【完結】フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く3 作:タラバ554
さっきまでベル君達が居た所に戻ったが誰も居ない。
暫く考えてまさかと思いゴライアスの方へ進むとヘスティアちゃんを見つけた。
「おーい、ヘスティアちゃん」
「あっ、おじさん! 彼女は……無事見つかったみたいだね。良かった」
おじさんの背中に居る精霊ちゃんを見てほっとするヘスティアちゃん。それは良いのだが……。
「所で何してんの? 何故にアレと敵対してる?
そう言ってゴライアスの方を指さす。
話を聞けばベル君がリヴェラの町の冒険者を助けるんだとか。
「ふーん」
「いや、『ふーん』って。おじさんも助けてくれるんだろう?」
「え? 助けないよ?」
「はぁ?!」
ベル君が助けるのは邪魔しないけどさ、おじさんはさっきのゴミムシ共に腹が立ってるのよ。
で、ゴミの巣窟があの町。どうせなら焼却処分しちゃった方が色々楽だからあのゴライアスにはぜひ頑張ってほしい。
「そんな!? 君ならあのゴライアスだって対抗できるのに!」
「出来るってのと、それをやるかは別問題。後さ、ヘスティアちゃんは友達を一人亡くす覚悟しておいてね」
「友達を亡くす? それってどういう」
「取り合えずおじさんはココで見てるよ。最悪は手伝うけどソレは個人的に最後の手段ね」
そう言ってから木陰に移動して精霊ちゃんと一緒に腰を下ろす。
おじさんの説得が無理だと分かったヘスティアちゃんはリリちゃんと一緒に冒険者の後方支援を再開した。
◆◆◆◆◆
ゴライアスとバチバチにやりあってたベル君がやられて此方へ来た。うーん、やっぱり助けが要るのか?と思って思案してたらおじさんが待ってた奴がノコノコ現れた。
ベル君に対して良いセリフを言った所で首根っこを摑まえる。
「よう、諸悪の根源」
「おじさん君、何のつもりだい? 放してくれないかな」
大分余裕のある事で
「そりゃ無理だ。今回の元凶、オメーだろ? アソコでやりあってる時にちゃんと聞こえてたのよ。オメーと眷属が話してた所」
「あちゃー、こりゃまいった。でも俺も心が痛かったんだぜ?」
「そうか」
「ああ、何せベルく(ゴキャッ)いっがあっ!」
空いたもう片方の手でヘルメスの右腕を捩じりへし折り、肩甲骨を粉砕する。
「お、おじさん?! 何を」
「ヘスティアちゃん、黙ってな。おじさんは今、冷静になろうと必死だ」
血走った目とそこに宿る狂気に当てられヘスティアの喉が絞まる。
「ヘルメス、お前は心が痛かった。なら心だけじゃなく体も痛かった事にしようぜ?」
「うっ……くぅ、君さ……何をやってるかわかっているのか? 神を傷つけてるんだぜ?」
何言ってんだこいつ。
「おじさんの祖国ってさ、色んな宗教があるのよ」
「……」
「国としての度量というか、懐が深いっつーの? 色んな考え方を許容する国な訳。
そんな中でおじさんが一つ割と信じてる宗教的な考え方がある。何だと思う?」
「さぁね……俺には想像もつかないな」
もう片方の腕も先ほどと同様にへし折る。
「ギャアアアア‼‼‼」
「おっ、おじさん……」
「正解は八百万の神。神は万物に宿る。武器でも服でも家でもその辺の石ころにでも大事にすれば神が宿るって考え方。
そして神には良いも悪いもある。そんな悪い神が宿ったら……当然そんな神は殺す」
続けて両足をへし折る。
「悪さが出来ない様に宿ったモノを封印して、神が死ぬまで閉じ込めるってやり方。
でもオラリオじゃ実体を持ってる、封印ってのも無理がある。
じゃあ、直接殺すのが一番楽で確実だよな? おじさんの国じゃ神殺しの逸話なんてありふれてるし。
ヘルメス、おめーもその一つになっとけ」
「お”れ”を! ゲホッ、俺を殺すって事は! 今ゴライアスと戦ってるアスフィをも殺すって事だ!
それだけじゃない! 俺の子供たち! ダンジョンで活動している他の子達すら殺すって事だぞ!」
神でもアホはやっぱりアホなのか?
