問題児たちが異世界から来るそうですよ?人魚の恩恵 作:ホモ・サピエンス
十六夜の脱退宣言から翌日、“フォレスガロ”とのギフトゲーム当日になった。
黒ウサギ、ジン、問題児たちはゲーム会場に移動していると昨日のカフェの前で猫耳店員に声をかけられた。
「あ!お客さーんこれからゲームですか?頑張って下さい。あいつらうちでタダ飯食いまくっているのでボスからもエールを任されているんです。」
「ええ、頑張るわ期待していて」
飛鳥と白道がそう答えると店員はまた応援して送り出してくれた。一行はそのままコミュニティ“フォレスガロ”の本部まで歩く・・・そこには。
「ジャングル?」
「ジャングル」
「虎がやってるコミュニティだからじゃない?」
そこには木々が生い茂り先には何も見えなくなっていた。十六夜がそう聞くとジンが答える
「い、いえいままでは本拠はしっかりとした建物でしたよ。」
(この木“鬼化”している?!・・・まさか“彼女”が?)
「ジンくん、ここに契約書類ギアスロールがあるわよ」
《ギフトゲーム名 “ハンティング”
プレイヤー名一覧
久遠飛鳥
春日部耀
大鮫大牙
ジン=ラッセル
クリア条件
ホストの本拠地に潜むガルド=ガスパーの討伐
クリア方法
ホスト側が指定した武具によって討伐可能、それ以外の方法ではホスト側に傷をつけることは不可能
敗北条件
プレイヤー側が勝利条件を満たせない場合
宣誓、上記を尊重し誇りと御旗の下“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。“フォレスガロ”印》
「指定武具でのみ攻撃可能!」
「こ、これは不味いのです!」
読み終わるとジンと黒ウサギが一斉に叫ぶ、
「そ、そんなに危険なの?」
「いえ、ゲーム自体は単純なのですが、これでは飛鳥さんのギフトで彼を縛り付けたり、耀さんの力でも彼を傷つけられません。」
「なるほど、自分の命をルールに加えて弱さを克服したってことか、見てる分には面白いけどな。」
「他人事だなお前」
「大丈夫です!ここにしっかりと“指定”と書いてあります。黒ウサギがいる限りイカサマは有り得ません」
と黒ウサギが愛嬌のある顔で皆を励ます。黒ウサギは“審判権限ジャッジマスター”と呼ばれる特権を持ち、ゲームに対して様々な力を行使できるが、その代わりにゲーム自体に参加することが出来ないという制限がある。
「大丈夫黒ウサギもこういってるし私も頑張る。」
「ええあの外道のプライドを粉々に砕くにはこれぐらいのハンデがいるわよ。」
春日部と飛鳥がお互いに気合を入れる。十六夜はジンに近づいて耳打ちをする。
「俺たちのルールに変更はなしだ。負けたら俺はコミュニティを出る。」
「分かっています。絶対に負けません。」
こうしてギフトゲーム『ハンティング』が始まった。
「まずどうすればいいのかしら?」
「そうですね先ずはその指定武具を発見しなくてはガルドを倒せません、指定武具かもしくは指定武具のヒントを見つけましょう。」
鬱蒼と生い茂るジャングルの中を進んで行く途中でゲーム攻略の指針を決める四人。
「周りに敵はいない、匂いで分かる。」
「あら、お友達に犬もいたのかしら?」
「うん、二十匹ぐらいは、」
春日部は動物と知り合えばその数だけ体や感覚が強く鋭くなる。この中で一番五感が鋭いのは春日部だろう。ジャングルではとても心強い恩恵だ。
それを聞いたジンがふと思い出した、
「聞いていなかったのですが、大鮫さんは一体どんなギフトを持っているのですか?」
は、俺?そんなことを言いたげな顔をして大牙が振り返る。
「あら、そう言えば見たこと無かったわね、機会がなかったからかしら?」
「私も気になる」
「別に対したものじゃない。お前らに比べたらな」
そういって冷たく言って大牙は3人の前をズカズカと歩いて行った。その後ろ姿を見る少女二人と少年はどこか気まずい雰囲気に包まれた。
「だ、ダメですよ大鮫さん!ギフトゲームは協調性が大事なんですから!お互いに何が出来るのかは把握しないと!
」
「だからお前らに比べたらくだらない力だ。戦えないし守れる力でもない。だから気にする必要は無い」
そう言ってまた大牙はまた茂みを迷うことなく進み3人との距離を離して行くのだった。
「彼、冷たいわね。どう思う春日部さん?少し自由過ぎないかしら!」
「そうだね、ずるい」
(お二人がそれを言いますか!!)
