名探偵コナン ~ギムレットと呼ばれる幹部~ 作:蒼月 アイン
真夜中の路地裏を必死に走った。
胸中にあるのは後悔と願望だ。
どうして、こうなった?どうして、こんな事をした!?
もし、過去に戻ることが出来ればこの様な過ちを犯すことはなかっただろう。
たらればの話をしたところでどうしようもないと分かってるがそう思わずにはいられない。
まだ、生きたい、死にたくない、助かりたい!
そう胸中で叫びながらひたすら走り続ける。
息は上がり切っていて肺が酸素を求めて悲鳴を上げる。
それでも走ることは止めない、止めることが出来ない、もし止めてしまえばその時点で自分は死ぬ。
そんな予感と恐怖が自分を駆り立てて必死に走らせる。
ゴミ箱を蹴っ飛ばし、足をもつらせて思わずこけそうになりながらも必死に走り続け辿り着いた先にあったのは・・・行き止まりだった。
あろう事か自分は逃げるどころか自ら袋小路へと入り込んでしまったのだ。
逃げ道はないかと左右を見るがあるのは無機質なコンクリートの壁のみだ。
カツン、カツン、カツン
後ろから聞こえる足音に思わず振り向き、後退った。
足音が近づくたびに心臓が高鳴り、本能が逃げろと警鐘を鳴らす。
徐々に、足音が近づくにつれて後ろに後退りを続け気づけば壁に背をぶつけていた。
やがて、暗闇の向こうから一つの人影がブーツの足音を鳴らしながら姿を現した。
腰まで届く銀髪を靡かせ、全身を真っ黒なコートに身を包み、まるで鴉を連想させる様な出で立ちをしている。
銀髪の中で輝く金色の双眸が自分を見据えた、冷淡さを秘めた瞳に思わず悲鳴を上げそうになった。
「なんだ?鬼ごっこはもう終わりか?」
その瞳と同じく冷淡な声で面白くなさそうにそいつは口を開いた。
「ギ・・・ギムレット・・・」
息がつまり、唯一出す事が出来た声でそう言えばその人影・・・黒の組織の幹部の一人であり、自分の追手である
「さて、お遊びはここまでだな?」
そう言って奴は懐から拳銃を抜き、自分へと向けた。
ドサリ...
壁に凭れ掛かっていた男が力なくその場に倒れ込んだ。
チラリと右手を見ればそこにあるのは銃口から硝煙が立ち上る
勿論、夜中とはいえ市街地のど真ん中で派手に銃声を鳴らす訳にはいかないので銃口にはサプレッサーが取り付けられている。
それは兎も角。
まだ生きている可能性を考慮して銃口を向けた傍に近づき足で男・・・組織の金を持って逃げた下っ端の構成員だった男を仰向けにさせた。
目を見開いたまま、顔を恐怖に引き攣らせた男が事切れてるのを確認し・・・奴の懐からスマホを回収し、財布から札束を抜き取った。
こうしておけば警察は金目当ての強盗殺人だと勘違いして勝手に捜査をして居もしない強盗殺人班を追っかけ回してくれる。
そう思いながら俺は仕事が終わった事の報告のために懐をスマホを取り出した。
プルルッ、プルルッ
電話を掛けて数コールもしない内に相手が電話に出た。
『・・・なんだ?』
不機嫌さを隠しもしない声がスピーカーから聞こえた。
「バカ共の始末終わったぞ」
『そうか・・・』
「帰って良いな?」
『あぁ・・・』
そう言って電話がプツリと切れた。
相変わらず無愛想な奴だと、スマホを思わず睨みつながら思った。
時刻は既に深夜3時を回ろうとしていた、とっとと帰って寝よう。
眠気と共に襲い掛かって来た欠伸を噛み殺しながら、俺は自分の家へと向かった。
後日、発見された構成員だった男の死体は持っていたとされる金品が無くなってる事から強盗殺人として捜査される事となりそれを知った俺は目論見通りだとほくそ笑んだ。