『マナナの料理は美味しいですもー!』に殺意を覚える監視の2名 作:気力♪
『ロープスライド』という技術がある。
ワイヤーの上でバランスを取り下方向に滑って移動するもので、橋をかけられない地形の多いアイオニオンではそこそこに使われている進軍の方法*1だ。
アイオニオン各地にあるワイヤーの射出機のうちいくつかはロストナンバーズが作ったものだったりする。ケヴェス、アグヌス両軍で使用している機械が同じなので、勝手に置いても『敵軍が設置したのか』で終わるためにシティの資材調達のにも役立っているのだ。
当然ロストナンバーズの必修技能であるため、私も使う事はできる。
……それとやりたいと思う事は、当然別の話なのだけれども。*2
そんなロープスライドはモルクナ大森林を抜ける為には必須であり、ウロボロス達を追いかける為に私たちは色々と頑張った。レウニスの廃材から鉄騎兵用のロープスライド補助装置を作ったり*3
そんなことがありつつも、私たちはウロボロス達を追跡できていた。
「シャナイアー、このキノコ食べれそう?」
「あー、これネムリダケだな。食えるけど眠りの毒がある。非常時以外食べたくはない奴だね」
「……美味しいの?」
「……結構美味い」
「荷物に入れておくねー」
「分かるように仕分けてね、頼むから」
現在、ウロボロス連中はモルクナ大森林上層を進んでいる最中だ。
シティの情報にはなかったが、このあたりには『コロニータウ』というアグヌスのコロニーがあった。畑を作ることをはじめとして色々な事をやっていたり、『死ぬときは死ぬ』というような気風?もしくは死を受け入れている寛容さ?を持っている不思議なコロニーだった。あのコロニーについてはうまく言語化できないので報告書を作る時に面倒になりそうだと今から不安である。
その生活スタイルから火時計の残量はみそっかすのようだった*4が、本人たちはさほど気にしておらず、ウロボロスに火時計を壊された後もそこまで大きな変化はなかった珍しいコロニーだ。
もっとも、変化が生まれるのは外に出ていった連中が技術なり思想なりを持って帰ったときだろう。未来のコロニータウは価値観の違いによる内乱で滅びるかもしれないが、私にはには関係のない事だ。
……当然ながらここでも料理の鬼神マナナは料理を学んでいた。次の野営の際に振る舞われるだろう新たな料理が正直恐ろしい。
と思っているとウロボロス達は拠点を定めて、早速野営の準備を始めていた。
そして、さっさと食糧が集められ、作られるスープ料理と美しいサラダ達。
今回のメインはこのモルクナ大森林で取れる野菜を多く使ったサラダである。シシキピーマンやキノウアシタバなどをしっかりと処理してモモンマンゴーを添えたものに、ドレッシングをかけたものだった。
健康的で、美しく、かつ美味しい。冒涜的な香りはないので私たちに影響は(比較的)少ないが、遠目に見ただけで見た目から食欲をそそらされている。
「シャナイア、野菜の在庫あったっけ?」
「今日拾ったのだけ。ビタミン剤あるからって後回しにしすぎたかぁ……」
「やっぱ鉄騎兵改造して冷蔵庫取り付けようかなー。余剰スペースできちゃったし」
「……お前は自分の命が野菜冷やすのに浪費されてていいのか?」
「今日美味しいモノが食べられるなら良いかなぁって思うようになってたり」
「……あからさまにダメになってやがる」
二号の乗っている鉄騎兵。メイン動力である火時計エンジン周りはいじれないが、関節などを『拾ったジャンクパーツで』補強できるように余裕を持たせた結果、運動性3割減少、格闘性能5割減少、居住性5割上昇という大幅な改造が行われた*5
透過迷彩を使える以外原型ををまともに残していない、悲しい貧弱レウニスと成り果てているこの鉄騎兵はきっと心の中で泣いているだろう。レウニスに心などないが。
とはいえ冷蔵機能があるかどうかというのは今の私たちにとって重要であるので、本格的に搭載できるか考えていると、異変が起こった。
ウロボロス達の寝つきが、やけに早い。
「……ねぇ二号、連中って寝る前にトレーニングだの日記だのハーブティーだの色々やつてるよね」
「そだね。慣れないモルクナの森で疲れたんじゃない?」
「それにしたって見張りすらいないで全員寝るか?ケヴェスだのアグヌスだのが見つけたらあいつら死ぬぞ」
「あれ?シャナイアってウロボロスが死ぬの反対なの?なんか6人しかウロボロスなれないーとか言ってたじゃん」
「……いや、流石にあの連中みたく化け物連中と進んで殺し合うような生き方は無理でしょ、あの力は欲しいけど、世界の希望だとか押し付けられるのは御免だよ」
そして二号には言わないが、私はウロボロス候補生だ。何故だ知らないがそこそこ高位についてしまっており*6あの中に死人が出るとわたしにウロボロスが押し付けられる可能性はゼロではない。
もちろん、『ウロボロス・ストーン』が新たに見つかったらの話なので確率はゼロに近いけれど、ゼロではないのだ。
そんな恐ろしい未来に、私は行きたくない。
「……まってシャナイア。今ならさ、盗みに行けそうじゃない?」
「おい二号、まさかアンタ!あの料理ノポンの『調味料』をくすねるつもり?」
「深い眠りについてるよ、奴ら。だから鉄騎兵二号機なら行ける!」
「お前ソレ弱体化してんだろ!アンセルに絡まれて腕が回らねえとかで喚いたの忘れてない?」
「……問題ない!」
「今言い淀んだの問題あるって認めたからだよな?食欲に負けてんじゃねよ」
「人のこと言えるの?シャナイア」
そんな二号の言葉に返せるものはない。この任務についてから私は食欲に負け続けているのだから。
そんな風に言い争いしていたのが原因なのか、私たちの作った食事の中にネムリダケが混入していることに気付かずにぐっすりと眠りについた私たち。
起きた時に彼らの姿が見えず、遠くで激闘の音だけが聞こえたあの時は流石に血の気が引いた。
だがしかし一つ言えるのは
夜中にくすねた『マナナのドレッシング』を使って食べたサラダは、きのこも含めてとても美味しかったということだ。*7
ターキンがノアくん達の食糧だけを奪ったのは何故か?という所からの妄想です。原作の方だとシャナイアのメンタルボロボロでしょうから違うとは思いますけれど。