電伝虫から響いていた年若い少女の歌声が止まり、息を整えたのだろうか、三拍ほど時間が空いた。――なのに誰も喋らない。喋れないのだ。
『私はウタ……ポートガス・D・ウタ! ただのウタだった私に、ママが名字を……家族の証をくれた! だから私はママの意志を継ぐ! ママが望んだ世界を手に入れるために――ママにこの歌声が届くように、歌い続ける!』
甲板がざわめいた。ポートガス・D・ウタだって、と。今この船にいない青年と同じ名字だ――誰もが顔を見合わせる。
『それが私の覚悟。私がみんなに見せる夢。――聴いてくれて、ありがとうございました』
電伝虫が沈黙した。放送が終わったのだ。
同じ頃、別の場所――万国。
「リトルママの跡を継ぐのは私なんだけど!?」
裾が風船のように膨らんだワンピーススカートの少女が金切り声を上げる。
「このウタってオンナ信じらんない! 私を差し置いてリトルママの跡継ぎを名乗るなんて! ねえおにーさま、おねーさま!?」
ふわふわと宙に浮いたまま地団駄を踏む少女以外に口を開くものはいない――みな、突然の訃報に理解が追いつかないのだ。
「うそ」
いかにも魔女ですという格好をした背の高い女が視線を左右にうろつかせる。
「うそよ」
そして、震える手で顔を覆った。
「うそって言って……」
――海上を渡る棺では。
「世界が荒れるな」
それは男の望むことだったが、このような急な幕引きは望んでなどいなかった。
「穏やかに……眠れ」
――ローグタウン付近、海上。
「巨星、墜つ……か」
日を遮るもののない甲板で男は空を見上げていた。人々の心など知らぬとばかりの青空が広がっている。
「新時代への道を繋いだ……貴女に、感謝する」
目を閉じて女の冥福を祈る。どうか穏やかに眠れ、と。
――どこかの国、木賃宿の一室。
「ポートガス……ポートガスか……」
顔に火傷を負った青年は「くそ」と悪態をつく。
「ポートガス・D――なんなんだ、何が引っかかるんだ」
無くした記憶の鍵に触れ、青年は項垂れて頭をかきむしり唸った。
――砂漠の国に近いとある島。
朝食を掻っ込むのを止めて放送を聴いていた青年は目を丸くした。自分と同じ名字だ、と。しかしそれよりもっと気になるのは彼女の名前の方だ。
「ウタなぁ……どっかで聞いたような」
テンガロンハットをずらしてガリガリと頭を掻く。
「どこだったっけなぁ……」
いま、世界がうねる。
騒乱が産声を上げる。
ありとあらゆる者が、三十年のまどろみから――目を覚ました。
ここまで書いておいて言うのもなんやけどな?
ここから始まるのごちゃごちゃの戦争、書ききれる気がせんわ……。無茶や……。無理どす♡