【完結】フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く3   作:タラバ554

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長かった3も終わりです。


118 おじさんと終わり

精霊ちゃんとの闘いから既に1か月が過ぎようとしていた。

この間はずっとヘスティアファミリアのホームで療養。

堕ちた精霊を抱えたままオラリオに戻って来た事で一部混乱があったが……まあ大体の奴はオラリオのツートップであるロキ・フレイヤファミリアが騒がない事で次第に沈下。

周りがギャーギャー言ってる間に自分自身と精霊ちゃんの体をあれやこれやと弄繰り回しておじさんはどうにかホーム内なら動ける程度には持ち直した。

精霊ちゃんはまだ眠ったまま、意識戻るまでもうちょいかかりそう。暫くは保つかな。

 

「あ"~、自分の脚で動けるって最高~」

「おじさん、大丈夫なんですか? 部屋抜け出してきちゃって」

「抜け出すって言っても庭で日向ぼっこしてるだけだし良いでしょ」

 

庭の日向で横になりながら、途中で寄って来たベル君と話す。

あの後、色々あったし尽力して貰って感謝しますが、多少はお目溢しして欲しい。

 

「いやいや……おじさん戻ってきてからマインドゼロで気を失ったから呑気かもしれないですけど……起きるまでに4日もかかったし、日に日に細くなって行くのを見れば誰だって心配しますよ」

「……そっかー」

「あの後、神様が機転を利かせてアラハビカからお医者様を連れてこなかったらどうなってたか……多分、と言うか絶対にオラリオにマインドポーションやポーション、それに栄養自体を点滴で投与とか存在しないですよ? アミッドさんが訪ねて来た時は1日中おじさんに繋がってる点滴を見てましたし」

「えっ、何それ聞いてない。怖い」

 

そう、ベル君が言った通りおじさんは細くなった。

細くなってしまった。

体重を計ったら40キロを切ってたからなぁ。女児かよ!って思った位だし。

医者に診てもらって暫くは絶対安静。色々と制約が付いたけど1か月で体重も50キロが見えて来たし、また脂肪のストック戻さなきゃ。

 

「まぁでも、やっと肩の荷が下りた気がするわ」

 

眼を閉じて思い出す。

最初にオラリオでヘスティアちゃんに会って。

色々バカやって、思えばあそこでイシュタルちゃんとも縁が出来たのか……戦争遊戯を超えて自分の世界に戻って……。

絶えられなくなってオラリオへ戻ろうとしたら別の所で。

そこで精霊ちゃんと縁が出来て。ま、最終的に喰われ(物理)ちゃったけど。

死んだと思ったら【引継ぎ】で人生ニューゲーム状態に入って行くけど、lv5に来るまで何年かかったか……。

毎回ヘスティアちゃんの所に所属してたけど、こそこそと隠れてステータス更新しても伸びるのは微々たるもんだったからな。

今回の事で学んだわ、本気でやるなら色々巻き込んで行かないと大きなことはやれん。

 

「けど暫くは切った張ったの世界は十分かな」

「まずは体戻さないとですしね」

 

ベル君の相槌に「確かに」と笑って返す。

一緒になって笑っていると建物の方から叫び声が。

 

「あーーーーーー! 居ましたー!」

 

振り返ると春姫ちゃんがホームの窓からこっちを見てた。

……あれ?

 

「ベル君」

「何ですか?」

 

何故におじさんの肩を抑える? 今日って確か1日フリーの日じゃなかったっけ?

苦笑を浮かべてベル君が更に力を入れる。

 

「おじさん、昨日一日中寝てたんですよ。なので今日は午前中はイシュタル様、午後から春姫さんの日らしいですよ」

 

おじさんの顔から血が引いていく。

 

「い 一日中寝てたかー…もう一日休みを貰えたりは…」

「僕に決定権は無いのでお相手にお願いしてはどうでしょう?」

 

あ、あかん 嫁さんに色々バレて諦めた時の同僚と同じ目だ!

逃げ出そうにも今の体調だと振り解くことすら出来ん!

 

「いっ! 嫌じゃ! これだけ体力減ってるのに致すのは無理だって!」

「そんな事を僕に言われても……それに医者からも一応OK出てる訳ですし」

「アレって『数日おきなら』って医者がしぶしぶ出した奴じゃん! イシュタルちゃんが本気で神威かまそうとして! それに対して一日おきに致すのは絶対違うっつーか本来連続でヤるもんじゃねーよ!」

「そこらへんは僕は未経験なので分かりません」

 

こっ、こいつ!!

