ロンメルの受難   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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西上作戦 1

 元亀3年(1572年冬)

 

 パン

 

「ざっとこんなものです」

 

「おお、9割当てるとは……」

 

「腕を上げたな的場」

 

 的場を雇ったロンメルは早速色々やらせてみたところ奉行衆でも、水軍でも、鉄砲を扱わせても本当器用に何でもこなしてみせた

 

「じゃあ早速仕事として船を造る木材の調達をお願い! 関船を100隻造らないといけないからね」

 

「了解、奉行衆何人か借りますがよろしいでしょうか」

 

「奉行衆は税金の計算なんかで忙しいから学生で使えそうなの行徳に聞いて持ってきな」

 

「へいへい!」

 

 ロンメルは木材の手配等は行ったが、基本水軍衆に建造や運用は任せ、九鬼水軍を調略するべく伊勢に向かった

 

 

 

 

 

 

 

「母上! お久しぶりです!」

 

「おお、八太郎元気だったかな」

 

「はい! 父上に毎日稽古を付けてもらい精進しております! それともう八太郎ではなく北畠具継(きたはたけ ともつぐ)と元服致しました」

 

「そっか……もう10だもんね。手紙で知っては居たけど具継が元気そうで私は嬉しいよ」

 

「兄上や妹達は元気でしょうか?」

 

「ウマ娘の5人は各々重臣や出世頭に送った。あと奇妙様が阿久利黒を孕ませた」

 

「……はい? まだ9歳ではありませんでしたか阿久利黒って?」

 

「奇妙様のお戯れだよ。一応母子共に今は健康だけど出産の重責に耐えられるか……」

 

「奇妙様……母上、お咎め無しではないですよね?」

 

「勿論、こちらで預かりとして精神も肉体も罰として鍛えまくってるよ」

 

「母上の鍛練は厳しいですが身に成りますからな……本日は九鬼に用件があると聞きましたが」

 

「信長様が水軍の拡張を命じられたんだけど鳴海の水軍だけでは要望に答えられなさそうだから志摩で勇猛で知られる九鬼一族を頼ってみようと思ってね」

 

「良いお考えかと。でしたら今書状を書きますのでしばしお待ちを」

 

 八太郎いや具継は北畠の一員として部外者でありながらも精力的に家臣や国人を纏め、伊勢の発展に尽力しているようであった

 

 武勇はまだ初陣もしていないのでわからないが、政務だけであれば父北畠具教の力を借りなくてもしっかり行えているようで安心した

 

 血の繋がりを作るために北畠具教の兄弟の娘と婚姻することも決まっており、外様ではあったが北畠一門として南伊勢を何事も無ければしっかり統治できそうである

 

「北畠領内で一向宗の蜂起は起きなかったねそういえば」

 

「交渉には苦労しましたが互いに不干渉ということと信長様に敵対したのであって北畠と敵対するつもりは寺社共にないとのことなので……はい、母上できました」

 

「ありがとう」

 

「これを持っていけば九鬼の皆さんも話を聞いてくれると思います。ただあちらも国人衆なので気をつけてください」

 

「わかったわかった。具継ありがとう」

 

 ロンメルは書状を受け取ると九鬼一族が統治する志摩の国に入った

 

 

 

 

 

 

 

 

「織田の者が来ると聞いてたが、名高い妖怪様が来るとはな」

 

「九鬼嘉隆殿初めまして怪異正八位下蝦夷地守護東狐論目流……ロンメルとお呼びください」

 

「いやいや論目流様を呼び捨てにはできねぇ。様は付けさせてもらいますぜ……用件は織田への服従か?」

 

「服従というより協力でしょうか。織田傘下に入れば九鬼に投資ができますので今よりも大きくそして大量に船を運用することが可能です」

 

「それは魅力的だなぁと言いたいが少し遅かったな。滝川一益殿に誘われ既に我らは織田与している……恐らく長島一向一揆鎮圧に駆り出されるが、そこで活躍すれば織田の水軍と認められるからな」

 

「おお、そうでしたか。織田陣営に入ってくだされれば良いです。もし大筒や鉄砲等が必要でしたら鳴海に取り寄せください。毎日造っているので」

 

「造ってる? 受注生産じゃなくてか?」

 

