問題児たちが異世界から来るそうですよ?人魚の恩恵   作:ホモ・サピエンス

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YES!ウサギが呼びました!
第1話


 

雪が降り始めた。

 

暗天の空からは小さな白い粒が振り落ち、空を映し出す真っ黒な海に落ちては消えていく。

 

アスファルトと学校指定のローファが擦れる音が静かに響いが響く。できるだけ皮膚を学生服とマフラーの中にしまって寒さを凌いだ。こうなると普段便利なこの高身長も嫌になる。

 

ここもしっかりと冷えてきた。海岸からくる潮風は寒けを運び人の体から熱を奪う。吐く息は白く濁り風にのってどこかに行ってしまう。

 

空には分厚い灰色の雲が覆っていて夜空は拝めない。あの日は夜空に星々が煌めいていたが今はそんなものはかけらもない。

 

夜の海はどうも暗闇に飲まれていてどうにも苦手だった。寒空の帰路にもそろそろ辛さを覚えてきた。そろそろ帰ろう。遅いと同居人が小言を言うに違いない。

 

「雪だな」

 

この景色に対してこんな感想しか出てこない自分はやはり感情の起伏に乏しいと思う。あいつはやっぱり勘違いしているだろう。俺は対した人間じゃないってことだ。

 

急に突風が海から吹き、目を閉じる。そうすると顔に何かが当たった感触がした。それを反射的に手で掴んだ。目を開けてそれを見てみるとての中には一通の手紙があった。その手紙は時代にそぐわない高級な便箋に蝋で封をしていた。

 

どこから飛んできたんだこんなもの。

 

よく見てみると「大鮫 大牙」と俺の名前がしっかりと書かれている。

 

「なんだこれ」

 

こんな不可思議な手紙を手にして少しだけ感情が動いた。

 

『あなたって結局面白いことが好きなのよ。自分に感情がないとか言ってるけど説得力なさすぎ』

 

認めたくないけどどうやらあいつの言ってたことが部分的にあってるみたいだ。

 

そう思って俺は思い切って手紙を開いて目を通す。

 

【悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能(ギフト)を試すことを望むのならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの『箱庭』に来られたし】

 

その後光が差し込み、眼前に広がるのは上空3000メートルの空中で下に見えるのは完全無欠の異世界だった。

 

 

*****

 

 

問答無用で落下された大牙は大きな湖に着水した。自分だけだと思ったが自分以外にも3人がいた。学ランを着た金髪のヤンキー。高そうな服をきている気の強そうなお嬢様。反対に動きやすそうな服装を着ている少女。

 

「し、信じられないわ!まさか問答無用で引きずり込んだ挙句に、空に放り出すなんて!」

 

「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」

 

「石のなか?出れるのか?」

 

「俺は問題ないぜ。」

 

「そう。だいぶ身勝手なのね。」

 

その後ろで猫を抱えた少女は岸に上がり同じように服を絞る。その隣で猫も体を震わせて水をはじく。

 

「此処・・・・・・・・・・・・どこだろう?」

 

「さあな。世界の果てっぽいのが見えたから、どこぞの大亀の背中じゃね?」

 

(なんで亀?)

 

少女のつぶやきに金髪ヤンキーが答え、大牙が男子の発言に疑問を覚えながら先程まで使用していた制服のブレザーを脱いで絞る。ついでにマフラーを適当に投げ捨てる。

 

何にせよ彼らの知らない土地であることは間違いがなかった。 適当に服を絞った学ランの男子が髪をかきあげながら口を開いた。

 

「まず間違いないだろうけど、一応確認しておくぞ、もしかしてお前達にも変な手紙が?」

 

「そうだけど、まずは『オマエ』って呼び方を訂正して。・・・私は久遠飛鳥よ。以後気をつけて。それで、そこで猫を抱えているあなたは?」

 

「・・・・春日部耀・・・・・以下同文。」

 

「そう、よろしく春日部さん。次に野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」

 

「はっ!高圧的な自己紹介ありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義者の三拍子そろったダメ人間なので用法と用量を守ったうえで適切な態度で接してくれやがれ、お嬢様」

 

「取り扱い説明書をくれたら考えてあげるわ十六夜君。それでそこのやけに背の高いあなたは?顔を見ると首が疲れるわねあなた。」

 

「大鮫大牙だ」

 