堂々と未経験(童貞)と言い切った!!

いかん、現実を見たくない!

 

「まってまって! おじさんの認識だと昨日したばっかりで無理だって!っつーか春姫ちゃんはおじさんの倫理的に無理!」

「スキル使えば良いじゃないですか」

「……元になるモノが欠けてる状態で使ってもガス欠なんじゃよ……」

「そう言うだろうと思ってコイツを連れて来たよ」

「ハハァ……♡ 久しぶりだねぇ♡」

 

恐る恐る目を開けるとイシュタルちゃんとフリュネちゃんがベル君の横に立っていた。

 

「えぇっと……どういうご了見でしょうか。フリュネちゃんまで連れて……」

「おじ、盲点だったよ、アンタのスキルは相手に対して自分の脂肪を使う事が出来るんだよね?」

「だったらさぁ、アタイの肉をアンタに使う事だって出来るんじゃぁないのかい?」

 

フリュネちゃんが血走った眼と興奮した様子で顔を近づけてくる……。

 

「ふふふ……イィ。アタイの血と肉がアンタみたいな雄と交わると思うと……たまらないね!」

 

ナニを想像したのか身を震わせながら目をかっぴらいて空を見上げてる。

 

「相変わらずですね。フリュネさんって……」

「私が言うのも何だがおじに依存し過ぎだろう」

「うーん……コレっておじさんのせいになるのかな?」

 

例のイシュタルファミリアへのフレイヤファミリア奇襲事件の際、地味ーにオッタルから助けてやってから懐かれたのよね。

まぁ、オッタルの方が納得いかなさそうだったからその分フリュネを殴って分からせるって話になって、顔面が倍に腫れあがる程に殴ったんだけど。

そしたら変なスイッチ入っちゃたのは何ともはや……。

ドMの巨漢女……容姿を弄れば需要ありそうだけど本人が嫌がるからイシュタルちゃんも困ってるみたいだし。

 

けどまぁ、他人の脂肪を自分に使うか……言われてみれば普段と逆の運用も行けそうな気がする。と言う事でさっそく。

フリュネちゃんの手を取って立ち上がってからスキルを発動。武器を振るう彼女厚い掌の皮膚を通しておじさんの魔力が流れ込み、そのパスを通して彼女の有り余る肉がおじさんへと流れて来て……。

 

「おっ、おぉ??」

「あっ、ひっ、ひっ、ひいぃいいい♡」

 

フリュネの肉を貰って自分の身体を整えたら何か肌が若干焼けた様になった。まぁ元が白い方だったから多少焼けても九州男児として見たら割と普通か。

ある程度…大体80kg手前まで増やしたけど、それに対してフリュネの体型が激変してる。

これもしかして…所謂レートが違うのか? おじさんから他者に対してと、他者からおじさんに対しての変換率は悪そうだな……。

とりあえず昇天してしまったフリュネを抱え……は止められたので代わりにベル君が抱えて部屋に戻ることに。(肉を貰った結果、フリュネは細く、美人になったのでベル君でも簡単に抱えられる)

 

 

 

部屋に戻ってから体調が戻ったとしてイシュタルちゃんと一戦交えた後で色々抱えてたモノを吐かされた。いや、本気で性交渉では勝てん……。

折角なので精霊ちゃんも居る部屋でイシュタルちゃん、それに春姫ちゃんも呼んで色々と白状しましたよ。

そう遠くない時間でおじさんに残ってる時間が尽きそうな感覚がある事。

スキルとして命のストックがあったが、ソレ(命のストック)を消費して布都御魂剣を振るった事。

命が尽きる直前に自分の体を全部消費してでも精霊ちゃんを生かす事。

それに伴ってアラハビカから呼んだ医者に手伝って貰って会社の人間に対して元の世界に帰るか残るかのアンケートを実施していた事。

残る者と帰る者。残る者には生活基盤を整える支援、帰る者には一人頭約1億円の退職金。

それなりに残る者が居て、その結果として幾ばくかの技術や薬の知識がオラリオに流入するだろうけど……ソコには眼を瞑る事に。

 

