今回の戦で側近や母衣衆候補が多数に亡くなってしまったことで信長は学校から人材の登用を積極的に行った
藤吉郎という学校での成績が飛び抜けていた者が信長様の小姓へとなったり、成績上位者が軒並み信長様が引っ張っていき、200名ほどが卒業となった
卒業者には卒業証書を発行し、算術や文字の読み書き、一定の武術を修めた事をロンメルが認めましたよという物で、これが有れば織田家でもある程度使えますよという証明書でもある
卒業証書を貰った人材が織田家で即戦力として機能し始めると商人達も証書を貰った人材を欲しがり、信光様や今回戦で織田とベッタリになった水野様、更には美濃の斎藤道三もこの制度は良いと認め、多方向に一定水準以上の人材を送り出す機関となる
ただ基本織田家が支援していることもありよそに行っても親織田派を形成するので織田家にとってデメリットが全く無いのだ
減った学生を補充すべく美濃や清洲方面にも人材募集をかける
積み上げられた書類の山に悲鳴をあげるロンメルだが鉄砲母衣衆の幹部に賃金を支払って学校業務の手伝いをさせることで過労死になるのをなんとか防ぐのだった
ただこの幹部達はこのデスマーチを経験し続けることで組織運営を学び、武将として活躍していくこととなる
人材が同族同士の内乱で分散してしまっている信長だが、丹羽長秀、森可成、藤吉郎や犬千代等の若い世代や絶対忠誠を誓っている幼い頃から私生活を共にした馬廻り衆、学校から排出された優秀な人材のお陰でなんとかなっていた
こんなに人材が居ないのは弟の信行の方に有力な家臣が行ってしまったというのがある
柴田勝家とか
とにかくこういった理由から信長は実力主義を推奨したと思われる(古い家臣が居ないから仕方ないね)
ただ同じ頃甲相駿三国同盟が締結されており、今川は後方の憂いを絶つことに成功していた
やることが多くて死にかけているロンメルをよそに7月頃また情勢が動く
清洲城にて全織田家の上司である尾張守護の斯波義統が織田信友の手により暗殺される事件が発生
息子の斯波義銀が信長のもとに転がり込み助けを求めた
これに対して信長は今攻め時ではないが、攻めなければ義が無いとされるため弟の信行に付いていた柴田勝家を説き伏せ弔い合戦を主導させた
この時期信行に付いていた柴田勝家とは関係が悪化していたのだが、守護の弔い合戦となれば話は別であり、かかれ柴田のなの通り大活躍清洲織田家がほぼ再起不能になるほどの打撃を与えたた
この一通りの事件を安食の戦いとされ、信長は出陣しなかったものの、尾張統一の大義名分を獲得した重要な事件だった
その頃ロンメルは何をしていたかと言うと
「本当に速いな。名馬よりも速く駆けるとは」
斎藤道三の稲葉山城にて馬と競争が行われ、ロンメルが圧勝していた
その他にも剣術や火縄銃の射撃を披露し、その腕前を道三は
「酒呑童子に劣る者なからず。武だけで古今無双の豪傑なれど知も高い。まだまだ伸び代がある底なしの怪物」
と評価した
これに
「美濃にいるどんな名馬よりも速く駆ける馬の耳としっぽを持つ金髪の女の妖怪の名を論目流」
と書物に書き残し、これが初めてロンメルの名が織田家以外から出てきた歴史書物であり、尾張の妖怪とイコールにされ、尾張の妖怪=ロンメルという形になる
「に、鶏の繁殖がようやく可能になった……1年近くかかってしまった……」
鶏の繁殖と薩摩芋を増やすことに成功しようやく食用まで漕ぎ着けたロンメルは肉料理を推奨し、味噌焼きや塩焼き、たまり醤油なるものを寺社が知っていると聞き、ロンメルは教えて貰うために今川領土の駿河まで旅して教えを乞いだりもした
勿論今川に信長の家臣が来ているとバレて一悶着
「貴様が尾張の鬼だな……話は聞いているぞ」
と40歳位の侍と数名の供回りに寺社前の広場にて囲まれた
「用件はなんだ? 今川を密偵に来たのか?」
「密偵……あ!」
「なんだ?」
「醤油が有るかもしれないと聞いて誰にも言わないでここに来ちゃったわ……たぶん尾張で大騒ぎになっているかも……」
「醤油? 醤油とはなんだ?」
「私も噂しか聞いてませんが玉味噌を作る過程で出るたまりをたまり醤油と呼ぶらしいのですが、私が知っている醤油と違うかも知れませんが醤油は醤油……それを使えば料理が一段と美味しくなるのですよ!」
