「よく戻ってきた」
ロンメルが狭霧山に戻ると鱗滝さんが出迎えてくれた
「炭治郎は?」
「あやつは未だに岩を斬る為に悩んでおる。今日も岩の前に居るだろう」
鱗滝さんに会った私は鱗滝さんの刀を返した
「刀ありがとうございました。30ほど鬼を斬り殺したのに切れ味が全然落ちなくて驚きました……しかも刀を納刀するとうっすら水っけがつくのにも驚きました……世が世なら名刀いや、大業物とでも良いでしょうか。そんな刀をありがとうございます」
「鬼殺隊の日輪刀の技術は平安から受け継がれてきた物だ。普通の刀とは違う……ただ、これでも少し衰退してしまっても居る。最盛期の安土桃山時代と比べるとやや劣るとされておる」
「これ程の名刀でも劣ると」
「ああ。……だが、一度刀鍛冶の里に行ってみると良い。その蓄積された技術は量産品しか造らなくなった表の鍛冶屋とは一線を画す」
「それは是非とも行ってみたいですね……」
ロンメルは鬼と対話して鬼舞辻無惨の名前を鬼達が生命の危機にも関わらず絶対に言わなかった事を鱗滝さんに話した
「鬼達は鬼舞辻無惨の名を口にすると呪いが発動し、殺される。鬼舞辻無惨による呪いは鬼の再生能力を奪い、そのまま再生することなく朽ち果てる……そんな呪いだ」
「私より無惨の方が怖いと思われたのかもしれませんが、いやなかなか……恐怖の上書きも難しい」
「あまり鬼を虐めるな。その油断が命取りといつかなるぞ」
「私だってそこまで馬鹿ではありませんよ。ただ鬼からの情報と確認作業は必要だったのでしたまでであって……」
「まぁ良い、食事しながらでも話をしっかり聞こう」
ロンメルが夕食の準備を鱗滝さんとしているとボロボロの炭治郎が山から降りてきた
「あ! ロンメルさん! ご無事で!」
「うん! 最終選別に合格してきた!」
「おめでとうございます!」
「ありがとう炭治郎……おお、見違えるほど体が出来上がってきたね。肺や心臓も大きくなってる……全集中の呼吸も形になってきたかな」
「肺や心臓もわかるのですか!」
「あぁ、私は集中すると世界が透けて見えるからね……うん、良い肉付きだ」
「俺の鼻みたいな感じでしょうか」
「炭治郎は鼻が良いからね……一之太刀は言葉で教えるものでも無いし……とりあえず私がここを発つまでに組み手をずっとやろうか」
「は、はい!」
ロンメルはその翌日から炭治郎に木刀で稽古をつけた
炭治郎はロンメルに紹介したい人が居ると言われて炭治郎が特訓している大岩の前にやって来て
「錆兎! 真菰居るんだろ! 話していたロンメルさんが帰ってきたんだ!」
と叫んだが一向に現れない
翌日も翌々日も、炭治郎が話す少年と少女は現れなかった
凄い……錆兎よりも圧倒的に剣速が速い……こっちは真剣なのにロンメルさんは木刀……呼吸も一切乱れない!
炭治郎はロンメルとの稽古でロンメルの技量の高さを改めて感じていた
構えた瞬間に放たれる威圧感……本気の殺気を当てられると俺は一歩も動くことができなかった
地面が抉れるほどの踏み込み、そこから繰り出される一撃を首もとで寸止めされされて始めてそこに木刀があることに気がつく
俺とロンメルさんの間には20歩ほどの間が合ったハズだ
それを一瞬で詰めて技でも何でもないただの1振りを繰り出す
死を覚悟するには十分すぎた
走馬灯すら見えた
「一之太刀……見えたかな」
ハッとした
ロンメルさんが木刀を下ろすと同時に汗が吹き出る
「私はこの一之太刀を実際に見て、理解して、実戦を得て約10年の年月をかけて会得した……一之太刀、それ即ち視ることなり」
俺は一之太刀に圧倒されて腰が抜けてしまった
無駄という無駄を全て省かれ、後から来るその衝撃
首が繋がっているのが不思議でならない
「ま、参りました」
「今日から私がここを発つまで何度も一之太刀を炭治郎に繰り出す。何かを掴めれば幸い」
「お、お手柔らかにお願いします」
水の入った壺を背中に乗せて指立伏せをしていると
僧侶みたいな格好をした男性が山を登ってきた
「あのー、狭霧山はこちらでしょうか?」
「はい、ここが狭霧山です」
「壺を背負って指立伏せ……キツくないのですか?」
「キツイですよ……これで2000終わり!」
「あ、そうそうロンメルさんこれ、貴方の刀です。お受け取りください」
「……あのーお名前伺ってもよろしいですか?」
「鋼崎です」
「鋼崎さんは私の容姿を見てもなんとも思わないのですか?」
とロンメルが鋼崎の方を見るとひょっとこのお面が目の前に居た
え? なんだこいつ……今まで見てなかったけど鱗滝さんといいこの人といいお面つけるの流行ってるのか?
