「平野様、この度は黄衣と婿殿である平野長景様と婚姻をお許しいただきありがとうございます」
「いや、論目流殿は私を飛び越えて偉くなられた……この平野長治、論目流様の家臣に加えていただきたく参った。この度の婚姻をもって怪異織田家に平野家は臣従致す」
「平野様頭を上げてください」
ロンメルはこの世界に来て間もない頃に助けていただいた平野様に多大な恩を感じていたので今回の婚姻も織田家と繋がることで平野様の出世の手助けになればよいと考えてのものだったのだが、平野様は臣従を提示してきた
家格は織田家の分家であり、幕府から役職を貰っていたロンメルの方が圧倒的に高くなっていたが、ロンメルは平野様を家臣に加える気は全く無かったのだが
「この平野長治論目流殿に賭けてみたくなりもうした! 恐らくこのまま信長様が勢力を拡張していけば論目流殿は重臣となるのも時間の問題……さすれば国の1つでも得れるでしょう。今の津島十五家として津島の1豪族として終わるのも良いですが私は論目流殿に賭けてみることにした! 既に信長様には話を通している」
ロンメルは頭を抱えながらもこれを承諾し、平野長治に商人との接伴役をやって貰い、時期を見て奉行衆筆頭に就任して貰う運びとなった
ちなみに黄衣と長景の仲は最初は黄衣に振り回され続けたがそのうち慣れて互いに歩調を合わせられる良い夫婦となる
永禄10年(1567年9月)
ロンメルは信長の許可を取り鳴海城にて黒髪が特徴的な六男五郎と七男六助が9歳になったので元服となった
五郎は織田利行(おだとしゆき)
六助は織田勝成(おだかつなり)を名乗ることが許された
まだ歳が若いのと学校にて勉強中の為村開発の儀はやめておいた
収穫期を迎えたことで左恵以外の息子と黄衣を呼んで統治能力を測った結果を発表した
「結果発表~いぇぇい!」
「「「……」」」
「テンション低いぞお前達」
「時々使う南蛮語は私達息子達の前だけにしてくださいよ母上」
「ぶー、まぁ良いわ。まず評価点はお米石高と税収を合算した数値を私が治める6村の平均を100と比較して数値化しました!」
「左恵がいないが?」
「左恵は特別任務を与えているので途中離脱しています。まぁ左恵も合格点は超えているから心配しないでね……では第6位……右恵72点!」
「俺かぁ」
「流民対策に学校の分校を作ったのは評価が高いけど失敗を恐れて無難に動いた結果良くも悪くも村の成長は普通といった感じ……ただ村人に一切無理をさせなかったから村人からの評価は高かった。紡績工場を稼働に持っていけなかったからこの順位。今後はとりあえず1万石、5村を統治するように」
「は!」
「第5位……ここに居ないけど左恵79点」
「「「おおー」」」
「評価としては最初に村を放棄して駿河に行ったのは下策だと思ったけど、その後氏真焼きという特産物を3年で作ったことで3年目の税収が跳ね上がった結果この順位。ただ農地改革が不十分だったから石高はあまり上がらなかったかな」
「よし次いこう4位忠輝102点」
「100超えた!」
「おお!」
「家畜の力を利用して農地の大型化を行い、それによる不平不満を最小限に抑えたのは高く評価する。家畜から出た糞尿を肥料に加工して売却することにより副次収入も発生していたのも評価点。近くに楽市を作り流民対策もしっかりできていたのでこの点数になったと予測するよ。よく頑張った」
「ありがとうございます」
「第3位一政110点」
「ほっ」
「商人達を早期に集めることで村に投資を行えたのが高得点、最新の農法や商人経由で手に入れ育てることに成功した桃や栗はこの期間には間に合わなかったけど来年からは収穫できそう。ただ村の強引な拡張により老人衆と対立してしまったのはいただけない。今回は私が間に入って治めたけど次は無いからね……忠輝と一政も1万石からスタートしようか。家臣を雇うのも側室を設けるのも2人は自由とします。ただ無理をしていると思ったら私が介入するのでよろしく」