「お、おう……そうなのか……それがこの寺社にあると?」
「私の鼻が正しければここで味噌を作っているハズなのでたまり醤油もあるのではないかと思いまして……鎌倉の寺社には確実にあるらしいので」
「食の為にここまで来たと? 敵地にか?」
「食の為と言いますが食がなければ人は育ちませんよ! 上手いというのは体に必要な栄養を取れている証拠! それが血となり肉となり体を作るのですよ」
「鬼は物知りなのだな」
「鬼ではなくウマ娘ですよ……ほら」
頭巾を取り耳を見せる
「ほぉ……確かに馬の耳だ」
「で、住職教えてくださいますか? 50貫用意したのですが」
「50……」
「住職」
「……ここは今川様が治める土地ですゆえ敵方の織田家に渡す技術はございませぬ」
「……残念です。じゃあたまり醤油を売ってください」
「……それでしたらまぁ」
ロンメルはたまり醤油を買うとその侍や供回りの人達にもたまり醤油の入った瓢箪を渡した
「敵であろうとも戦場で万全の状態で戦いましょう!」
「……気遣い感謝する」
「一応名前をお伺いしても……私はロンメル、又の名を砂山東狐と言います……ロンメルと呼んでください」
「岡部元信だ。……敵へも気遣いをし、供回りにも配慮するその姿勢気に入った。論目流殿、一度親方様に会わぬか? 太原様もお主の事を気になっているからな」
「敵方の大将に会わせていいのですか? 妖怪ですよ? 化かして討ち取るかもしれませんよ?」
「それはしないだろう。だったら既に私と戦っているだろうに」
「……わかりましたお会いしましょう」
ここで今川家と織田家(信長)についての違いについて軽くまとめてみよう
ロンメルが見てきた信長の方針としては兵は銭で集める
物流と銭の流れを読むことができ先進的な考えを持つ信長は代替わりして直ぐに熱田や津島にて商売の自由を与えることで豪商達を味方に付けること、そこからの税で膨大な資金力を保有している信長はその銭で火縄銃や武器そして兵までも集めて常備兵を作り上げた
ただ兵は居るが指揮官が他の織田家と分散しているので司令官不足に悩まされているのが欠点
対して今川は仮名目録で与親、寄子制度の強化し、絶対服従のピラミッド社会を作り上げ、流民を兵に転換することで数万の兵を動員可能としたのが今川義元である
欠点は流民を抱え込むことにより限界が来たらどこかと必ず戦わなければならないかそのまま自分の兵を養うことにより自壊してしまうという大きな欠点があった
そもそも守護大名から戦国大名に転換していったのは流民問題という当時の社会現象を力で解決できる者を民衆が求めた結果であり、武田信玄は流民を鉱山の労働力にしたり、日本住血吸虫病で普通に田を作ったら死んでいく奇病の補填に送り込んだりしてすり潰し、上杉謙信は国民の食い意地を守るために関東遠征を行ったりしていたりする
北条さん? あそこは色々と例外だから
一向宗? 難民が宗教にしがみついたのが石山本願寺以外の一向宗で加賀一向宗や三河一向宗なんかが良い例かな(最悪な例とも言う)
石山本願寺? あそこは完全に指導部が制御している戦国大名と同じくくりだから
その絶対的なピラミッド構造は先進的とも言え、乱戦でなくても普通に機能する仮名目録を作った今川義元と太原雪斎はやはり凄いとなる
そんな2人がロンメルの目の前に居た
「顔を下げぬか」
「信長様の家臣故に下げませぬ」
「ふふ、なかなかの忠誠心の様だな」
義元は周りに居た家臣達が刀に手を掛けたのを見て扇子で納めるように合図した
「馬の耳にしっぽが本当に付いているのだな……確かに妖怪だ」
「坊、ここは拙者が……論目流とやらに問うが天下とは何ぞや」
「天下ですか」
「左様、天下を治めるために各地の大名が死闘を繰り広げている。拙者は天下三分の計こそこの乱世を終わらせる方法だと思うが」
「……私が元居た世界の話になるけれど……同じ民族同士で国を分けると外敵が来たときにバラバラに支配されてしまいますよ」
ロンメルは書き物が欲しいと言って義元様に願うと紙と筆を渡された
ロンメルは簡単な世界地図を描く
