ロンメルの受難   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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西上作戦 4

 元亀3年(1572年12月)

 

「う、うぐ……勝成……勝成……」

 

 ロンメルは勝成の首の前で号泣していた

 

 利行が討死した勝成の首を浜松まで持ち帰り、亡骸が存在しないという最悪の事態は間逃れたが、息子の死を嘆いた

 

「論目流……すまない。私が好戦を指示したばっかりに……」

 

「……奇妙様は最後まで戦い抜きました。あなたが謝るのはあなたを守って亡くなった勝成が浮かばれません。あなたは謝ってはいけないのです」

 

「しかし……いや、これ以上は何も言うまい」

 

「奇妙様、そして津田様」

 

 奇妙様の横に座っていた津田信澄様も耳を傾ける

 

「このまま戦で学べましたか。あなた方は今回が初陣……何を学べましたか?」

 

 まず奇妙様が答える

 

「戦場の恐怖と狂気、そして現実を思い知りました。戦場は決して華やかではなく泥臭く血生臭く……勇気有るものが死に、運が有るものが生き残る……そして己の無力さを」

 

 続いて津田様が答える

 

「情報の有無、敵ながら信玄は情報を操り、盤面を支配しておりました。某にはまだ無理故に支えてくれる家臣の必要性、死の恐怖に打ち勝つ勇気が必要だと思いました……武田への突撃時、某は人の波に呑まれ何もできなかった……勇気が某には必要だと痛感しました」

 

「……」

 

 ロンメルは静かに語り始めた

 

「将は臆病たれ、将は勇猛たれ、将は知恵を絞り、責任を取れ……矛盾をいかに克服できた者こそ誠の名将である。私は勇猛すぎる。徳川家康殿は臆病過ぎる……今回の戦で両名は多くの犠牲を払い学んだ。武田に二度目は無い……両者よく学べ。よく鍛練し、よく食べよく寝よ。犠牲者の死を背負い、振り返らずに前に進め」

 

「「は!」」

 

「よく頑張った」

 

 ロンメルは最後に2人を褒めた

 

 ロンメルは欠けてしまった愛刀影月と勝成の首を燃やし、浜松近くの寺に供養してもらった

 

「勝成さらば! 私は前に進み続ける」

 

 享年14歳……ようやく一人前の武将となった矢先の悲劇であった

 

 

 

 

 

 

 

 浜松城にて今後の軍儀が行われた

 

 あれほど盛り上がっていた交戦派も三方ヶ原の敗北で意気消沈し、籠城にて武田が何らかの理由で撤退する事を願うしか無かった

 

 鳴海に一度戻りたいロンメルも今ここから出れば家康が降伏してしまう可能性も有った為出るに出れずにいた

 

 とりあえず城の防備を固める方針が決まり、ロンメルが部屋から退室しようとした時家康殿が呼び止めた

 

 部屋に戻り1対1となる

 

「論目流殿すまなかった……論目流殿の意見を聞いていればこの様な事には」

 

「起きてしまった事は仕方がありません。次をどうするかのみ考えましょう」

 

「……そうだな」

 

 ロンメルと家康の間には旧今川家臣を巡って遺恨が有った

 

 家康は今川家に人質時代虐められていた過去があり、それを深く恨んでいた

 

 ロンメルは家康が岡部や朝比奈を登用した時に信長様にその者達は信用できないので雇わない方が良いと意見し、信長は人の家臣にケチを付けるなと言われ、それをそのままロンメルに信長経由で話されたので家康に対してロンメルはあまり良いイメージを持っていなかった

 

「互いに思うことは有るだろう。ここはワシとそたなしかおらん……」

 

「では、岡部一族や朝比奈一族を雇った私を恨んでいますか?」

 

「思うところは有るが恨んではおらん。論目流殿を恨むのは筋違いだからな」

 

「まあ家康殿が過去に何か有ったのは存じておりますが個人の恨みで大将が行動するのは……と思いました。だから岡部や朝比奈達旧今川家臣団は今回連れてきませんでしたし」

 

「配慮感謝しますぞ」

 

「さて、ではどうしますか? ずっとここに籠っていても状況は悪化していきますよ」

 

「では打って出るとでも!?」

 

「私の忍衆の情報ですと野田城の攻略に信玄は手間取っている様子……信玄が病なのは確実ですので東遠江奪還の作戦を立てませぬか? 将棋に見立てて少しでも気を紛らわさないと」

 

「そなたは強いな……もう前を向いている。ワシは今回あまりに多くの家臣を失った……ワシのちっぽけな秩序、意地と引き換えにして良い者達では無かった……」

 

「家康殿……」

 

