【完結】フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く3 作:タラバ554
蹴破った扉の先に広がる視界に映るのは倒れたリリちゃん、春姫ちゃん、縛られているヘスティアちゃん。
そして三人の男に両手を広げてうつ伏せに拘束されるイシュタルちゃんとハルバードを振りかぶった二人の男。
ストライクで加速し刃物を振りかぶった男の首を蹴る。足に伝わる感触で首の骨を圧し折った事を確認しながらそのままもう一人の男に当てるべく蹴り抜くつもりが視界の外から現れた男に止められた。
「ぎゃああああああああああ‼‼‼‼」
響く悲鳴。
振り下ろされた斧はイシュタルちゃんの右腕を二の腕から切断し部屋に濃い血の匂いが漂う。
おじさんが蹴り飛ばそうとした男を止めたのはディックスの兄でlv4のバルカ。舌打ちをしながら徒手でバルカの服を絡め捕ろうとするがバトルハンマーで防がれる。
「くそが!!」
イシュタルちゃんの腕を切り落とした男が再びハルバードを構えようとしているのを見て激情のままに
全身が黒化した状態で振るった拳でバルカのバトルハンマーを破壊してハルバードを構えた男の土手っ腹に左腕を突き刺し、そのまま壁際まで突進してミンチに変える。
返り血を浴びてそのままに振り返りイシュタルちゃんを拘束している三人を睨みつける。
「「「ひっ」」」
痛みで気絶し、失血から血の気が失せてるイシュタルちゃんの顔が視界に入ると怒りの感情が降り切れてしまう。
改めてこの場に居る奴を殺すと誓った瞬間、バルカの声が響いた。
「待ちな!」
視線を動かせばヘスティアちゃんの首にナイフを当てているバルカ。腰を落とした状態で静止したおじさんに余裕が出たバルカはおじさんに命令してくる。
「一瞬でも動けばテメーの主神を殺す。俺もお前のlv4、なら手元の
一周回った怒りがグツグツと燃え上がる。それに呼応する様におじさんの体が怒りで震え、怒りによる緊張は体を強張らせ食いしばる口の端からは血が溢れる。
「そうだ、一歩も動くな。動いた時がお前の主神の最後の瞬間になる……オイ!」
そう言うとイシュタルちゃんを押さえていた3人の内2人がイシュタルちゃんから離れ、おじさんに倒された男達のハルバートを手に取りおじさんへ振り下ろす。
バルカは斧が当たったおじさんが倒れる所を思い描いていたが予想外の音が響く。まるで金属に叩きつけた様な音がしてハルバードの方が破壊されてしまう。
「おいおい、冗談だろう」
忌々し気におじさんを見るバルガだったがある事に気づく。
激しい発汗、立ち上がる蒸気、良く見ると先ほどよりも細くなっている肉体。ニヤリと笑ってしまう。
同lv帯のぶつかり合いを覆す程の出力の上昇、それを成し得る方法がスキルか魔法かは分からないがその上り幅を考えれば反動が無いはずが無い。
そして先ほどよりも細くなった肉体と事前に集めた相手の情報を照らし合わせれば結びつくものは一つ。
であるならばこのまま膠着していれば何れ相手は時間切れ。枯渇して自滅する。そう判断したバルカは短剣をヘスティアの首に当ててほんの一筋切れ目を入れる。
「痛っ!」
「………‼‼‼‼‼」
その光景にますます相手の体に力が籠められ、ジュウジュウギリギリと更に激しく蒸気が立ち込め肉体の消費も早まる。
「くくく、動くなよ。動けば主神を殺す。もっとも、向こうはどうなるか分からんが」
「…………っ」
チラリと視線を動かせば倒れ伏したもう一方の女神。バルカの計画ではディックスがイケロスの奪還。ソレに合わせてバルカはヘスティア、イシュタルの身柄、もしくは神々の体の一部を持ち帰る予定だった。