等と思いながらもロンメルの言葉に鋼崎はこう答えた
「異形の者とは聞いていました。私は気にしません。私はただただ良い刀を打つのみ……使い手にはこだわりません」
「あー、なるほどそういう人かぁ」
良くも悪くもこの人は職人だ
ロンメルは鱗滝さんの小屋に鋼崎さんを案内し、刀を渡される
色変わりの刀
日輪刀の別言い方であり、持ち主の資質に合わせた色に変わる不思議な刀
持ち主の練度によりその色の濃さ、深み等が変わってくる
濃いほど熟練とも言えるらしい
基本は育手の呼吸(鱗滝さんは水の呼吸使いなので普通ならロンメルも青色に変わると思われる)と同じ色になりやすいが、素質が違っていた場合は別の色にもなったりするそうな
ロンメルが刀を抜刀すると柄の方から色が変わり始め
青、紫、赤と3色に変わった
「おお! 色が分離しているのは始めて見た」
「深い青から深紅のごとき赤に変わり、真ん中は藤の様な紫とは……見事な」
上が鋼崎さん、下が鱗滝さんの発言であり、その刀の綺麗さにロンメルは惚れ込んだ
刀身は持ち手の方が冷たく、柄の先に行くほど暖かい
「炎の呼吸の適正も有ると見た……いやしかし見事だロンメル」
「ありがとうございます」
「ロンメルさん、刀は大切に扱ってください。大切に扱った上で折れたので有れば私の腕が悪かった。ただ大切に扱わないで折れた場合は私は二度と刀を造りませんのでよろしくお願いします」
「わかりました。この刀大切に扱わせて貰います」
鋼崎さんが帰った後直ぐに鎹鴉がやって来て
「北北東! 北北東、産屋敷邸二向ウ!」
と言われたので修行で出掛けている炭治郎によろしくお願いしますと鱗滝さんにお願いし、ロンメルは産屋敷邸に向かった
途中隠と呼ばれる黒い服を着た者と出会った
「お、おお、本当だ。馬の耳と尻尾が生えてる……本当に鬼じゃないんだな」
「はい、ご苦労様です」
隠の者は最終選別には行けないと思ったり、最終選別で心が折れてしまったり、怪我で隊員としてはもう活動できない者が鬼殺隊をサポートするために活動しているのだとか
「ロンメル殿は普通にご飯を食べるんだな」
「ええ、食べますが?」
「いや、やっぱり異形の者だから食べる物も違うのかと」
「ウマ娘って種族なんですけど、私は異世界より渡って来た者で、生活するためにも鬼殺隊に入らなければいけなかったので……耳や尻尾がありますが人とほぼ同じ作りをしていますよ」
「じゃあ何が違うんだ?」
「一番の違いは筋肉の質……密度が違います。人よりも発達した筋肉を持っていますので人よりも怪力であり、持久力、瞬発力もある。また耳が発達しているので遠くの音を聞くこともできますよ」
「なるほどな……魚焼けたぞ」
「いただきます」
隠の者と2日間案内され、別の鎹鴉がやって来て更に3日、また別の鎹鴉が来て2日ほど歩くと集落が見えた
「なるほどなるほど……鬼に察知されないように……まだ私も信用されてないのか道を覚えさせないように回り道、遠回りを幾つもさせられたか……さて、どんな話をするのでしょうね……」
ロンメル産屋敷邸に到着