ジンがそう思ったが言わないことにした、言ったらどうなるか火を見るよりも明らかだったからだ。
*****
「どうですか?匂いでガルドの位置を特定できますか?」
「それは分からない、でも風下にいるのに匂いがしないってことは多分建物の中にいるんだと思う。」
「春日部さんがいれば奇襲も分かっちゃうから大助かりね、けど、お友達は春日部さんが急にいなくなって寂しがってるのではないの?」
「それを言われると少し困る。」
くすくすと笑う飛鳥、困り顔の春日部、いつまでも仏頂面の大牙
「ガルドはゲームでは実質全戦全勝なので気をつけて進みましょう。大鮫さんも罠もあるかもしれないので気をつけてください」
「・・・」
「そうね、とりあえずは外から回りましょう。」
そのまま数十分ジャングルをさまよう4人
「ダメね何も見つからないわ。どうしましょう」
「指定と言われているので必ずヒントはあるはずなのですが・・・・まさかガルド自身がそのヒントなのかも知れません。」
「なるほど、なら方針を変えましょ、先ずは春日部の力でガルドを探して、」
「もう見つけた。建物の二階にいる、姿までは見えなかったけど動く影が見えたから間違いない。」
春日部の瞳はいつもの目ではなく、猛禽類のような金色の瞳をしていた。そのまま一行は本拠を目指して歩く。木々はその道を阻むように絡み合って生えていた
(これだけの木を“鬼化”させるなんてまさか本当に彼女がからんでいる?)
4人は戸惑いながらも本拠に着き、扉を開いて中に入る。
「随分簡単に入れるのね、」
「罠の気配もなかった。奇襲を仕掛けるのも最適なのに、こんなのおかしい。」
「ガルドは二階だったわね、ジンくんここで待っててくれる?」
「大丈夫です!僕にもギフトはあります。一緒に行きますよ!」
「違うのよあなたを足でまといなんて思ってないわ、ただここでもしもの時のために退路を守ってて欲しいのよ。」
飛鳥は真剣な表情でジンに言う。ジンも退路を守る重要性をよく知っていたのでしぶじぶながら頷いて扉の前に残った。
「じゃあ春日部さん大鮫くん、行くわよ。」
「うん、わかった」
「あぁ」
大牙と先頭に春日部も飛鳥と一緒に二階に上がる。ここでなんの相談もなしに行動してしまう彼女らも十分に自由な性格をしていることは誰も指摘できなかった。
扉の前で躊躇する二人を置いておいて大牙が扉を蹴飛ばして中に入ると中には白い毛皮の大きい虎がいた。以前見たガルドとは程遠く。体は大きくなり大きな牙に鋭い爪が揃って、より凶暴になったガルド・ガスパーがいた。よく見ると奴の背には銀製の剣が地面に突き刺さっていた。
「GEeeeeeeYAAaaaaaaaaaaaaa!!!!」
ガルドが吠える。
その声は大気を震わせ、まるで爆風をそのまま身に受けるような衝撃だ。その咆哮は飛鳥と耀の動きを止めるのに十分な迫力を持っていた。
ガルドはそのまま飛鳥と耀に飛びかかりその鋭い爪と大きい牙で引き裂こうとする
二人の前に大牙が立ち塞がり大きな壁となった。
しかしガルドの爪は17歳の少年の体など容易く貫き大牙の体を豆腐のように切り裂き、大きな牙で首筋を噛みつく。ボタボタと、いやドボドボと音を立てながら床には大牙の赤い血液が大量に流れ、首が取れかける。
「はやく・・・・ぃげろぉ」
掠れてほとんど発音できない言葉で口から血を流しながら二人の少女に大牙は逃げるように告げる。
医学の心得が無いものでも重症と分かる。まず大牙は助からないだろう。
「・・・・っ!」
「飛鳥!立って逃げないと!」
「・・・・で、でも・・・・・」
「か、かすか・・・」
春日部が大牙の目を見て決意を固めて飛鳥の体を抱えてグリフォンのギフトを使って外に飛び出した。
「Guuu!!!」
ザグっ!とまた大牙の体に牙が食い込んで骨が砕ける音が春日部の耳に聞こえた。その音を聞きながら春日部はジンを拾って外に向かった。
*****
「・・・ど、どうしよう。春日部さん。大鮫くんが・・・」
飛鳥の顔は青白く染まりきり、体が震えて止まらない。春日部も同じように顔面蒼白のまま気に寄りかかって呼吸を整える。
ジンも二人の話を聞き絶望のどん底に浸った。
「・・・ここは棄権して、また後日ゲームをやり直しましょう!今度は十六夜さんも一緒に!」
「いいえダメよ、そうしたらあの外道は箱庭の外に逃げるもの。」
飛鳥の強気な言葉にジンは言葉を失う。もともとこのゲームはガルドを追い詰めるために始めたゲームだ。その張本人が逃げ出してしまえばこのゲームをする理由が無くなりガルドは逃げてしまう。
だがしかしここでは実際に仲間の死人が出ていることは二人は見ていたためここでまた奮起して戦うことはできない。特に人よりも感覚器が鋭い春日部の五感はしっかりと大量の血液のにおい。牙と爪が体の骨を砕く音。肺がつぶされてかすれて聞こえた呼吸音。この光景は齢15の少女から戦意をそぐには十分な光景であった。
