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横薙ぎの一撃を、ヴィリは跳ねてかわした。
──空兎剣ラヴィリス
空中を蹴り、蹴り、蹴り。後頭部っぽい場所を剣で一撫でする。全然堪えていない様だけれど、ヴィリの方もなんだかやる気が出ない。彼女の術はこういう時、あんまり強くないのだ。
(やっぱりヨハン君にも手伝って貰おうかな……って……んー? 仲間割れ?)
事情を聞きたいけれど、ちょ、っと、この、でっかいのが。邪魔。馬鹿。
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術腕の手首を握り、ぐっと内向きに回す。
「面白い玩具だ」
ふん、とグィルが嗤った。
「俺が死んだ場合、死体は
ヨハンがそう言うと、馬鹿な真似を、とグィルはやや警戒した様子を見せた。
「嘘だ、グィル」
グィルの目がやや険しくなる。苛立ったのかも知れない。
「だが……グィル。俺は貴様の術の業前は俺よりも上だと思っている。そんな俺が何も策を打たずに殺し合いの火蓋を切るだろうか?」
ヨハンは人差し指を一本立て、にやつきながらグィルへ尋ねる。まあ切ってしまったのだが、この辺は自分のせいではないとヨハンは思っている。
「ヨハン、君の話を聞く事はやめにするよ、今すぐ死になさい」
グィルが指を三本立てた。その指がヨハンの方へ向けられる前に、ヨハンが人差し指を向ける。
──爆炎弾
グィルが目を見開く。だがもう遅い。指に灯った火種はみるみる内に膨れ上がり、巨大化し、グィルの元へぶっ飛んでいった。
「מַחסוֹם……ッ!」
グィルが何事か呟くと半透明のヴェールの様なものが一枚二枚と展開されるも……やはり遅い。火球は障壁が形成しきる前に着弾し、大爆発を起こす。
「う、うおおおおお!」
ヨハンの叫び声である。ちょっと着弾点が近かった。交戦中のヨルシカとシルヴィスは一時殺し合いをやめてぽかんとしていた。
「ぐ、う……な、なぜ……詠唱は……していなかったはず、だ……」
煙の中から全身に火傷を負ったグィルの姿がよろよろと現れる。
「していたとも。貴様が間抜けだから気付かなかっただけだ」
爆ぜる 魔 弾 特 行き て そ を 殺 き 焦が せ。はぜる ま だん とく ゆき て そ を やき こが せ……ってね、である。詠唱とは時には堂々と朗じ、時には会話に潜ませるものだ。恐らくグィルは殺し合いが上手くない。最初はちょっと厳しいかと思っていたが案外いけるかもしれない、とヨハンは踏んだ。だがもう少し挑発しておく。念の為だ。
「グィル、術の業前は貴様の方が上だったとしてもだ。殺し合いが俺より上手い術師はそうはいないぞ。ところで、いつまでエルフェン面してるんだい? 別にもう正体を言ってしまってもいいんだぞ。ちなみに、これは余談なんだが、俺が前に殺した魔族もお前みたいに手玉に取れたよ。魔族殺しは楽でいい! 人間の様に策を巡らせて来ないからな。その魔族は女だった。四肢を引き千切って揚げてやった! 旨かったよ。お前はどんな味がするんだろうな」
魔族殺しは糞大変で二度とやりたくない。そして魔族を食べた覚えもない。ただの嫌がらせだ。
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ヨハンがまともに戦っている所を、ヨルシカは初めて見た気がした。