「そなたも息子を、多くの家臣を失った……なのになぜそれほどまで前に向けるのだ」

 

「……私は異世界よりこの戦国の世に来ました。私が居た世界では戦は無く……平和で皆勉学に励み、死の恐怖を知らずに過ごしておりました」

 

「そんな世界の小娘が……小妖怪がポツンとこの世界に飛ばされ……様々な場所を旅し、世界を見て回り、この世界に骨を埋める覚悟し、信長様という強烈なカリスマ……英雄を見つけてしまった」

 

「だから考える。私がこの世界に飛ばされた理由を意味を……この狂った戦国の世を終わらせる手伝いをせよという事なのではないか? 側に寄り添い英雄を補佐する側近の役回りではないのか……或いはその偉業を後世に伝える役回りなのではないかと……」

 

「ほう? どうやって偉業を後世に残すのだ?」

 

「まずは書面にて既に合戦の内容を本に纏めどうすれば勝てるのか、どうすれば逆転できるのか等を考える教材としております。各学校及び鳴海城にて本の保管及び複製をしております。次に歌ですね」

 

「歌?」

 

「音楽は1人ができれば伝播していきます。信長様の正しい偉業を伝える歌を幾つか既に作られています。絵もそうです。合戦絵巻も多く作らせています。そして血ですね。これは私の子供達が繋いでくれるでしょう」

 

「書物、歌、絵に血か……なるほど……だがそれがなぜこの世界に来た理由になるのだ?」

 

「あくまで私は主役ではありません。信長様という主役を支える名脇役でなければなりません。あの方が天下を取るのが見たいのです。だから一旦立ち止まったりもしますが、前を向きます。向き続けます! それが私……ロンメルです」

 

「なるほど……心の支えが有る故か……」

 

「三河の家臣にとって徳川家康殿が心の支えなのです。あなたは前を向かなければならない。向く必要が有る故に」

 

「多くの家臣の屍が有ったとしてもか?」

 

「残された家臣の為にも」

 

「……ワシはそこまで今は強くはない……強くは無いが……必ず強くなってやる。家臣の為に、家族の為にも」

 

 その後ロンメルと家康は将棋を使い東遠江奪還の作戦を立てていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 元亀4年(1573年3月)

 

 武田軍撤退を開始

 

「何故だ何故撤退を始めたのだ!?」

 

「三河制圧まで後少しだったのに」

 

「半乃助」

 

「申し訳ございません。まだ正しい情報が入ってきておりません」

 

「そうか」

 

 ざわつく徳川家臣と怪異織田家家臣達

 

 ロンメルは半乃助に情報を貰おうとしたが半乃助もわかっていなかった

 

 が好機なのは変わらない

 

「武田本隊がどこに居るかはわかるよな」

 

「は! 三河から信濃にゆっくり移動中とのこと」

 

「家康殿」

 

「ああ、これより東遠江奪還を開始する」

 

「し、しかし殿これは信玄が我々を誘き寄せる罠なのでは?」

 

「それを考慮しても今回の撤退はおかしい。信玄か武田軍が急遽甲斐に戻らなければならない理由があるはずだ」

 

 ロンメルはここで家康殿に献策する

 

「家康殿これから取れる策は3つ東三河の連絡路の回復、籠城をつづける、東遠江の奪還……長篠城の奪還は武田主力が近くに居るためできません」

 

「……よし! ロンメル殿は東三河の連絡路の回復を頼む、ワシは引き続き籠城を続け頃合いを見て長篠城か東遠江奪還に動く」

 

「わかりました。でしたら私は鳴海に戻り次第信濃侵攻を行います」

 

「では信濃侵攻に合わせこちらも失地奪還を開始する! 皆の者良いな!」

 

「は!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロンメル率いる4000と織田方の残った2000を纏めるとすぐさま東三河の連絡路の回復をするためまずは信玄が約2ヶ月陥落に時間がかかった野田城を僅か1週間で陥落させ東三河の連絡路を回復させた

 

 ロンメルは鳴海に帰還すると半乃助から衝撃の情報が入る

 

「なに? 信玄が亡くなった?」

 

「はい。奥三河の奥平貞能殿が武田信玄が死亡したことを確認し、それを徳川殿と殿に密使が送られておりまする。某も別口で信玄の死を確認いたしました」

 

「よし! では信濃侵攻を開始する」

 

 ロンメルは即座に1万5000の兵を再編すると前秋を鳴海城守将に任命するとロンメルは岩村城に移動する

 

 岩村城にて信長からの援軍として池田恒興5000が合流、岐阜城に寄った時に奇妙様は元服して織田信忠と名乗り、信忠を大将、副将に津田信澄、軍監にロンメルが着き信濃侵攻作戦が開始される

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