永禄3年(1560年6月5日)
今川が準備を終え尾張に向けて出陣
対する織田は籠城を主張する者と一か八か打って出るべきだと言う者で二分していた
既に前哨戦として織田は鳴海城を囲むように5つの砦をコの字の形になるように築いていた
北から丹下砦、善照砦、中城砦、丸根砦、鷲津砦である
このうち鷲津砦と丸根砦は今川方の大高城との連絡路を遮断するために作られた砦であり、戦いの鍵となってくる場所である
今川領内に築かれた砦の5つが陥落する前に今川軍を止めなければ織田領内に侵入されてしまい、そうなると独自勢力となっている伊勢神宮は今川が優勢と見るや裏切る可能性が大きく、信長は今川と尾張の狭間で撃退させなければならなかった
その為籠城は論外であるのだが、重臣達の意見は3万という軍勢は長期戦の為に大量の物質を消費してしまう
冷害の可能性が高い現段階で長期戦となれば今川は引かざる得ないだろうというのが予想である
これを柴田や佐久間、丹羽等が支持し、馬廻り衆達は反発したが、重臣達の方が発言力があり緩やかに籠城へと意見が傾き出した6月12日早朝……丸根砦、鷲津砦が今川方より攻撃を受ける
丸根砦を攻めているのは松平元康(徳川家康)であり、大高城への兵糧を送る任務を完了して返す刀で攻勢に出ていた
「信長様! 砦の兵を引き上げ籠城を行いましょうぞ! さすれば5000は集まり勝負になりまするゆえ」
「……重臣も3万の軍勢を前には知恵の鏡も曇るか……もうよい!」
「「「信長様!?」」」
信長は軍儀から退出し、家臣達は織田はここまでかと落胆した
「滝川、ロンメル情報を纏めよ」
「津島十五家は信長様に味方するべく準備を完了しています。熱田は馬廻り衆で熱田神宮宮司の千秋季忠が熱田筆頭の加藤を説き伏せ織田方に味方すると熱田神宮にて信長様のことを待っております。学徒出陣の準備も完了しており召集をかければ1200名の生徒と教員が参戦致します」
「今川の動向でございます。沓掛城の今川義元本体に動きあり、ゆっくりと大高城に向かっているとの事」
「釣れた! 動くぞ! 熱田神宮にて待つ! 着いてこれぬ者は置いて行く」
「「は!」」
信長は敦盛を舞っている間にロンメルはその足で津島の学校に直行し、出陣を発表
「合流地点は熱田神宮! この一戦で織田の趨勢が決まる! 命を掛けよ」
「「「おぉぉぉぉぉ!!」」」
津島衆、学徒を引き連れロンメルは熱田神宮に向かい、熱田神宮に到着する頃には織田の兵力は3000まで膨らんでいた
この動きを察知した義元は軍を各地に分散させ善照砦から来るであろう信長を半包囲からの殲滅ができる体制を整えつつあり、義元に油断は無かった
「余と勝負じゃ信長」
義元はこの時信長が奇襲を仕掛けてくることも読んでおり、戦上手な兵を分散させたことで本体を囮とした
その本体は海道一の弓取りと評価されている策士今川義元
信長は善照砦に入ると高所故に今川の動きをある程度知ることができた
「奇襲に反応するのが今川義元ぞ」
「奇襲を行ってくるのが織田信長ぞ」
「信長様、熱田衆をお使いください」
「千秋季忠すまぬ」
「いえ、信長様の為に死ねるのであれば本望でございまする」
信長が取った作戦は二段奇襲
奇襲を二回行うことにより今川義元の本体を探し出し、そこに奇襲をかけるというものであった
勿論最初の奇襲を行う者は死ねと言っているのも同意儀であり、熱田衆が信長に見せた忠誠の証であった
可愛がっていた子分の千秋季忠は確実に死ななければならなかった
熱田神宮宮司である彼が死ぬことにより今川義元は伊勢神宮よりも熱田攻略を優先しなければならないのだ
