話が長い(当社比)ですけど映画のネタバレしてるだけなんで読み飛ばしても支障はありません。ホントダヨ?
──エレジア
「君はたしか…レコーくんだったか、こんな夜中に何をしていたんだい?」
こっそりと城に戻ると、声をかけられた。今が真夜中なこととサングラスをかけてることもあって、
「夜風に当たりに…。探し物もあったんだけどね、さすがに月明かりだけじゃあ少し厳しかった。…そういうゴードンさんは? 眠れないのかい?」
「あぁ…、そうだね。ウタがルフィくんと仲がいいのを見ていると、私と二人きりで10年もここに暮らしていたウタは、同年代の友達が少ない、というかいないことに──前から思ってはいたんだが改めて──気付いてしまってね。私はやはり間違えていたのではないかと考えているとどうにも眠れなくて…」
「その通りだよ」
言葉を遮られたからかこちらを見て呆然としているゴードンに、はっきりと伝えてやる。
「君たちの選択は、その場では最適だったかもしれないが、今となってはもう間違いだ。……ウタはまだ寝ているかい? 外にでも出て話そうか。君も、聞かれたくはないだろう?」
話をするのなら、と自室へ招いた。失礼するよ、とベッドに腰掛けた少女を見てなぜこの少女は秘密を知っているかのような態度をとるのかとバレないように警戒する。出した紅茶は普通のものだが。紅茶を一口飲んでから、少女は口を開いた。
「さて、前提条件としてだが……。私は10年前に起きたことの顛末をすでに把握している」
…すでに知っていたというのか。彼らは誰かにおいそれと話すような人物ではなかったはずだが…。
「言っておくが、赤髪たちから聞いたわけではないよ。……まぁ赤髪たちの人となりを知っている者なら“何か事情がある”くらいの推測はできるだろうし、私もそこが出発点なわけだが。私の場合は、まぁなんというか手段が特殊でね。……ここを探索してわかったんだ。この国を滅ぼしたのは赤髪たちではなく一つの怪物だったこと、その中に彼女がいたことに」
そんなバカな…!? たった一日探索した程度でわかるはずがない…! 凄腕の歴史学者であってもウタの関与はわかるわけがない! この国を滅ぼしたのは彼女ではないのだから! 動揺を顔に出してはいけない…!
「…話を続ける前に私の話をさせてもらうよ。私もウタと同じく悪魔の実の能力者でね、とはいっても普段は何の役にも立たないんだが。…私はレコレコの実の記録人間。自分が見聞きしたことを記録したり、あるいは様々なものからそこで過去何があったかを読み取ったりなんかができるだけの人間さ」
まぁ言葉だけじゃわかりにくいだろうし実演しようか、と立ち上がった少女は机の上に手を伸ばす。…それは、私の羽根ペン。
「普段文字や楽譜を書くのに使っているこの羽根ペンは……へぇ、ウタからの誕生日プレゼントなんだ」
「あぁ、5年前にもらったものだ。それまでにも誕生日プレゼントとして料理を作ってくれたりもしていたが、形に残るプレゼントとしては初めてだったのでね。…とても嬉しかったのを覚えている」
話題が変わったのもあってそんな思い出をしみじみ語っていると、突然部屋の壁に映像が映し出された。そこには、今より少し幼いウタの姿があった。
『ゴードンへ。誕生日おめでとう。いつものお礼に今日はこのペンをプレゼントします。ホントはゴードンがいつも飲んでるお茶にしたかったけどよくわかんなかったのでやめにしました。…いつもありがとね』
「いい子だね。君が慕われているのがわかる」
かつての誕生日と同じ言葉を話しプレゼントを渡すウタと、それを受けて崩れ落ちる私の映像を見ながら、少女が感想を述べた。映像が終わり、部屋が少し暗くなる。
「…とまぁこんな風に、私は過去の出来事を知る手段がある。色々と制約はあるがね。想いが詰まったものや場所でないと何も読み取れない、というのはその最たるものだ。おかげで島を歩き回る羽目になったよ。だが、おかげで当時のことがわかった」
