ロンメルの受難   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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暗殺の章
実験室の時間


 ガチャリ……ギギギギギ

 

 その扉はヌメっと湿気っているような、柔らかいような……なんとも言えないさわり心地であった

 

「さて、今回はどんな世界かなぁ」

 

 ロンメルはゆっくりと進む

 

 白い霧のような世界をゆっくりと進み

 

 気がついたら

 

「んん?」

 

 どこかの実験施設の中の様な近未来的な部屋の中の様だ

 

「……」

 

「……え?」

 

 部屋には私の他に男性が居た

 

 そしてガラスの様な板の向かい側には女性が居た

 

「……あれ? これはちょっと想定外なんだけど」

 

「ひ、人がいきなり現れた!?」

 

 女性は慌てて部屋から出ていき、ロンメルと男性だけがその部屋に残された

 

「……あのー、ここどこでしょう?」

 

「驚いた。私が一切察知できないとは……見た感じ子供だよね。どうしてここに?」

 

「扉を通ったらここに居たと言えば良いでしょうか……ここがどこか教えてくれませんか」

 

「そうだね……ここは人体を使って反物質を生成する実験を行っている研究所の実験体隔離場所と言えば良いかな」

 

「……反物質……ということは現代か近未来かぁ……うーん、難しい世界に来てしまったかもしれないなぁ」

 

 ロンメルがぶつぶつと独り言を話しているのを男はニコニコしながら聞いている

 

 ロンメルはこの短時間で透き通る世界に入っており、男の身体を隅々まで観察していた

 

 鍛えぬかれた肉体

 

 それでいてしなやかであるが、体の一部が先ほど聞いた反物質の実験により変化してきている様に見えた

 

「……参った降参、貴方凄いですね。殺気を隠すのもその肉体も、話術も相手を不安にさせない様に音程を調整している……私が変な動きをすれば殺すでしょ」

 

「そんなことはしないよ。私はこの施設から逃げる為のイレギュラーが現れてくれて面白いと思っているくらいだ」

 

「なるほどなるほど……」

 

『侵入者に告ぐ、抵抗の意志が無ければそこのベッドに横になり動くな繰り返す……』

 

「素直に従った方が良いよ。この部屋にはガスや電流、高温低温、音波や光のあらゆる物が凶器に変わるからね」

 

 男は優しく私に呟く

 

「わかりました……また会いましょう」

 

 ロンメルはベッドという名の拘束台に乗ると手足が固定されて自動で部屋の外に移動させられた

 

 男はニコニコとしながら手を振って

 

「バイバイ」

 

 と呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「柳沢主任、侵入者に麻酔を投与し、眠りにつかせました」

 

「ごくろう……侵入者が現れたのはあの密室の隔離施設にいきなりだったな」

 

「はい、外部からあの場所への侵入はセキュリティの関係上不可能なハズです」

 

「しかし、現にあの場所に奇妙な見た目の人間擬きが現れた……興味深い事例だが私の実験の邪魔になりかねないのであれば殺すしかない」

 

「柳沢主任、精密検査の結果人間では無いようです。筋肉の質が人間と異なり、他の臓器はほぼ人間に等しいですが、聴器官が作り物と思えた頭の上の耳に神経が通っており、尻尾にも骨が入っているのを確認しました。ただ血液等は人と同じであり、血液型もAB型の+と一致しました」

 

「確定で人外か……戸籍等は」

 

「勿論ありませんでした」

 

「そうか……使えるな」

 

「柳沢主任まさか侵入者も反物質生成実験に使うと」

 

「あぁ、人とほぼ同じであれば理論上可能なハズだ。なにより私の興味を引いた……理論上可能ではあるがサブプランも必要だ……人と臓器はほぼ同じと答えたな」

 

「はい」

 

「人を孕ませることも可能か?」

 

「はい、可能と思われます」

 

「よろしい。反物質生成の生物同士での交配がどのような結果になるか確認したい。この者にも実験を行う……手始めにATアーゼ リバランスフェイズ SOD阻害薬を40投入しろ」

 

「はい、投入します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは」

 

「気がついたかな?」

 

 気がつくと私は再びあの男と同じ部屋に居た

 

 変わった事は拘束台が2つに増えたことだろうか

 

『目が覚めた様だな……モルモット2号。喜べこの施設に侵入したら本来抹殺するのが良いところだが、戸籍が無い為実験に使うことにした。モルモット1号と生活し、実験に協力しろ。拒否権は無い……以上』

 

 スピーカーから別の男性の声が流れ、なにやら私は反物質の生成実験を行われるらしい

 

「とりあえずおめでとう殺されなかったことと再会に」

 

「ありがとうございます」

 

「耳と尻尾は付け物じゃないようだね……人?」

 

「あー、えっと……ウマ娘っていう種族なんですよねぇ……この世界には居ないですか?」

 

「少なくとも私は知らないね」

 

「そうですか……あぁ、名前名乗りますね。私の名前はウマ娘名だとロンメル……現代日本の名前だと砂山東狐……他にも色々な名前がありますがとりあえずロンメルと呼んでください」

 

「私に名前は無い。ただコードネームは死神。しがない殺し屋だ」

 

「へぇー、殺し屋ですか。道理で非常に整った筋肉をしているのですね」

 

「服の上からでもわかるのかい?」

 

「はい、筋肉の質とか血管とか臓器の位置とか……透けて見えるんですよ」

 

「透けて見えるか……似たような事は私でも出きるけどなるほど」

 

「まぁこんななりなので……うーん、今度は本格化少し前か。胸も足の肉質も全然だ……鍛え直さないと」

 

