…俺たちの周りを吹雪が吹き荒れる中、何者かの影が見えてきた。
「なんだ…?人か…?」
「いや、獣みたいな耳も生えてるし、後ろに何本か尻尾も生えてる。
…少なくともただの人間ではなさそうだ」
俺はリムルにそう話していく。
「ああ、リアス。お前は一歩下がってろ。
あんまり動けねえだろ?」
俺はリムルの言葉を肯定する。
「ああ、そうだな。
必要になるかどうかは分からねえけど、てだすけ使っとくよ」
「おう、ありがとな」
俺達がそう話していくと、吹雪は完全に晴れて今まで俺達の耳に聞こえてきた声の主が現れる。
「…さあ、氷漬けにされる準備はできた?」
「「…は!?」」
俺の目に入ってきたのは白いふわふわとした髪と尖った白い耳。
そして背中からたなびく九本の尻尾。
そんな容姿に、俺達は見覚えがあった。
「な、なあリアス…。
あれってよ…!?」
「ああ、間違いなくアローラキュウコンだ…!
なんでこの世界にいるんだよ…!?」
…俺達が見たのはきつねポケモンのキュウコン(アローラのすがた)を模した服装の女性だった。
まるで俺の能力のキュウコン版みたいな感じである。
俺達がそう話していくと、向こう側からも声が聞こえてきた…。
「…え、あの顔の×印って…、メタグロス…、だよね…!?
髪とか服の色も完全にメタグロスだし…!
なんでこの世界に…!?」
俺の姿を改めて見たのか、そういう反応が返ってきた。
そして吹雪が落ち着いたからか、顔が明瞭に分かるようになり、初めてその女性の声がクリアに聞こえた。
…ってオイマジか。
その顔と声は数年ぶりに聞いたが、長年聞いてきた俺が忘れるはずがなかった。
◇ ◇ ◇
数年前、俺の病室にて。
「…俺が死んだら、一颯はどうするつもりなんだ?」
俺はベッドに座りながら、一颯にそう聞いてみた。
一颯は少し考えてから口を開いてくる。
「…うーん。何もしない…かな。
特にしたいってことも思いつかないし」
「そうなのか?」
俺がそう聞くと、一颯は首を縦に振る。
「うん。さすがに就活はするけど、就職して航のお墓参りに行って…。
特にそれ以外にやりたいってことが思いつかないんだよね」
「…別に、俺がいなくなった後は好きにしてもらってもいいんだぞ?
あんまり、俺にこだわる必要なんてねーぞ」
俺がそう言うと、一颯は「バカ言わないでよ!」と勢いよく返してきた。
「初めて惚れたんだもん、航の魅力に。
小さい頃は良く分かんなかったけどさ、中学生になってこの感情が分かって。
高校で告白して彼女になって。
…今大学生になってもこうなってる。
たとえ私が一人になったとしても、私に新しい彼氏が出来たとしても、結婚したとしても私はずっと航のそばにいる。
…そう決めたの」
「…ありがとう、一颯」
一颯の言葉に俺は目に涙を浮かべながらそう返していく。
「まあね。…でも、航がいなくなったとしても私のそばにいてくれるって信じてるから」
「ああ。それだけは約束するよ。
死後の世界がどんなものかは分からないけどな」
俺たちはお互い、そう言葉を返していった。
◇ ◇ ◇
「…一颯!一颯なんだよな!?」
「え…!?その声…!?
もしかして、航なの…!?」
…やっぱりそうだ。
俺の足は自然とその方向へと進んでいた。
「え、リアス…?一颯って…?」
リムルがそう呟くが、俺の耳には全くと言っていいほど聞こえていなかった。
足の回転は自然と速くなって走り出して、一颯の方へと向かっていく。一颯も同様だ。
一颯が俺の体を抱きしめ、俺も一颯の体を抱きしめ返す。
俺と一颯の目には光るものがあった。
「航…!嬉しい、また会えた…!この世界でも…!」
「ああ。一颯、1人にしてごめんな…!
…もうお前を、1人にはしない…!俺が約束するよ…!」
「うん…!もう離れないよ、航…!」
俺と一颯はそう話しながら抱きしめ合った。