『マナナの料理は美味しいですもー!』に殺意を覚える監視の2名 作:気力♪
という訳で、妙なタイミングで二人をかち合わせてみました。
シャナイア・リイド。そんな名前が私にある。人間が自然に生きるという『お題目』に血迷うシティの中で、戦うことを義務付けられた人間以下。
ロストナンバーズに参加して/させられてから、私の適性が長期間の隠密任務だと分かり、今こうして一人でアイオニオンを駆け回っている。
眼前に広がる、とても美味しそうな料理を目にしながら!
「……馬鹿じゃないの、私」
ロストナンバーズ*1はその性質上誰にも見つかってはならない。故に任務に持ち止めるモノは最小限で、食糧などはカロリーバーとビタミン剤だけ*2だ。
仕方がないのはわかっている。だけれども!
「せめて胡椒くらい持ってきていれば……ッ!」
監視対象が『凄まじく』美味しそうなスープとパンでしている食事にたいして、余りにもひもじい。
追跡中に拾える野草の中で食べられるモノは頭に入っている。だがしかし、それらを『美味しく』食べるには調理が必要だ。
痕跡を残せないが故に鍋で長時間の煮炊きはできない。その辺の食べれるモンスターの肉ですら、煙の出ないようにブレイド*3で焼いて塩で食べるという野生スタイルしか出来ない!
下処理をして! 獣臭さをどかしたい! なんならタレに漬け込んで甘辛く食べたい!
そんな想いが募り募って、ウロボロス一行への恨みが積もっていく(特にあの料理屋ノポン)*4
とはいえ、長期に渡ってシティのしがらみから解き放たれるこういう任務は嫌いではない。現実の見えない老害か、見えていても棺桶に突っ走る私狂いしか居ない所よりは心は楽な仕事だった。
そんなこんなでウロボロス達の監視を続けていく。
前提として、ウロボロス達は頭がおかしい。
コロニー4での1件から彼らは『命の火時計を破壊できる』という事を知った。
それからシティに向かう道を外れ、あっちこっちに寄り道してコロニーを解放し、そのコロニーの運営が軌道に乗るまで手助けをして、それから去っていく*5。そしてそのたびにコロニー特有の料理を食べ、それを応用した『マナナ式』の料理を振る舞っている。
遠目から見ただけでも、彼女の料理の腕は神がかり的なものだ。
私がもしロストナンバーズでなければ、全財産を持ってあの食卓に座ろうとしただろう。
もし彼らがウロボロスでなければ、命を奪ってでもあの料理を奪い取っただろう。今のコンディションの私なら間違いなくやる。
「いい加減交代要員来てよ……」
あんな楽しそうなグルメ旅を見ながら! 私の食事は味気ないカロリーバーとビタミン剤だけ!
心が折れそうだ。
そんな時だった。
背後から異音がした。整備不良のレウニス*6の軋みのような音。振り向いても何も見えない。
ブレイドを出して警戒を強める。取り出したのは2丁拳銃。レウニス相手にはエーテル攻撃のほうが有用だろうから。
しかし見えはしない。シティにある迷彩のような技術を警戒する。私の勘違いだったのならストレスの限界というだけの話だが、微弱な音はしているのだ。
「そこにいるのは分かってる」
ハッタリだ。全部を捨てて逃げ出したい。
「だけど、一人なんでしょ? それも戦闘できるような状態じゃない」
そうであって欲しいという願望の割合は、かなり高い
「お互い戦って痕跡を残したくないんだし、ちょっとくらい休戦しない?」
そんな私の言葉に頷いたのか、目の前の視界が歪み迷彩が解ける。
人間サイズの鉄巨人*7。このサイズで火時計がついているのは不思議な話だが、ところどころにガタが見える。
そんな機体の前面ハッチが開いて中のパイロットが現れる。年は私より下、12か13? という事は2期か3期なのだろうか。
見る限りでは顔色は悪く、栄養が足りていないように思えた。
彼女がどうしてこんな所にいる私に気付いたのか?というのを考える。そして視界の端に映るウロボロスの姿。この場所は、彼らの監視に有効なポジションだ。そしてこの栄養状態の悪さ、まさかこのガキは
単に、食事の匂いに釣られただけなのでは?
そう考えると、ふと魔が刺した。
「アンタ、ちょっとあそこの連中見張っててよ。それくらいはできるでしょ?」
「……はい、可能です」
ブレイドを変更する。小盾形状のそれは熱を操るアーツを使えるものだ。*8
その内側に水筒の水を入れて、湯を沸かす。そして手元の携帯食料をほぐして混ぜて、手元にある野草などもぶち込む。
あとは塩で調整して、雑多粥の出来上がり。
味は……まぁ、携帯食料そのままよりは幾分かマシだろう。
そうしてみると、あの子供がこちらを見ていた。監視はレウニスで行っているらしい。
「アイツらは?」
「……交代で睡眠を始めた」
荷物にあった小皿に、雑多な粥を入れて、匙を渡す。
「見張りの分」
「……2号は、何故?」
「アンタの事情とかどうでも良いけど」
「腹減ってたから、あの匂いに釣られたんでしょ? 食べたら?」
「少なくとも、私はお腹すいた」と付け加えて粥を食べる。携帯食料ほどの泣きたい不味さはないが、普通に不味い。
けれど、温かいので気分的には彼女『マナナ』の作ったスープのような気持ちになれた。……嘘だけど。
目の前の女の子は匙を動かしていく。一口食べてから、涙を流しながら食べるようになっていた。
「七号、六号、みんな……」
おそらくだが、仲間でも失ったのだろう。そんな激戦を超えて、ボロボロの機体で一人歩いて、こんな所に来た。
そういう重いのを、匂わされても困る。
私はロストナンバーズとしての仕事のために、彼女をそのままにはしておけない。
私の実力的に考えるとこんな特殊部隊のレウニス乗りを殺せるかと言われれば否であるのだけれども。
目の前のウロボロスは、時間が来たのかガタイの大きいのと小さな気の弱そうな奴が見張り役になった。
私は隣のコレの警戒をしなければならないので眠れない。ウロボロスが明日夜通しで動くとかになったら地獄を見るだろう。
「とは言ってもねぇ……」
草臥て眠った姿を見ると、殺意は湧いてこない。明確に敵なら迷わないが、こんな小さいのだから同情の心くらいは湧いてくる。
どうしたものか、と悩ませていると『瞳』に通信がやってきた。
「こちらシャナイア、どうぞ」
『シャナイア、すまないが交代要員にトラブルだ。ウロボロスの監視は当分一人で行ってくれ』
「
『助かる』
果たして本当に問題なして通して良かったのかは甚だ疑問だが、それもどうでも良いだろう。
こうして外の世界にいる限りは、『どこで死ね』とは誰にも言われないのだから。