「とまぁ、直近に動いてたのはこんな所かな。正直に言えばあっちの世界の利権の調整とか、ネットを介して俺の今後に関しての発表やったり、政府系にも対応しなきゃなんで正直残ってる時間で捻出する必要があるんよ」

「はぁ……お前という奴は……」

「あの、おじ様……」

「何?春姫ちゃん」

「その……どうにかして延命は出来ないんでしょうか? それに何故そこまで精霊様に……」

「あー……、多分俺を初めて食った(物理)相手だからかなぁ?」

「何?」

「……//////(ボッ)」

 

んー、ある意味文字通り一心同体となった事であの時の精霊ちゃんの思考とか気持ちとかが強烈にあるからどうにかしてやりたいって気持ちもある訳で……。

 

「惚れてる……は違うな。未練? 何て言ったら良いか分からんけど……何とかしてやりたい相手なんよね」

「……はー、おじ。お前は相変わらずだねぇ」

「私を救った時と変わりませんねぇ」

「そう?」

「えぇ、おじ様は色々怒ったり突拍子もない事をしますが、根底は何時も変わらないお人です」

 

何か春姫ちゃんのおじさんへの評価が良く分からんが……、まあええか。

 

「っていうか正直イシュタルちゃんが暴れたりしなかったのがびっくりなんだけど」

「どういう意味だい?」

「いや……てっきりフザケルなーって怒るかと」

「はん。一体どれだけお前と肌を重ねてた思ってるんだい。おじの考えなんて大体解ってるし今回の精霊を助けに行くって言いだした時点である程度推察は出来てたよ」

 

イシュタルちゃんの発言に思わず目を丸くする。えっ、マジ?

 

「あんたは私を誰だと思ってるんだい? 愛と美の女神、そして多数の神性を持つのがこの私だよ。おじの考えなんかまるっとお見通しさ」

 

そう言って椅子を立ちおじさんの隣へ移動してくる。細い指がおじさんの頬に添えられ綺麗な眼がこちらをじっと覗いてくる。

やだ、美人さんだ。神か? 神だわ。

 

「寂しくなる……」

「イシュタルちゃんのドゥムジには成れなかったけど、君をあの時助けて良かった。

 君を救えたし、俺も救われたよ。

 本当に色々と支えて貰った。ありがとう」

 

そう言ってイシュタルちゃんに頭を下げる。

イシュタルちゃんが柔らかい顔で笑う。

 

「私こそ……私こそ救われた。おじ……お前はエンキムドゥだった。

 苛烈で曇った私の眼を晴らしたエンキムドゥ。

 長い神生の中で心底私が欲した者……でもお前の根底には先にアイツが居たんだな」

「順番が逆だったなら……多分違う結果だったかね」

「ふふ、そうだね。でも『もしも』は要らないよ。

 おじ、お前に私の『愛』を預ける。いずれ受け取りに行くからね」

 

そう言ってからイシュタルちゃんの顔が迫る。

春姫ちゃんが居るが……まっ、ムードって事で。

 

長い接触の後にしなだれたイシュタルちゃんを受け止める。

甘えたがりの顔が出てる。こりゃ暫く離れないな。

 

隣を見れば顔を真っ赤に染めた春姫ちゃん。春姫ちゃんとも色々話をして一応は納得して貰った。

結局彼女の『お願い』は叶えてあげれなかったけど納得はして貰えた。

本当に良いのかと聞いたら……。

 

「イシュタル様が納得しているのに私が納得しないなんて……女が廃れてしまいます」

 

いや本当にこんだけ良い女なんだからおじさんなんかより良い人が絶対出来るわ。

最後の願いとして夜一緒に寝るって事だけはしたけど性的な事は一切無し。

イシュタルちゃんと春姫ちゃんと一緒に川の字になってその日は寝ました。

 

明けて翌日。

体が本格的に動かせるようになったので色々な処理にかけずり始めた。

会社の解体と地球側の政府とのやり取りに利権の整理。

それと並行して発表の準備とか色々。

地球側のやる事は数は多く無いけど一個一個が重たい。

特に……ライダーオタク関連のベルト作成依頼が未だに続いている。

正直版元には作って渡したい思いはあるが一個でも前例が出来たら面倒なので涙を飲んでもらう事にした。

一応科学的に再現は不可能ってのは結論出てるが念のためにね。

 

ソレ等が終われば今度はオラリオ側の処理。

色々とあるがまずは……。

 

