ロンメルの受難   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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野田・福島城の戦い 後編

 元亀元年(1570年9月)

 

 浦江城が数時間で陥落し、信長は淀川下流の塞き止めを開始

 

 塞き止めが完了すると野田城、福島城を取り囲むように櫓を築く

 

 丁度その頃対岸の中嶋城に足利義昭率いる軍が到着し、信長の動向を見守る

 

 12日織田軍総攻撃の日となり早朝からロンメルは川を塞き止めるために天満森の少し北にいた

 

「急げ! 急げ! 本願寺が挙兵するとしたら今日ぞ! 塞き止めを完了させよ!」

 

「母上」

 

「なんだ勝成」

 

「ここまで大きな川の塞き止めですが、外す時はどうするので?」

 

「火薬が大量に入った壺を幾つも用意してある。それを使い両岸より爆発して堤を破壊する」

 

「わかりました」

 

 信長に本願寺が不穏と報告したが、信長は本願寺が動く前にこの戦を終わらせるとし、怪異織田家は総攻撃より外され後詰めとして待機するように命じられた

 

 バババババ

 

「始まった」

 

 信長の号令で約8000丁もの鉄砲が火を吹いた

 

 根来衆の高い練度の射撃は城兵や門、土堀を撃ち抜いていく

 

 勿論三好方も雇った雑賀衆の一部を使い応戦するが鉄砲の数が違いすぎて話にならない

 

 鉄砲の発射音が途切れること無く放たれ、それに怖じ気付いた三好政勝が裏切り門を破壊して脱出

 

 総攻撃も間近と迫ったその時

 

 ゴーンゴーンと鐘の音があちらこちらから響き渡る

 

「論目流様、石山本願寺挙兵! 榎並城が既に襲われております」

 

「こちらには」

 

「約2万が向かってきております」

 

「頃合いか……堤を破壊せよ」

 

 淀川を渡ったロンメルは堤を破壊し、鉄砲水が石山の門徒に直撃

 

 約8000が流され海に叩き出される

 

「よし、天満森の援軍に行くぞ」

 

 

 

 

 

 

「鉄砲隊放て、弓隊弩隊も続け」

 

 一政、忠輝率いる怪異織田軍本隊は1500の兵で川を渡ってくる一向宗を防いでいた

 

「兄上ここも長くは持ちませぬ」

 

「……よし、右恵信長様に援軍を要請しろ」

 

「わかりました」

 

 右恵が信長に援軍を要請したことにより信長は城攻めどころではなくなり佐々成政、前田利家を援軍に向かわせる

 

 これにより踏みとどまっていた怪異織田軍は難を逃れ、約100名の死者を出すも川から一向宗を叩き出すことに成功する

 

 そして天満森方面から襲おうとした一向宗はロンメルの鉄砲水が直撃し、大幅に数を減らし、何とか渡りきった者達が見たのは大量の織田の旗だった

 

「よし! 馬、牛を放て!」

 

 火牛の計……それは遥か昔中国にて行われた策であり、尾に油を塗りたくった葦を尾にくくりつけて敵陣に放つものであり、左恵は兵糧や弾薬を運ぶために連れてこられた軍馬や牛を集め火牛の計を実行

 

 火に驚き馬や牛達は一向宗に突っ込み暴れまわる

 

「敵は混乱した! 弩及び弓を放て!」

 

 森の中に潜伏していた左恵の伏兵達が混乱する一向宗に隠れながら弓や弩で射ぬいていく

 

「頃合いだ! 俺に続け!!」

 

 左恵は一向宗が立ち直る前に突撃を仕掛け更に混乱させる

 

 ある程度かき回し、左恵は無理せずに再び潜伏、またチクチク弓や弩で射ぬき、時間稼ぎに徹する

 

「左恵様、佐々成政様、前田利家様の援軍が到着いたしました」

 

「よし、母上と挟撃したかったがこれ以上は無理か……北上し、母上と合流する」

 

 援軍部隊と交代した左恵率いる部隊は北上し、安全な場所から川を渡りロンメルの部隊と合流した

 

「さて左恵これからどうする?」

 

「榎並城を奪還いたしましょう」

 

「よし、半乃助」

 

「は!」

 

「一向宗に紛れ場内に侵入し搦手の門を開けることは可能か」

 

「お任せくだされ」

 

「よし、搦手から侵入する」

 

「は!」

 

 半乃助は部下を使い一向宗に紛れて表門近くに移動すると火事を起こし、表門に兵を集めた

 

 その隙に半乃助は搦手の門を解錠し、ロンメル、左恵率いる1500名の兵が榎並城に殺到

 

