ロンメルの受難   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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鬼滅の章
鬼の世


「……ここは?」

 

 山の中それも山頂に近いのだろうか……空気が薄い

 

 ザァァァと雨が降るなかロンメルは山の中を歩いた

 

 とりあえず山頂に向かって歩いた

 

 ……歩くこと30分

 

 着ていた白い着物はびしょ濡れの泥だらけ

 

「これ結構高いんだけどな」

 

 等とブツブツ言いながら歩いていると山小屋を発見した

 

「ごめんください」

 

 ロンメルは山小屋を開け中を覗く

 

 囲炉裏がほのかに暖かい……人の居た痕跡も多くある……つい数時間いや数分までここに誰か居たな

 

 ロンメルはそう考察していると背後に嫌な感覚を覚えた

 

「!?」

 

 ロンメルは素早く避ける

 

 ロンメルが居た場所に刀が通過する

 

 目の前には天狗のお面を被った老人が居た

 

「達人だ……私と同格……いや? あちらが上か?」

 

 ロンメルは着物を瞬時に脱ぎ捨てると剣士の攻撃を避け続ける

 

 山は走り慣れている

 

 伊賀や甲斐、信濃を走り回った私にとってこのくらい等と思っても居られない

 

 まずこの山を私は知らないし雨で視界や音等も分かりにくくなっている

 

 盗人と思われたか? 

 

「待て待て待て、私は戦う気は無い。盗人でもない。迷い人だ……あぁ、耳やしっぽが気になるのか! 私はウマ娘という種族だ。まぁ待て話し合おう」

 

「……」

 

 剣士はいつでも斬り殺せる距離を保ちながらジリジリと距離を詰める

 

「鬼……ではないのか?」

 

「鬼ではない。ウマ娘だ。馬の妖怪と言えば良いか? 人には危害を加えないことを約束する! 怪しいと思えば斬っていただいて結構!」

 

「……入れ、話だけは聞いてやる」

 

 剣士は刀を納めると小屋に向かって歩きだした

 

 背を見せているのに視線を感じる

 

 距離を見誤れば斬り殺されるとわかっているため、ロンメルはゆっくり……ゆっくりと着物を拾い、小屋に入った

 

 

 

 

 

 

 

 

「名はなんと言う」

 

「ロンメル……怪異正八位下蝦夷地守護東狐ロンメル……いや、名字を怪異、名をロンメルとするのが正しいか」

 

「守護だの蝦夷だのいつの時代だ。今は大正だぞ……しかもカタカナも混じっているようだしな」

 

 目の前に座る天狗のお面を被る男性は鱗滝左近次と言うらしい

 

 どうやらこの世界には鬼という人を食らう怪異の者が居るのだとか

 

 鱗滝さんは鬼殺隊という鬼狩りの組織の現役を退き育手として後進を育成する立場なのだとか

 

「なるほど徳川殿が天下を取った世界か。信長様は本能寺にて自害したということは世のことわりがそうなのであろうな」

 

「それを知ってどうする」

 

「いやいや、少し気になったものでね……まぁ私は異世界からの迷い人なのでどうにかして生きたいのですが……ダメでしょうか? できれば鱗滝さんの立派な剣術も学びたいなぁ何て……」

 

「敵かもしれぬし、その様な信念も何もない奴に教えるほど儂は腐ってはおらぬ」

 

「住み込みでも良いので働くので教えてくださいよ」

 

「ダメだ」

 

「むう! ……と、肉体に精神が引っ張られるな。若いのも考えものか?」

 

「剣術は教えれぬが監視する意味でお前はここで暮らして貰わなくては困る。死にたくはないのであろう」

 

「ええ、まぁ」

 

「……鍛えたいのか?」

 

「ええまぁ」

 

「……この小屋より上の山を雨の日以外は使うことを許そう。山を登り、降りるのを繰り返すだけでも鍛練になると思うぞ」

 

「低酸素トレーニングかぁ。前の世界みたいに腰逝って体壊したくないし、この幼い時期にしっかり体作りするのも悪くないか……ちなみに雨の日は?」

 

「組み手ぐらいはしてやる」

 

「わーい!」

 

 こうして鱗滝さんの家にロンメルはお邪魔することとなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 匂いでわかった

 

 こやつ……ロンメルが鬼ではないことは

 

 新たな敵対種族の出現や鬼の子供等も考えたがそんな事もなく

 

 儂が作った罠だらけの山を楽しそうに何往復も毎日飽きずにしている

 

 ロンメルは滅多に罠にかからない

 

 儂の様に鼻が良い訳でも目や耳が良い訳でも無い

 

「集中すると世界が透けるですよね……前の世界で会得した一之太刀って言うんですけどね……」ベラベラベラ

 

 奴は呼吸も未熟なのに儂らの一歩先の世界を見ている

 

 だから罠を石から矢や刃物に変え、巧妙にしても全然引っ掛からない

 

 儂が今まで育手で育ててきた子供の中でも才能、既に持っている技術は飛び抜けている

 

 だからこそ惜しい

 

 人ならざる種族なのが本当に惜しい

 

 こやつを剣士として育てればどれ程の鬼を討伐できるか、どれ程の人を助けられるのか……

 

 性格は好奇心旺盛ながら時に老練で腹黒いところもある

 

 それと喋るのが好きだ

 

 異世界とやらの事をベラベラと話す

 

 なぜか知らんが硝石の作り方や火縄銃の打ち方、城攻めの方法なんかはどこで仕入れたか疑いたくなるような話ばかりである

 

 それにウマ娘とやらの仲間は居ないのかと聞くと居ないと断言した

 

 異世界を放浪しているのは自分を含めて3人しか知らず、更に1人としか会った事もないのだとか……

 

 ウマ娘が沢山居た世界の事も聞いた

 

