問題児たちが異世界から来るそうですよ?人魚の恩恵   作:ホモ・サピエンス

5 / 8
第5話

 

 

六人と一匹は”サウザンドアイズ”の店の暖簾をくぐり、外に出る。

 

「今日はサンキューな、白夜叉」

 

「うんまた、遊んでくれると嬉しい。」

 

「あら、ダメよ春日部さん、今度は対等に勝負をするのだから。」

 

「・・・」

 

「おうとも。待っているよ皆の衆」

 

そして白夜叉はスっと目を鋭くして黒ウサギたちを見つめる。

 

「お主らは、自分たちのコミュニティがどうゆう立場に立っているか、しっかりと理解出来ているか?」

 

「名と旗印のことなら聞いてる。」

 

「それを取り戻すために魔王と戦わねばならない事もか。」

 

「えぇ、承知してるわ。」

 

なるほどのう、白夜叉はそう言って少し顔を伏せる。

 

「・・・ではお主らは全て理解した上で黒ウサギのコミュニティに入るのだな。」

 

「あぁ」

 

「なら、東側を守る“階層支配者”として、忠告しよう、そこにいる蛇神を倒した者以外の娘達と童よ、気をつけろよ。そのまま魔王のゲームに挑めば確実にーーー死ぬぞ。」

 

「えぇそう、なら沢山ゲームをこなして強くならないと。」

 

「がんばる」

 

飛鳥、春日部の順にそんな声を出して気合を入れ直す。

 

それを見た白夜叉は、呆れたようなそんな顔をして、

 

「頑張る、か。青いな」

 

「死ぬか。そうか」

 

(そうかだと?強がりか、いやそうではない。あやつの瞳に恐怖は見えない。ただの考えなしか?ビビらせるつもりなど毛頭ないがそれでも彼女らのように動揺があるほうが自然だろうに)

 

大牙の言葉に眉を動かした白夜叉はその態度に違和感を覚えた。

 

死とは生物にとって究極だ。その避けることができない絶対。神である白夜叉にすら存在するこの死という概念はただの人。それも17の小僧には到底考えることができない重大な存在だ。だが大牙はこれを「そうか」と簡単な言葉で片づける。その違和感を白夜叉は感じ取っていた。

 

「まあ良い、力を付けたと感じたら三三四五外門に来い、私が相手をしてやろう。・・・チップには黒ウサギを賭けて貰うがの!」

 

「嫌です!!」

 

即答する黒ウサギ、口を尖らせて白夜叉は言う。

 

「そうケチケチするでないぞ黒ウサギ〜私のコミュニティに来れば三食首輪付きで何不自由なく暮らしていけるぞ。」

 

「三食首輪付きってそれもう完全にペット扱いですよね!!」

 

怒る黒ウサギ、笑う問題児。

 

五人と一匹はそのまま白夜叉と無愛想な女性店員に見送られて、“サウザンドアイズ”の支店をあとにした。

 

 

 

*****

 

 

 

「ここら、私たちのコミュニティに入ります。本拠までは、もう少し歩かないといけません。ここにはまだ魔王との戦いの跡が残っているので」

 

顔を伏せて黒ウサギが言う、

 

「ああ、あの素敵ネーミング様との跡か?」

 

「はい、その通りでございます。ですが皆様気を確かに持ってくださいね、」

 

黒ウサギは四人に力強い言葉をかける。そしてコミュニティの門を開ける。

 

 

 

ーーー廃墟だった。

 

 

 

一言で言えばそこは紛れもない廃墟だった。木造の建物は風化し、腐って倒れ、建物を支える鉄筋や要所要所を繋いでいたであろう針金は錆びて曲がっていた。

 

「おい、黒ウサギ。魔王との戦闘は何百年前の話だ。」

 

「わずか三年前のことでございます。」

 

「三年・・・?」

 

「ああ、ありえねぇ。断言するぜどんな力がぶつかっても物体はこんな壊れ方しねぇ」

 

「あの建物、ティーセットがそのままになっているわ。まるで人がそのままいなくなったかのよう。」

 

「動物達の気配も全然感じない。ここだけ時間が止まっているみたい。」

 

「魔王との戦いはそれほど未知の戦いであったのでございます。彼らがこの土地を残していったのは一種の見せしめか自らの力を誇示するためでしょう。」

 

黒ウサギは風化した景色を見ずに石の通路を通っていく、飛鳥と春日部は複雑な表情を浮かべてついて行く、大牙は力一杯に拳を握ってやるせない気持ちになっていた。そんな中十六夜だけが満面の笑みを浮かべてた。

