「いろはにほへと ちりぬるを……」
いろは歌を歌いながらロンメルは歩きながら鬼の首を切り落としていく
一歩進むごとに筋肉が膨張し、全身に更に織田木瓜の痣が浮かび上がる
全身から蒸気が放たれ刀は赫刀へと変わる
「あぁ信長様、私はここまで到達致しました。義輝様に今ならば勝てるでしょうか……煉獄さん、今ならばあなたを倒せるでしょうか……」
ロンメルは凄まじい威圧感を放ちながら進む
理性が吹き飛んで居るはずの鬼が一瞬たじろぐ程の威圧感
味方であるはずの鬼殺隊の隊員は怯えながらロンメルの後ろを着いてくる
「おや? おやおやおや? 私の周りは危ないですから近くに居ない方が良いですよ」
「ひぃ! し、しかし柱のロンメル様に着いていかなければ弱い我々は死んでしまいます」
「大丈夫、あなた達が協力すれば雑魚鬼位は倒せる……そうだねぇ……2時間。2時間だけ耐えればなんとかしてあげるよ。私も周りを構っていられる程余裕が無くなるかも知れない……そうなった時、申し訳ないけどあなた達は足手まといでしかない。だから離れて欲しいのだけど」
するとカアッカアッと鎹鴉が飛んできて
「胡蝶しのぶ死亡! 胡蝶しのぶ死亡」
と報告が入る
ロンメルの全身の血管が浮き出る
「そうか……どうか安らかに……そして今晩は上弦の壱さん」
「「「!?」」」
き、気がつかなかった!?
ロンメル様が言うまで全く存在感がなかったぞ!?
「な、なぁお前ら気がついていたか?」
「い、いや、全くわからなかった」
「認知した瞬間には、吐きそうだ……凄まじい殺気が!?」
俺の名前は山城……階級は乙……柱から数えて3番目に強い剣士だが、今にも心が折れそうだ
目の前ではロンメル様が戦い始めている……上弦の壱と
侍みたいな目玉が6つもある鬼と互角に戦ってやがる……化物だ……両方とも化物だ!!
「山城! ここから離れるぞ! ロンメル様は俺達に攻撃が来ないように立ち回ってる! 邪魔でしかないんだ! 俺達は!!」
「あ、足がふ、震えて……」
足が上手く動かない……ヤバいヤバいヤバい! 動け! 一刻も早くこの場から離れなければ死ぬ!!
佐々木と田辺の2人が俺の両腕を掴んで一気に奥へ逃がしてくれた
「はぁ、はぁ……あ、汗が止まらねぇ」
「な、なんでロンメル様はあんな攻撃の中笑ってられるんだよ」
ロンメル様は上弦の壱の攻撃の前に笑っていた
笑いながら攻撃を続けていた
恐ろしい速度の攻防は俺達には全く見えなかったが……
「み、見なければ……怖くても恐ろしくても……ロンメル様の勇姿を……俺達でも攻撃のチャンスが来るかもしれない……だから見るんだ!」
その瞬間俺達が隠れていた壁の上半分が切り裂かれた
「「「ひいぃ!」」」
どうやら上弦の壱の斬撃が飛んできた様だが俺達は腰が抜けてしまいもう動くことができない
「ロンメル様! ロンメル様! 勝ってください!!」
情けないことに俺達は願うことしかできなかった
「貴様……名を何と言う……」
「怪異正八位下蝦夷地守護東狐ロンメル」
「正八位下……官位持ちか……室町の頃の役職であるな……なぜ今の時代に室町の官職を出すのだ……私を愚弄しているのか?」
「名字を怪異又は砂山……名を東狐及びロンメル……種族をウマ娘及び妖怪なり」
「妖怪……数百年生きてきたが妖怪等は始めて見たな……」
「貴方の番です……名を教えてください」
「継国巌勝……私が人で有った頃の名だ。今は黒死牟と名乗っている」
