戦とは魂が高揚する
皆持てる全てを使い戦に挑む
手柄を挙げるため、出世のため、生き残るため、家族のため、民のため、主君のため、義のため……理由は様々であるが、1度乱戦となれば階級の上下、身分の上下等は無くなり実力と運、戦に向けてきた準備の3つで全てが決まる
戦術が悪い、時が悪い、油断していた……敗因は様々であるが勝つ時は3つの全てが完璧に近い方が勝つ
ただそれだけである
鬼という怪物との戦いも同じことが言える
肉体をどれだけ鍛え、準備し、後は僅かな運で全てが決まる
惡鬼滅殺の新たに刻まれた脇差を鋼崎さんから柱就任の時に貰い、今は前から使っている打刀と脇差の2本を帯刀し、任務をこなしていた
そして今、ロンメルの目の前に十二鬼月上弦の陸が目の前に居た
上弦の陸に帯が吸収し、姿を変える
「おい! そこのお前達! 店の前で何をやっている!! 人の店の前で揉め事を起こすんじゃねえ!」
炭治郎が先行して戦っていた様だが騒ぎで遊郭の人々が物陰から見たり、怒って出てきてしまっている
「煩いわね」
上弦の陸が怒りを露にしている
不味いと思ったロンメルは直ぐに行動する
「炎の呼吸……陸ノ型 円炎」
ロンメルは上弦の陸の攻撃を遠方より踏み込んで間合いを詰めると円を描くように全ての攻撃を叩き斬った
「ロンメルさん!」
「そこの人、危ないから早く逃げなさい……ここは戦場だ。死ぬぞ」
「ひ、ひ!」
「……! あんただね風変わりな鬼狩りは! 馬の耳に尻尾を付けた……ふうん、なかなかの美形じゃない気に入った。そこの男の目も綺麗だからあんたの亡骸と一緒に食べてやるよ」
「……炭治郎見えるかい? 目に集中するんだ……そしたら見える」
「はい!! 透けて見えます」
「良く頑張った……炭治郎もこちら側だ」
「何をごちゃごちゃと!」
「鬼に聞く……なぜ命を軽んじる? なぜ命を踏みにじる? なぜ相手を尊重しない? 何が楽しい……何が面白い……命を何だと思っている……人間だったお前にも痛みや苦しみ、悲しみを感じていたハズだ……なぜそれがわからない」
「ごちゃごちゃごちゃごちゃと煩いわね! 昔の事なんか覚えてないわ! あたしは今鬼なんだからね!」
「鬼は老いない! 病気にならない! 何も失わない! そして美しく強い鬼は何をしてもいいのよ!!」
「わからなくもない……が、私は武士だった者故に人側に立たせてもらう……私が生きるために」
「ほざけ!」
血鬼術 八重帯斬り
帯が八重に正面に展開し、それが各々ロンメルを切り裂こうと動き続ける
スッパン
「は!? え」
「甘いんだよ」
ロンメルは型を使用せずに上段からの振り下ろし、振り上げの2つの動作で帯を全て斬り裂いた
ダン
ロンメルが距離を詰める
「こ、この!!」
帯が再び伸びてロンメルを襲うがロンメルは横に回転しながら全てを斬り伏せる
「貰った」
グニー
「あ、あんたなんかに首を斬らせるものですか!」
首を帯にして柔らかくそしてしなやかにすることでロンメルの斬撃を防ぐ
「残念想定済みですよ」
ロンメルは腰から脇差を抜刀し、伸びきった帯の首を反対方向から刀で削ぐ様に切断する
「な!?」
「弱いね貴女」
ボト ゴロゴロ
首が落ち、体と泣き別れする
「あ、ああ! 首が!! 斬られた!!」
「これが上弦の陸? 弱すぎでしょ……さっさと消えなよ……それともまだやる? 首が落ちてるから無理かぁ」
「まだ私はやれるもん! 絶対あんたなんかに負けないんだから!」
「いや負けてるじゃん。首落ちてるし……」
ロンメルは違和感に気が付く
この鬼……体が崩れない
「まだ! 私はやれるもん! やれるんだもん!! わぁぁぁぁん!! お兄ちゃぁぁぁん!!」
「うぅううううん」
斬ったハズの女の鬼の首から新たな鬼が生えてくる
「炭治郎逃げろ!」
ロンメルは新たに生えた鬼の首を斬る為に突っ込む
ガギン
「ぐう!?」
ロンメルは初めて鬼に打刀を防がれた
相手は2本の鎌でロンメルの刀を防いでいる
「堕鬼お前自分で頭をくっ付けろ。たく……世話のかかる妹だ」
(こいつ一瞬で女の鬼の頭を乗っけてから私の攻撃を防いだ!?)
