5話連続更新3話目
「──んー、困ったね」
「隊長ォ? 珍しいやん、こんな早い時間に隊主室におるなんて、槍でも降るんちゃうか」
「ちょっとリサちゃん。ボクはいつだって真面目な隊長だろう?」
「そーやなァ。女性隊士と飲み会ばーっかりしてなければ、ウチかてそう思うてやるんも、やぶさかやないけどなー」
「周りが放ってくれなくってね。モテる男の辛さだよ」
「はいはい、それで? 一体何を『あーうー』言いながら悩んでんねん。あんたらしくもないわ。キリキリ吐きや」
「ひどいなぁ。……ほら、曳舟隊長が『昇進』するだろ? 代わりに誰か推す人いないかと思ってね。まぁ四楓院の姫君が推薦出しそうなんだけど、一応ね」
「そういや、そーやなぁ。──零番隊、か」
「そうそう。まぁ隠してる話じゃないけど、あんまり他言しないようにね。で、どうしようかな〜って」
「あの人でええんちゃうか? ホラ、確か隊長は同期やろ。──十三番隊の副隊長。めちゃめちゃに強いって噂には聞いとるけど」
「彼かい? ……うん、強さって意味なら、たぶんボク以上だろうね。でも、彼は隊長になる気はないみたいだよ、浮竹の下から離れる気はないっていつも言ってるからねぇ」
「京楽隊長以上、ねぇ。『卍解』も習得しとんかいな」
「ま、たぶんね。ボクは直接見てないけど、ある人が断言したからさ」
「ある人?」
「そ、ある人。まー、でもね。彼に関して言えば、『始解』ですらボクは勝てる気がしないよ。彼が本気出せば、尸魂界が消えるんじゃない? 危険視されて無間に収監されないためだけに、
「む、無間? なんやけったいやな」
「そ、まぁ前回も入ったことあるんだけど、あれはそーゆー意味じゃなくって、ただの『始解』のお披露目だったからねぇ」
「どえらい危険な『始解』なんか?」
「あんまり話せるもんじゃないんだけど、山じいが『本気』で抑えにかかったからねぇ」
「……十三番隊副隊長。綱彌代時灘ねぇ。もうそいつが隊長でええやろ。引きずって無理やり羽織着せえや」
「おいおい、外では敬称つけておくれよ。彼自身は気にしやしないだろうけど、周りがとにかくうるさいから。……前みたいには、気軽に話せなくなっちゃったね」
少し寂しそうに、京楽が微笑んだ。
「──では、これにて隊主資格試験を終える。資格十分として、浦原喜助を新任十二番隊隊長として認める事とする。準備は欠かさぬように」
「りょ、了解っす」
「ハキハキせんか!」
「痛いッ!! ……総隊長。いっこだけ、聞いてもいいですか」
「なんじゃ、よもや合否基準ではあるまいな」
「違います違います。……そこの、卯ノ花さんにもお聞きしたいんスけど、時灘サンはなんで隊長にならないんスか」
新任隊長を選ぶための隊主試験として、この場には総隊長である山本元柳斎重國、朽木銀鈴、四楓院夜一、そして、卯ノ花烈が列席していた。
ゆったりと浦原喜助を見遣る卯ノ花は、ゾッとするほどの冷たさを滲ませていた。
「──四番隊隊長。やめい」
「……失礼をしました。浦原喜助さん」
「あ、いえ。こちらこそスミマセン……」
「浦原喜助。お主にそれを説明する義理はなく、必要性も感じぬ。何故問うのか」
「……だって、おかしくありませんか? 実力的に考えても、立場的に考えても、あの人が隊長じゃないって、違和感しかないっす。ボクより適任がいるのに、ボクを隊長に据えるのって、どうなんすかね」
「……元柳斎殿。彼が秘すると誓うのであれば、お答えしても良いのでは」
「四番隊隊長。これはたかが副隊長の話題ではない。綱彌代家からの勧告を無視するものと知れ」
「いずれ、彼も知るでしょう。各隊の隊長であれば知っている話です」
「いや、ワシは知らんがの」
抜け抜けとそう言った夜一に構わず、元柳斎は言葉を続けた。
「……まぁよい。浦原喜助、この場で聞く話は外部に漏らす事を許さぬ。よいな?」
「わかりました」
「……今から、300年以上前になるか……。奴の『始解』はこの元柳斎が。そして、その後は卯ノ花が確認した。──無間での、一幕じゃ」
思い出すように、元柳斎は杖を力強く握りしめた。