「黒死牟……」
「ロンメル……」
「「素晴らしい。透き通る世界がみえているな」」
ロンメルは目の前の鬼が透き通る世界がみえていると感じた
同様に黒死牟もまたロンメルが透き通る世界に踏み入れていることに気がついた
「ああ、練り上げられた威圧感、殺気……まるで芸術の様だ……私が知り得た中でこの領域に踏み入れていたのは私を入れても3名だけだった……1人はト伝先生、1人は足利義輝様、そして私だ……未だに発展途上なのが惜しいのですが、黒死牟……あなたは違う……1つの到達点にいる」
「数百年と生きてきてこの領域に踏み入れた人物はお前の他に1人しか知らぬ……なぜ室町の足利将軍の名が今出てくるのだ……」
「私は世界を渡る異能を持っているのです。戦国の世で暮らしていた頃にト伝先生の門下となり、義輝様に奥義を習った……それが一之太刀……貴方の言う透き通る世界です」
「ほう……興味深い話だ……ロンメル、お前を喰らえば私も世を渡る事ができるのか?」
「わかりませんが試してみます?」
「面白い……私の闘気を前に心拍が全く変わらず……いや、全身に痣を出し、刀を真っ赤に染める程の力を出してなお有り余る体力には感服すら覚える……ロンメル。鬼となり、あのお方に使っていただこう」
「生憎私は鬼になるつもりは無いよ……自身の持つ肉体でどこまでいけるか試したいからね」
「……愚かな」
「……命とは限りある故に美しいのですよ……まぁここら辺は貴方と私が絶対に交わらないことでしょうね」
「……ああ、では参ろう」
「簡単に殺されないでくださいね」
次の瞬間両者の刃が混じり合う
素晴らしい……種族が違うとしても練り上げられた筋肉、鍛え上げられた臓物、血液1滴に至るまで操作する集中力……これでまだ未完成と言うのか……
「月の呼吸 壱ノ型 闇月 宵の宮」
「水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦」
初見で私の技を防ぐとは見事な
過去に戦ってきたどの柱よりも強い……奴以来の剣士だ……数百年私は奴の影を感じながら生きてきた
今、奴に最も近い剣士が目の前に居る
「月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月」
「炎の呼吸 陸ノ型 円炎」
見事な……炎の呼吸と水の呼吸を同じ練度で扱う剣士等見たこともない
肺が特殊なのか?
常人の3倍には大きな肺だ
種族が違うことを加味しても人と同じ大きさの者が持って良い肺ではない
心臓もそうだ……奴の胸が左が大きく見える程膨張した心臓
骨密度も常人の10倍は有るであろう
血管1つ1つが太く血流も並みの柱よりも特段早い
素晴らしい逸材だ
それ故に惜しい
鬼となれば私をも超える存在となるだろう
永遠に切磋琢磨し、奴をも超える事が可能だろう
可能性が有った猗窩座が死んだ今、まともな上弦も私しか居ない
それ故に目の前のロンメルを鬼にしたいと思ってしまう
「……なぜ笑う?」
ロンメルは小さな切り傷はあれど戦闘能力に全く陰りは無い
「なぜって……素晴らしい剣技を今、この時に見て学ぶ事ができているからだ! 成長を感じられる! 更なる高みに行ける! これを笑わずに居られるかぁ!」
「戦闘狂め……だがそれも良い……」
「水の呼吸 拾ノ型 生生流転」
「月の呼吸 参ノ型 厭忌月 銷り」
私の斬撃が届いた瞬間に水の呼吸の技で受け流した
見事!