 城を奪還すると城門を固く閉じ一向宗の攻撃をはね除ける

 

 一方信長本隊は城攻めを辞め、佐々成政が負傷したため前田利家隊と怪異織田本隊で防衛していた天満森に到着

 

 一向宗を駆逐する

 

 その時浅井、朝倉、比叡山延暦寺が京に向かって進軍しているとの報告が入る

 

 信長は翌日全軍の撤退を決め、京に向かって撤退を開始

 

 殿は柴田勝家殿が勤め、ロンメルは奪還した榎並城を再び放棄し、織田本隊と共に撤退を完了させた

 

 

 

 

 

 

「ヒヤヒヤしたわ……とりあえず全員生き延びた様でなにより」

 

「本願寺とはこのまま戦闘になりましょうか?」

 

「今信長様が天皇陛下を動かして和睦を進めるらしいが、問題は朝倉と浅井連合軍だね」

 

「信長様の弟……俺達からしたら叔父にあたる織田信治様や信長様の信頼が厚い森可成、救援に駆けつけた青地茂綱殿が討ち死にと聞きましたが」

 

「ええ、3名は討ち死にしてしまわれた……ただ宇佐山城が落城を間逃れたことで朝倉、浅井連合軍も進撃できずにいる。比叡山に籠られると厄介だな」

 

「焼いてしまえば良いのでは?」

 

「寺社は世俗を離れているとして基本的に攻撃できないんだよ。だから信長様は本願寺と和睦をしたがってる……比叡山も同様なんだけど腐敗しきっているからねぇ」

 

「我々も織田本隊と共に朝倉、浅井連合の撃退に動いた方が良いのでは?」

 

「そう思ったんだけど伊勢長島が一向宗に占拠され、これまた信長様の弟織田信興が討ち死にして、滝川一益殿も命からがら伊勢から脱出したとのこと」

 

「……!? 八太郎は!! 八太郎は大丈夫なのか!?」

 

「北畠衆が南伊勢は守っているから大丈夫……信長様からの命令待ちになるけど多分伊勢長島一向一揆鎮圧かまた挙兵した六角残党の退治のどちらかになると思う」

 

「また六角挙兵したのかよ……鼠みたいな野郎だな」

 

「武田のこともあるし、信長様も頭が痛いだろうに……」

 

 ロンメルが京に滞在して3日後、信長から命令が下る

 

「母上、信長様からは何と?」

 

「六角残党を討伐次第鳴海の地に戻り武田の侵攻に備えよとのこと」

 

「よし! 六角の雑魚なら俺だけで十分だ」

 

「左恵落ち着け……よし母上、利行と勝成、それにウマ娘の4人と兵2500で残党狩りを、母上と他の兄弟は急ぎ鳴海に戻るで良いか?」

 

「……一応目付として鈴木孫三郎と鈴川千秋の2名を付けよう。よし! 左恵頼んだ!」

 

「任された!」

 

 ロンメルは500の兵で中山道を通り岐阜の町で1泊した後鳴海の地に帰還し、左恵は特に大きな損害を出すことも無く六角残党を解散に追い込み、首謀者であった六角義賢、義治父子を処刑し、伊賀の国を完全に掌握する手柄をあげる

 

 伊賀の忍び達や地侍から嫡子や姫を人質に取り、鳴海の地に住まわせ、服従させ、怪異織田家忍衆の拡張に成功する

 

 最初は嫌々従っていたが、下賎な者としてではなく、成果を出した者はちゃんと評価される仕組みになっている怪異織田家に数年後心身共に服従することとなる

 

 

 

 

 

 

 

「母上お待ちしておりました」

 

「前秋留守大義、変化は」

 

「武田に大きな動き無し、上杉と北条の牽制が効いていると思われます」

 

「よし、信長様から東の守りを固めよと言われたので城の改修を急がせよ。金は倍払うと言え」

 

「しかしそれでは領内への投資が滞り、流れが悪くなりまする。倍はやめて多少の増額程度に留めてください」

 

「……仕方がない。黄衣は?」

 

「村で陣頭指揮をしています。開拓も黄衣のお陰で順調です」

 

「そうかそうか……とりあえず警戒しながらも金ヶ崎から続いた戦の疲れを癒そうか」

 

「それがよろしいかと」

 

 1ヶ月遅れてやって来た左恵達を鳴海城にて労うと軍は解散となり、普段の生活に戻っていった

 

 12月には石山本願寺との和睦が成立し、敵は浅井、朝倉、比叡山、長島一向宗、三好三人衆と数を絞る

 

 激動の元亀元年がようやく終わるのだった

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