【完結】フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く3   作:タラバ554

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寝ようとしたが全く眠気が来なくなったので執筆再開


39 おじさんと疾風

リヴィラの町に戻ったおじさんに待っていたのは、『疾風、リュー・リオンの冒険者殺害』という報告だった。

おじさんは思った……だから何? と。

 

「いや、おじさん! リューさんが!」

「あのさぁ、今更じゃない? だって彼女の過去はおじさんもヘルメス経由で聞いてたけどソコまで驚く事?」

「でもリューさんが人殺しなんて!」

「……今まで復讐で闇派閥を殺してるんだよ? なら今回彼女が殺した相手も闇派閥って考える方が妥当じゃないの?」

「あっ……」

 

そこでやっと冷静になれたのかベル君が落ち着いてきた。

 

「ついでに言うとあの子に情報提供したのって多分ヘルメス関係だから情報の精度はそれなりだろうし、不確かな情報なら伏せてると思うけど?」

 

あいつ等って信用信頼ってのは無理だけど、情報面だけで見ればそれなりに優秀なんだよね。倫理観はクソだけど。

しかし何でこのタイミングでそんな事が起こるのか……首を傾げながらもベル君達と一緒に殺しがあったという現場へ向かう。

 

◆◆◆◆◆

 

ぼけーっと冒険者の死骸を眺めてみる。手足の傷に致命傷の刀傷。

まぁ確かにモンスターにやられた様な傷じゃぁ無い。

そして恐らくサクラが数人、疾風の仕業だと囃し立てる。しかも下の階層へと潜っていったとのオマケ付き。

そしてヤられたお仲間は犯人を見て、それを疾風だったと証言をしていると。

ボールスは疾風の賞金の話を出されて疾風討伐にノリノリで今居る住人全員を巻き込んで討伐隊を組むねぇ……。

 

「……なー、ベル君」

「えっと、なんでしょう?」

「おじさんは何時までこの茶番に付き合わなきゃならんのかな」

「へ?」

「茶番だと!?」

 

今まで証言してた獣人のタークが噛みついてくる。

 

「テメェ! 何処のどいつだ! 俺の仲間の死を茶番だと抜かしやがるのか!?」

「……いや、本当の事だろ。さっき証言した奴も、疾風の賞金の話を持ち出した奴も、全部お前ん所の奴だろどうせ」

「あぁ!?」

 

面倒だが説明しよう。

 

「少し考えたら分かるだろ、先ず疾風がその何だっけ? ボールス、そこの子の名前は?」

「ジャンか?」

「そーそー、そのジャン君を殺したとする。で、この何かガリガリのモヤシ獣人……えーと名前は知らんけどコイツがその場に居たとするじゃん?

 ボールス、お前さんが仮に絶対にぶっ殺すと決めた人を殺した現場にそいつの仲間が居たらどうする? 因みにお前はlv4な」

「そりゃ……」

 

モルドも気が付いたらしい、こいつ等の証言の矛盾に。

 

「ぶっちゃけ自分より下位のlvが居たら殺すだろ。しかも自分が目の敵にしてる相手なら」

「いや、しかしコイツが疾風に狙われる理由はねぇぞ?」

「そりゃお前。仮に疾風が狙うとしたら理由なんて1個だろ」

「闇派閥か?」

「そーいう事、もっと言えばもし疾風がこの場に居たらこいつ等が証言なんて出来るはずもない。今頃全員あの世だね。

 なのにこいつ等はこの場に居てこの件の犯人は疾風だと言う。更に討伐隊を組む様に促してた。早い話がリヴィラの全員を闇派閥でハメようとしてるって訳だ」

「で、デタラメだ!」

 

非常に焦ってる獣人君。無理な弁明は止めたまへ。

どう考えてもこの流れからリヴィラの住人を巻き込むのは無理無理。

 

「もっと言ってやろうか? 疾風の獲物ってなーんだ?」

「はぁ!?」

「武器だよ。武器」

「そんなもんジャンを見りゃ分かるだろ! 剣での傷だ! 刀剣の類だ!」

「ぶーー、正解は木刀。もし仮にそいつが疾風にやられたのなら死因は切り傷じゃなくて撲殺じゃないと変なんだよ」

 

ここでボールスが口を挟む。

 

「なぁ、あんた何でそんなに疾風に詳しいんだ? 俺様でもそんな事は知らねぇのに」

「そりゃ、ギルドとは懇意にしてるし。色々とツテは一杯あるのよ。おじさんは」

 

その一言でボールスはぎょっとする。

 

「あんた……まさかヘスティアファミリアの『超反射』か!? ラビットフットの所の副団長!」

 

リヴィラの町には基本寄らないし、あの一件があってからは全く近づかなかったから顔も知られてないか。

それにしても……。

 

「ラビットフット? 何それ」

「おじ様、ベル様の新しい二つ名です」

「へー、そっかlv4に上がったから新しい二つ名になったんだ。おめでとうベル君」

 

◆◆◆◆◆

 

結局あの後、あの場で騒いで居た奴らを全員捕まえた。

何か言ってきた奴はおじさんが『アポロン』と呟いたら全員黙ったのでヨシ。

ソコからはおじさんのスキルを使っての質疑応答。

捕まえた奴の首にロープを繋いで広場に集めて杭に繋ぐ。後は一人一人順番に四肢を切り落として傷口を塞ぐ。

準備が整ったら椅子の上に座らせてから首に掛かったロープで吊るす。

 

「さて、痛みを我慢しながら良く耐えました。おじさん君らに◎を上げよう」

 

ボールスは町の顔役として今回の件を見届けると言っている。折角なので転がってる手足の片づけ宜しく。

 

「んで今からやる事は単純、飲まず食わず眠らずで今回の真相を吐くまで耐久。尚、死んだらソコまでね、ぶっちゃけおじさんは真相どうでも良いけどウチの団長が気にしてるから一番初めにゲロった奴だけ助けまーす」

 

因みにこの場におじさんの身内は一人も居ません。教育上宜しくないので。

さて、何時まで持つかな?




リヴェラに居る事自体にストレス感じているおじさんの前で隙を見せる闇派閥

普段ノウキンだが意外と知恵が回るおじさん

おじさんのブレーキは何処へ……

次回、おじさんと疾風2

おじさん、ダレる

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