「鳴海では様々な酒、武具、衣服、蜂蜜、椎茸等金になる物を多く取り扱っていますので堺には負けますが津島、熱田と連携し、鉄砲を毎日造れるようにしておりますので多少余りがございます。装飾は致しませんが質は保証しますよ」

 

 ロンメルが鳴海の地を貰ってから11年半で日の鉄砲生産数は10丁から20丁となり、大筒も毎日1門造られるくらいには製造ラインが整っていた

 

 鳴海も商業都市として栄え、今では熱田や津島を凌ぐほど成長していた

 

「おう! それは助かる。せっかく来たんだ酒でも飲んで楽しんでいってくれ! 歓迎するぜ論目流様よ!」

 

 滝川一益の調略により九鬼嘉隆は織田に付き、信長は伊勢湾一帯を掌握

 

 莫大な富が信長の下に税として入り、京までの中山道、東海道を抑えていることでこちらからも莫大な富が入り込んでくる

 

 そのお零れを貰う形で鳴海の地も更に潤うこととなる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 元亀3年(1572年3月)

 

 三好義継、松永久秀が明確に信長に反旗を翻し、昨年北条氏康が亡くなった事で北条氏政が家督を継いだ瞬間に武田と再び同盟を結ぶ

 

 この同盟で東駿河を北条氏政が手放したことで武田は駿河を掌握、安心して徳川のいる遠江に攻撃が可能になっていた

 

 更に上杉謙信の牽制として信玄は顕如を通じて加賀一向一揆を動かし、上杉謙信の目を西に釘付けにした

 

 更に更に、武田には将軍義昭から上洛要請が届いており、上洛の準備を開始したという知らせがロンメルの下に届いた

 

「あの暗君が……」

 

 この時信長と将軍義昭の仲は冷えきっており、武力を持って義昭を従わせている状態であったため、義昭はお手紙を諸大名に配り織田討伐を行わせようとしていた

 

 ロンメルは武田領の米価が変動したことにより何かしらの軍事作戦が開始されると判断し、信長に報告

 

 この頃信長は畿内の平定に忙しく浅井朝倉との小競り合い、各地で立ち上がる一向一揆鎮圧、三好三人衆と松永久秀の脅威、山陰山陽の道に股がる諸大名の反旗の鎮圧対応ととても東を対応している暇が無かった

 

「ロンメル、徳川と共同して武田を岐阜城手前で食い止めよ。1年時間を稼げればこちらも手が空く」

 

「でしたら東美濃も指揮権に組み込ませてください」

 

「良かろう。これよりそなたを東方方面軍大将とする」

 

「はは!」

 

 ロンメルは信長の命令により海軍増強を一時中断し、対武田を見据えた作戦行動を開始するのだった

 

 

 

 

 

 

 

「母上! 阿久利黒が産気付いた!」

 

「わかった……産婆を呼べ! 私も側に付く」

 

 対武田で忙しい中阿久利黒が産気づきロンメルは家臣達に指示を出した後、阿久利黒の側に付いた

 

 阿久利黒は汗を吹き出し苦しそうにしている

 

「辛い……辛いよ母上!」

 

「もう少しだからもう少し……頑張って」

 

 阿久利黒の手を握り呼吸を整えるように言い聞かせ、頑張らせる

 

 帝王切開等できるわけ無いので自然分娩に頼るしかない

 

「痛い痛い痛い!」

 

「頭が出てきたもう少し!」

 

「ひっひっふー! ひっひっふー!」

 

 頭が見えた瞬間に金髪のウマ娘だとわかる

 

「よしよし! 引っ張るよ」

 

 ロンメルは熱湯で手を洗い流し阿久利黒の又に手を突っ込み子供を優しく包むと一気に引っ張った

 

「ひっひっ! ひっひっ!」

 

 痛みで気絶した阿久利黒

 

 ロンメルは赤子を産婆に託すと阿久利黒の汗を布で拭き取る

 

「良く頑張った! 良く頑張ったよ!」

 

 阿久利黒は何とか無事にウマ娘を出産したのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まずロンメルは東美濃と鳴海を結ぶ街道の整備を早急に行い、馬車街道と呼ばれる馬車が4台通れる程の大きな道を整備し、鳴海からの補給路を作ると岩村城にロンメルが尾張学校時代から家臣を勤めた侍大将の黒川建光(くろかわ たけあき)を抜擢

 

 東美濃の兵2000で城の防備の補強を行わせた

 