「鍛えるのが好きなのかな?」

 

「ええ、まぁ好きですね」

 

「見てあげようか」

 

「本当ですか! ありがたい」

 

 そうこう死神と話していると先ほど逃げた女性が向かいの部屋に現れた

 

「殺し屋さんに……」

 

「ロンメルです」

 

「ロンメルさん、初めまして雪村あぐりです。お二人の見張り役をしますので殺し屋さんは改めて、ロンメルはよろしくお願いします」

 

 こうして私は奇妙な生活が始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 実験は死神さんの1ヶ月ぐらい後から始まったらしく、死神が行って問題なかった工程を1.2倍位の速度で実験が行われた

 

 激痛と体調が不安定化するが、全集中の呼吸による血液操作により痛覚軽減と体調を安定化させ、死神監修の下でトレーニングを始めた

 

 まず呼吸の再取得を数日で終わらせ、常中を行えるようにしている段階だ

 

 それをしながら基礎的な筋トレや柔軟を見てもらっている

 

 死神さんは教えるのが上手で、私が一瞬でも効率の悪い動きをすると補正してくれる

 

 それに雪村先生(雪村あぐりさんは日中は中学校の先生をしているため雪村先生とロンメルは呼ぶ……若返ったから肉体年齢的には年下なので)から小学生の頃からの授業を受ける

 

 戦国の偏った知識や大正ではろくに学ばなかった為にロンメルの学力は小学校低学年レベルまで落ちていた

 

 計算スピードや古文漢文みたいな一部は突出していたがそれ以外は壊滅しており、ロンメルは1から学び直していた

 

 死神さんはここでも教えるのが上手で雪村先生の補足をよくしてくれた

 

(雪村先生は本心からくる親切心で、死神さんは私に利用価値があるからと暇潰しにだろうか……クックックッ私は学ぶことができてとても楽しいよ)

 

 3名による奇妙な協力関係はロンメルにとって心地好くそして楽しかった

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ、ここに来て2ヶ月が経過しましたのでお二人に私の事を更に知ってもらいたいので色々暴露しまーす!」

 

「き、急に!?」

 

「ふふ、楽しみですね」

 

「私なんと異世界人です!」

 

「「それは知ってる」ます」

 

「ブーブー反応薄いですよ」

 

「いや、だってロンメルさん、ここに来た時いきなり密室に現れたのですよ。超能力とかワープとかじゃないと無理なので未知の力が働いたとしか……」

 

「殺し屋の私が不覚を取ったくらいだ。並みの技術では無いのだろ? それこそ青いタヌキ(ドラえもん)みたいな技術とか」

 

「あ、あれは私にもわかりません。ただ私は異世界を渡ることが出きる能力を持ったウマ娘なのです! ……まぁウマ娘としての能力的には下の下でしたけど……そんな私ですが最初に行ったのがなんと戦国時代でした」

 

「戦国かぁ、信長とかいたの?」

 

「私が居たら今より警備がザラで暗殺し放題だったかな?」

 

「死神さんは伝説の忍びになってそうですが、私は尾張に飛ばされて紆余曲折有って身を守るために剣術を学びました! それこそ薩摩まで旅をして……で、再び尾張に戻ってから信長様と再開して家来に……なんてなれるハズも無く雑兵スタートで手柄を上げて武士となり、領地を貰い、信長様に抱かれて子供を作り、死にそうになって一之太刀を会得して、死にかけて死にかけて……最終的に21人もの子供を産んで関東8国の主になって死にました」

 

「う、嘘臭い……」

 

「ちんちくりんがそんな事を言っても信用ないぞー」

 

「2人共酷い! で、次は鬼の居る大正の世界でした! そこで剣術を更に磨き、呼吸という技術を身に付け鬼の大将と相討ちで死にました……以上が私の行ってきた異世界の話です」

 

「何か信用できる技とかあるの?」

 

「そうですねぇ……」

 

 とロンメルが言うと一瞬でロンメルの場所が変わっていた

 

 雪村は目の前に居たハズなのに奥の壁と天井の隙間にへばり付いて居るロンメルを見て驚いた

 

 死神はふーんと興味を持ったようだ

 

「この様に呼吸を扱えれば身体能力は格段に上がります。これを全集中の呼吸と言います。更に呼吸を極めることで止血したり、細胞を活性化させて自然治癒力を上げたりすることもできます」

 

「道理で筋トレの効率が良いわけだ。超回復を自分で行っているだろ」

 

「あ、わかります」

 

「でもやり過ぎるなよ。ここだと食事は一定量しか出ないからそこまで筋肉を付けられないと思うし、無理をすればどこかで故障に繋がるからね」

 

「死神さん、わかってますよ。だから無理はしてませんよ……ただ全集中の呼吸を覚えておけば今回行っている実験の苦痛も楽になりますからね」

 

「なるほど」

 

「じゃあ15歳前後に見えるけど実際は何歳くらいなの?」

 

「60歳位でしょうね……まぁ身体がリセットされるので肉体年齢は14歳位だと思います。あ、ウマ娘には本格化っていう成長があって胸や足、身長が急成長する時期が有るので、それが私は15歳の時に必ず来るのでまだ本格化していない=15歳未満という計算で多分14歳だろうと思います」

 

「なるほどね……まぁ知識の偏り酷かったもんね社会とか壊滅していたし」

 

「申し訳ない」

 

 しょんぼりロンメル

 

 するとバチバチと電流がロンメルと死神に襲いかかった

 

『リラックスタイムは終了だ。拘束台に乗れ。実験を再開する』

 

「雪村先生また」

 

「またねロンメル」

 

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