「こんちはー、タケミカヅチさん、来たよ~」

「おぉ、おじさん。こっちだ」

 

声に従い庭へと回ると縁側で茶をお盆に乗せたタケミカヅチさんが居た。

促されるままに隣の座布団へ座り皿に盛られたせんべいを一つ口に運ぶ。

うん、しょうゆ味だ。うめぇ。

 

「ありがとね、刀。役に立ったわ」

「そうか、で? どれくらい消費した?」

「人生2回分」

「lv5の人生2回分か。そりゃ疑似神造武器でもダンジョンを切る位は出来るか」

 

からからと笑ってるけど威力凄かったぞ、おい。

 

「あくまで疑似だからな。アレなら人間でも触れるし振れる威力だろう。私も普段はこんなだが腐っても神だ。本物なら……一振りでダンジョン全てを叩き斬る位は出来るぞ?」

 

めっちゃキメ顔じゃん。普通にしてても格好いいんだから恰好付ける必要ないだろうに……。

そう思いながら【トラベラー】で布都御魂を取り出す。

 

「んでさ、流石にコレ返そうと思うんだけど」

「うん? ソレはお前に託したモノだ。返さずとも良いぞ?」

「は? いや神造兵器を疑似といえ持ってるとか厄介ごとだろ」

「良い。持っておけ。俺の勘がお前が持っておく方が良いと言ってる。それにソイツはお前の世界由来だからな私よりお前の方が『馴染む』だろ」

「馴染むって何だよ……つーか単にトラブルの種をだな」

「良いから! 持っておけ。別に使えという訳じゃない。持っておくだけで良いのだ」

 

何かやけに押しが強いな……暫く問答を続けたが折れる気配が無いし渋々【トラベラー】で格納しておく。

そうこうしていると急に背を叩かれた。

パァン‼‼‼

結構良い音鳴ったぞ……何だよと言外に視線をタケミカヅチに向けると何かやたら満面の笑みを浮かべている。

 

「漢を上げて来たのだろう? 俺と同じ刀を振るって意地を貫いた男への褒美だ。受け取っておけ」

「? 良く分からんけど……あんがとね」

「うむ、またいずれな」

「ん、またな」

 

そう言って縁側から立ち上がりタケミカヅチファミリアを後にする。

残ったタケミカヅチは一人縁側で日の光を浴びながら独り言を零す。

 

「ふふっ……『初めまして』では妙になよっとした奴と思ってたが……いやぁ、根はしっかり漢とは異世界でも日乃本の国に流れる血は変わらぬか」

 

世界が変わろうと自分の収めた国が変わらずあり、根っこが自分の残したモノに変わらずある。

あれほど発達したにも変わらずだ……まるで久しぶりに会った我が子に孫を紹介されるような奇妙な気分になり思わず笑みを浮かべてしまう。

 

「お前の今は終わるかもしれんが……『これから』の道にはアイツ(布都御魂)が助けになってくれるだろう。頑張れよ異世界の新たな同胞(はらから)よ」

 

 

 

タケミカヅチさんの所が終われば今度はギルドだ。

 

「つー訳で……、ロイマン。お前、降格。クビじゃないのは実績も鑑みての温情ね」

「なっ、なんじゃ行き成り入ってきて早々!」

「はい、コレがウラノスのサイン入りの書類。君の上に2人程上司が増えるから宜しく」

「は? は? はぁーーーー!??!」

 

おじさんの手元から書類を奪い取って眼を皿のようにしながら書類を読むロイマン。

そこに書かれているのは彼が今までやってた後ろ暗い事の記録。

絶対に漏れることの無い秘密と思われていた何もかもが書類に記載されている事に気が付いて顔を青くして大量の汗をかいている。

 

「因みに色々思う所があるだろうけど……文句を言えばソレに追加の情報を加えたモノが君の故郷と家族に向けて発送される予定なので」

「……は?」

 

今度こそロイマンはフリーズした。

 

「それと……はい、コレ。お前さんの両親からのビデオレターね。あと親戚の分も。お前家族に対しては良いおじさんしてるのね」

 

おじさんがタブレットを操作してロイマンのPCにビデオレターを渡す。そこにはロイマンに向けて笑顔で手を振る両親や従妹家族や友人……ソレ等と共に映るおじさんの姿。

この時点でロイマンの心はポッキリと折れてしまった。

 