私の攻撃は血鬼術の影響もあり小さな刃が不規則に付いて回る
更に小さな刃の大きさ、長さも1つ1つ変化する
僅かな付けた傷も呼吸により直ぐに止血し、血の一滴も無駄にしない……
……痣の数が増えてきている
戦いながら成長しているのは間違いない
ただ同時に私も成長を感じられる……この感覚は久しくなかった
「……素晴らしい。やはりロンメルお前は鬼になるべきだ」
「……何度言われようと私は人として死ぬ! 長く生きる意味は無い」
「惜しい……惜しい……ならば少しでも長く私に喰らい続けよ……月の呼吸 伍ノ型 月魄災渦」
「炎の呼吸 漆ノ型 炎上爆雷」
動作も無く放たれた私の攻撃に昔には無かった炎の呼吸の漆ノ型の技で直線上に有った全ての斬撃が消された
そのままの勢いで私の腹に一筋の傷がつけられる
焼けるように痛い、熱い
その傷も再生が何故か遅い
「その日輪刀……ただの日輪刀ではないな!」
「真っ赤染まっているのは私の体温と力が反応しているから……これで斬られると鬼は再生しないらしいな……まぁ無惨には効かないだろうけど」
「なるほど……これでお前と私は一時的に同じ領域となったか」
「互いに怪我を負えば再生しない……侍なのであろう? まさかそれくらいの不利で逃げ出したりはしないであろうな」
「……ほざけ」
私の攻撃に遠距離の攻撃は無い
遠距離に見える攻撃も斬撃が飛ぶ訳でもない
どれも刀の延長線上の攻撃でしかない
対して黒死牟の攻撃は殆どが斬撃である
私はこの攻撃を流しながら吸収を始めていた
まずは呼吸を切り替える
「ホオォォォ」
そして真似をする
「月の呼吸 壱ノ型 闇月 宵の宮」
そこには確かに斬撃が飛び出した
「……なに」
「動揺したな」
ロンメルの追撃により左太ももに薄く傷がつく
「……数百年……私と同じ呼吸をした者は居なかった……感動しているのか……私が……」
「月、炎、水……更に混ざり昇華しなければ」
「見せてみろ……高みとやらを」
月の呼吸同士がぶつかる
方や斬撃のみの三日月の様な綺麗な線が
方や不規則な刃が付いた不定形な線が
混ざり合う
斬撃が飛び回り周囲一帯の柱や壁がドンドン斬り裂かれて崩れていく
「月の呼吸 陸ノ型 常世孤月 無間」
「月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月」
ドンドンロンメルは今見た呼吸を吸収していく
技を受ける度に月の呼吸をコピーしていく
ロンメルは
「クックックッ……楽しいなぁ!」
満面の笑みを浮かべていた
「もっと見せろぉぉお!!」
「どちらが鬼かわからぬではないか……高揚している……心地好い……それ故に惜しい……これ程迄に研鑽し、極めた肉体と技が……この世から消えるのだから……嘆かわしいとは思わぬか」
「ようやく殺し合いをする気になったか!! あぁ、思わないねぇ! まだ未完成な肉体では死ぬ気は無いからねぇ!!」
血の鉄分が皮膚を硬化させる
織田木瓜の痣だらけだった腕が真っ黒に染まる
「なんだその腕は……」
「知らん!」
ロンメルの速度が更に上がる
体からは水蒸気が上がり続けしゅううと音を立てて
「どうやら速度は上回った様だぞ」
腕の次は足が黒色に染まる
鋼の様な光沢をも備えてまるで本当に鋼の様になったかのようである
「……詫びよう……心のどこかで手加減をしていた様だ……死ぬなよ」
次の瞬間予備動作無しの斬撃がロンメルを襲った
ロンメルは上がっていた肉体の五感による感知能力で刃が届く瞬間に刀を振るい急所の一撃のみ外すが、肩、腹部、真っ黒に硬くなっていたハズの腕と足にも大きな傷がつく
腹部は薄皮一枚で済み、臓物がこぼれることは無かったが、ダメージは大きい
「虚哭神去……この刀の名だ。これは私の肉体で造った刀だ……認めた者にのみこの太刀の姿を見せる」
その太刀……いや、大太刀は3本に枝分かれした刀身に幾つもの目玉が浮かんでいた
「クックックッ……楽しくてしょうがないねぇ!」
「戦闘狂の相手は疲れるが……それも今宵は心地好い……いざ、参る」