『マナナの料理は美味しいですもー!』に殺意を覚える監視の2名   作:気力♪

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活き魚のツルギパッツァ

 私は対空防御の対処を行った。

 特に変わりはなく、私のお仕事は何もなくキャッスル襲撃は終了した! という事になった。

 

「はい、解散」

 

 昨晩の重たい雰囲気はどこへやら、仕事を済ませてでなぁなぁで終わり。肩透かし感が半端じゃない。

 

「結構気合入れてたよね、シャナイア。二号と今生の別れになるとか思ってたり?」

「思ったよ悪かったな」

「素直だねー」

「うっさい」

 

 当たり前の事実として、キャッスルのような大型施設にカチコミを仕掛ける時に歩兵は大した役割を持たない。レウニスの高速機動での一撃離脱が最も強い上に、作戦目的は撤退支援と『ゆりかご』をかっぱらう事なのだから。

 

 

 現地に先行で入っている私のような潜入監視員が大作戦の主要部分に関わることはあまりない。感動的な話に流されてみるべき現実を見ないのは、力の無駄使いだろう。

 

 

 空からの奇襲を読まれていて対空防御を固めた所を潜入して無力化する! とかそういうのはウロボロスなりのお仕事で、私は十把一絡げの一般兵。そんな英雄譚の一節が生まれる訳ないのだ。

 

 

 

 このように、大きく何も起きないままに私たちの転機は通り過ぎた。ドラマチックな事はなく、自らの戦いの結果が世界に与える影響もない、そんないつもの感じだった。

 

 


 

『この際だからシティまで歩いて帰れ』という悲しい命令からウロボロス達の監視を続行。空挺レウニスにピックアップされなかったので、二号とももう少しだけグダグダできる。

 

 

「それで二号、やりたい事は決まったの? アンタ」

「……一晩眠って考えたけど、やりたい事とか全然ないや」

「どっかのコロニーにとかに行くってのは?」

「正直面倒だなぁとか思ってたり」

「ものぐさめ」

 

「で、さ。シャナイアは一緒に来てほしくないって言ったけど、私の頼れる人ってシャナイアしかないんだよね。アイオニオンを一人で彷徨うよりは、シャナイアといた方が楽なんだけど」

「そうは言ってもさ、二号はロストナンバーズも殺してるんだろ? 顔とか知られてたら面倒臭いよ?」

「……もう半分くらいスクラップだし、コレ(鉄騎兵)ほっぽって良いかなって思ってたりもするんだ」

 

 当たり前だが、鉄騎兵の中の搭乗者の姿は見えない。なので鉄騎兵がなければしらばっくれられるという可能性は十分にある。

 

 

 ……ロストナンバーズにも『やむを得ず』現地に協力者をつくる権利はある。とても面倒臭いが、なんか上手いことこじつけてみよう。

 

「鉄騎兵、どこに隠そうか?」

「パーツバラして火時計だけウロボロスに壊してもらおうのが早いかも」

「あー」

 

 見ていたところによると、かなり人の良い集団な連中だ。火時計をぶった斬るくらいなら快くやってくれそうな気はする。

 

「……てかさ、その機体そんなボロボロだったっけ? 関節周りとか音が酷いよ?」

「騙し騙し使ってきたからねー」

「……ま、いいか。大剣の大地は結構入り組んでるから適当に捨てても問題ないだろうし」

 

 しかし、本当にどうしよう。

 誰に話を通せば一番楽に済ませられるだろうか。トラビスさんだろうか? 

 


 

「お疲れ様、二号機」

 

 ガタガタに崩れた内装を騙し騙しで歩かせて、大木のウロのなかに鉄騎兵を隠す。

 二号が好き勝手にやれたのはこの子のおかげだから、いつかちゃんと治してあげたいとは思うけど、未来はそんなに明るくない。

 

 シャナイアに振られていた任務は、対空網の無力化。長い間追加人員が送られてこないあたりからなんとなく察していたけど、シャナイアは死兵みたいに扱われてる。実力を評価されているから一人にされているんじゃなくて、死んで欲しいと願われているから*1だ。

 

 シティって所の事に害をもたらすから? 私みたいなのを庇っているのを知っているから? 理由はわからないけど、シャナイアにとってはこの単独任務だって安らぎはないんだと思う。

 

 私は、死んでないだけ。七号との繋がりがなくなったのは、そういう事だと思ってる。だからコロニー0にはもう心残りはない。

 

 だから、シャナイアの為に頑張りたいって思った。いろんな料理を食べたけど、初めて渡されたあのお粥の暖かさは覚えている。

 

 シャナイアにとっては計算だらけの小賢しい事だろうけれど、私にはアレが嬉しかった。

 

 だから鉄騎兵のステルス機能をフル活用して、騙し騙し使えば大丈夫だった機体のリミッターを解除して、どうにか敵を倒していた。

 

 そんな私が勝手に決めた戦いは終わり、鉄騎兵は壊れてしまい、頼れるものは小さな私の体だけ。

 

 ただ、足取りはどこか軽かった。

 

「行くよ二号。素直に通れるかは微妙だけど、ミチバ食堂で奢ってあげる」

「⁉︎それ、美味しいの?」

「かなり美味しい」

 

 

 それからまぁ色々あった。シャナイアが黙っていた事は大問題だったし、中には入れてくれたけど、シティの人達からの目は暖かいモノじゃなかった。

 

 だけど、食堂で食べた活き魚のツルギパッツァからは、幸せの味がした。

 

 

*1
ウロボロス候補生が死ねば、順位が繰り上がり名声を得ることができる。そういうのが理由だろう




とりあえず一区切り。
二号もシャナイアもシティを見る目にバイアスをかけています。
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