 ロンメルは家臣達を集め対武田の戦略を練る

 

「半乃助」

 

「は!」

 

 半乃助が集めた情報では躑躅ヶ崎館に兵が集まっているとの情報と兵糧米等から逆算して約3万から2万5000を動員するだろうと予測を立てることができた

 

「まず信玄の目的が上洛か織田の権威失墜のどちらかだけど信玄が病を患っているのは周知の事実……よって上洛という大義名分による織田の権威失墜が狙いと私は考える」

 

「いや母上三河遠江の制圧の可能性も捨てきれません。甲斐は貧しい国故に旧今川領土を制圧することにより甲斐、信濃、駿河、三河、遠江に東飛騨、上野の大半の実質6国を有する巨大大名になるでしょう。そうなれば信玄が病で倒れたとしてもいつでも織田の基盤である美濃と尾張へ侵攻可能です。鳴海の地も最前線となり今のような内政計画が破綻致します」

 

「一政兄上しかし、将軍は武田に対しては上洛要請は出ていない。これは武田単独による軍事行動の可能性も高いぞ」

 

 事実この時点では義昭は近畿周囲にはお手紙を送っていたが信玄には数年前に送られ織田との関係が良好だったため握り潰した手紙しかない

 

「忠輝将軍ではなく顕如からの要請の可能性も無いか? 顕如と信玄は妻が姉妹で関係がある。本願寺救援の為の軍事行動の可能性も無きしも有らずだぞ」

 

 本願寺の関係が有った雑賀出身の鈴木が指摘する

 

 そうなると尾張を通り伊勢長島一向一揆と連結するという恐ろしい事実にたどり着く

 

「伊勢長島一向一揆との連結は不味い! あそこは10万の民衆を抱えているんだぞそれが尾張に向けて侵攻すれば東方方面軍だけでは耐えられない」

 

「半乃助、早急に伊勢長島が軍事行動の準備をしていないか調べてくれ」

 

「は!」

 

「となると東美濃への侵攻が一番確率が低く陽動と見ますか」

 

「前秋」

 

「は! 現在動員可能な兵数は岩村城の2000、佐久間信盛や平手汎秀、林秀貞、水野信元合わせて5000ほどですが、佐久間殿は織田家筆頭家老こちらより立場が上のため作戦行動に口を挟んでくる可能性が高いです。鳴海衆は1万ほど出せます」

 

「練度は?」

 

「鳴海衆は弱兵の尾張衆とは一味も二味も違うとだけ」

 

「勝負になるならばよろしい……私良いこと考えた。奇妙様を大将とし、補佐として怪異織田家で固めれば佐久間とて口出しはできまい。水野殿は血縁関係も有るゆえこちらの言うことに全面的に聞くだろう。林はそもそも戦働きには不向き故に口出しはしまい。平手汎秀は若武者故歳も近い奇妙様の護衛として動かせば良いか……もう一押しに津田信澄殿を担ぎ出そう。そうすれば文句も出まい」

 

 津田信澄は信長の弟織田信行の息子であり、ロンメルの娘小雪と婚姻していた

 

 ちなみに織田家の家督継承順は奇妙、茶筅丸、神戸三七郎の次の序列4位であり、信長がどれだけ配慮していたかわかる

 

「まず作戦としては鳴海から岩村城を絶対防衛線とし、両城を落とされない様にする。堅城な岩村城には兵糧4ヶ月分と鉄砲1000丁を送ってる。これだけあれば兵糧が尽きる4ヶ月は持つだろうし、岩村城が攻められた場合即座に5000の部隊で救援に向かう。大将は一政、副将忠輝、右恵、監視役に岡部元信お願い」

 

「「「「は!」」」」

 

「信玄の侵攻ルートは3つ東美濃、奥三河からの岡崎城の三河ルート、駿河、信濃からの遠江ルートの3つ徳川の方に武田本隊が向かった場合鳴海衆5000と尾張衆5000の1万を徳川の援軍として三河と遠江に入るよいか!」

 

「「「は!」」」

 

 こうして対武田の防衛を決める

 

 




織田一政の子供達

Ⅰ元亀元年(1570年5月)
Ⅰ作坊 嫡子
Ⅰ虎丸 庶子
Ⅰ霧丸 庶子
Ⅰ富士 姫 庶子
Ⅰ皐月 姫 庶子
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