 

「・・・魔王か、いいねいいねいいな!おい!こいつは完全に想像以上だぞ!」

 

そのまま廃墟の中を進んでコミュニティの本拠の前に到着すると、ジンと子供たちが水路の掃除をしていた。

 

「みなさんおかえりなさい。水路の準備は出来てますよ。」

 

ジンがそう言って答えると周りの子供たちも黒ウサギにおかえりーと言っていた。

 

「ただいまなのでございます。みなさんしっかりと準備のお手伝いは出来ましたか?」

 

はーい!!と言って黒ウサギに群がっていく子供たち

 

「ねぇねぇ黒ウサギのお姉ちゃん。新しい人来た?」

 

「強いの?かっこいいの?」

 

「YES、みなさんかっこよくて可愛くてとても強い方達なのでございますよ!」

 

黒ウサギがパチンっと指を鳴らすと子供たちは一斉に整列した。

 

(ほんとにほとんどガキばっかりなんだな)

 

(実際に目にすると、多いのね、これでも六分の一なの?)

 

(・・・私子供嫌いなのに大丈夫かな?)

 

(半分ぐらいは人じゃない子供なのか?動物みたいな耳がある。)

 

それぞれが子供たちに対して感想を抱くと黒ウサギが、

 

「それではみなさんご一緒に挨拶をいたしましょう。」

 

「「「「「よろしくお願いします!!!!」」」」」

 

キーン!と耳鳴りがするほど大きな声を出して、挨拶をしてきた。

 

「ヤハハ、元気いっぱいだな!!」

 

「そ、そうね」

 

(・・・私本当に大丈夫かな?)

 

(とりあえず数が多い)

 

そのまま黒ウサギが水樹を水路に植えていく。

 

「それでは十六夜さん水門をあけていただけますか?」

 

「ほいよ。」

 

十六夜が水門の前に立って開けようとしていると黒ウサギが水樹の苗を縛っている紐を解く、すると一気に水が溢れ出して川のように水路に水で満たしていく、

 

「ちょっとまて、ゴラァ!さすがに今日はもう濡れたくねぇぞ!!」

 

「おお!この子は想像以上に元気ですね!」

 

十六夜が叫び声を上げて水路から飛び出す。それを華麗にスルーした黒ウサギは水樹の恩恵に大喜びをしていた。

 

「すごい!これだけの水があれば生活の他にも利用出来そうです!」

 

ジンがそう歓喜の声を出していると大牙の隣に着地した十六夜は話が聞こえていたのかそのまま会話に乗っかる

 

「農業でもするのか御チビ様?」

 

「えっ?、ええそうですねそれに近いかもしれません。水仙卵華と呼ばれる浄水効果のある花を育てれば薬湯や観賞用に取引されるのでそれで収入を得ることも出来ます。」

 

御チビ様と言う敬称に戸惑いながらもジンはそう答える。

 

四人と黒ウサギはそのまま本館に入って自分たちに宛てがわれた部屋を見て周り、その後に『風呂に入りたい!』といい。黒ウサギが浴槽を見てわ「一刻ほどお待ちください!!」と言って掃除道具を持って駆け出して行く。

 

客室用の部屋で待っていた問題児たちは黒ウサギが来るまで雑談を繰り広げていた。

 

「にゃーにゃーにゃー」

 

「ダメだよ、ちゃんとお風呂には入らないと。」

 

「へぇーほんとにお前は猫と会話ができるんだな。」

 

「うん」

 

「シャー!にゃーにゃにゃーにゃ!!」

 

「ダメだよそんなことしちゃ。」

 

「何言ってんだか」

 

傍から見ていると春日部のしていることは奇妙なことでしかない。事情を知らない人間ならまず近づきたくないと思う光景だ。

 

「ごめんなさい無粋な事ことを聞くようだけど春日部さんに友達がいなかったのは・・・」

 

「友達はいたよ、ただ人間じゃなかった、それだけ。」

 

そう、と言ってそれ以上飛鳥はなにも聞けなかった。

 

するとドドドっ!と黒ウサギが走って勢いよく扉を開け部屋に入って来る、

 

「お待たせしました!!それでは女性の方からどうぞ!」

 

「あら、ありがと黒ウサギ、それじゃあ、十六夜くん大鮫くん先にいただくわね。」

 

「おお、行ってこい」

 

「あぁ」

 

そう言って女性陣たちはお風呂場へ向かって行った。

 