腐敗の頭を押さえてからは楽だった。

粛々と行った事を書面にしてその結果として処罰を下す。

ギルドに対して大鉈を振るったがそこはウラノスからおじさんへの依頼って事になってるので諸問題は発生しない。

 

 

 

そしてギルドが終わればオラリオの各ファミリアに対してだが……ぶっちゃけロキの所は問題無い。

ロキのバストサイズを2サイズアップするだけで解決した。

フィン辺りは今回の戦いでおじさんのスキルの事を改めて知りたいって言って来たが……ロキの要望(おっぱい)には勝てなかった様だ。

ま、女性の美容に掛ける情熱に比べたら、男の策略とかそーいった諸々なんて吹けば飛ぶのよ……理屈じゃねーんだわ。うん。

 

そしてある意味一番の困ったちゃん。フレイヤはと言うと……。

 

「おじさん今までツケで大分サービスしてたからこの間の作戦の分でペイしてあげるね?」

「なら次は……」

「やっとの思いで体調もどしたおじさんを酷使するのかい?」

「……」

「というかそろそろノーマルの状態でオッタルの相手をしてやったら? ()()と経験したから今まで以上の事が出来るようになってるでしょ」

「それはまぁ」

「なのでより女としてのスキルを磨いて眷属を更にメロメロにしてより強固なフレイヤファミリアを作るのじゃ!」

「……はぁ、乗せられてあげるわ」

 

やれやれと言った具合にポーズを取るフレイヤちゃん。

色々言いたそうな眼をしてるが無粋な事を言わない辺りは流石イイ女を自称してるだけあるわ。

 

バベルのエレベータで一階まで降りたらアミッドとエンカウントした。

視界に彼女が映ったと思った瞬間、背後を取られて首を抑えられた。

あの……おじさん一応Lv5なんですけど……君本当にLv2?

 

「おじさん……私は今冷静さを欠こうとしています。説明を……、何故動けているのですか」

 

ひえっ、光が……ハイライトさんが仕事放棄しとる。

 

 

 

結局ディアンケヒトファミリアに連れていかれた、そしてスマン。残ると言った医者君よ、君をアミッドの元に預けると約束してしまった。

だが医療系のファミリアとしては最高峰なので許して欲しい。

多分質問攻めになると思うが頑張って欲しい。

……まじでおじさんが居る間の支援はやるので……本当にすまん。

 

 

 

そんな感じで慌ただしく日常を過ごしている内に、遂に精霊ちゃんが眼を覚ました。

 

「ココ……」

「よっ、そろそろ起きると思ったわー」

「……オ前」

「俺の中に残ってた……『此処とは違うお前』の大部分を渡したからある程度解るだろ?」

「アァ……繋ガリハ……ナ」

 

体が動かせそうにないので水差しから介護用の水飲みに水を入れて飲ませる。

 

「ンッ……」

「お前さん、水のエレメントだったんだな。あのウォーター・スウォームが万全の状態で撃たれてたらもっと規模デカかったろ。ありゃ軽く死ねるぞ」

 

ゲラゲラと笑っていると疑問の声を出された。

 

「ナンデ生キテル?」

「何でって……斬ってから治した」

「チガウ、ワタシノ命。ダンジョンニアル……イヤ……ダンジョンニアッタ、デモ、イマ外ニイル」

「そんなもん切り捨ててからおじさんの命を移植したからな」

 

何を言ってるという顔をするな。

 

「俺、お前救う。ダンジョン、邪魔。お前一度殺す、体、ダンジョンに渡さない。外、持ち出して命吹き込んだ」

「オマエイッテルコト、ムチャクチャ……デモホントウノコト……アタマイタイ」

「けけけ、これから色々と常識学んでからもっと頭痛くなれ」

 

 

 

「ムリ! コレイジョウ! ハイラナイ!」

「馬鹿野郎! 無理でも入れるんだよ!」

「オナカ! コワレル!」

「アホゥ! これ位で壊れる程人体はヤワじゃねぇ!」

 

そう言ってぐずる精霊の前に並べられた5合炊きのご飯の山。

1/3程を消費してから泣き言を言いやがって。お皿に盛ったら全部食べろ!

