ロンメルの受難   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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妊婦に無理をさせるのですか

「……つわりも治まったなぁ」

 

 生理が来なくなり、つわりも治り、お腹が膨れてきた11月頃、信長様から始めての茶母衣衆としての命令が下る

 

「種子島(火縄銃)を茶母衣衆全員に行き渡らせよ。次の戦いで使うゆえに」

 

 とのことだ

 

 火縄銃は現状ロンメルが種子島まで出向いて作って貰った1丁と平野様経由で仕入れた3丁をロンメルは保有しているが、1丁50貫(600万円)もする超高級品を30名に行き渡らせるには無茶であるがやるしかない

 

 学校の資金に手をつけるわけにはいかないので、信長様から貰った250貫を元手にロンメルは近畿を名物転がしをし、鍛冶屋を目指している学生達を動員して火縄銃の複製をして貰うことにした

 

 火縄銃に携わる職人を名物転がしで稼いだ金で堺衆に繋ぎを作り、火縄銃の職人を紹介して貰い、何度も職人の家に頼み込んで尾張へと引っ張ってきた

 

 職人の要望は作った銃を必ず30貫以上で買うといものでロンメルはこれを快諾し、職人に学生達に火縄銃の作り方を教えて貰いながら尾張での鉄砲量産化が始まることとなる

 

 そのまま堺や根来、国友等を巡ってどうにかこうにか35丁ほどの火縄銃を入手して尾張に帰還

 

 火薬や弾は平野様達津島十五家の方々から購入する運びとなり、どうにかこうにか運用までこぎ着けた

 

 妊婦なのに無理したロンメルは数日寝込むこととなる

 

 

 

 

 

 

 

 木銃で構えの練習や弾込め、実物を使って掃除の練習を学生や茶母衣衆候補生にさせながら年を越し、天文23年(1554年)になる

 

 学生の数は800まで増えており、信長様に言って周囲の土地を借りて建物を増設

 

 今では平屋10棟に鍛冶屋2棟、800メートル走ができる校庭と道場が3棟、射撃場と弓道場、馬小屋や家畜小屋に薩摩芋や米、野菜の実験農場が30石分ある広い学校へと増築された

 

 これはロンメルが運営はしているが、津島衆や織田家、熱田衆等の協力で成り立っているのでロンメルは雇われ校長みたいな立場であり、理事は津島十五家、熱田衆の上役、織田家重役で、理事長は信長様みたいな組織図となっている

 

 学費はなるべく安くし、給食から学食に変更、学生のための近場に宿舎も用意したりとロンメルの記憶にあるトレセンでウマ娘に必要なスペースを無くし、この時代に必要な物へと置き換えて造られていった

 

 ロンメルのお腹が大きくなり、臨月に差し掛かった2月

 

 情勢が動いた

 

 少し時間を遡り整理していこう

 

 まず織田弾正忠家と今川は信秀時代より三河を狙うライバル同士であったが、信秀の晩年は今川義元に押され西三河、知多半島の水野氏(もともと織田家寄りの家)を今川の傘下にする和議を結んでいる背景があったのだが、信秀が亡くなり、信長が当主になるとこの和議を破棄、その瞬間に山口親子が今川に流れ、水野氏が織田にすり寄る動きが発生した

 

 山口親子討伐に動いたのがロンメルの初陣であった赤塚の戦いであり、今回は織田家に戻ろうとする水野家討伐のために今川が動き、現在水野氏の本城諸川城を今川が包囲する形になっている

 

 これを助けるために織田家としては援軍を送りたいが、信長の居城の那古野城と諸川城の間にある寺本城が突然の今川に寝返り織田家と水野氏の連絡路を遮断

 

 更に前の萱津の戦いにて敗れた清洲織田家が不穏な動きをしており信長も出るに出れない状態に陥ってしまった

 

「そこでお前を呼んだ」

 

 臨月でお腹が張って苦しいなか信長様に呼ばれた理由は自慢の足と武力で美濃の斎藤道三の元へ書状を届けてほしいとのことだった

 

 内容は斎藤家から援軍を那古野城に入れて清洲織田家を牽制、その隙に信長本体が出陣して水野氏を助けるという大胆な作戦であった

 

 最初断ろうとも思ったが、信長曰く他に3名ほど同じ内容の書状を持たせて美濃に送ったのだが、安全策にと妖怪であるロンメルを送り、道三への顔見せをしてこいとのことだった

 

「義父も妖怪の噂を耳にしていたらしく一回会わせろとのことだ。これから美濃への連絡も考えると足の速いお前が適任だろうと余は思ったまでだが……いかがするか?」

 

「わかりました。ただ身籠っているのでいつものようには走れないので速度は出ません。明日には届けますがそれでもよろしいでしょうか」

 

「構わん。明日に届くのであれば十分だ」

 

「わかりました。では」

 

 信長様から書状を受けとると頭巾を被り、軽く身支度をしてから行商を装い美濃に入った

 

 

 

 

 

 

 

 

 関所を織田の家紋入りの書状を見せることで直ぐに突破し、美濃の稲葉山城へと到着した

 

「何奴!」

 

「織田弾正忠家より書状を道三殿へ渡すように言われている者だ。手紙を見せるゆえに城内に入れて貰いたい」

 

「拝見いたす……失礼した。案内する」

 

 門番から城内の小姓に引き継がれ、案内されること10分

 

 本丸のとある部屋に案内された私は武器を渡し、体を触られた後道三殿と面会する

 

「頭巾をとられよ」

 

 ロンメルは頭巾を取るとバサッと髪の毛が垂れ、馬耳が露になる

 