少女が小さく壁に手をかざすと、また映像が映し出された。
……その内容は、『あの日の出来事』だった。
「まずは港で、赤髪たちに置いていかれるウタ」
あぁ、やめてくれ。
「かつての街で、国を滅ぼした怪物、対峙する赤髪たち」
振り返る必要はない。
「コンサートホールで、国民に歓迎されるウタと、彼女が古い楽譜を読んで呼び出してしまった怪物」
『あの日』のことを、忘れたことなど一度もない。
「城から少し下りたところで、赤髪と密約を交わす君と、目を覚まして城から出てきたウタ」
これは、私の────罪なのだから。
「…落ち着いたかい? すまないね、ここまで思いつめていたとは…。私の想像が足りてなかった」
少女が淹れなおしてくれた紅茶を飲んで、心を落ち着かせる。あの日の過ちを、私が未だに抱え続けているだけだ。君が気にすることはない。
「…私は当時何があったかはわかっても、当時の人がどんな思いだったかはわからないんだ。言ってしまえば、所詮は他人事なわけだからね。だから君に聞くことにした。ゴードンさん、君はどうして10年もの間ウタを一人で育て続けられたんだい?」
…国を滅ぼしたとはいえ、あの子には何の罪もない。罪があるとすれば、それは私だ。『あの日』、ウタの歌声を国民皆に聞かせようと拡声器のスイッチを入れてしまったこと。ここには『魔王』─トットムジカ─が封印されているのを知っておきながら、今まで封印が解けたことなどなかったからと油断していたこと。…………赤髪に、全ての罪を被せてしまったこと。どれも私の失態だ。だからこそ、任された彼女を私が育てることで少しでも罪滅ぼしをしようとしたのだ。…ただの、大人の汚いエゴだよ。
「贖罪か。君たちは本当に不器用だね。…私はね、その時の君たちの選択
……本当のことを話そうとしたことはこれまでに何度もあった。しかし……そのたびに何も言えなくなってしまう。ただの一度もできなかった。彼女を赤髪たちから離ればなれにさせてしまったのは私だ。今さらどうして伝えられようか。
「…まぁ二人っきりで暮らしてたら嫌われるのは怖いよね。私が言いたいのはそういうことじゃないが。…魔王、だったかい? あの怪物のことを伝えるのは別に今じゃなくてもかまわないんだ」
嫌われるのが怖い、か…。そうかもしれないな。真実を伝えることではないのなら、守らないというのは…?
「ウタを外の世界に出す必要がある、ということさ。君が老衰や病気なんかで死んでしまったとき、今のままのウタに生きていく力なんてないだろう? 社会に…世界に、ウタを溶け込ませなきゃ。そうして実際に人々と触れあって、成長して…。彼女の歌姫としての価値は、神秘性がなくなれば多少下がるかもしれないが。…それにもしかしたら、ウタもいつか当時のことを受け止められることができるようになるかもしれないしね」
……今に精一杯で、私が死んだあとのことなど考えもしなかった。…………私は、ウタのことを案じているようで、その実自分たちの都合ばかりを押し付けていたのか…。なんとも情けない…。
「君が情けない生き物なのは、これまでの問答からも明らかだろうに。それで? ウタがこの島を出ることを認めてくれるかい?」
……あぁ。その方が彼女のためにもなると言うのならば
いや、待て。
…………もしや、これまでの会話は全てこのためかい?
「ここで何があったか気になったのも、君たちの対応に腹が立ったのも事実だが……まぁ一番の理由はそれだね。白馬じゃなくて海賊船に乗ってるけど、せっかく王子様が迎えに来たんだ。お姫様は連れて行かれなきゃね」
それだけのために私は過ちを突き付けられたのか…!
ハハハ…!
……いい機会だ。ウタのことをよろしく頼むよ。
「…はぁ。ウタのマネージャーも乗せることになるからそのつもりでね? あと、これはもらっていくよ」
!!!???
さて、寝ますか。…あぁ、船長には内緒で頼むよ。
「……了解」
これでルフィが船に誘わなかったらただの無駄骨だね
わたしに秘策があるんだ…!ふっふっふ…