、いままでの倍以上の手数で責め立てる。

だがソレは想定済み、変身ポーズの時だけはリリちゃんがガチガチに集中できる様に癖つけたのでそう易々とは変身を中断しない。

左に偏っていた重心は解かれ左手は腰だめ、右手は一度右下へ、まるで抜刀の直後の様なポーズをとってから左上へと掲げ半月を描く様に腕は動く。

やがて所定の位置に来た彼女の腕はキーワードを叫びながらベルトのギミックを押し込む事で所作は完成する。

 

「変身‼」

 

一瞬、眩い光を発したリリを再びカメラが収めると、そこには変身を完了させたリリルカ・アーデの姿があった。

 

『キター!』『仮面ライダーリリ』『姿は仮面ライダーファムとエターナルの合いの子だよな』『ひゅー』『相変わらず謎にボディライン出るな』『薄い本早く』

 

コメントは相変わらずである。

 

そんな配信欄とは裏腹にオラリオで対峙する二人は動きを止めて俄然相手へ集中する。

次の瞬間、二人の速度は一気にトップギアまで上がっていた。

 

おじさんが目指したのはオラリオのLv6、ロキファミリアの『フィン・ディムナ』

高い敏捷に変幻自在の武器捌き、そして戦場を見渡す目と思考能力。それを与えたつもりだった。

だが彼女が本当の意味で見ていたのは同族の男等ではない。

彼女を救ったヒーロー。ソレを見続け、憧れた彼女はやはりヒーロー(ベル・クラネル)の様な戦いをする様になった。

 

彼らが踏み込む事で撒きあがる土煙、鳴り響く武器同士の衝突による金属音、互いの魔法と斬撃による爆破。

完全にニチアサのバトルシーンのソレが配信ごしのリアルで行われていた。

ヘスティアファミリアでの本格的な変身お披露目が初という事もありコメントと同様に盛り上がる。

解説席では別の意味で盛り上がってる。是非ともヴェルフ君には色々答えておいて欲しい。おじさんじゃ答えられないからね。

 

カメラに向かってくる魔法や斬撃を適当に捌きながら撮り続ける事20分弱。

両者とも全力戦闘で息が上がってる。

 

何か二人して会話して盛り上がってるみたいだけどおじさんは会話聞き取れません……。念の為にピンマイク付けといて貰ったから後で配信見て確認しよう。

 

示し合わせた様に武器を構える二人。

 

片やチャージ(アルゴノゥト)を開始するベル君。

片やチャージを開始する(魔月へエネルギーを送る)リリちゃん。

 

二人のチャージが完了し、互いにぶつかりあった時、世界は白に包まれた。




変身を行ったリリちゃんと戦うベル君

二人のチャージが高まりぶつかり合った時、辺りは白に包まれた

次回、おじさんと変身2
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