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と言う事で、ヨハンは宿で二通の手紙を書いた。中央教会の知人宛と、アシャラの冒険者ギルド宛。ヴァラクの傭兵ギルドにも送ろうかとは思ったのだが却下した。ヨハンの方に積めるものがないからだ。多分危ない相手だし報酬もどれだけ積めるか分かりませんが、命がけで手を貸してください……そんな事を言ってくる奴がいたらヨハンなら生きたまま子鬼共に貪り食わせる。自分がやられて腹の立つ事を他人にやる気はなかった。
中央教会は問題ない。詭弁になるが、連中の仕事を手伝ってやっているとも言えるからだ。ただ間に合うかどうかは怪しい。速やかに動いてくれるかどうかも怪しい。冒険者ギルドの方は大丈夫だろう。なんといったって地元の問題である。手紙を直接渡せるし、アテにするならギルドの方だとヨハンは踏んでいた。だがヨハンは所詮新参者に過ぎない。だからヨルシカの威光を利用する。彼女はこの街の認可冒険者だと言うのだから。
随分忙しくなりそうだった。
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「……そういうわけなんだ、ヨルシカ。ついてきて欲しいのだが……」
ヨハンは少し疲れている様子だった。休んでいかないかと言いたかったけれど、ヨルシカは言い出せなかった。無理しなければいけない場面というのは必ずあって、今がきっとそれなのだろう。ヨルシカにとっても他人事ではない。事はアシャラに関わるのだから。ただ、死刑囚を用意する事は流石に断わった。というか、平民のヨルシカがそんなものを用意出来るわけがない。
「いいかいヨハン! 死刑囚っていうのはいつでも殺していい囚人って意味じゃないんだぞ」
ヨルシカがそう言うと、そうだったのか、と彼は言った。この男には倫理観がない。
兎に角ヨルシカもあれから、王宮の見知った侍女や役人に話を通して、なんとか父親との接見を決めることができた。ヨルシカの身分は平民なので、いくら父とはいえそう簡単に会える訳では無い……が、認可冒険者という称号はそれなりに役に立ってくれた。これはいわば都市を代表する冒険者という意味である。
ヨハンの頼みには当然是と答えた。アシャラ冒険者ギルドが力を貸してくれるなら確かに心強い。彼は交渉上手だからきっとうまく話を付けてくれるだろう……と思いながらも、また何か突拍子もない事を言い出さないかという不安がヨルシカの中から消える事はなかった。
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案外あっさりとギルドマスターと会えそうだった。まあギルド側も危機感はあるのだろう、とヨハンは思う。認可冒険者まで連れてきた情報提供者なら話を聞かずにはいられまい。
「上級斥候共を駆り出している位だからな。このギルドも何かしらのネタは掴んでいたんだろう。上級斥候はラドゥの所にいたカジャみたいな奴等だ。ほら、そこの天井裏にも隠れてるぞ」
ヨハンがヨルシカにそう言うと、案内の職員がぎょっとした顔で振り向いてきたので、ヨハンはニヤリと笑って頷いた。当てずっぽうである。まさか本当に隠れていたとは彼自身思っていなかったし、気配など全く感じ取れていなかった。まあ当然だろう。ギルドマスターの身辺を護る者の一人や二人は居てもおかしくない。案内の職員が木製の重厚なドアを叩く。
『入りなさい』
深い所から響いてくる、そんな印象の声が返って来た。
「グィル・ガラッドだ」
目の前に立つのは老人だった。奥にも一人老人がいるが、書類整理などをしている。秘書かなにかだろう。いかにも学者然とした物静かそうな老人だったが、耳の形が明らかにヒト種ではない。エルフか、とヨハンが思ったところで、
「ハーフだ」
と老人は言った。心の声を読んでいる……わけではあるまい。ヨハンがそう考えるより早く、老人は続けた。
「何となくだよ、ヨハン」
ヨハンは早々に白旗をあげた。表情だとか雰囲気だとか、何となくで読まれている訳である。ヨハンも何となくで相手の性根を視たりするから分かる。ああいうものは説明が出来ないのだ、やっている当人にも。
「お見事です、ガラッドギルドマスター。私の事をご存知の様ですね」
「グィルで良い。知っているとも。君はルイゼと同じ
洞とはエルフの言い回しで、派閥、組織、グループを指す。ならばこの老人はルイゼの、とヨハンが思い至るのとグィルが口を開くのは同時だった。
「短い期間だが彼女に術を教えた。限定的ではあるが、私は彼女の師とも言える」
そうか、とヨハンは一気に親近感が増してしまった。こういう所がちょろいだのなんだのと同僚からからかわれる原因なのだろうと本人も自覚はしている。
「では彼女も俺の一分野における師なので、グィル、あなたは私の
グィルはふっと笑い、頷いた。
「そうだな。限定的ではあるが」