ロンメルの受難   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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ロンメルの死

 天正10年(1582年6月)

 

 信長の首は弥助の活躍により京を脱出し、堺の南蛮商人の元に転がり込んだ

 

「おや? 弥助殿! 傷だらけではありませんか」

 

「本能寺ニテ反乱! 信長様自害」

 

「な、なんと! ではその首は信長様のか!?」

 

「ハイ、コノ事実ヲ大阪城ノ斎藤殿二……」

 

 敵中突破した疲労や傷からそう言うと弥助は倒れてしまう

 

「弥助わかった! 誰ぞ大阪城に報告して参れ! 私は堺衆と緊急会合を行う」

 

 まず本能寺の変の情報を得たのは堺衆であった

 

 堺衆はこの情報を高値で翌日長宗我部へ売ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 長宗我部元親は本能寺にて信長が死んだ事を知ると四国統一の為兵を挙げた

 

 讃岐を防衛していた織田家に臣従していた諸大名は蹴散らされ信長の死から僅か2週間による電撃決着で四国が統一された

 

 長宗我部元親の挙兵と同時刻滝川一益の元へも信長の死の情報がもたらされた

 

「丹羽長秀殿、北畠具継と協力して京奪還を開始する安土に向かい信忠様の指揮下に入る。そして京に向けて軍を進める」

 

「それが……信忠様が信長様を討ったという情報も入っていますが」

 

「なに? どういう事だ」

 

「信長様と信忠様は朝廷廃止論で揉めており、信忠様が廃嫡されるという噂もありまして、そうなった場合次男信雄様が家督を継がれまするが」

 

「いや、信雄様に織田家を任せられるとは到底思わん。信忠様ぐらい能力が無ければ膨張した織田家を纏めるのは務まらんだろう。とにかく信忠様の元へ参陣しなければ」

 

 一益は直ぐに兵を纏めると信忠の居る安土城へと向かった

 

 丹羽長秀、北畠具継は滝川一益よりもたらされた信長様の死亡という衝撃的な情報に混乱したが、直ぐに兵を纏め、安土に向けて出陣した

 

 

 

 

 

 

 

 

 堺見物をしていた家康は本能寺にて変が起こり、信長様が無くなった事を南蛮商人から聞くと堺衆の尽力で海路にて三河まで脱出する様に進められた

 

 紀伊を経由し、伊勢で船を降り、そこから陸路で三河を目指す案であり、家康はすぐさまその案を承諾し、船に乗り込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 本能寺の変から3日後、明智光秀の元へ京に残してきた兵から本能寺の変を聞く

 

「な!? 信長様が死んだだと!?」

 

「堺商人が信長様の首を確認しており、確実かと」

 

「直ぐに反転せよ! 京に入る」

 

 明智光秀は軍反転させるとすぐさま京入りを指示

 

 明智軍の動きは素早く本能寺の変から7日後には京に入ることに成功した

 

 明智軍が動き出した2日後北陸の柴田勝家の元へも信長の死が伝わり

 

「の、信長様……」

 

「親父殿泣いている暇はありません! 直ぐに京もしくは安土に向かい信長の敵討ちか信忠様の軍へ合流しなければ当家が疑われるかもしれません」

 

「望月……どちらが良いと思う」

 

「安土の方が近く、行軍に日数はかかりません。先発隊と後発隊に分け先発隊は少数でも素早く信忠様の元へ参陣し、後発隊は兵を集めてから出陣となりますので1週間はかかりますが、1万は集まりましょう。筆頭家老である親父殿が直ぐに信忠様の元へ行くことが大切かと」

 

「よし、わかった! 望月は家に残り赤兎馬(柴田勝家のウマ娘の子)を守れ」

 

「いや、ここは赤兎馬も連れて安土へ行きましょう。旧臣というのは新政権の邪魔になることが多々ありますが、忠誠を再度誓うための人質は必要かと」

 

「赤兎馬を出すというのか! 儂の嫡子ぞ!」

 

「大丈夫です。このお腹に新たな生命が宿っています。次も必ず産みますので安心してください」

 

「新たな生命だと……また孕んだのか」

 

「月ものがここ最近来ていません。抱かれた時期を逆算すれば当たります」

 

「そ、そうか! そうか! ならば望月は北陸に残れ、体を大切にするのだ! 儂と赤兎馬は安土に向かう!」

 

「わかりました。ご無事の帰還をお待ちしております!」

 

「うむ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 北畠具継は本能寺の変が起こったことを知るとすぐに鳴海に早馬を出した

 

 鳴海では織田家へ領地の返却の準備が進められていたが、北畠具継からの情報を鳴海の代官をしていた朝比奈信置が聞くとすぐに小田原にいるロンメルの元へ伝えられた

 

 ロンメルが本能寺の変を知るのは本能寺の変が起こってから10日も経過していた

 

「の、信長様が死んだ……だと!」

 

「本当なのか!?」

 

「はい、ただ京に滞在していた信忠様は脱出に成功し、京奪還のために安土にて兵を集めております」

 

「半乃助!」

 

「もうしばらくお待ちを、こちらには何も情報が入ってきておりません」

 

「ちっ! 安土に兵3000で向かう! 信濃、美濃を通る頃には1万にもなろう! 的場」

 

「へい!」

 