「飛鳥、でも私はもう・・・」
「春日部さんがだめなら私一人でも行くわ。昨日黒ウサギと話した作戦もある。私ならいけるわ」
「で、ですけど飛鳥さん!」
「・・・だめだ、あいつは絶対俺が倒す」
「いいえ!私がやるわ!大鮫くんの仇は私が!・・・えっ?」
「大鮫くん?!」「大牙!!生きてる!」「大牙さん!?」
がさがさとうっとしい音を立てながら森の奥からぼろぼろの格好の大牙がひょっと出てきた。着ていた制服には無数の穴が開き血液がまだ大量に付着しているがその身体には傷一つ残っておらず綺麗な肌がみてとれた。
「な、なんで?さっき食べられて・・・死んだんじゃ?」
「死んでないからここにいる」
3人からのどうしてを全て聞き流し大牙は背中から銀の剣を取り出した。
「作戦があるんだろう久遠。なら指示を出せ。俺があいつを仕留める」
*****
ガルド=ガスパーは元々はただの虎だった。
たが長く生きた生物はなんであれ神聖視される。その功績によって微尺ながらもガルドは霊格を得て、箱庭に来たのだ。まず箱庭の外の森で今までと同じように生きてきた。森で狩りをし自分の群れコミュニティと縄張りを守りながら時に苦しく時に楽しく生きていた。そんなガルドにとある悪魔が声をかけてきた。
その悪魔はガルドに“人”と自身の一部の“悪魔”の霊格を分け与えガルドをワータイガーにした。
それからガルドは箱庭で相手を騙し罠にはめ、陥れ奪ってきた。今では理性を持っていた“人”の霊格を“鬼”の霊格に変えられその理性も失った。だがその分肉体は強くなったが。
これで本当に悪魔の獣に成り下がった。・・・悪魔に力を受け入れずに、自身のみの力を高めていればもっとマシな人生が遅れたはずなのに。
ガルドは大牙を殺した後残りの奴らを片してからゆっくり食べていこうと思っていたらいつの間にか大牙の死体がなくなっていた。奇妙に思いながらもガルドは自分の敷地に外敵がいなくなったことに安心して部屋の中でゆっくりと休んだ。
そのまましばらく休んでいると何かが焦げるような異臭がガルドの鼻をつついた。その臭いの正体に気ずいたガルドは目を開けて立ち上がる。間違いない。俺の城が燃えている。炎に包まれている館を見ては集めた数々の装飾、絵画、骨董品が焼けて落ちるのが見えた。苦い思いを噛み殺して部屋を飛び出すと先ほど部屋で噛み殺した小僧がランタンを床に叩きつけていた。
「さっきはどうも」
(なぜ!!?奴がまだ生きている?!確実にあの体を俺様の爪と牙で貫いたはずなのに!!)
「さっさといくぞ。ここじゃあ何もできずにまた死んじまう」
小僧が館から飛び出し森の中に逃げる。
関係ない。殺しても死なないならもう一度殺すまで。おそらくは幻惑のギフトを使って俺に幻覚を見せたのだろう。悔しいが今の俺様には理性という概念が薄いから余計にかかる。
先ほど食った肉と血の匂いをたどりながら森を走っていくと先ほどの小僧が視界に入る。さらに速度を上げて奴との距離を積める。幻惑の恩恵にかかろうが関係ない。匂いを追えば間違いなく奴に辿り着く。もっと早く、速く、疾く!さあ!もう一度食らってやるぞぉ!!
ガジュッ!!!
(食った!!今度こそ間違いない!確実に匂いの元を追って辿り着いたこの体は間違いなく小僧の体だぁ!!)
「そんなにがっつくほど俺の体は美味いのか?」
「Gruu!!」
『縛りなさい!!』
突如俺様体が何者かに縛り付けられる。なんだこれ!何をされたんだ俺は!
「GRAaaa!!!」
「諦めろ。お前は死ぬんだ。食ったガキどもによろしくな」
狭い視界を広げていくと手足を木々が押さえつけている。強化されたこの体を縛り付けることが出来るのは命令を聞かせることが出来るあの小娘だけだ。
「GRAAAAAAAAAA」
小僧がゆっくりと俺の方に歩み寄ってくる。なぜだ?!俺がつけた傷は青黒い霧を立てながら修復されていく。こいつは回復や再生の恩恵じゃない!こいつまさか”不死”か!確実に殺したはずなのにその事実を否定できるなんてこれしかない!なんてやつだ!くっそ銀の剣を持ってやってくる!
「ただの虎の方がかっこよかったぜ」
ちくしょう!ちくしょう!体が崩れる!ルールである以上不正は許されない。どうして俺様が?!これからなのに!これからもっともっともっと大量のコミュニティを取り込み自分のコミュニティを大きくするはずだったのに!どれだけここに居座ったと思っている。どれだけの時間をかけてこの椅子を手に入れたと思っている!!どうしてどうしてどうしてだ!なんで俺様が、なにが間違いだったのだ!どうやったら避けられたんだ!だめだ体が、意識の薄れてきた。
俺は確実に死ぬ。あぁ、こんなヤツらに手を出すんじゃなかった。
ギフトゲーム:ハンティング
勝者:ノーネーム