だが目の前の男が来たという事はディックスは失敗。最悪でも二柱の内どちらかの肉体を手に入れなければ割に合わない。
「くそったれ、ディックスの奴は失敗しちまったか……オイ、その女神の腕を回収して止血しとけ送還されちゃ勿体ない」
手下の男がイシュタルの右腕を布に包み、ポーションを傷口に垂らす。激痛に叫ぶイシュタルの声を聴いた相手の男は更に吐息が激しくなり吐き出す息すら蒸発し始める。
「くははは、大分細くなって来たなぁ。そろそろ終わりが見えて来たか?」
時間にして10分も無いこの短時間に目の前の男は目に見えて細くなっていた。この男のスキルは脂肪を操る事で有名。そして時間経過で男が細くなる。
コイツの自己強化は自分の脂肪を消費しての強化はほぼ確定。その証拠と言わんばかりに腕や足、首などと言った肉が薄い部分は筋肉が見え、脂肪が無くなり、腹に仕込んであったレザーメイルもぶかぶかになってきている。
であるならば後は皮膚が黒い状態から戻った所を叩けば……そう思っていたバルカだが異音に気づいた。
男の歯軋りと思っていた
だがその音は男の口ではなく男の
「ソイツをk……‼‼‼」
バルカが部下に指示を出そうとした刹那、バルカの視界が
バルカと部下の頭部の一部を削り取ったおじさんが、バルカ達の後方で削り取った頭部を床へ抛り捨てた。
バルカに動きを止められたおじさんが行ったのは普段のカウンター型の戦い方ではなく瞬間的に最大火力を叩きつける速攻技。と、聞こえは良いが実際にはタメが長すぎて普段使いが全くできない死に技。
なにせ脂肪を消費して力を貯めて貯めたエネルギーを移動速度に変換して一気に相手へ叩きつける技。火力だけで見れば普段の戦い方よりも当社比1.5倍位あるのだが……。
正直これを使う位なら脂肪を防御と回復に回して跳ね回りながら攻撃する方が効率としてはよっぽど良いし機動力も確保できる。
だが今回に限っては敵が勘違いをしてくれたお陰で時間が出来た、今回ばかりはこの技を開発して本当に良かったと思った。
おじさんは盛大に深呼吸と大量の蒸気を吐き出しながら変化させた体を戻す。
「ハァ、ハァ、ハァ、
「おじさん!」
急加速と消耗でふらつく体を酷使してイシュタルちゃんに近づき斬られた右手をヘスティアちゃんに手伝って貰いながらスキルを使って繋ぐ。
ヘロヘロになりながらヘスティアちゃんに聞いてみればどうやらおじさんが駆け出して直ぐに男達が入ってきてリリちゃんと春姫ちゃんを制圧、そしてヘスティアちゃんを拘束した後イシュタルちゃんも拘束され腕を斬られたらしい。
ヘスティアちゃんが直ぐにトランシーバーでベル君達に連絡してこちらのカバーに戻ってきてもらった。
その後は特に此処への奇襲も無く、ガネーシャファミリアとヘルメスファミリアの活躍により闇派閥の殆どを捕縛ないし撃退出来た。
◇◇◇◇◇
「ウラノス、今回の件で分かったけどおじさんは闇派閥潰すから」
「うむ。それは良いのだが」
『まず体は大丈夫なのか? ソレほど消費してしまって』
フェルズに指刺されたおじさんは普段と違い全身の脂肪が全くない状態。まぁ現代社会ならボディービルダーと確実に間違われる程に皮膚の上に血管が浮き出てる。
「まぁ向こうで食べて体重戻すから良いよ」
「解った、だが無理は禁物だ」
ウラノス達との会話を終了させてヘスティアファミリアへ戻ったらイシュタルちゃんがまた若干失語症気味になってしまっていた。ある意味仕方ない経験なので再度イシュタルちゃんを連れておじさんの実家へ戻る事に。
そしてイシュタルちゃんを抱えて戻った先で両親から聞かされたのは精霊ちゃんが倒れたという話だった。
闇派閥を潰す事を決めたおじさん
倒れる精霊ちゃん
一体何が起きているのか
次回、おじさんと闇派閥2