「もし私の居た世界とこの世界が並行世界であるのならば地理は同じと思います。私が居た世界にも富士山はありましたし、中華も日ノ本もありましたので……」
ロンメルは南蛮と呼ばれる国が恐らくここら辺と欧州の場所を指差した
「かの国は日ノ本と違い多数の民族と多くの国が存在します……いわば大きくなった日ノ本と同じ乱世が続いておりますが、国としては統一されています。それらは王と呼ばれます。中華では多数の王を従えると皇帝と呼ばれるようになりますが、今皇帝がいるのは中華とこの欧州の国だけです。日ノ本はどれだけ統一しても王にしかなれません。王は皇帝に逆らう力はありますが王未満では各個撃破されておしまいでしょう。確かに国を安定化させるために天下三分の計は良い考えだと思いますが長い目で見ると国を割るのは得策ではないかと」
「妖怪の世界にも日ノ本はあったのか?」
「はい。といいますかウマ娘という種族と人が共存してきた歴史なのでこの世界の歴史は宛にはできませんが……」
「なるほど……妖怪の世界の日ノ本は誰が治めていたのだ?」
「天皇陛下でございます」
「天皇か……しかし天皇や貴族は武家社会になってから権力は地に墜ちて久しいが」
「欧州の国々ではその繋がれてきた長い歴史が物を言います。武家社会になって300年と1000年以上の長い歴史ある天皇家では後者が王と見られます。どれだけ権力が無かろうと」
「天皇家が作る世が天下だと言いたいのか?」
「いえ、そもそも天下統一は過程段階でしかなくその後が一番大切です。乱世になった原因は幕府が弱すぎたこと、守護大名の力が強すぎたのが原因です。多くて100万石……それも3国以上の国を持った大名が居た場合幕府が強くなければ割れてしまいます」
「なるほど」
「妖怪の世界の話になりますが、私達の世界にも武士は居ましたし、上手く統治すれば250年は平和の時代を作ることは可能でした。ただ永遠に続く国はありません。外国……南蛮やその他の国による外圧に負けて再び内乱となり武士の時代は終わりました」
「それほどまでに南蛮や外国とやらは強いのか?」
「平和になれば武力は要らなくなりますが今世界は大航海時代に突入しつつあります。日ノ本も早急に統一し、外敵に備えなければいつ元寇の再来が起きても不思議ではありませんよ」
「ならばこの今川義元が天下を取って見せようぞ」
そう義元は家臣の前で宣言し、家臣達は喝采をあげる
「論目流とやら、このままなにもせずに返すのも惜しい……勝負をせぬか?」
「勝負ですか?」
「左様、お主の武功はここまで聞き及んでいるが底が見えん……そこで1本勝負を挑ませて貰おう」
「条件は?」
「木刀にての一騎討ち……木刀が手から離れ地に落ちるか参ったと言った方が負けだ。勝ったら今川領内に来たことは不問とするが、負ければ余の下につけ」
「……」
ロンメルは少し考えた後に
「わかりました。お相手致します」
「うむ、相手は余の嫡子氏真にさせよう」
「今川氏真です。よろしく」
義元の斜め前に座っていた若者が挨拶をした
見た感じイケメンで引き締まっており、運動ができそうな感じであった
「よろしくお願いいたします」
ロンメルはここで初めて頭を下げた
家臣達はざわついたが義元は楽しそうに扇子をヒラヒラと扇いだ
鍛練所に場所を移し、木刀を貰い軽く振るう
「手入れの行き届いた良い木刀だ」
今川氏真と対面し一礼、構えを取る
「はじめ」
速攻
ロンメルは地面が抉れるほど深く踏み込み、氏真に対して突きを繰り出す
氏真は驚いた顔をしながらもこれを木刀の腹を上手く使い流す
ロンメルは片手で側転し体勢を立て直すとそのまま斬りかかる
10手ほど斬り合ったのち鍔迫り合いとなりロンメルの怪力で押し込んでいき、ふと力を抜く
抜けた瞬間に体勢が崩れた氏真の足を払い、地面に尻もちをした状態にして木刀を首元に添える
「参った」
「勝者論目流」
無事ロンメルは勝利することができた
その後酒盛りとなり、ロンメルの酒豪ぷりに流石妖怪とよばれ、今川家臣達にもロンメルは認められるのだった
「馬の妖怪論目流、今川領内にて岡部が見つけ、今川館にて氏真と一騎討ち。妖怪には一歩及ばず論目流が勝つが見事な試合なり。織田方なのが実に勿体ない逸材なり」
と評価された