ガギンと刀を男の鬼が吹き飛ばすと追撃がやって来る
「まぁ見えてるんですけどね」
ロンメルはそれを避けるとばく転をして距離を取る
「これは本気を出さないと危ないねぇ」
ゴキゴキゴキとロンメルの肉体から音が響き渡る
筋肉が膨張して1周りほど大きくなった
「おいおいお前鬼じゃないならなんだ? 人間ではねぇな」
「お兄ちゃん! こいつが私の首を斬った風変わりな鬼狩り!」
「そうかお前が妹を虐めるのか……そうかそうかそれは許せねぇなぁ」
町の人達が騒ぎを聞き付けて野次馬が集まり出した
炭治郎が必死に避難させようとしているが聞く耳を持たない
「愚民どもが……」
「お前……いいなぁ……顔がいい……整っていて肌もシミも痣も傷もねぇんだな……肉付きもいい。最初と比べて大きくなったのはありゃなんだ? 俺は太れねぇから羨ましい……あぁ妬ましいなああ妬ましいなああ! 死んでくれねぇかなあ!」
「お兄ちゃんこいつだけじゃない! 最低こいつを含めて5人鬼狩りがいる!」
「そうかぁそうかぁ可愛い妹が足りねぇ頭を必死に働かせて一生懸命やってるのに……取り立てるぜ! 俺はやられた分は必ず取り立てるぜぇぇえ! 俺は妓夫太郎だからなぁぁぁあ!!」
妓夫とは遊郭にて客引きや金の取り立てをする男の役職名である
「となると堕鬼が花魁で妓夫太郎が妓夫か……クックックッセットで上弦の陸ってことか? ……愚民どもさっさと逃げろ! ここは戦場ぞ!!」
次の瞬間2本の斬撃が飛んで来た
ロンメルはそれを打刀で弾くと建物の一部が切り裂かれ崩れ落ちた
「き、きゃぁぁぁ!!」
斬撃は誰の犠牲者も出なかったが、建物がいきなり崩れたことにより野次馬達は蜘蛛の子を散らすよう逃げていった
「お前わざと建物を斬ったなあ」
「ええ、そうでもしないと野次馬なんて身の危険を感じないと逃げないもの」
「へぇえ、随分な鬼狩りだな……柱だろ。名前は」
「ロンメル」
「ロンメルかあ……覚えたぜぇ」
「早く殺してお兄ちゃん!」
「わかってらぁ! お前は他の鬼狩りを倒してこい」
「約束だからね」
「ま、待て!!」
炭治郎が堕鬼を追いかけ、ロンメルと妓夫太郎の一騎打ちが始まる
「よし! 人質や妻達は無事回収できた! 善逸、伊之助は早く避難しやがれ!」
「祭りの神(宇髄のこと)! 俺はやるぜ! あの帯女を倒さねえと気が済まねえ!」
「……」
「好きにしやがれ! 須磨、まきをお前らは遊郭から脱出し雛鶴と合流しろ。雛鶴の奴毒を飲んで体調を崩しているからな! 頼んだ」
「「はい!」」
「さぁド派手に鬼退治といくぜ!!」
宇髄達が堕鬼の血鬼術により行方不明となっていた嫁達や遊女達を取り戻し、ロンメルに合流するべく動き出す
「お前違うな……今まで殺した鬼狩りの柱とは違う……お前生まれた時から特別な奴だったんだろうなぁ……選ばれた才能だなぁ……妬ましいなぁ一刻も早く死んでくれねぇかなぁ」
「クックックッ……確かに私は特別だが……生まれた時からは違う……どちらかと言えば落ちこぼれだ……同期の奴らはどんどん先に行くのに対して私はどんどん落ちていった……偶々神様が努力する場所を用意してくれて、死ぬほど努力をして、吸収して……今がある!」
ロンメルはもう40年近く前の過去であるまだ何処にでもいる遅いウマ娘だった頃を思い出していた
6月という未勝利の終盤にスリーアウト(9着以下3回、成立すると2ヶ月出走停止処分)をしてしまった駄バでしかなかったロンメルだが戦国の世を経験し、この世界では全集中の呼吸という技法を会得したことにより元々持っていた武の才能が開花していた
今では柱にまで登り詰めるまで至る
それはそれはまるで鯉から竜になるように辛く険しい濁流の滝を登っていった
それがあるから今のロンメルがいる
上弦の陸の攻撃を全く受け付けない技量を持った武人であった
「人生50年……私は命を燃やし続ける」
「あ? 20もいってねぇガキが何言ってるんだ? 死ねや」
妓夫太郎の攻撃にロンメルは打刀による一刀流の剣技で対応するが時折見せるトリッキーな動きに脇差を抜刀術で一瞬出しては防いでいく
「何のつもりだあ!?」
「うーん、時間稼ぎ……貴方の首を斬るのは時間を掛ければいつでもできる……弱くはないし、今まで会ってきた鬼の中でも飛びっきり貴方は強いよ……ただそれだけ。私が勝てないとは思えない」
「あぁ、お前も頭が弱い感じか……じゃあ一撃でも入れてみろよ」
「これでいいかい?」
ロンメルの一撃により妓夫太郎の腕が吹き飛んだ
「は?」
わからなかった……今の一撃を感じることができなかっただと……いつ前から後ろに移動した!?
「もう一度聞くが人間か? 妖怪の類いじゃねぇのか?」
「ある人は人と言ってくれたけど……妖怪に近いかもねぇ……怪異正八位下蝦夷地守護東狐ロンメル……いざ参る」
ち! こいつも化物の類じゃねぇか……何で人間の味方してるんだ……しかし不味い最後の一撃は殺気も何も感じなかった
しかもこいつ戦闘を全力で楽しんでやがる……楽しむほど技量が上だと言いてぇのか……妬ましいなああ妬ましいなああ
「ならこの技ならどうだよ!」
血鬼術 跋扈跳梁
至近距離の間合いならこいつが効くハズだ
一撃でも入れば毒で殺れる
「残念、無駄だよ」
炎の呼吸 陸ノ型 円炎
このやろう球体状に斬撃を生み出して防ぎやがった
「やっぱり私はこれが一番あってる気がするなぁ」
「なんの! 話だ」
「一之太刀」
スパン
「な!」
嘘だろ俺が斬られた!? 首を!?
こいつ……今まで会ってきた柱と次元が違う
ドクン
なんだ……この感覚は……目の前の女の姿が違う侍に見える
これは……無惨様の記憶!?
「ふざけるなあ!!」
首をくっ付けた俺は奴から間合いを取った
汗が止まらねぇ
なんだ……鬼になって初めて俺は恐怖しているとでも言うのか……
「そんなハズはねぇ!!」
俺は攻撃を続ける