ケラケラと笑う逆廻十六夜。

 

傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。

 

我関せず無関心を装う春日部耀。

 

ネクタイはいらないとマフラーと同じように投げ捨てる鮫島大牙。

 

そんな彼らを物陰から見ていたうさ耳の少女――――――黒ウサギは思う。

 

(うわぁ、なんか問題児ばっかりみたいですねぇ。)

 

召喚しておいてなんだが、彼らが協力する姿は想像出来ない。黒ウサギは重くため息を吐くのだった。

 

十六夜は苛立ちを我慢できずに言う。

 

「で、なんで呼び出されたはいいがなんで誰もいねぇんだよ。この状況だと、招待状に書かれた箱庭とかいうものの説明をする奴が現れるもんじゃねえのか?」

 

「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの。」

 

「・・・。この状況に対して落ち着き過ぎてるのもどうかと思うけど。」

 

「鏡見ろよ。顔とセリフが全然あってないぞ。」

 

(全くです。)

 

黒ウサギはこっそりツッコミを入れた。

 

もっとパニックになってくれれば飛び出しやすいのだが当の本人たちは雑談をし始めるしまつだ。

 

(まぁ、悩んでてもしょうがないのです。これ以上不満が噴火する前にお腹を括りますか。)

 

四人同時の罵詈雑言を受け入れる覚悟を決めながら黒ウサギが飛び出そうとすると、

 

「・・・仕方がねぇな。こうなったらそこに隠れてるやつにでも聞くか。」

 

隠れている黒ウサギは驚いて飛び跳ねてしまう。

 

四人の視線が黒ウサギに集まる。

 

「なんだ、気がついていたのね。」

 

「当然、かくれんぼじゃ負け無しだぜ。そこのサメ野郎も同じだろ」

 

「知らねぇよ。興味が無い。」

 

「そうかよ。じゃあそこの猫抱えてるあんたは?」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる。」

 

「―――へぇ面白いなお前。」

 

大牙の質問に春日部が無感情に答えて、その答えに軽薄そうな笑みを浮かべる十六夜だが目は全く笑っていない。

 

しかし、四人とも理不尽な呼び出しを受けた腹いせに殺気のこもった冷ややかな視線を黒ウサギに向ける。

 

「や、やだなぁ皆様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギ死んじゃいますよ? ええそうです、古来より孤独と狼はウサギの天敵です。そんな黒ウサギの弱い心臓に免じてここは一つお話を聞いていただけたら嬉しいのでございますよ?」

 

「断る。」

 

「却下。」

 

「お断りします。」

 

「諦めろ。」

 

「あっはい、取り尽くしまもないみたいですね!」

 

アハハーバンザーイ、と手を上げ降参する黒ウサギ。しかしその目では真剣に四人を観察し値踏みをしていた。

 

(ここでNOと言える肝っ玉は素晴らしいのです、まぁ言うことを聞いてくれないとも言い換えられますが。)

 

黒ウサギはどうやって四人とコミニュケーションをとるか熟考していると、春日部耀が不思議そうに黒ウサギの隣に立ち、そのウサミミを根っこから鷲掴み、

 

「えい」

 

「フギャ!」

 

思いっきり引っ張った。

 

「ちょ、ちょっとお待ちを! 触るまでなら許しますが、まさか問答無用で黒ウサギのウサミミを引っ張っるとは、いったいどういう了見ですか!!」

 

「好奇心の成せる技。」

 

「自由にも程があります!!」

 

「へぇ? このウサミミ、本物なのか?」

 

今度は十六夜が右から掴んで引っ張る。

 

「じゃあ私も」

 

そして左から飛鳥が掴みにかかった。

 

「お二人共、ちょ、ちょっとお待ち――――――!!!」

 

 

左右から力いっぱい引っ張られ、さらに頭をグルングルンと振られる黒ウサギは、言葉に出来ない悲鳴を上げる。それは森全体に広まっていった。

 

大牙は退屈そうにその辺を散策を始めた。

 

 

 

「――――あ、ありえないのですよ。まさか話を聞いて貰うために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うのにちがいないのです!!」

 

「いいからさっさと進めろ。」

 

半分本気で涙を流す黒ウサギは話を聞いてもらえる状況を作ることには成功した。四人は黒ウサギの前で『しょうがねぇから聞いてやるよ』と言う態度でふんぞり返っていた。

 

