牙狼族との戦いは、牙狼族がリムルに服従する形で終焉を迎えた。
そしてその夜が明け、朝がやって来た。
改めて見てみるとなかなかに野性味のある所帯になったと思う。
「そういえば、村長。
お前って名乗らなかったけど、名前とかはあるのか?」
俺がそう聞くと、村長は首を横に振る。
「いえ、魔物は普通名前を持ちません。
名前を呼ばなくても意思疎通はできますからな」
…そうなのか。
俺とリムルは純日本人だし、ヴェルドラの名づけも普通だと思っていたからな。
それを聞いて俺の頭の上に載っていたリムルから声がかかる。
「…にしても、お前らが良くても俺達が呼ぶのに不便だな…」
俺もリムルの意見に同意する。
「ああ。人数が2・3人ぐらいなら何とかなるけど、こんだけいたらさすがに区別がつかねえ」
俺がそう話しているとリムルが話していく。
「…よし、お前達全員に名前を付けようと思うが、いいか?」
リムルのその言葉を聞いてゴブリン達や牙狼族は一気に湧き上がる。
村長が代表して遠慮気味に「よ、よろしいのですか…?」と聞いてくるが俺は「ああ」と続けていく。
「とりあえず、俺とリムルの前に一人ずつ並んでくれ。
全員に付けるから順番は気にしなくていいぞー」
それと同時に辺りは歓喜に包まれる。
「リムル、俺達がヴェルドラに名付けてもらえたのって結構レアケースだったんじゃないか?」
「…そうだったのかもな。もう少しヴェルドラにその辺りのことも聞いておいてもよかったかもしれねえ…」
俺達の前に喜びながら並んでいくのを見て、俺とリムルはそう話した。
◇ ◇ ◇
この村にいる全員が2列に並び、その先頭に立ったのは村長とその息子だった。
「村長、アンタの息子は村一番の戦士リグルと言っていたな?」
「は、はい…」
「では父親の村長は『リグル・ド』だ」
「おおっ…!」
「じゃその息子のお前の名は、兄の名を継いで『リグル』と名乗れ。
兄の名に恥じない働きを期待してる」
「はい!」
そんな感じで俺とリムルは順調に名前を付けて行く。
…だが、俺の中の何かが徐々に減っているように感じた。
「じゃ、お間の名前は『リント』な」
「あ、ありがとうございます!」
「…これで、俺の名付けは終了だな…と」
俺はそう言って大きく息をつく。
「…っ!?」
そう思っていたら俺の体が一気にズシッ!と重くなった。
まるで以前の体に戻ったような感覚である。
「り、リアス様!どうされましたか!?」
突如地面に手を着いた俺を心配して声をかけてくれる。
(『知識者』、これはなんだ…!?)
《解。個体名リアス=テンペストの体内の魔素残量が一定値に近づきました。
活動は出来ますが、通常の10%ほどのエネルギーしか使用できません》
…って待て、名前つけただけだぞ…!それだけで魔素って減るのか…?
俺がそう疑問に驚いていると『知識者』からその説明が入る。
《解。魔物への名付けは人間と異なり、相手の強さに応じた魔素を消費します。
後数人名付けをしていれば、個体名リアス=テンペストは
村長、…いや、リグルドが言ってたのはこういうことか…!
「リアス様!リムル様が…!」
そう思っていると横からそういう声が聞こえてきた。
リムルの方を見ると俺と同じようにぐったりしており、まるで100均でよく見るスライムのようになっていた。
(『知識者』、リムルも俺と同じような状態になったってことか?)
《解。個体名リムル=テンペストは一定値を割り込んだため、
完全回復の予想時刻は2日後です》
…やっぱりか。もうちょい色々と聞いておけばよかったな…。
(『知識者、俺はいつになったら回復する…?
フルパワーで活動できる最短時間で構わねえ)
《解。個体名リアス=テンペストが通常のエネルギーを使用することが出来るのは、およそ3時間後です》
3時間…か。少し休ませてもらうとしよう。
俺はリムルを頭の上に載せて、話していく。
「リグルド、リグル。しばらくの間休ませてもらうよ。
リムルは無理だが、俺ならギリ動ける。
何かあれば叩き起こしてくれ」
「はい、わかりました!」
そして、俺とリムルは近くの民家で体を休めた。
リアスが一部名づけを負担したため、リムルのスリープモードが若干短縮されてます。