丁度良く終われるキリがいいところがなかった…。
リムル達の居るテントを目指して、カバル達は歩いていた。
「シズさん、大丈夫かな…」
そう話すエレンの手には、お見舞いの為に摘んできた花があった。
「心配いらねーって。リムルの旦那とリアスの旦那がついてんだからよ」
「そうでやすよ。旦那達がくれた回復薬、すげー効き目で、俺達の傷をあっという間に直したじゃないでやすか。きっと大丈夫でやすよ」
カバルとギドの2人は、エレンにそう話していく。
すると後ろからやってきた人物が3人に気づき、声をかける。
「おや、これは御三方お揃いで。
皆さんもお見舞いですかな?」
「あ、リグルドさん。」
「皆さんもお見舞いですかな?」
「ええ。リグルドさんもっすか?」
「はい。シズ殿の着替えをお持ちした所です」
そしてリグルドはテントの扉をノックし、中へと入る。
「リムル様、リアス様。失礼しま…」
「「「!?」」」
中に入ると、部屋の片隅で壁を向いて座っているリアスと、部屋の真ん中には服も何も着ていない青みがかった銀髪の少女が立っていた。
「え…、何!?」
「裸の女の子!?」
「え、誰!?え!?」
混乱するカバル達だったが、リグルドはその少女の正体に気づいていた。
「リムル様、そのお姿は…」
「「「え!?…えええええええええ!?」」」
「こ、この子が…」
「リムルの旦那ぁ!?」
3人のそんな叫び声が、テントの中にこだました。
◇ ◇ ◇
カバル達が姿を大きく変えたリムルに驚愕してから約10分。
リグルドが持ってきた服にリムルが着替えた後、俺達はシズさんについて彼らに話した。
…ちなみに俺が壁を見ていたのは完全にリムルの体が少女であったから。
いろいろと「ない」らしいが俺は見ないことにした。中身がおっさんだとはいえ、念のためである。
とりあえずリグルドが服を持ってきてくれたので、俺もリムルを見れるようになった。
「そうか…。
シズさん、逝っちまったのか」
3人の表情は暗く、エレンは涙を浮かべている。
「というかあんた…、本当にリムルの旦那なんでやすか?
どうにもその…、なんか髪と瞳の色だけを変えたちっこいシズさんっぽいっつーか…」
まぁ、普段のあのスライムの姿だけを見ていたらそう思うのも無理はないだろう。
「本当だよ。ホレ」
リムルはそう言って元のスライムの姿に戻る。
「「おお!」」
「ふへー…」
「見事なもんでやすね…」
そう全員が感嘆の声を上げる中、エレンが話してくる。
「…シズさんを食べたの?イフリートを食べたみたいに…」
リムルは静かに頷いてから、話していく。
「…それが俺達にできる。唯一の葬送だったからね」
「…すまない。
仲間のお前達に相談もなくやってしまって」
俺がそう頭を下げると「気にしないで良いぜ」とカバルが話してくる。
「…それがシズさんの望みだったのなら、仕方がないさ」
「すまんなエレン、割り切れないかもしれないけど」
リムルがそう言うとエレンは首を横に振り、涙を拭って笑みをを浮かべる。
「ううん。ただ、最後にお別れの挨拶くらい、言いたかったな…」
俺たちはシズさんの最後の言葉を伝えていく。
「シズさんは最後の旅でお前達と仲間になれて楽しかったと言ってたよ」
「ちょっと危なっかしいとも言ってたがな」
「あーね…」
そう言って、ギドがカバルに目を向ける。
「おいコラ、なにこっちを見てんだお前らっ!」
「だって…、ねぇ…」
「お前だってこの前盗賊のくせに落とし穴にハマってたじゃねーか!
シズさん呆れてたぞ!」
「あ、あれは姐さんが急に押してきたからでやんす!」
「ちょっとぉ、私のせいにしないでよぉ、あの時は突然蜘蛛が落ちてきて…」
そう言ってお互い言い合っていく。
これがこいつらの良さでもあるのかな。
この3人だからこそ、シズさんも最後の旅を楽しめたのだろう。
「あの時シズさんが蜘蛛を取ってくれたのよねぇ」
「あれ以来シズさんが罠探しを手伝ってくれやして」
「ホレ見ろ!俺だけじゃねぇじゃん!」
…そんな中、リムルが俺に話しかけてくる。
(なあリアス。話を聞いて思ったんだけどよ…)
(ああ、俺もそうだと思うよ…)
(…3人ともシズさんに頼りすぎじゃね?)
(…言うなよ、絶対本人達に言うなよ…?)
その後も続く3人のやりとりを、俺達は見守る事にした。
そして3人は、シズさんとの旅の思い出話などもたくさん話してくれた。
◇ ◇ ◇
「さてと、じゃ、そろそろお暇するかね」
俺達が旅の話を全て聞き終えた頃、カバルがそう言って立ち上がる。
「国に帰るのか?」
リムルがそう聞くと、カバルは首を縦に振る。
「ああ、ギルドマスターにこの森の調査結果と…。
…それに、シズさんの事も報告しなきゃならんからな」
「そう言えば、前にも言ってたよな、ギルドって。
どんなところなんだ?」
「自由組合つってな。ほとんどの冒険者が所属してるんだ」
俺が聞くと、簡潔にそう答えてくれる。
「もちろん、ここの事は悪いようには報告しないぜ」
「リムルさんとリアスさんの事、ギルマスにちゃんと伝えとくね」
「旦那達も、何か困ったことがあれば、頼るといいでやんすよ」
「わかった。そうさせてもらうよ」
「ああ、気をつけて帰れよ」
俺とリムルがそう話すとカバルが話してくる。
「あっ、と最後にもう一つ。
なぁ、リムルの旦那。もう一度人の姿になってもらえねぇかな」
「?いや、それぐらいは…」
「ああ。別に構わないけど…」
リムルはそう言って人型に戻る。…そして。
「「「シズさん!ありがとうございました!!」」」
そう言って三人は頭を下げる。
「俺、貴女に心配されないようなリーダーになります!」
「貴女と冒険できたこと、生涯の宝にしやす!」
そして、エレンがリムルに抱きつく。
「ありがとう…。
お姉ちゃんみたいって、思ってました」
…本当、こいつらがシズさんの最後の仲間でよかった。
「…ところで、お前らの装備ボロッボロだな。」
「そういえば、確かに。」
「「「ひどっ!」」」
3人の装備はイフリートと戦ったせいか、ところどころボロボロになっていた。
…という訳で。
「…って、え?」
「あ、あの…」
「こ、これって…」
「俺とリムルからの餞別だ。持って行ってくれ」
エレンには純白のローブ、カバルには
上記の装備に加え、帰るまでの食料と水、野宿に必要な道具と新しい武器も渡した。
「ウチの職人の力作だ。紹介しよう、カイジンとガルムだ」
「力作っつっても、まだ試作品だけどな」
「着心地はどうだい?」
そう言うと、3人は一気に驚きと歓喜の声を上げる。
「え?カイジンってあの伝説の鍛治師の?」
「じゃあ、まさかガルムって、あのガルム師でやすか?」
「うおーっ!家宝にしますぅぅぅ!!」
この喜び様である。
どうやら、俺達が思っていた以上にカイジン達は有名人だったみたいである。
リムルに聞くところによれば、ドワルゴンの国王が直々に留まらないか?と誘うほどらしいしな。
「また来るぜー!」
「ありがとー!」
「おたっしゃでー!」
悲しみを吹き飛ばすように大はしゃぎした後、彼らは去っていった。