「「は!」」
「第2位……黄衣275点」
「275!?」
「ふぁ!?」
「やりぃ!」
「稲作を捨てるという一見不正解な様な行動だったけど、水の問題上水田にするのは不向きということで芋の量産、牧場作り、養蜂、養蚕、木綿栽培と幅広くやりつつ、芋焼酎や蜂蜜酒でだいぶ稼いだね。それを売るための楽市で流民を捌きつつ利益を稼いだのは見事、牧場で家畜も育ててから肥料を自前でできたのも大きかったね。とにかく酒が大きな利益を出したので275点……黄衣にも1万石の統治を任せるから旦那さんを立てながら頑張るんだよ」
「はい!」
「最後に1位は……前秋595点」
「5、500!?」
「嘘だろ……」
「まず米の収穫量が私の領より1.5倍もありました。肥料とかそういうのだけじゃ説明がつきません。どうやった?」
「水田の草刈りをしながら土をかき混ぜる機械を作りました。あと水分調整をこまめにしたり、害虫対策として冬になる前に田畑を焼いて虫を卵の段階で駄目にしました。これが効いたのだとおもいます」
「前秋、やり方を纏めて本にしなさい。複写して各農村に配る」
「は!」
「評価の続きだけど、水車を使った脱穀機をはじめ、いち早く街道を整備したこと、楽市と連結した販売網の構築を始め、溜め池を作ったり等水回りの整備にも勤めた。よって私が管轄する領土よりも5倍以上の収益を叩き出す結果となった。あと椎茸の栽培とかどうやったの?」
「あれはボタ木にボタ汁(椎茸の胞子を水に溶かした物)を塗って運が良ければ育つという方法で成功率は3割程ですが元は取れると判断して行いました」
この時代5、6キロ椎茸が取れれば城が立つと言われるほど高級品であり、いろんな料理に使える椎茸は需要が多くありながら栽培方法が確立されていなかったので値段が高いこと高いこと……
「約4貫目(15キロ)も収穫できたことで収益が跳ね上がった。結果約600点とした。前秋、お前には2万石を与えるので更に発展させなさい」
「は!」
「試験は終了とするが、与えられた領土を更に発展させよ。ただ次は兵の整備も進めるように……信長様からの命令で上洛軍の第二陣に選ばれた。現在六角討伐には参加しないが京入りには参加するので領土に戻り黄衣以外は全員出陣の準備を始めろ」
「「「は!」」」
ロンメルの号令で出陣の準備が始まる
10日後に怪異織田家として5000の兵が集まると平野長治を守将とし500名を残して鳴海城から出発し、稲葉山城改め岐阜城を経由して六角討伐が終了した東近江にて信長本隊に合流した
「怪異衆召集に応じ着陣致しました」
「ご苦労。息子達も元気そうでなにより」
「ほう……尻尾が生えておる。確かに妖怪の様じゃな」
初めて会った次期将軍の足利義昭にいきなりそう言われた
「兄上はなぜ人ならざる者に名字と役職を与えたかわからぬが、余のためには働くのであれば兄上が与えた役職はそのままと致すのでせいぜい役に立て」
「は!」
と超上から目線で言われ、息子達も頭に来ていたが黙って頭を下げた
その光景にホッホッホッと義昭は笑うのだが、それが更に癪に触るのだった
信長が史実よりも1年ほど早い上洛をしていた頃、京では三好三人衆と松永久秀親子が対立
東大寺付近で激突し、東大寺が焼失
松永久秀親子は信長が上洛してくると知るといち早く臣従
抵抗姿勢を崩さない三好三人衆に対して
「ロンメル、蹴散らしてこい」
と命令
ロンメル達怪異衆は大和国にて三好三人衆と激突する
「者共私に続けぇ!!」
ロンメルは魚鱗の陣を敷き、鶴翼の陣にて待ち構えていた三好三人衆の部隊を中央突破、中央が早々に壊滅したことにより左右の部隊も混乱し、ロンメル本隊と一政率いる部隊に分け右翼を猛攻
