転生したら600族に変身できる魔人になった件   作:W297

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24話 別れ

 あれから1週間が経った。

 

 テントの中のベッドの上でシズさんはずっと眠り続けている。

 

「起きないな、シズさん」

 

「ああ、シズさんを苦しめていたイフリートはリムルが喰ったはずなのに」

 

 この一週間、俺とリムルで付きっ切りで看病してきたが、一向に目を覚まさない。

 

 そんな中、知識者から俺に声がかかる。

 

《告。イフリートとの同化が彼女を延命させていたようです》

 

 リムルも大賢者から同じようなことを聞かされたみたいだ。

 

 俺とリムルの顔をが一気に青ざめる。

 

「え…」

 

「マジか…。…だとしたら俺達がやったことって…」

 

 俺がそう言うと知識者が「それは違うかと」と話してくる。

 

《彼女の気力は、通常ではイフリートを抑える事ができないほど激しく消耗していました。

 

 イフリートとシズエ・イザワを分離させ、浄化しなけば、やがては自我を失い、暴虐の限りを尽くしていたでしょう。

 

 そしてそれは、シズエ・イザワの望みではないと思われます》

 

 俺達が黙っていると、ベッドから声が聞こえてきた。

 

「…スライムさん、リアス君」

 

「っ!シズさん!?」 

 

「気がついたんすか、まだ無理しない方が…」

 

 シズさんが目を覚ました。しかし、顔色はよくないみたいである。

 

「ずっと傍にいてくれたの…?」

 

「あ、あぁ…、良かった。

 

 もう目を覚まさないんじゃないかと心配してたんだ。」

 

「そっか、仮面は…」

 

「ここに持ってきてます」

 

 俺は棚においてあった仮面を手に取り、シズさんに渡す。

 

 シズさんは仮面を受け取ると、仮面に手を添えながら胸におく。

 

「水持ってくるよ、リムルはシズさんの傍にいといてくれ」

 

「分かった」

 

 俺はそう言って外に出ようとするが、そんな俺をシズさんは止めてくる。

 

「いいよ…、必要ないから。」

 

「え…?」

 

「シズさん…?」

 

「二人とも…ありがとう。

 

 私はまたこの手で…、大切な人達を殺してしまうところだった…」

 

 シズさんは弱々しい声で俺達に今まで経験したことを話していく。

 

 魔王のレオン・クロムウェルに召喚され、イフリートを憑依させられ、友達を殺めてしまったこと…。

 

 勇者と出会って一緒に旅をしたこと、その人もどこかへ行ってしまったこと。

 

 そして人々を助けたいと、強くなろうと決意して英雄と呼ばれるようになり、何十年も頑張り、冒険者を引退した後は、学校の先生として異世界人の子ども達を指導したこと。

 

 長い時を生きるにつれてイフリートの制御が困難になり、シズさんは最後の旅に出た…、自身をこの世界へ召喚した魔王レオン・クロムウェルを探すために。

 

 そしてシズさんはカバル、ギド、エレンの3人と出会い、俺達と出会った。

 

「もう何十年も前にこっちに来て、辛いことも沢山あったけど、良い人達にも沢山出会えて…、最後にはこんな奇跡みたいな出会いがあった。

 

 心残りが無い訳じゃないんだけど…、私はもう…、十分生きたから…」

 

 シズさんは笑顔でリムルを撫でて、俺を見つめる。

 

「ねぇスライムさん、本当の名前は何ていうの?」

 

「え、俺はリムル…」

 

 リムルがそう言うと、シズさんは首を横に振る。

 

「本当の…名前」

 

「…俺は悟、三上 悟」

 

 リムルがそう話すとシズさんは俺に顔を向ける。

 

「リアス君は?」

 

「俺は航、松葉 航…です」

 

「私は、静江…井沢 静江」

 

 …久々だな、本名を名乗るのは。

 

「シズさん、もう眠った方が…」

 

 俺がそう言うと、シズさんはリムルに話していく。

 

「悟さん、お願いがあるんだけど…聞いてくれる?」

 

「いいよ、なんでも言ってくれ…」

 

 リムルがそう返すと、シズさんは弱々しい口調で話していく。

 

「私を…、食べて…」

 

「っ!?」

 

「…マジっすか」

 

 俺は驚いた表情でシズさんを見る。

 

「私の呪いを…食べてくれたみたいに、嬉しかった。

 

 私は、この世界が嫌い……でも憎めない。

 

 まるであの男のよう。…だから、だから…。

 

 この世界に取り込まれたく、ない…。

 

 最後の、お願い…私を、君が見せてくれた故郷の景色の中で…、眠らせてくれないかな…?」

 

 俺の目には既に涙が浮かんでいた。

 

 抑えようにも抑えることが出来なかった大粒の涙が、俺の頬を伝っていく。

 

「…いいよ」

 

 リムルは静かにそう承諾する。

 

 確かに、シズさんの望みがそれなら、そうしてやるべきだろう。

 

「静江さん、あなたは…魔王に何を聞きたかったんですか?」

 

 シズさんは俺の言葉に続けてくる。

 

「…私と言う人間がいた事を…認めさせたい、かも、しれない。

 

 それに、もし…あの子達が、救われ…元の、世界に…」

 

 シズさんの声が霞んでいく中、俺とリムルはシズさんの手を握る。

 

「静江さん…」

 

「約束しよう。三上悟、いや、リムル・テンペストと…」

 

「リアス・テンペストの名にかけて」

 

「魔王にきっちりと、あなたの思いをぶつけてやるよ!」

 

「心残りである教え子達のことも、シズさんの思いも、俺達が受け継ぎます。

 

 …約束しますよ」

 

「…あり、がとう」

 

 俺達の言葉にシズさんは小さく呟き、シズさんは眠りに就いた。

 

 そしてリムルは捕食者を発動させて、シズさんを優しく包み込んでいく。

 

「…シズさん、どうか安らかに…」

 

 涙を拭った俺は、そう呟きながら手を合わせた。

 

 

 

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