「お前さ、何か勘違いしてない?」
「勘違いだと?! 一体何が言いたい!」
「これは、お前が、俺に仕掛けてきた戦争なんだよ。神ヘルメス。
意図してようがしてなかろうが、お前から仕掛けてきた戦争。
俺はお前を殺す。その結果、お前の子供が死ぬのは、お前が戦争を仕掛けた結果だ」
ヘルメスは見た、相手の目を。自分を神とは思って……いや、たとえ神だと分かっていたとしても絶対に止まらない事が分かる憤怒の感情。
神の根底にある最悪でも天界への送還、等温い事が行われる前に恐ろしい目に会うと。
「あっ、アスフィイイイイイイイイイイイイ‼‼‼‼‼‼」
喉が張り裂ける程の大声を上げるヘルメスをおじさんは敢えて黙って見続ける。
主神の叫び声に反応して空を掛け飛んでくるアスフィ。何か叫んでいるが耳が認識しない。
ただ倒すべき相手が此方に突っ込んできている。距離にして30メートル。
腰に下げたデザートイーグルを出して撃ち抜くか? でもそれじゃこのクソ野郎の心が折れない。
もっと分かりやすく。もっと原始的に見せつけよう。
全身に有り余る怒りの感情を足から胴へ、胴から肩、右手へと集める。
溜まった怒りを握りしめ。敵の女を睨みつける。
相手の持つ短剣が振るわれおじさんの頭を狙ってくるソレを歯で受け止め。固く握りしめた拳を胴体へ叩き込む。
およそ人体から響かないであろう音が響く。飛んで来た女の胴は破裂し臓物が飛び出る。
左手に掴んだヘルメスは何が起きたのか分からないまま女の名前を呼び続けるが女から返事は無い。
状況を見て此方を止めようとしてきた冒険者にはデザートイーグルを使って足を撃ち抜く。
冒険者の足を撃ち抜きながらおじさんは……
「(どうしよう、女殴ったら大分落ち着いてしまった)」
怒りを思いっきり自分の拳でぶつけたのが良かったのか怒りの大部分がすっきりしていた。
◆◆◆◆◆
おじさんはスッキリした頭で考えていた。ここからどうやって丸く収めるか。
怒りは未だにある。手元に居るヘルメスが犠牲になっても正直良いと思ってる。
ただ怒りの大半を消化してしまった手前、ファミリアを犠牲にすると後味がほんのりと悪い気もしなくもない……。
「アスフィ! アスフィ!! おい! 返事をしろアスフィイイ‼‼‼‼」
「さて、ヘルメス。話の続きだ」
「話の続きだと!? ふざけるな! 今すぐアスフィを助けないと死んでしまう!!」
あっ、やっぱ駄目だ、怒りがちょっと戻って来た。
ふざけた事を言うヘルメスの口を手で塞いで持ち上げる。
「だからさ、言ったじゃん。戦争の結果だろ? コラテラルダメージって奴だ」
「ふざけっ……!」
「けどまぁ、おめーの眷属のお陰で怒りが一段落しそうだから提案をしてやっても良い」
「……っ!!!??」
「1つ、お前のファミリアはおじさんの所有物。2つ、お前もおじさんの所有物。3つ、おじさんが必要としたら何でも提供しろ。この3つで手打ちにしてやる」
「……そんなモノ! 奴隷じゃないか!!」
「そうだけど? 嫌なら後で反旗を翻せば良いんじゃないか? その時は……おじさんが使えるもの全部使ってお前とお前のファミリア全部潰して回るよ。絶対逃がさん……絶対だ」
おじさんの目を見て諦めたヘルメスが力なく言葉を出す。
「解った……ソレでいい……アスフィを助けてくれ」
◆◆◆◆◆
ヘルメスがさっきの条件に同意したのでおじさんのスキルを使ってアスフィの飛び出た臓物を収めて元に戻す。弱かった呼吸も戻ったが血をかなり失ったので直ぐには目覚めそうにない。
ゴライアスの方を見れば少し押されてる。
まあ、前線で戦っていたアスフィが抜けたらそうなるか……溜息を吐いてから精霊ちゃんを再度背負う。
「ヘスティアちゃん、ちょっと一発入れてくるからこいつ等宜しく」
「おじさん、手伝うのかい?」
「まぁ気分も多少晴れたし。元凶は〆たから……まぁ良いかなって」
「そうか」
「ベル君もそろそろ起きるだろうし、足止めくらいはしとくよ」
◆◆◆◆◆
えっちらおっちらと歩いてゴライアスの方へと近寄る。目算凡そ300メートル、適当に魔法を弱めで撃っときますか。
「突き進め 雷鳴の槍 代行者たる我が名は雷精霊 雷の化身 雷の王──【サンダー・レイ(弱)】」
ゴライアスの体ぶち抜いて穴あきチーズみたいにしてやった。
こっち見て咆哮なんてしてくるから、イラっとして詠唱破棄の【アイシクル・エッジ】を目玉に叩き込んでおく。
そうやって時間稼ぎしてたらベル君が来て剣の一振りとナイフで魔石を砕いて終わった。
何だかんだとワチャワチャしていたのでおじさんはヘスティアちゃんに一言言ってから精霊ちゃんと一緒に一足先にオラリオへと戻る。
日本で高級ボディソープを仕入れて来て精霊ちゃんをお風呂に入れてからやっと一息付けた。
「はー、喧嘩とかやるもんじゃねーわ。しんど」
ベル君の救助に来たはずなのにおじさんのマジキチ部分が表に出てしまった。ヘスティアの痛む胃。襲う頭痛。
負けるなヘスティア、明るい未来が君を待っている!
次回、おじさんと挑発
神は二度死ぬ。