黒ウサギは涙を引っ込めて咳払いをし、両手を広げ、

 

「それではいいですか、皆様。定例文で言いますよ?言いますよ?さぁ、いいます!ようこそ、箱庭の世界へ♪我々は皆様にギフトを与えられた者達だけが参加出来る『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです! 既に気づいていらっしゃるでしょうが、皆様は皆、普通の人間ではございません。その特異な力は修羅神仏から、精霊から、悪魔から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその恩恵用いて競い合う為のゲーム。そしてこの箱庭は強力な力を持つギフト所持者が面白おかしく生きるためのステージなのでございますよ!!」

 

両手を広げて箱庭のことを説明する黒ウサギ。飛鳥は質問するために挙手をした。

 

「まず初歩的な質問からしていい?あなたの言う我々とは貴方を含む誰かなの?」

 

「YES!異世界から呼び出されたギフト所持者は箱庭で生活するに当たって数多とあるコミュニティに属していただきます。」

 

「嫌だね」

 

「属していただきます!そしてギフトゲームの勝者はゲームの主催者(ホスト)が提示する賞品をゲット出来るというとても単純なシステムとなっております。」

 

「・・・・・・主催者って誰?」

 

「様々ですね。暇を持て余した神々が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあります。コミュニティの力を示す為のものもあります。」

 

ピアスを弄りながら白道が問いかける。

 

「チップは?」

 

「それも様々です。金品、土地、利権、名誉、人間、ギフト、コミュニティそのものを掛け合うこともあります。新たにギフトを手に入れられることもありますよ。ただギフトをかけた場合負ければ当然自身のギフトを失われるのであしからず。」

 

黒ウサギは愛嬌のある笑顔で挑発的な声音で白道に問う。 そしてまた飛鳥が挙手をする。

 

「ゲームはどうやったら始められるの?」

 

「コミュニティ同士のゲーム除けば、期日以内に登録して頂けばOK!商店街でも小規模なゲームを開催しているので参加していってくださいな!」

 

「つまりギフトゲームはこの世界の法そのものなのね。」

 

お?っと驚いた顔をする黒ウサギ。

 

「中々鋭いですね。しかし、それは少しだけ違うのですよ。我々の世界でも窃盗、強盗は禁止ですし金品でのやり取りもあります。ギフトを使った犯罪者は厳しく処罰します。がしかし!ギフトゲームでは勝者だけが一方的に全てを手にするのです! お店の商品もゲームをクリアすればタダで手に入れ事も可能なのです!」

 

「まるで賭博だな」

 

「はい、ゲームでございますから。主催者たちは皆これを全て自己責任で開催しています。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからギフトゲームに参加しなければいいのです。」

 

そう言って黒ウサギは一枚の封書を取り出す。

 

「さてさて、召喚をした黒ウサギは皆様に箱庭のことを話す義務がございますが全てをお話するには少し時間がかかります。なんでとりあえずは私達のコミュニティに招待をしてそこでお話すると言うのはどうでしょう?」

 

「待てよ。まだ俺が質問してないだろ。」

 

黙って話を聞いていた十六夜が口を開けて黒ウサギに問う

 

「―――どのような質問ですか?―――ルールですか?ゲームについてですか?」

 

「そんなものはどうでもいいぜ黒ウサギ。ここでお前にルールを問いただしても何も変わりはしねぇんだからな。俺が聞きたいのは一つ――――――」

 

十六夜は巨体な天幕によって覆われている都市に目を向けてまた真っ直ぐ黒ウサギを見つめ直して問いかける。

 

「この世界は―――面白いか?」

 

 

「「「―――――――――」」」

 

 

 

他の三人も黙って黒ウサギの返事を待つ。

 

彼らが読んだ招待状には『世界の全てを捨てて箱庭に来い』そう書かれていた。

 

それにみあうものがあるのかどうか、それが召喚された者にとってそれがこの場で確認する一番重要な事だった。

 

「―――YES。ギフトゲームは人を超えた者達だけが参加出来る神魔の遊戯。この箱庭の世界は外界よりも格段に面白いと黒ウサギは保証するのですよ!!」

 

黒ウサギはこの短い間にあった中で一番の笑顔と声でそう言ってこの箱庭の面白さを保証した。

 

 

 

*****

 

 

 

(黒ウサギはうまく招待者たちをむかえられたかな?)