数分してから十六夜と大鮫が神妙な表情をしてホームの廊下を歩いて外に向かって歩いた。

 

 

 

*****

 

 

 

月明かりが綺麗な夜、十六夜は白道と共に本拠とは別の普段子供たちが住む別館の裏に来ていた。そこには少ないが木々が生えており月光の影で暗闇を作り出している。そんなところに立つ十六夜と大牙。十六夜はニヤニヤと不気味な笑みを浮かべ、反対に大牙は腕を組んで仁王立ちで無表情で立っている。

 

「・・・」

 

「なぁ」

 

「・・・」

 

「無視すんなよ。隠キャかお前」

 

「うるせえ」

 

「お前のギフトってどんなやつなんだよ」

 

「なんでもいいだろ」

 

「気になるだろ。まだ春日部の恩恵しかしらないんだ。これから一緒に暮らしていくわけだし」

 

「喋りたくない」

 

「なんでだよ」

 

「ほっといてくれ、それに今する話じゃないだろ」

 

「そうかよ。確かにそうだけどな」

 

暗闇に向かって十六夜が、喋るが人のいる気配はしない。大鮫は十六夜と喋るのを黙って聞いていた。先程のウザイ空気を引っ込めて同じように暗闇を見つめる。

 

「・・・・」

 

暗闇からは返事がなく、やはり人の気配はない。

 

「めんどくせぇなぁ」

 

そう言って十六夜は小石を数個広い・・・

 

「てい」

 

バッコオォォーン!!

 

適当に投げたはずなのに十六夜の投げた小石は残り僅かな木々をぶち壊した。

 

「お前人か?」

 

「ヤハハハハ!完璧な人間だぜ」

 

部屋で騒ぎを聞いたジンが走って、

 

「ハァハァ、十六夜さん大鮫さん!一体なんの騒ぎですか!!」

 

「おう御チビ様、お客さんだぜ“フォレスガロ”からな、」

 

「はぁ、さっさとして早く寝よう。今日は疲れた」

 

二人が軽薄そうに笑っている、十六夜が吹き飛ばした場所からは数人の男が現れる。男達はただの人間ではなく獣の耳や爬虫類を連想させる目をもっていたりと、少なからずギフトを持っていた

 

「このデタラメな威力!間違いない!」

 

「やはり水神を倒したという噂は本当だった!」

 

侵入者の男達はお互いに喋りあいどこか喜んだ様子をして十六夜に頭を下げる。

 

「恥をしのんで頼む!どうかコミュニティ“フォレスガロ”を徹底的に叩きのめしてくれ!」

 

「嫌だね!」

 

胸を張って断る十六夜を横目に大鮫はため息をついて呆れた。

 

「どうか頼む。我々はガルドにコミュニティを奪われ、今までやつに散々な仕打ちを受けてきた、だからどうか頼む!」

 

男達は揃って十六夜達に土下座をする。

 

「なぁ、あんた達が言ってる仕打ちってのは人質のことか?」

 

「そ、そうだ!ここにいる皆は家族を人質に取られて・・・」

 

「その人質はもうこの世にいねぇから。はい、この話題しゅーりょー」

 

「十六夜さん!」

 

「なんだ、御チビ、事実を伝えただけだろ。まさか気を使えって?その人質を今まで奪ってきたのは誰だ?こいつやらだろうが」

 

「そうですが、・・・」

 

十六夜が力強い言葉をジンにかける、男達は絶望の表情をして

 

「ま、まさか本当に・・・・・・?」

 

「はいガルドは奪ったその日に人質を殺しています」

 

なんてこった。

そう言って男達は涙を流していた。いつか帰ってくると信じて仕方なく悪道を行ってきたのにその希望ももはや潰えてしまったのだ。

・・・その顔を見て十六夜が

 

「悔しいか!お前達!今まで散々な仕打ちを受けてそしてさらに愛しの家族までも奪われて悔しいか!」

 

あ、当たり前だ!と言う男達。ジンと白道は十六夜が何をしているのか分からずに首を傾げていた。

 

「そして全ての元凶の魔王が憎いか!いなくなって欲しいか!」

 

もちろんだ!男達が大声を出す。

 

「けど自分たちにはその力がないから無理だと言うのだな」

 

「だが安心しろ!ここにいるジン坊ちゃんが、魔王を倒すために立ち上がってくれたぞ!」

 

「「「「は?!」」」」

 

この十六夜の言葉に男達、そしてジンが驚きの声を上げる。

 