宮司を討ち取るということはそれだけでその町は支配を受け付けない
長期戦になれば破綻する義元にとって熱田掌握が手間取れば尾張掌握全体が長期化するのが必然であり、そうなれば三河争乱の再発、いや尾張と三河が同時に国人一揆が発生する可能性すらあり、そうなれば今回の遠征事態が全て無駄になる可能性すらあった
信長も保険をかけており、奇妙丸及びロンメルの子息を別々の場所に隠し、この戦が負けた場合国人一揆に発展した時に担がれやすい様に整えていた
ロンメルの息子達は津島衆に、奇妙丸は柴田勝家が守っている
こうして千秋季忠率いる熱田衆約300が今川方に特攻、これに奇襲を警戒していた義元は素早く反応し壊滅させる
信長の計画通り義元は千秋季忠を討ってしまったことで大高城を拠点に尾張侵攻計画を変更して分散させた兵も含めて尾張侵攻を優先させた
この計画の変更が義元の致命傷となる
この計画の変更により今川本体は鳴海道を進まざるえなくなり、この道は沼地が多く大軍が通るには不向きな道であった
更に
「何? 雨が降りそう……これ以上この道を進めば雨で更に道が悪くなった場所を行軍することになる……となると甲冑や武具を着た者が足を取られ溺死する可能性もあるな……引き返すわけにもいかぬ。桶狭間山にて休憩といたそう」
急な計画の変更、天候の悪化、進路の変更……全て要因が信長に味方した
「信長様! 槍の不揃いな部隊を見つけました! 中央より2隊後ろの部隊です!」
「嘘なら磔、本当なら城をやろう」
「本当です! 鎧の質も良いものばかりでありました!」
「ならばよし! 場所は桶狭間山! 全軍狙うは義元の首のみぞ! 他は捨て置け……かかれぇ!」
雹混じりの大雨の中信長は善照砦から今川本体のいる桶狭間山に近づき、雨が上がった瞬間に奇襲を仕掛けた
雹混じりの大雨の為足音及び姿を見失った今川の各分隊は義元の本体に危機が迫っていることに誰も反応できなかった……いや1名だけその危機を読んでいる者がいた
「全ては三河奪還の為に」
松平元康である
彼は水野氏に通じており、水野氏経由で織田の情報を知りながら握りつぶしていた
義元が死ねば三河の岡崎城に戻さなければ織田を止める者はいない
三河にさえ戻れれば幾らでも策を講じる事が可能であり、この時を千載一遇の機会ととらえた元康は義元が死ぬことを望んだ
勿論信長が殺られる可能性もあるので元康は丸根砦から中城砦に向かって進軍するふりをしており、大雨で停滞したが、予定どおりの行動をしていたと言い訳を用意していた
それよりも義元が分散配置させた分隊が全てすり抜けられた事が大問題であり、責任はそちらにあるという材料も用意していた
この分隊を全てすり抜けて進めた原因は義元の計画の変更が一番大きいが滝川とロンメルが合同で雇っていた忍衆による活躍が大きい
事実ロンメルは半乃助以外長期契約止まりであった忍衆みなに土地を与え家臣に組み込む事となる
「これは兄上では美濃は任せられませぬは……才が違いすぎる」
斎藤利治は信長の馬廻り衆と一緒に一兵士として参戦しており、信長の戦場、天候、敵の動き、味方の忠誠心までも利用した戦略のスケールの大きさに圧倒されていた
槍を振るい敵を倒しながら必死に信長に着いていく
「この人ならば本当に天下を見れるかもしれませんね」
利治は胸の高鳴りを抑えられずにいた
「利家」
「あいよ!」
ロンメルは背中を利家に任せ、今川の槍隊に突撃していった
槍隊は寸分狂わぬ連携でロンメルを叩き潰そうとするが、大太刀の腹で槍を下にずらすとそのまま踏み込んで6名の体を影月で両断する