 

だぼだぼのローブを着たはねた髪の毛が特徴の少年

 

―――ジン=ラッセルは箱庭の門の前でこれから来るであろう使者たちを待っていた。

 

「ジンぼっちゃーーん!!新しい方をお連れしましたよー!」

 

「お帰り、黒ウサギ。そちらの三人が?」

 

「はいな、こちらの四人が――――――」

 

クルリ、そしてカチン

 

黒ウサギはそんな擬音を鳴らして、じーっとたっぷり後ろを見つめたあと

 

「――――――え、あれ?もう一人いませんでしたっけ?ちょっと目付きが鋭くてかなり口が悪い全身から“俺問題児!”って感じの殿方が」

 

「十六夜か?それ」

 

「ええ、彼なら“ちょっと世界の果てを見てくるぜ!”と言って走っていったわ。あっちの方に」

 

そう言って飛鳥が指さしたのは断崖絶壁の方向。

 

黒ウサギは慌てて三人に問いかける。

 

「どうして止めてくれなかったんですか!」

 

「止めてくれるなよと言われたからよ。」

 

と飛鳥は自分の言い訳をする。また黒ウサギは問掛ける。

 

「ならどうして黒ウサギに言ってくれないのですか!」

 

「黒ウサギには言うなよと言われたから」

 

と春日部は自分の言い訳をする。黒ウサギはガックリとして、

 

「嘘です。実は面倒くさいだけでしょう、皆さん!!」

 

「「「うん」」」

 

三人とも真っ直ぐに答える。黒ウサギは自分はなんて問題児たちを掴まされてしまったのだろうと思って、心が折れそうだった。

 

ちなみにだが召喚してから三時間も経っていない。

 

ジンは顔を白くして声をあげた。

 

「いけません!世界の果てには強力なギフトを持った幻獣達がいます! 人では太刀打ち出来ませんよ!」

 

幻獣とはギフトを持った獣のことで、世界の果てにはとりわけ強いギフトを持ったものが野放しにされているそうだ。

 

「まだ箱庭に入ってすらいないのにな十六夜、運の無いやつだな」

 

「そうね残念だわ、彼もうゲームオーバー?」

 

「ゲーム参加前にゲームオーバー?・・・斬新?」

 

「三人とも冗談言ってる場合ではありません! はぁ、ジン坊ちゃん皆様をお願いします、黒ウサギはあの問題児様を捕まえに行って来ますので!」

 

悲しみから立ち直った黒ウサギは艶のある黒髪を淡い緋色に染めて

 

「一刻ほどで戻ります!! 皆様は箱庭をご堪能下さいませ!」

 

そう言って黒ウサギは身を屈めて地面に亀裂を走らせながら跳んだ。そのスピードは弾丸のように速く、直ぐに三人の視界から消え去った。

 

「箱庭のウサギはとても早く跳べるのね。」

 

飛鳥は本当に関心したようにそう呟いた。

 

「黒ウサギは箱庭の創始者の眷属、余程の幻獣と出くわさない限り問題ないと思うのですが。」

 

へぇーとさも興味がなさそうに答える春日部。

 

「黒ウサギも堪能しろと言っていたし、早速箱庭に入りましょうか。エスコートはあなたがしてくれるの?」

 

「あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジンと言います。齢11歳になったばかりですがよろしくお願いします。皆様のお名前は?」

 

「久遠飛鳥よ。そこの首が痛くなる人と猫を抱えているのが」

 

「大鮫大河だ」

 

「春日部耀」

 

ジンが礼儀正しく一礼すると三人もそれにならい一礼した。

 

「んじゃあ早速箱庭に入りますか。あぁー少し喉乾いたな。」

 

「そうね、まずは軽く食事でもしながらゆっくり話を聞かせてくれると嬉しいわ。」

 

そう言って大牙、飛鳥、耀はジンの後ろをついて行き、箱庭の外門をくぐった。

 

 

 

 

四人は大きい石で綺麗に補導された道を歩いていく。外門をくぐるとそこから箱庭に入ると眩い光が降り注いだ。

 

「・・・本当だ。外から見た時は幕の内側は見えなかったのに。」

 

