【完結】フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く3 作:タラバ554
おじさんが放ったファイアストームを超える範囲の表土から炎の柱が出現する。
燃え上がる柱出現場所周辺の凍土を溶かしながら、周囲に居る生物を巻き込み炎に帰す。
身体の体毛を燃やし、纏わりつく炎。皮膚を焼き、口を、目を鼻を焼き、その炎は肺に侵入し体内すら焼く。
内と外を焼かれ絶命した狼はそのまま炎にくべられる燃料となり、運悪く絶命できなかった狼は空から襲い来る無数の炎の礫に皮膚を、肉を、骨を、脳症を貫かれて絶命していった。
獣たちの火葬場へと一変した凍土、そこを駆け抜ける二つの集団。
フィンが率いるロキファミリア、それと対を成すオッタルが率いるフレイヤファミリア。
先に獲物に接敵したのはフレイヤファミリアだった。
「邪魔だぁあーーーー!」
一直線に熊型へ突き進む中、道中の狼をついでと言わんばかりに屠りながら突き進むのは『都市最速』の称号を持つフレイヤ・ファミリアの副団長。
それに続くオッタルとヘグニ・ラグナール、ヘディン・セルランドの白黒の騎士。
そして最後尾から四つの影が一団から離れる。魔法で嵐でなお倒れなかった狼達を襲うのは
万全な状態であれば獣としての敏捷性と狼という群れで行動を行う性質から戦いという形になったのは間違いない。だが既に魔法で損傷をしている狼達に小人達の連携を止める程の動きは出来ず、碌な反撃も出来ないまま魔石を残す事になる。
意識が沈んでいた状態から浮き上がる。
どうやら先の魔法でマインドダウン寸前まで行ったらしい事をベル君から伝えられた。
「……おじさんが今回の作戦に入れ込んでるのも知ってます。でも……少し力を抜いて周りを見て見ませんか?」
ベル君がこちらを心配した目でまっすぐ見てくる。
冒険者としてLv5という高みに辿り着き、一般人とは隔絶した運動能力を兼ね備えた少年。
多感な時代にこんな高みに登れば歪みそうなのものなのに……彼の性根は何時までも素朴な少年らしく、ただただ心配の感情を向けてくれる。
それに比べておじさんは周りに良い顔をしながら自己中心的な考えの元、周りを巻き込んでここに立ってるっていうのに……。
「いかんな、どうにも感情的になってるかも」
自分の根本的な部分が油断するとネガティブになる事を反省しつつベル君の肩を借りて立ち上がる。
視界を戦況に向ければ狼型が大幅に削られた状態でフレイヤ、ロキファミリアのLv5以上が熊に憑りつき交戦中。Lv4を中心に、Lv5がついでと言わんばかりに狼を削りながら戦況は押している。
それでも余裕とは言えない。
精霊を文字通り腹に抱えた熊型の一撃は凄まじく、両の手を振るう度に氷壁が割れ、背中から伸びる無数の触手はLv5以下を寄せ付けない。
そこに食らいつくのはフィンを中心としたチームプレイ主体のロキファミリアPT、そしてオッタルを筆頭とした個の戦力を高め続けたフレイヤファミリアPT。
2PTは上手く立ち回りそれぞれの行動を阻害しない様に各々責め立てている。
遠くから見ているからこそ解る。チームプレイを乱したいがその頭脳までが遠いロキファミリアPT。個々の戦力が吐出していて1体を倒しても意味が無い……かと言って無視も出来ないフレイヤファミリアPT。
攻められる側からしたら厄介な2PTを相手取って未だ戦い続けているあのモンスターのタフネスが異常なのだ。
「おじさん、本当にボクは
「うん、多分おじさんだとアイツ相手だと壁にしかなれないから……決め手は
反則的なスキルで時間というリソースを大量に手に入れたおじさんだけど、やっぱり決め手を持ってない。
助けられて、慰められて、何だかんだとここまで来たけど。
"居れば便利、居ないなら居ない也にやれる"
おじさんなんてそんなポジションなのだ。
でも、だからこそ。
自分との縁を……例え最初が悪いものだったとしても……大事にしたいじゃない。
大きく深呼吸、冷たい空気を胸いっぱいに取り込んで逸る頭を落ち着かせる。
人生の大一番、きっと最大の舞台。今できる精一杯を!
「よしっ、んじゃあベル君。おじさん行ってくるわ」
「はい、皆で必ず帰りましょう!」
「うん、皆で帰ろう」
羽織っていた防寒具を脱ぎ、腰へと手を当てる。
アスフィ、ヴェルフと造った
おっさんだってやる時はやるって事を見せる、その為の一手。
脳内に響く英雄の為の曲、定まったポーズを取り流れる様に動く身体。
あふれ出す緑の濃いオーラは高まり、臨界と共に眩い光を放ちながら身体の変化と鎧を顕現させる。
「変身」
地球のヒーローがダンジョンの深層へ降り立った。
「さぁて、家族を取り戻しに行きますか!」
おじさんの大一番が幕を開ける。
主人公にはなれない
それでも世界は止まらない
なら使えるものは何でも使って取りに行く
次回、おじさんの舞台