「道中の宿の手配、兵糧の運搬を任せた」

 

「わかりました!」

 

「報告!」

 

「遅いなにをしていた!」

 

 入ってきた忍びに半乃助は怒るが

 

「京にて変化あり、明智光秀京奪還に成功」

 

「的場」

 

「へい!」

 

「信濃や美濃で兵を集めるのは無しだ、早急に安土に向かう」

 

「わかった。やっておく」

 

 ロンメルは涙を流しながら各所へ指示を出した

 

 更に右恵に東北への警戒を強めるように指示を出した

 

 ロンメルは自慢の足で先を進もうとするが

 

 グキ

 

「ぐ!?」

 

 上野を通行中にぎっくり腰になってしまい、馬車での移動となる

 

 ただ、馬車の震動により腰にトドメをさしてしまい走れないほど腰が逝ってしまう

 

 ロンメルはこれ以降走ることは無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後に本能寺の変を知ったのは九州方面軍の秀吉であった

 

 明智光秀が京を奪還した日から更に2日後に畿内の情報を知り、軍の大きさ故に動けなく、仕方がなく軍を解散すると3万の羽柴主力のみを率いて山陽を走り抜け本能寺の変から20日後に京へと到着した

 

 

 

 

 

 

 様々な動きがあったが、本能寺の変から1ヶ月後安土城にて緊急の重臣及び一族衆による会議が始まった

 

 場に居るのは一族からは織田信忠、織田信雄、織田信孝、津田信澄の4名、重臣からは柴田勝家、明智光秀、丹羽長秀、滝川一益、羽柴秀吉、北畠具継、池田恒興、中川清秀そしてロンメルの9名

 

 まず席次で北畠具継が家臣の席となっていたことから織田一門ではなく譜代家臣という立場が明確にされ

 

 継承権5位のロンメルの息子一政は部屋に入ることすら許されないという屈辱を味わった

 

 怪異織田家の代表はロンメルが優先された結果なのだが、一政は今回の結果を拗らせることとなる

 

 更にロンメルは腰痛の激痛に耐えながらの会議の為ろくに頭に入らずロンメルは始めに一政との交換を訴えていたのだが却下される

 

 そうした中二条殿会議が始まる

 

 

 

 

 

 

 

 まず明智光秀の代わりに京の警備責任をしていた林秀貞が警備責任を問われ切腹と決められ、犯行の兵が雑賀衆や伊賀衆の残党であることが判明した

 

「問題は主犯が誰かわからないことだが、雑賀及び伊賀の処置が甘かった丹羽殿と滝川殿にも責任があるのではないか?」

 

 この発言をしたのは信雄であり、誰も思っていても言わなかった地雷を速攻で踏んだ

 

「「誠に面目もございません!」」

 

「丹羽殿と滝川殿は余の身を案じてすぐさま安土に集結したお方故に処罰は考えておらぬ。明智殿、論目流殿犯人に心当たりは?」

 

「は! 公方の関与が確認されておりますので将軍足利義昭の仕業かと思われます」

 

「明智殿の予想はわかった。論目流殿は何かあるか?」

 

「ち、朝廷かと」

 

「朝廷? なぜそう思う」

 

「ま、まず忍びの調べで京にて織田木瓜の旗印を作っているのが判明しております。忍びは信長様が出陣するゆえに旗印を作っていると判断したらしいのですが、それが公家に沢山有ったのか気になったと言っておりました……公方の関与は確かに有ったと思いますが、朝廷不要を唱えた信長様の排除で一番得をしたのは朝廷故に私は……朝廷が怪しいとおもいます」

 

 明智の公方論、ロンメルの朝廷論だけでなく初動が上手すぎた為長宗我部説や伊賀と雑賀の共謀単独説等様々だったが、結論は出ず

 

 家督を引き継いでいた信忠が父の仇かもしれない朝廷とは距離を少し置くことが決まり、領地の再分配が行われた

 

 本能寺の変により九州征伐と東北征伐は延期、北陸は引き続き柴田派が、羽柴派は中国4国、明智光秀は中国と畿内合わせて3国、滝川一益は信濃と甲斐に国替えで空いた伊賀は北畠具継と丹羽長秀の折半となった

 

 ロンメルは関東8国が安堵となり、とりあえずの領地は決まる

 

 ただ信長という強烈なカリスマを失ったことにより徐々に昔の三好政権の様な陰りが見栄始めた

 

 

 

 

 

 

 そして天正11年11月

 

 腰から脚に来たロンメルは全く歩けなくなり、床につく事が多くなっていた

 

 そして嘔吐が多くなり、腹部に激痛を感じていた

 

 自身の体の異常を感じ取ったロンメルは息子や娘、孫達を呼び寄せ

 

「関東開発が終われば蝦夷地を目指せ……蝦夷地の莫大な土地は関東と同じくらいの広さがある。今は誰も価値を気づいていない……一政」

 

「は!」

 

「怪異織田家を頼んだ……兄弟と協力して……天下を目指せ」

 

「「「!?」」」

 

「欲が出た……信忠様が存命中は支え続けよ……信忠様が亡くなればまた天下は荒れるだろう……」

 

「母上? ……母上!!」

 

 ロンメルは腸閉塞による栄養失調によって信長の跡を追うようにこの世を去った

 

 ……享年49歳

 

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