幕の内側にも関わらず箱庭には太陽の日差しが降り注いでいた。その事を不思議そうに思い首をかしげた春日部はつい呟いてしまった。

 

「箱庭を覆う天幕は内側からは不可視になるんです。あの巨大な天幕は日差しを直接受けられない種族のためですから。」

 

ジンは天上の幕を見ながら説明をしてくれた。だが飛鳥はその発言を聞いてジンにあることを問いかける。

 

「あら、箱庭には吸血鬼でもいるのかしら?」

 

「えぇ、いますよ。」

 

「そう・・・なのね、あまり仲良くはできなさそうだわ。」

 

飛鳥は皮肉気味に問いかけたのだが、ジンはあっさりと答えてしまう。此処にいる吸血鬼がどんなものなのかまだ分からないが、近づきたいとは思えなかった。

 

「うん、そうだね。」

 

飛鳥がそんなことを思っていると春日部が急に声をだす。

 

「あら、春日部さん。何か言ったかしら?」

 

「・・・別に。」

 

先程の声よりもいささか冷たい声で飛鳥に返事をする春日部。飛鳥もそれ以上は追求せず、目の前の箱庭の景色を珍しそうに見つめる。

 

広場の中央に水場があり、中央の石像から水が流れている。その近くにはオシャレなカフェがいくつもあってどこも人で溢れ、活気があるように見える。

 

「どこかの店にでも入るのか?」

 

そんな噴水知ったことかと言わんばかりの大牙は、ジンを催促して言った。

 

「す、すみません。全てを黒ウサギに任せていたので、宜しければ好きなお店を選んでください。」

 

「ふぅん」

 

四人と一匹は手近かな“六本傷”のカフェに入ってテーブルにつく、すると奥から猫耳を生やした女性店員が注文を取りに来た。

 

「紅茶を二つと緑茶を二つあと軽食にこれとこれを。」

 

飛鳥が猫耳店員に注文をしていると春日部が抱えていた猫がニャーと鳴き声をあげた。

 

「はーい、ティーセットを四つとねこまんまですね。」

 

「「「はい?」」」

 

三人が疑問の声を上げ、残りの春日部は驚いた表情を猫耳店員にむけていた。

 

「三毛猫の言葉が分かるの?」

 

信じられないものを見るように猫耳店員に話しかける春日部。

 

「当たり前ですよ。私は猫族なんですから。高齢なのに随分と綺麗な毛並みですねお客さん、ここは少しサービスしますね!」

 

そう言って猫耳店員は店の奥に戻って行った。その後ろ姿を見ていた春日部は三毛猫を撫でながら話しかける、

 

「すごいね、私以外に三毛猫の言葉をわかる人がいるよ。」

 

その発言を聞いた三人は驚きの声をあげる。

 

「も、もしかして春日部さん、猫と話せるの?!」

 

「う、うん」

 

少し声を張った飛鳥の声に驚きながらも春日部は答える。

 

「基本的には生きてるなら誰とでも会話ができるよ。」

 

ジンはそこでもまた驚いた様子で話しかける。

 

「す、凄いですね!種を超えて会話ができるなら心強いですよ。この箱庭では幻獣との言葉の壁はとても大きいですから。」

 

一部の猫族やウサギのような神仏の眷属として言語中枢を与えられているなら意思疎通は可能になるが幻獣の場合は独立した種なので同じ種か相応のギフトがなければ意思疎通は難しいのが箱庭の常識だ。

 

「そうね。春日部さんのギフトはとても素敵だわ。」

 

そんな会話に興味がない大牙と憂鬱そうに呟く飛鳥。春日部はそんな二人を見て質問を返してみる。

 

「そ、その久遠さんと大鮫さんは・・・」

 

「飛鳥でいいわよ。春日部さん。」

 

「適当に呼んでくれていい」

 

「うんじゃあ飛鳥と大牙はどんなギフトを持ってるの?」

 

「大したものじゃない。きっとこの箱庭ではな」

 

「私? 私の力は―――まぁ、酷いものよ。だって・・・」

 

飛鳥が話を切り出そうとしたその時。

 

「おやぁ?誰かと思えば最底辺コミュニティの“名無し”のリーダー、ジン=ラッセル君じゃあないですか。」

 

そんな言葉と一緒に出てきたのは2mは超えてると思われる、タキシードを着た変な男、ガルド=ガスパーが現れた

 

 

 

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