左翼は逃げ延びたが右翼はほぼ全滅し、三好三人衆の約8000の兵は死者2500名を出す大敗を喫した
ロンメルの率いる怪異衆は5000と数が少なかったものの、鳴海学校出身者や日頃から鍛えている者が多く弱兵と呼ばれる尾張兵でも練度が高い精鋭兵だったこと、大将のロンメル自ら先頭で突撃するので士気も高い
ロンメルは突撃時100人斬りを達成し、突破した時には全身に返り血と臓物が鎧にこびりついてどす黒く変色していた
ただ三好三人衆はこの戦いをなんとか逃げ延び、四国に逃げ帰ったのだった
「義兄上上洛おめでとうございます」
「おお長政よく来た」
京では北近江の大名浅井長政が信長にお祝いを言いにやって来ていた
「お市は元気か?」
「はい! 元気すぎて侍女達が困るくらいには」
「そうかそうかあやつらしいな」
「そうそう今日は妖怪殿を見に来たのですが……聞きましたよ先日大和にて三好三人衆を少数で大敗させたと」
「うむ、ロンメルは余の最も斬れる懐刀だ。余が戦ってきた殆どの戦に参戦しており、功績を上げ続けた。奴がいる限り背後は磐石じゃて」
「背後とは?」
「とぼけおって……武田じゃ。三河の家康もおるが、清洲までの東海道最後の砦としてロンメルの治める鳴海の大要塞がある。全長3里半だと……更に大きくする予定もあるらしい。町や周囲の村も囲うほどの大堀じゃて……武田が来ても食い止めよう」
「それは1度見てみたいものですな……おや? 誰か来たようですな」
「信長様、三好三人衆の撃退完了致しました」
「おおロンメルか! 丁度よいところに此度はどれ程斬り殺したのだ?」
「ざっと100ほど……骨のある者は全くいませんでした」
「そうかそうか。お主の剣術は更に磨かれているようでなによりだ」
「信長様、そちらの方は?」
「おお、紹介しよう義弟の浅井長政じゃ」
「長政です。妖怪殿の噂はかねがね」
「あぁ、お市様の……長政殿よろしく頼みます」
「失礼かもしれませんが……頭の頭巾は」
「あぁ、耳を隠さないと恐がられるのでね。隠しているんですよ。取りましょうか?」
「是非」
ロンメルは頭巾を取ると耳が露出する
「おお! 確かに馬の耳だ」
「こ奴は並みの名馬より速く走り、どんな力自慢よりも怪力だ。それでいて知恵も回るぞ」
「知恵もですか」
「裏で何かしておるであろう。ここには徳川は居らぬ言うてみい」
「は、駿府に武田が侵攻の動きがありますので私よりも軍略に優れる四男の織田左恵と怪異家水軍衆棟梁の鈴木孫三郎を潜伏させています。狙いは今川壊滅後に今川家臣団の吸収」
「な!? それでは徳川殿に不義理では」
「知らないと思いますが今川氏真殿と私は友と呼び会う位の仲、一騎討ちも行っております。そんな彼を助けるために微力ながら力を貸しているのみ」
「本音は?」
「どう頑張っても今の今川が武田に勝てる見込みは無いので今川家臣団を引き抜けるだけ引き抜き人材不足の怪異家の糧になって貰えばと……」
「腹黒であろう」
「なかなかでありますなぁ」
「まぁこ奴の思考は織田の利になることばかり故に好きにさせておる。東方の守りの要ゆえにな」
「今回はそんな妖怪殿を連れてきて良かったのですか?」
「武田とは同盟を結んでおるゆえに直ぐには動かないであろう。将軍義昭に見せるためにも連れてきた……が予想より暗君の様じゃな」
「はは、仮にも将軍に対して義兄上も手厳しい」
「まぁ神輿は軽いに限る。適度に管理下に起き利益を吸い出すだけだ」
「あ、そうそう長政様、国友を紹介してはいただけませんか? 鉄砲は国友が一番故に」
「おお! そうかそうか国友の名も売れているのだな! 良いぞ帰りに北近江に義兄上と一緒に参られよ」
「ありがとうございます」
「世話になるぞ長政」
「お任せあれ」