「ひゅー! さすが論目流! 俺も負けてはいられないぜ」
「利家あんたは勝手に参加している立場ってことを理解してよ」
「うっさい! 首をあげなければ信長様は俺の事を見てくださぬ! 功を持って罪を消すゆえ」
「あっそ!」
ロンメルは槍隊が崩れた隙間からロンメルの家臣(家臣にしてくれと頼み込んできた1人)である服部一忠達を突っ込ませ、ロンメルは義元を探しながら敵陣の更に奥に斬り込んでいく
義元本体の第一陣千人は信長の奇襲により大多数が混乱の中討ち取られ、第二陣も全体を緻密に連携しながら守っていた今川方をロンメルが風穴を開けたことで崩壊
第三陣今川義元の目の前まで来ていた
義元は籠から降りて抜刀、義元とは知らずに近くにいた織田の兵士を斬り捨てた
「余自ら刀を振るうのは何時ぶりか……くっくっく、最後は信長と一騎討ちと洒落こもうかのう」
「……それは出来ない相談ですゆえに」
「……お主か妖怪。まさかここで会うとはのう」
「戦場故に一騎討ちとはいきますまい」
ロンメルが指を鳴らすと音もなく近づいた服部一忠が義元の脇腹を刺した
「ぐう!? ……気がつかないとは鈍っていたか」
「一忠離れろ、それ以上近づけば斬り捨てられる」
脇腹に刺さった槍を義元はへし折ると大量の出血をしながらも私をじっと見つめる
「のう、妖怪、余はどこを間違った?」
「強いて言うなら……焦った事だ。三河を焦って取ってしまった事だ」
「三河……争乱……か」
「無理に流民を抱え込み過ぎた。三河の民を抱え込んだことで時期を決めることができなかった……雨季に決戦を挑んだのが敗因だ。あと数年待つことが出きれば今年の冷害で三河は勝手に自壊し、織田は美濃に目を向けなければならなくなっていた……」
「そうか……焦り……か……師が居なくなり……焦った……か」
「これ以上苦しませるわけにもいかぬであろう。介錯する」
ロンメルがそう言った瞬間に横から誰かが義元の首を跳ねた
「毛利良勝! 今川義元討ち取ったり!!」
その光景にロンメルは冷めた目で少し見た後、近くに迫ってきていた松井宗信隊に単独で突撃し、松井宗信とその馬廻り全てを討ち取る
その一角だけ血の池ができており、その場に佇むロンメルを見た敵味方関係無く恐れおののいた
桶狭間の合戦又は桶狭間の戦いと呼ばれるこの戦による信長隊の損害は最初に壊滅した熱田衆と本戦を合わせて900ほどに対し、今川方は2700名近くが戦死してしまい今川義元、松井宗信、久野元宗、井伊直盛、由比正信、一宮宗是、蒲原氏徳等の有力な将だけでなくそれを支える馬廻り衆、一門衆、侍大将、奇親衆等を多く失ってしまう
今川の強みはピラミッド型の支配体制であり、その上の部分がごっそり居なくなってしまったのだ
今川は急速に弱体化していくこととなる
対する信長も今まで付き従って着た馬廻り衆を多く失い、学生達や教員も100名程が亡くなった
が、ロンメルが整備してきた人材育成機関学校……織田学校は失った人材を補てんするに足りるほどの人材を輩出し続け、半年で損害を回復することとなる
「ロンメル、そなたが第二陣を崩したおかげで第三陣に到達できた。更に松井宗信や数多くの武将、一門を討ち取った功績により……鳴海城城主とする。旧5砦を含めた1万石をそなたにやる。ただし校長職は解任とする良いな」
「は!」
ロンメルは城主となり、岡部元信が徹底抗戦を続け焼け野原となった鳴海城を貰うことになる
更に校長職を解任され、織田学校から人材を引っ張りだすのも難しくなりしかも鳴海城は元今川領なので民の掌握から始めなければならず頭を抱えるのだった