 

「ほれ、追加のカレーとカツ、それに福神漬け」

「ウゥ……チーズハ?」

「入らん言うくせにトッピングは欲しがるのな……ホレ」

 

 

 

「オラ、もっと走れ!」

「ウゥ……足イタイ」

「ホーム戻ったらマッサージしてやるから」

「スキル付キ?」

「……まぁありでも良いよ」

「ヤル」

 

 

 

「ドウ?」

「お~、大分動ける様になってきてるじゃん。体力も付いてきたからこれなら施術に耐えれるまであと少しかな?」

「フフフ、一杯ゲンキ。楽シイ」

「……応、そうだな」

 

 

 

「あー、母さん?」

『はいはい、どうしたの?』

「前伝えたと思うけどさ」

『……そう、あの子の命を救うの?』

「そういう感じ」

『そう……、まさか一人息子が私より先に逝くとか……あんた親不孝にも程があるわよ』

「ごめんて」

『……まぁそういう無茶な所はお父さんの家系なのかねー、しょうがない。悔いが無いようにね』

「うん、あぁそうだ。例の利権、母さん名義に変えといた。毎年売り上げの一部が入るようになってるから受け取ってよ? それと姉妹に渡す時は……まー母さんの好きにして」

『……それってニュースでCM流れ続けてる奴?』

「いや、俺TV全く見ないからCM知らんけど。息子からの最後の親孝行って事で」

『はーーーーーー、まぁ姉も妹も近くに住んでるし。何かあってもどうにかなるでしょ』

「おー、何かあったら子供を頼れ。育ててくれた恩は返さねーとな」

『子供が何言ってるのさ』

「いや、もう大人ですが?」

『親からしたら何時までも子供よ』

「……ぐうの音も出ません」

 

 

 

「おっし、皆揃ったなー」

「全員デヤル必要、アル?」

「そりゃおめーさんの門出だからな。皆でやらないと」

「何か長かったね。おじさんが来てからオラリオはしっちゃかめっちゃかだったし、ボクのファミリアも大きく変わったし」

「入って早々に高Lvでしたからね。それなのに僕に団長をさせるし」

「俺は自分のやりたかった事のヒントを一杯貰ったから感謝してるぜ?」

「ヴェルフ様は良いですよ……リリなんて異世界に醜態を晒したんですからね」

「その割には結構ノリノリでポーズ取ってたじゃねーか」

「アレはその場のノリと言う奴です……」

「まぁまぁ、リリ殿もヴェルフ殿も落ち着いて」

「そうですよ、お二人共成長出来たんですから良いじゃないですか」

「……春姫、その黒いオーラ収めな。お前の価値を下げるよ」

「……いけませんね、失礼しました」

「(オイ、春姫の奴どうしたんだ?)」

「(いやソレがこの間からちょっと不安定で……)」

「(どうせおじ様関係でしょう。ソレ以外考えられません)」

 

何か外野が騒がしいがスルースルー、今日は一世一代の大舞台なんだから。

 

「そろそろ始めるぞー」

 

そう言って彼女の背に立ち、両手を当ててから当たり前の様にスキルを発動する。

じわりと彼女に流れ込んでいくもの。

彼女に足りなかったものを流し込み、彼女の幸せを只願う。

 

この先の人生に幸多からんことを。

 

残すのは一言文だけで良い。それ以外の全てを彼女の中へ。

 

一瞬で終わったはずだが体感では長かった。

自分の中で只管育んできたステイタスも、命も、何もかもを彼女へ渡す。

ただ彼女が生きられる様に。

 

ここには英雄が居る、仲間が居る、家族が居る。

心配する事が何一つ無い中で共に歩めない事に幾ばくかの悲しみが湧くがそれ以上の喜びに塗りつぶされる。

暖かな日向の中で春風に頬を撫でられる様なさわやかな感覚で彼女の背から手を放す。

 

「すごい……」

 

僅かに残っていた違和感が綺麗に無くなっている事に彼女は声を漏らした。

 

「さっ、もうコレで囚われる事は二度と無いだろ。後はコイツ等と一緒に歩んで行きな」

 

改めて空を見上げる。

どこまでも澄んで遮るものの無い空。

日の光が心地よく、心が軽くなっていく。

意図せず溢れる涙は日の光を浴びてキラキラと輝いていた。

 

「ありがとう……」

 

お礼の言葉を口に出しながら振り返った彼女の後ろには、男の姿は無かった。




精霊に捕食され、囚われ続けて来たおじさん。

全部を投げうって彼女を解放したおじさんは消えてしまった。

おじさんは何かを得られたのだろうか?

次回エピローグ、無気力
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