永禄8年(1565年冬)
中美濃攻めの功績で怪異織田家は8万石の所領を獲ることとなった
主に尾張の東側側であり約30村がその中で生活していた
特に目だった町も無く、強いて言うなら大高城跡があるくらいか
ロンメルはとりあえず元服組の息子達と黄衣を呼び出し
「黄衣以外は貰った所領から私が選んだ1村を拠点として村の開発を行わせる。黄衣も私が選んだ村にて代官をせよ」
「母上、代官補佐は勿論着けますよね?」
「うん。農業に精通した者を代官補佐とするからとりあえず村を治めてみなさい」
「縛り等はありますか?」
「特に無いけど村が終わりそうなら適正無しとして所領を私が召し上げる。いいね」
「「「は!」」」
ロンメルは息子や娘達に競争させる形で新領土の発展をさせることにした
外敵も特に居ないので内政に注力できるゆえの策だった
まず長男の一政はガキ大将として培った人脈を使い家臣達の子供や商人の倅等を集め、持ち前のカリスマで村人をすぐに従え、一丸となって開発を進めた
次男の忠輝は普通にやったんじゃ一政に勝てないと思い、ロンメルや半乃助から馬や牛を借り、家畜の力を借りて廃村を吸収しながら農地を大規模にし、田畑の大型化を行った
反対意見も出たが忠輝の調停力に優れており、村人の話を聞いた上で損が少なく利益を大きくなるように動いた
三男の右恵は学友とその親に協力を仰ぎ、無難に村人に無理をさせること無く代官補佐の指示のもと農地改革を行い
四男左恵は代官補佐に村を任せふらりと三河の方に向かってしまい
五男前秋は持ち前の内政能力を遺憾なく発揮し、溜め池を作ったり様々な道具を作り村人達に歓迎される
水車を使った脱穀装置や立った状態で田んぼの草刈りと土のかき混ぜができる装置(大らちと呼ばれる機械に近い)を開発、鍛冶屋等を誘致し、装置の販売で大金を稼ぎ、それを使って更に村を発展させた
一方黄衣は
「うーん、ここの土地だと田んぼを無理して作るよりも芋や養蜂、養蚕、家畜に力を入れた方が良いね! あ、三河で広がってる木綿栽培も良いかも」
なんと稲作を放棄し、他の産業にシフト
芋や蜂蜜で酒を作り家畜の販売や肥料作り、木綿の導入と形に捕らわれない変則的な村の運営に代官補佐からロンメルに報告されるが
「やらせてみなさい」
とGOサイン
黄衣は半乃助の部下で畜産に精通している者を雇ったり、ライバルである前秋にも協力を要請し、酒造の設備を整えると本格的な酒造を開始
その酒造で作った酒を一政の商人達の販売ルートに乗せることで村人達の生活レベルが跳ね上がる成果を出した
村を放棄したと見られていた左恵は駿河の今川館に居た
「お前は馬鹿か? 織田の息子が町に居ると聞いて仰天したぞ」
目の前には今川氏真と今川家臣団が座っていた
「いや、なに母上から村を預けられ発展させよと命令されたのでな。答えを探しに発展している今川領にやって来たまで」
「母上? もしかして論目流か?」
「そうですが氏真様は母上とお知り合いで?」
「なんと論目流の息子か!」
「おお、論目流殿の息子殿とは」
氏真も家臣団の皆もざわつき始める
「論目流殿は元気か」
「この前も中美濃攻めで城を陥落させるくらいには元気ですよ」
「そうかそうか! クックックッあの妖怪はもうこれ程大きな息子が居るのだな」
「大きいと言うが俺はまだ9つの小童だ。元服はしているがな」
「9つ? 嘘を申すなお前のような大きな9つの小童が居るものか」
左恵は四つ子の中では一番大きく160近く身長があった
最も兄弟で一番大きいのは一政だが
「本当だ。俺より大きな兄も居る……話は逸れたが遠州錯乱大変そうだな」
「誠に厄介よ」
遠州錯乱は遠江で起きていた国人一揆であり、今川義元亡き後に今川の衰退が始まると見るや国人達が一斉に蜂起した事件である
「まぁ義元公の仇敵の息子である俺が何も手土産も無しに来るのもあれだと思ったからな。これで勘弁してくれ」
左恵は風呂敷から飯尾連龍の首を取り出した
「こ、これは憎き飯尾! これをどうして」