 とても平和で夢や希望の溢れる世界なのだとか

 

 そうなると奴が時折見せる刀を持っていないと起きない体の癖が気になる

 

 奴の言葉を借りるのであれば前の世界なのだろうが、戦国の世だったらしく人を何人も斬り殺していたのだとか

 

 ただそれは自身の快楽や糧ではなく生き残るためにしていたということも理解した

 

 と話す割には奴からは血の匂いが全くしない

 

 だから迷う

 

 儂は迷った挙句親方様に手紙を出すことにした

 

 奴……ロンメルに刀を持たせて良いものかと……呼吸を教えても良いものかと……

 

 未熟な儂をお叱りください親方様

 

 しかし、久方ぶりに才能という輝きを見てしまったのです

 

 富岡も一端の剣士となりましたのでどうかお館様のご意見をお聞かせください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロンメル、これより木刀の帯刀を許そう」

 

「木刀ですか?」

 

「そうだ。本来であれば刀を渡すのだが信じきれていない故にな」

 

 鱗滝さんと出会って4ヶ月が過ぎた頃いきなりそう言われた

 

 それと同時に呼吸というのもや型を習った

 

 型は見て覚えろ、呼吸はお腹をバンバン叩かれながら違う違うと言われいきなり色々教えてくれ始めた

 

 著しく心肺に負荷をかけ鍛えることで血液の流れや筋力の向上、身体能力の強化、怪我などの止血、回復能力の向上、疲労回復、筋肉の超回復を促し、栄養等を無駄無く取り込む等を行う技法らしい

 

 通常の呼吸と区別するため全集中の呼吸と呼ぶそうだが、ロンメルは新たな技術にワクワクが溢れ出た

 

 なるほどだからこの様な空気の薄い山で全力疾走させるわけだ

 

 受け身の訓練等もしたがそれは互角故にただの組み手となった

 

 そもそも受け身なんかは前の世界で嫌というほどやって来た

 

 やってなかったら死んでいた場面が何回もある

 

 山を何往復もし、素振りをし、その間も特殊な呼吸を続ける

 

 何をするのもその呼吸をすることを徹底する

 

 強い筋肉を作るために

 

 強靭な肉体になるために

 

 びくともしない骨を作るために

 

「楽しい、楽しいなぁ! 沸々と沸いてくる! これが異世界の技術……私の剣術と呼吸が合わされば……いて!」

 

「邪念は捨てろ。集中しすぎると周りが見えなくなるのは悪い癖だぞ」

 

「すみません」

 

 時には滝を登れと言われたり、水と一体化しろと雨で増水した川に叩き込まれたりもした

 

 そんなこんなで鱗滝さんに出会って10ヶ月が過ぎた頃

 

「鱗滝さん誰ですか? 彼と娘さん?」

 

 竈門炭治郎と竈門禰豆子と出会った

 

 

 

 

 

 

 

 不思議な匂いのする人だった

 

 まず第一印象は馬の耳としっぽを付けた金髪の……俺と同じくらいの身長の女の子だった

 

 その人は怪異ロンメルと言い、妖怪なのかと聞いたらウマ娘という種族なのだとか

 

 妖怪ではないのだが妖怪の方が都合の良い時は妖怪であると言い、都合の悪いときはウマ娘だと言う……ちゃっかりしている

 

「炭治郎! 一緒に山を駆けるぞ付いてこい!」

 

「ま、待ってください!」

 

 ロンメルさんはとにかく足が速い

 

 俺が1往復するのに半日かかる山道をロンメルさんは4往復もしている

 

「まぁ種族の違いはあると思うけど慣れれば炭治郎も3往復は行けるって!」

 

 と軽い感じで言うが滅茶苦茶だ! 

 

 更に言うならロンメルさんは木刀を持ちながら走るのに俺は何も持たずに走ってるに追い付けない

 

 もう毎日ヘトヘトのクタクタになるが、ロンメルさんは俺が疲れて眠った後も木刀の素振りを続けている

 

 それでいて俺より早く起きて朝飯を作ってくれている

 

 本当にありがたい

 

 ……鱗滝さんから剣術を教わりながらロンメルさんに

 

「ロンメルさんも鬼殺隊を目指すのですか?」

 

 と聞いたら

 

「鬼殺隊にそもそもなれるか怪しい……私下手したら鬼と思われるかもしれないし……」

 

 とのこと

 

 じゃあなぜ鍛えるのか聞いたら

 

「自身の体が育つのが、呼吸という技法を身に付けるのが楽しくてしょうがない……それと身を守るために鍛えておいて損は無いでしょ」

 

 だと……鱗滝さん曰くだから刀を持たせない

 

 今のところ鬼殺隊に入れる予定も無いんだそうだ

 

 俺は少し勿体ないと思った

 

 それだけの力があればどれだけ人を助けることが出きるのではないかと

 

「炭治郎、私はこの世界の人ではないから家族や友人、守るべき者が居ないんだ。前の世界では子供が居たし、守りたいって思った人が居たから死ぬ気で頑張った……だけどね、その人はもう居ないんだよ炭治郎……この世にはね……」

 

 ロンメルさんは泣きながらそう話した

 

 申し訳なくなった

 

 それからも鱗滝さんに俺とロンメルさんは教わり続ける

 

 ロンメルさんは相変わらず木刀なのに俺は刀を持たされた

 

 ロンメルさんが全集中の呼吸を常時する中、俺は使う時に絞るしかできなかった

 

 ただ常時する努力は続けた

 

 ……俺がこの山に来て1年が経った時鱗滝さんからこう言われた

 

「ロンメル、炭治郎……お前達に教えることはもうない。後はお前さんらが儂の教えたことを昇華できるかだ」

 

 と言われた

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