「ちょっ、ちょっと十六夜さ・・・・ぐぼぉ!」

 

十六夜がジンの口を塞いで

 

「ああ!ここにいるジン坊ちゃんが体と勇気を持って魔王を専門に討伐するコミュニティをここに作った!」

 

十六夜は止まることなく乗っかり話を広げる。大牙は十六夜の思惑がわかったのか溜息をついて腕を組んでその光景を見守った。

 

おお!と歓喜の声を上げる男達。

 

「コミュニティに帰って仲間に伝えろ、先ずは明日のギフトゲームでその力を示してやる!」

 

十六夜がそう言うと、男達は立ちあがって「明日のギフトゲーム頑張ってくれ!ジン坊ちゃん!」そうエールを送って走って帰っていく。

 

独り、取り残されたジンは「え、ぇぇぇぇぇぇ」と言葉をなくしていた。

 

一同は本館に戻りある一室にたどり着いた途端ジンが、

 

「なんてことを言ってるんですか!十六夜さん!」

 

「“打倒魔王”が“打倒全ての魔王とその関係者たち”になっただけだろ。『魔王でお困りの方はぜひ“ノーネーム”のジン=ラッセルまで!』とキャッチフレーズはこんなもんか?」

 

「十六夜、箱庭にはテレフォンショッピングはないと思うぞ」

 

大鮫にそう言われた十六夜はゲラゲラと笑い。反対にジンは険しい顔をして、

 

「笑えませんし、笑い事ではありません!お二人は自分の娯楽のためにコミュニティを崩壊させるおつもりですか!!」

 

「いや、違う!」

 

十六夜は力を込めて否定した、

 

「なぁ御チビ、お前は一体どんな方法でコミュニティを再建するつもりだったんだ?」

 

「え、えっとそれは・・・先ずは水を確保することから始める予定でした。それから確実にギフトゲームに勝利していけばコミュニティは大きくなります。なので・・・」

 

「はぁ、御チビ、そんな机上の空論でコミュニティをやり直すつもりだったのか?」

 

「は?」

 

「いいかおチビ様、ギフトゲームで勝って力を付けるなんてのは当たり前のことなんだよ、最低条件と言い換えてもいい。さらにお前達のコミュニティはギフトゲームだけで強くなったのか?違うはずだ」

 

「その通りです、他のコミュニティと同盟を結んだり・・・」

 

「魔王を倒して、無理やり仲間にしたりとか?」

 

「はい、知っていたのですか?魔王は場合によっては隷属できると、」

 

十六夜がニヤリと笑いながら問いかけジンが答える。

 

「黒ウサギに聞いたんでな、何はともあれ、先ずは人がいる。つまりは人材、いくら俺達が優秀でも少人数だとやれる事が制限される。」

 

「それで魔王を引き寄せようとしたんですか、」

 

「ああ、だがそれだけじゃない、他の連中にも声をかけることになる。」

 

「それは一体誰ですか?」

 

「『打倒魔王』を胸の内に隠してる奴らだ。だけどな俺達には“名”と“旗印”がない、だから魔王に狙われることもなければ仲間を集めることも出来ない。」

 

「だからな、おチビ俺達にはお前の“名前”が必要なんだ。」

 

そこでジンが思い切り目を見開いた。

 

「つ、つまり僕の名前をコミュニティの名刺代わりにするってことですか!」

 

「その通り。でもただの“ジン=ラッセル”じゃあ名前は売れねぇだから『打倒魔王』を掲げるってわけだ。」

 

ジンはゆっくりと頷いて少し考えたら、

 

「なるほど、そこまで考えてるのでしたら僕から言うことはなにもありません。・・・ですが一つだけお願いがあります。この先にあるといわれるあるギフトゲームに出ていただきます。」

 

へぇ、と十六夜はジンの言うゲームに興味を示した。

 

「なんで俺まで」

 

「ゲームの詳細はまだ分かりませんが商品にかけられているのが僕達のコミュニティにいた人なんです。しかも“元魔王”に当たる実力者」

 

大牙はジンの言葉を聞いて先の展開が読めたと肩をすくめてうんざりした表情を隠す気もなくため息をついた。

 

「そのゲームに勝って取り戻せってか。面倒だな」

 

「はい、その通りです。」

 

「おおいいぜやってやるよ、だか先ずは明日のゲームだ。・・・明日負けたら俺はコミュニティ抜けるから。」

 

「はい、・・・・・ええ!」

 

十六夜のさり気ない脱退宣言にジンはまた困惑してまた頭を抱えることになった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。