「ほほう……噂では聞いていたが本当に妖怪の様だな……鬼と聞いていたが違うようだ」

 

「ウマ娘という種族でございます」

 

「ウマ娘か……確かに馬の娘だな! 腹の子は誰のだ? 信長か?」

 

「はい、信長様の子であります」

 

「あやつただ者ではないと思っていたが妖怪を孕ますとはなんて男だ! ガハハ! さすがは義息子と言ったところか」

 

「こちらが信長様より預かった書状になります」

 

「うむ確かに……別の者からも聞いておる。援軍は安藤(美濃三人衆という有名な方の1人)と1000の兵を詰めさせる。信長には安心して背中を任すように伝えてくれ」

 

「わかりました」

 

「して、何か特技は有るか?」

 

「剣術と火縄銃を少々……後は算術でしょうか」

 

「その身で剣術も火縄銃も辛かろう。算術を見せてはくれぬか」

 

「わかりました。適当な1000までの数字を言ってください。すぐに足しますゆえ」

 

「暗算か……よし」

 

 ロンメルのレベルになると算盤を使わなくても1万までの足し算なら暗算できるが、安牌を取って1000までとした

 

 道三も元々油売りだったことから銭を扱うことが多く、算術は得意であり約1時間ほど連続計算をしたり、九九を披露したり、割り算を行ったりした

 

「面白かったぞ。次は万全な状態で城に来い。待っているぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロンメルが美濃から尾張に戻って数日後、安藤守就率いる1000名の兵が那古野城に到着したため、召集がかけられ戦となった

 

 ロンメルは信長から今回の戦は城で待機を言い渡され、茶母衣衆をロンメルが気にかけてきた鈴木千秋(ちあき)という16歳の男に指揮を任せ、茶母衣衆や他の織田の兵を見送った

 

 

 

 

 

 

 ロンメルが那古野城で待機している間に信長は熱田で一泊し、信光と合流した後荒れた海を無理やり渡海し、諸川城に到達

 

 この前に林兄弟(兄は筆頭家老です)がこの戦を不服として出陣拒否する事態が発生するが、信長は気にせずに出陣

 

 諸川城にて夜営し、翌日諸川城の水野信元と対談した信長の信光は軍儀を開き三方向による同時奇襲を行うことになる

 

「余も鉄砲を扱う! 鉄砲が扱える者は余に続け」

 

 翌日の2月25日信長は自ら鉄砲(火縄銃)を扱い弓の届かないところから攻撃を続けた

 

 茶母衣衆だけでなく学校にて火縄銃の扱い方を習っていた者達は織田家から支給された火縄銃を扱い約100名ほどが射ち手、その直ぐ後ろで掃除と弾詰めを行う者に分けてのライン方式を採用し、一方的に攻撃を続けた

 

 薄暗くなったところで今川方が降伏して信長の勝利で終わる

 

 ただ信長が可愛がっていた小姓が多数討ち死にしてしまい、涙を流して信長は悲しんだ

 

「時代は鉄砲だな」

 

 この戦で信長は鉄砲の有用性を改めて理解し、茶母衣衆を鉄砲母衣衆に改名し、人数を拡張するようにロンメルに帰還後求めることとなり、ロンメルは出産後、戦で活躍した茶母衣衆と学生達を全員鉄砲母衣衆に組み込まれ、ライン方式にするとはいえ人員の半数の火縄銃を確保しなければならず、さらにいきなり30人から200名に増えた母衣衆の管理とやることが山積みになり頭を抱えるのだった

 

 

 

 

 天文23年(1554年)3月1日

 

 戦後処理の書類を自宅で整理している最中に陣痛が始まり、産婆を呼ぼうとするが、痛みのあまりに声が出ず、誰にも発見されぬまま双子を出産

 

 幸い自然分娩でなんとかなり、小刀でへその緒を切断し、胎盤を引っ張り出し、一息ついたところで小者が気がつき慌てて産婆を呼び寄せてお湯で子供を洗い流した

 

「双子ですか……不吉の現れでございまする。女子は一旦寺に預け、別の方に育てて貰うのが吉かと」

 

「妖怪の国では双子は吉兆の証です。大丈夫です私が育てますので」

 

 戦国時代双子は不吉の現れとされ、別々に育てるか寺に預けるか、はたまた殺してしまう場合もあった

 

 ロンメルはこれを良しとせずに産婆の言葉を否定し、妖怪の国ではと嘘をついてこれを断った

 

 子供が生まれた旨を信長様に言ったところ直ぐに飛んで来て

 

「……髪がどちらも黄色いな。黄坊(きぼ)と黄衣(きころも)だな」

 

 と名前を付けていった

 

「こやつらは嫡子ではなく分家とする故に家督は継がせぬ……良いな」

 

「はい」

 

「……女子は人であったか……余の血が強かったか?」

 

「かもしれませんね。ウマ娘が産まれないことも多々あるので気にしてはいけませんよ信長様」

 

「うーむ、しかしお主抱き心地は良かった。まだ種を巻いてやろう」

 

「流石に今は孕まないので月ものが来てからにしてください」

 

「うむ! 子供は沢山いた方が賑やかで良いからな! また子供の顔を見に来るぞ」

 

 信長様は兄弟と仲がよろしくなく、母親にも嫌われ、爺と慕っていた平手様も家族とゴタゴタがあり自害してしまい拠り所が少なかった

 

 その為ロンメルの子供達を大層可愛がり、ロンメルは毎年のように孕むこととなる

 

 だいたい双子か三つ子だったため畜生腹と呼ばれることとなるのだがそれは後のお話

 

 

 

 

 

 

 

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