「城下に降りて来てたから氏真様がとにかく憎んでいると聞いたからな。油断しているところを毒殺した後に頃合いを見て首を取ってきた」
「クックックッ……妖怪の子も妖怪と言うわけか……やめだやめ! こいつと争えば親妖怪がここまで攻めてくるわ……それにあやつ(ロンメル)は幕府から妖怪大将という役職を拝命しておる。将軍様のお気に入りだ」
「あ、まだここまで情報が伝わってないのか……将軍義輝様は暗殺されたぞ」
「な、なに!?」
「真か!?」
「いったい誰に」
「三好の確か……松永久通だったか」
永禄8年(1565年6月)に三好三人衆と松永久通が天下に響く大悪行将軍暗殺を実行
義輝公は愛刀を畳に刺し100名もの雑兵を斬殺したが、畳を持った雑兵に押し潰されその上から雑兵もろとも槍や刀で刺され亡くなられた
「衰えたか……一之太刀も永遠とできぬものだな……いや、鍛練が足らんかったか……北畠か論目流ならば完成するのかもな一之太刀は……うぐぅ!」
御所には火が放たれ灰燼となり、義輝の主だった家臣達も皆討ち死か自害し、室町幕府は空座となっていると左恵は今川家臣団に報告した
「京はその様な有り様なのか!?」
「あぁ、将軍様の親類も徹底的に殺害して回ってる。このままでは……!? 室町の序列3位は今川家ではなかったか?」
「吉良は既に力無く、となると今川家が幕府を継ぐ……」
氏真は幕府崩壊の影響を真剣に考え、そして結論を出す
「いや、駄目だな。京に辿り着くことができん。遠江、三河、尾張、美濃そして近畿……全てを打ち倒していくには亡き父の頃でなければ無理だ。今の私では所領である遠江の統治もできていない始末だからな」
「氏真様……」
「我々家臣団が不甲斐ないばかりに……」
「良い。左恵殿飯尾の首と幕府の情報感謝する。何か礼を」
「礼なら駿河で腕の良い陶磁職人を紹介してくれ。俺は領地経営を学びに来ただけだ」
「あいわかった! 岡部、左恵殿を」
「は!」
「氏真様、母上に何か伝えておく事はあるか?」
「……もしもの時は頼む友よと伝えてくれ」
「わかった」
駿河にて陶磁職人の弟子数名を雇った左恵は所領の村に戻り牛や馬の骨を使った陶磁の開発を行う
左恵はロンメルに所領を飛び出したことを叱責されるが、氏真の現状を聞くと怒るのをやめた
「左恵、皆心配したんだ。兄弟皆に謝ってこい」
左恵は勝手に今川領まで行った話をすると一政は笑った後に拳骨、忠輝、右恵、前秋には怒られ、黄衣には顔面をぶん殴られた
大雪と小雪には泣かれ、他の下の弟と妹達はよくわかっていないようだった
その後左恵は代官補佐や領民にも土下座して謝り、連れてきた陶磁職人達を中心に焼き物の村にしていく
そこで作られた茶器は美しい白い茶器に鮮やかな職人が絵を描くことで堺等で高値で取引されることとなる
左恵は氏真様のお許しで職人を引っ張ってきた事から氏真焼きと白い絵の付いた茶器は言われるようになる
将軍が亡くなったことで大きく影響を受けたのは織田信長と上杉謙信である
上杉謙信はこれまで幕府や朝廷工作に使っていたお金が無駄になり、激怒したが、内乱と武田、北条の北上により動くことができず、仲の良かった義輝の仇討ちに動くことができなかった
信長は奈良を脱出した将軍の弟足利義昭(この時は足利義秋だが)に上洛を要請し、六角、斎藤、織田の連合軍で三好の駆逐を行いたかったのだが、六角が将軍排除に動き、斎藤も形勢が不利な中で織田と一旦和睦したのだが即座に破り織田に攻撃
信長は敗北するがすぐさま体勢を整えると木下藤吉郎の墨俣築城が成功し、永禄8年の年末には美濃を掌握することとなる
西美濃平戦、稲葉山城攻めとも呼ばれる一連の戦いにはロンメルは召集されなかった
理由としては功績を挙げすぎており他の家臣達からの嫉妬が酷いことに信長が気にしたこと、ロンメルが身籠っていたので無理をさせられなかったの2つがある
ロンメルも10月頃に双子の姉妹を産み、髪色が黄色だったことから黄器と黄紙という名が信長より付けられた